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修了生論文

「自社が取り組む業務改善」

東京校 (T-college) アドヴァンス 渡辺 岳央株式会社鳥海建築設計事務所 代表取締役社長)

1章 研究動機

 

業務改善が進むことを歓迎しない社員はいないはずなのに、なぜ積極的な業務改善に取り組めないのだろうか。確かに現状に不満がなければ「今のやり方が慣れているからその方が楽」と先送りにしたくなる。

しかし業務改善は早く、積極的に取り組むべきでは無いだろうか。なぜなら、常に仕事を抱えた状態の現状のままでは、目の前の仕事に時間を取られ、時間の余裕がなく、新規業務の開拓・技術の向上がおろそかになり、業界の変化を先取りするどころか、乗り遅れてしまい将来への展望が立たなくなるからである。

ここでは自社における業務改善を定義し、これまでの取り組み方法の分析、これからの取り組み方法を明らかにすることを目的とする。

 

 

2章 研究と分析

 

1節 研究

 

1項  目的

自社で業務改善を進める為に、業務改善を研究し自社での業務改善を定義する。

 

2項 生産管理の3要素

いくつかの講演会や書籍などで学ぶ中で「QCD」という概念がよく使われていた。

 


【生産管理の3要素】

  • 品質(Quality)の向上
  • コスト(Cost)の削減
  • 納期(Delivery)までの時間の効率化

 

業務を進める上で守らなければならない重要な要素である。そしてこれらの要素はお互いに結び付き、どれかを良くしようとすると他が悪くなる、トレードオフの関係にある。

  • .品質を良くすれば、それに伴いコストも高くなり、納期も長くなる
  • コストを安くすれば、それに伴い品質の確保が難しくなる
  • 納期を早くすれば人件費が減る分コストが下がる可能性はあるが品質の確保が課題

 

トレードオフの関係の中でバランスを保ちながらもどれを選択するかが意思決定となる。

 

【自社業務に置き換えた場合の生産管理の3要素】

  • 品質(Quality)の向上・・・【顧客要望への対応、成果品の精度、ミス削減】
  • コスト(Cost)の削減・・・【売値に対する手順、手間の見直し】
  • 納期(Delivery)までの時間の効率化・・・【円滑な連携、個人スキル差、集中時間】

 


3項 トヨタ生産方式

  • 品質を高くするとコストが下がる。製造時の事故や故障、お客様とのトラブルなどすべてを考えていくと品質を上げることによってトータルコストが下がる。

「QCD」の3つの要素をすべて同時に良くしようとする、トレードオンの考え方がトヨタ生産方式である。


【トヨタ生産式】

ムリ、ムダ、ムラの排除

  • ムリとは負荷が能力を上回った状態
  • ムダとは逆に負荷が能力を下回っている状況
  • ムラはムリとムダの両方が混在して時間によって表れる状況

具体的な例・仕事を一人で抱えている社員はいないか。

  • 抱えている仕事量に差はないか。
  • 不要な手順は多くなっていないか。
  • 外注化やシステム化などで軽減できる作業はないか。

 

【自社業務に置き換えた場合の生産式】

 

 

4項 3階層の役割

例えばフレックスタイム制の導入を進めるには個人単位で進めることは出来ず、会社として進めることになる。

チームごとに職種は異なるので業務改善はチームごとに進めることになる。業務改善の種類・内容によって、仕組化・ルール化を決定する階層を分ける必要がある。


  • 会社として決めて進めるもの(経営層とチーム責任者の連携)
  • チームとして決めて進めるもの(チームと個人との連携)
  • 個人が考えて工夫できるもの

 

 

トップダウン・・・業務のつながりは担当者レベルではわからないことも多いので組織上位から掘り下げていく手法が有効

ボトムアップ・・・業務担当者が担当業務を洗い出す。管理者が把握していなかった業務が発見し業務改善につなげる。

 

5項 業務改善の進め方

  1. その業務はそもそも必要or不要
  2. セルフサービスの割合を見直す(あえておもてなし削るor削らない)
  3. 価格に反映させるか
  4. 必要な業務を確定
  5. ルーティンに落とし込む(標準化)
  6. マニュアル(共有)
  7. トレーニング
  8. 改善(定期的に8から1に戻り、検証を繰り返す)

 

2節  分析

 

1項 目的

自社を分析し業務改善の取り組み方を実証する。

 

2項 自社の現状

一般的に建築士は建物プランから建物工事完了まで、最初から最後までつきっきりで携わり、一人で多種にわたる業務を熟す必要がある為、時間外労働なしでは出来ない職種と言われています。

