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修了生論文

『部門別会計導入後の現状とそれを踏まえての中期経営計画の策定』

大阪校 (O-college)アドヴァンス 髙田 嘉文株式会社ファシリティーズ 代表取締役)

1、会社概要

 

1997年7月に株式会社ダスキンの清掃部門のフランチャイジーとして、先代社長(現会長)が創業した。創業当初はハウスクリーニング業界の成長期とも重なり、11期連続で前年比プラス成長で売上が推移した。

2008年のリーマンショック時に前年比10%のマイナスとなったが、その後は微増と横ばいを繰り返し、前期の売上は約1億1千万円である。事業内容は、ハウスクリーニング・オフィスクリーニングなどの出張お掃除部門が売上の約○〇%、病院や事業所などに毎日もしくは週に数回スタッフを派遣し、施設の日常的な清掃を行う常駐清掃部門が約〇〇%、一般家庭や事業所にマット・モップ・空気清浄器・浄水器などの衛生用品をレンタル・物販するダストコントロール事業が約〇〇%となっている。拠点としては、岡山市の中区と南区にダスキンのFC店として2つの店舗と直行直帰型の請負病院施設がある。

 

(単位:千円)

 

 

2、研究動機

 

一昨年の10月から半年間、O-collegeで管理会計(部門別会計)を学び、修了生論文で「南区店舗の出張お掃除部門の改善が会社の業績改善に貢献する」という結論を出した。今期の業績を振り返りその仮説を検証したいと考えた。その検証結果を踏まえ、バランス・スコアカードを活用し、来期からの中期経営計画を作成する事により、会社の進むべき方向を示したいためである。

 

 

3、【問1】 前期と比較し、出張お掃除部門の業績改善は進んだか?

 

【問1 研究方法1】

前期と今期のお掃除部門のP/Lを比較し検証する。

(データは期首から1月末までの実績)

 

【全社】

H28年度(4月~1月) H29年度(4月~1月) 差異
売 上
売上原価
売上総利益
販管費
営業利益
売上利益率

 

 

会社全体として、売上高は△〇〇〇〇千円、前期比98.8%であったが、営業利益が〇〇〇〇千円増加、営業利益率が〇〇%向上した。

 

【出張お掃除部門 全体】

H28年度(4月~1月) H29年度(4月~1月) 差異
売 上
売上原価
売上総利益
販管費
営業利益
売上利益率

 

 

出張お掃除部門全体としては、売上高△〇〇〇〇千円、前期比〇〇%であったが、営業利益が〇〇〇〇千円の増加、営業利益率が〇〇%向上した。

 

【中区店舗 出張お掃除部門】

中区店舗 H28年度(4月~1月) H29年度(4月~1月) 差異
売 上
売上原価
売上総利益
販管費
営業利益
売上利益率

 

 

中区店舗の出張お掃除部門は、売上高△〇〇〇〇千円、前期比〇〇%であったが、営業利益が〇〇〇〇千円の増加、営業利益率が〇〇%向上した。

 

【南区店舗 出張お掃除部門】

南区店舗 H28年度(4月~1月) H29年度(4月~1月) 差異
売 上
売上原価
売上総利益
販管費
営業利益
売上利益率

 

南区店舗の出張お掃除部門は、売上高△〇〇〇〇千円、前期比〇〇%であった。

黒字化はできなかったが、営業利益が〇〇〇〇千円の増加、営業利益率が〇〇%向上した。

 

上記の比較の結果、改善された項目については、人材確保の厳しさが続く中、限られた人員体制で成果をあげる為に、一人あたりの生産性の低い「家事代行」や「巡回型日常清掃」の比率を減少させ、人時生産性の向上や小商圏での営業活動に努めた結果であると考えられる。

 

【問1 研究方法2】

出張お掃除部門の責任者2名と私の3名で、今期の部門運営の強み(うまくいった)と考えられる点と弱み(改善が必要)と考えられる点について、ブレーンストーミングで意見を出し合い、個々の案件について議論した。

 

≪強み・うまくいったと考えられる点≫

  • お掃除サービスを実施していない他のダスキンFC店との連携により、顧客を開拓できた。
  • 中区店舗と南区店舗の間でスタッフの貸し借りができ、協力体制の中で人手不足対策を行えた。
  • 新人スタッフの業務を絞る事により、技術習得の時間を短縮できた。
  • 年末などの繁忙期に問合せのあった依頼について、ダスキン本部の販促キャンペーンなどを活用し、閑散期に誘導する事ができ、その効果で複数の失注を防げた。
  • 人手不足が続いたが、その反面、スタッフ間の協力体制が構築できた。

 

≪弱み・改善が必要と考えられる点≫

  • 売上の季節変動が大きかった。
  • 定期顧客に対し、スポット顧客の比率が大きかった。
  • サービス実績のある顧客に対し、リピートや定期契約の提案をしきれていなかった。
  • 待ちの営業スタイルであった。
  • スタッフにより技術レベルに差があった。
  • 繁忙期の依頼に対応しきれなかった。
  • 人手不足であった。

 