一方で自社の業務は申請業務に特化しているので業務内容は比較的限られており1物件に携わる時間も短く手離れが良い仕事です。一方で携わる物件数は会社として約年間1000棟と多い。

 

 

3項 社員の意識(個人面談)

 

現状のモチベーションと価値観を問う質問をきっかけに業務改善について社員の認識を確認するために社長である私は、15人の社員全員と個別面談を行った。

働き方や会社に対して特に不満はなく、残業についても以前よりは残業時間が大きく減ったので、個人として更なる残業削減、業務改善を求めている社員はいない。

しかし結婚・介護などのライフスタイル変化に伴う将来的な不安を感じており、在宅や時短で働けるような業務形態を将来的に求めている社員もいた。

不測の事態や業務量増加に対応するため、新たな人員確保のためにも、無駄な作業を会社として見直し、既存社員の残業時間削減に取り組む必要性は感じている社員もいた。

 

4項 時間管理の取り組み

社員全員に対して今日の終業予定時刻を毎日ヒアリングして記録をした。

実施前と実施後の比較では、社員一人の一日当たりの残業時間は144分間が106分間へ(38分間)、月当たりの残業時間は48時間が35時間へ(13時間)と削減した。

【QCD分析】品質は変化なし(─)、コストは残業代減少(↑)、時間の効率の効果あり(↑)

※改善(↑)、変化なし(─)、改悪(↓)で示す。

 

5項 電話取次ルールの見直し

 

対応ルールが社員によって多岐に渡っていたので原則、「電話取次はしない」とのシンプルな考えに統一した。

 

【QCD分析】日常的に勤務時間外まで電話してくるような顧客は以前に比べて減っているので品質は変化なし(─)、後で折り返しの電話を行う行為が発生するのでコストは微増(↓)、取り次ぐ社員の対応パターンが減るので時間の効率あり(↑)

 

6項 業務担当者の見直し

若い技術スタッフが、忙しそうにしている中堅サポートスタッフに仕事を頼みづらい状況が見受けられたので、技術スタッフは新人サポートスタッフに直接、仕事を頼むようにした。

 

【QCD分析】中堅が処理する部分が減り新人のミスは増えるので当面、品質は落ちる(↓)、中堅でなく若手で処理できる部分が増えるのでコストは効果あり(↑)、2人で処理するので時間の効率あり(↑)

 

7項 顧客情報の共有

《昨年度》顧客別売上構成

 

 

《今年度》顧客別売上構成

 

顧客について経営側と顧客担当者の認識ズレ事例があったため、今後は情報共有を図ることにした。

昨年度と今年度の上位3社の顧客を比較すると上位1位と2位が入れ替わり、昨年3位が今年6位になるっている。ここまで大きな変化は現場担当者にとっても業務処理や顧客対応においてに影響が大きい。逆に現場担当者からの状況も早めに必要と認識したため引き続き情報共有していく。

 

【QCD分析】

上顧客に経営層がフォローするなど品質は効果あり(↑)、取引先を整理するなど顧客別に担当者の動きを見直すことでコストは効果あり(↑)、コスト効果に比例して過剰サービスを減らす時間の効率の効果あり(↑)

 

8項 サーバー内のフォルダ分けの見直し

サーバー内の共有フォルダの分け方が20年前の構築から変えずに運用していた。

現在、依頼される業務量などと不一致の部分があり複数のフォルダを探さなければいけない、逆に同一資料が複数保存されている事例もあったので見られたのでシンプルに変更した。

 

 

【QCD分析】品質は変化なし(─)、コストは変化なし(─)、時間の効率の手順がシンプルになるので効果あり(↑)

 

9項 QCD分析一覧

 

前項までに示した5つの取り組んだ事例とQCDでプラスかマイナスかを判定したものを一覧表にした。同じプラスやマイナスでも他の取り組みとして+5~-5までの点数化をした。顧客情報の共有はQCD全てにおいてプラス効果がある。合計点としては終業時間管理が一番の効果がある結果が出た。

 

 

3章 今後の取り組み方法

 

今までは忙しくしている社員に気を遣うあまり、社員に十分な説明と十分な同意なしに、私が良さそうだと思う業務改善を実行してきた。忙しい社員にとっては、単に業務の邪魔、思い付きでやっていると思っている社員もいたことが取り組みを継続できない理由になっていた。

今後は「ムリ、ムダ、ムラの排除」「業務改善の進め方」「意思決定ピラミッド」を自社の業務改善を進める目的の整理・共有に使用する。特に「QCD」で業務改革の取り組みの効果を分析して可視化することを上手く使い、忙しい時だからこそ必要な業務改善を進めていく。

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