問1の結果 考察

部門別P/Lの比較により、前期に対し、今期は出張お掃除部門の売上は減少したが、営業利益の改善はできた事が分かった。営業利益の改善は、顧客やサービス内容の絞り込みの効果がでたからと考えられる。

一方、売上の減少は、人手不足などによる体制的な事もあるが、【研究方法2】であがってきた通り、サービス実績のある顧客に対するリピートの促進や定期顧客化へむけて、積極的にアプローチできていないことも要因としてあげられる。

また、今回の研究で、その事を社員自らが自覚しているが、行動に移せていない事が分かった。今後は、社員の意識向上を図りながら、顧客のリピート化や定期化につながるための仕組みが必要であると考える。また、体制的に余力のある閑散期において、顧客のリピート化や定期化がうまく促進されれば、売上の改善に大きくつながると考えられる。

 

問1のまとめ

会計情報の分析により、短期的ではあるが、出張お掃除部門の営業利益率の改善がなされたと考える。但し、意図的に顧客や市場を絞ったことや、人手不足による体制の不備などにより減収となった。来期は売上の回復が課題となる。

また、定性的な分析として、部門責任者とのブレーンストーミングや議論により、従業員の業績に対する責任感やモチベーションに課題があることが分かった。従業員がやりがいをもって仕事に取り組める体制(人事評価制度・職務分担・企業風土)作りが必要であると改めて認識した。

 

 

4、【問2】 問1の結果を踏まえて、自社の強みを活かした中期経営計画とは?

 

【問2 研究1】

SWOT分析を行い、自社の強みを確認し、中期経営計画に反映させる。

内部環境 強み(S) 弱み(W)
A ダスキンのブランド力により、顧客に安心感を与えられる。特に新規顧客 ダスキン本部へのロイヤリティーのコストが発生する。価格競争に弱い
B 清掃衛生のニーズに対し、ワンストップで対応できる(役務+レンタル+物販) 営業(見積)とサービスの両方を一人の業務として行うため、職人的になりやすく、営業力に欠ける
C B2C、B2Bの全ての市場、業種、業態、世帯が顧客対象となり得る 人手不足により、失注につながる
D FCネットワークを活かし顧客開拓・顧客維持ができる
E 同業他社に比べ、ダスキンのネームバリューにより人の確保ができる
外部環境 機会(O) 脅威(T)
a B2C:高齢化、共働き世帯の増加
B2B:労働力不足による清掃業務の外注化
⇒ブランド力を活かし、新規開拓や既存顧客の深堀りにより、売上拡大・利益拡大を図る
参入障壁が低く、他業界からの参入がある
⇒価格による競合対策は避け、品質本位で優位性をだす。また、業務の効率化を図り、コストダウンを図る
b 顧客ニーズの多様化
⇒ワンストップ対応により、顧客との関係性の強化を図る
自社契約顧客の他社へのスイッチ
⇒社内教育により、営業力強化を図る
営業とサービスを分離した組織とする
c 好況業種・不況業種が時代と共に変化する
⇒アンテナを張り、市場・業種・業態・世帯に捉われず、好況業種関連のB2C・B2Bをターゲットとする
労働人口の減少
⇒社内環境を整備し定着率をあげる
社内教育により、スキルアップを図り、一人あたりの生産性の向上を図る
失注しやすい繁忙期の依頼を閑散期へ誘導し、売上の平準化を図る
d ”キレイ・快適・衛生”に対するニーズの高まり
⇒他のダスキンFC店や本部との連携を強化し、売上・利益拡大を図る
e 業界内での人材確保の優位性
⇒場当たり的な人材確保ではなく、計画的に行う

 

SWOTによる自社分析により、上記のような「強みと機会」、また「弱みと脅威」があることが分かった。ダスキンというブランド力を活かし、多様化する顧客の衛生管理に対するニーズにワンストップで応えていく事が、今後の自社にとって進むべき方向ではないかと考える。

 

【問2 研究2】
戦略マップやBSCなどを活用し、中期経営計画を策定する。

「【良い会社】の実現」と「従業員の物心両面の豊かさの実現」こそが、自社の継続・発展につながると考え戦略マップを作製した。ここで【良い会社】とは、『中長期的に、会社の成長と従業員の成長を同時に実現していける会社』と定義する。

この戦略マップを好循環させる事が中期経営計画の柱であると考える。そのために、マップ上の矢印の逆方向に戦略を掘り下げ、「財務」・「顧客」・「業務プロセス」・「学習と成長」の各視点の戦略目標を設定し、バランス・スコアカードを作製した。具体化された各視点のKPIを、日々の業務の中でPDCAサイクルをまわす事により、P/Lの数値目標が達成されると考える。そして、これを支える土台となるのが、経営理念に基づいた社員教育である。また、【良い会社】の定義を社内の共通言語とし浸透させていく。

 

創業の精神

祈りの経営の実践。喜びのタネをまこう!

 

ミッション

お掃除サービスや衛生関連商品の提案・提供を通じ、お客様の快適な住空間・職場空間の創造に貢献する。

 

ビジョン

単なる労働集約型事業から知識集約型事業への転換の3年とする。

「お掃除」・「衛生用品」の単体売りではなく、お客様の真のお困り事を捉え、サービス・商品・ノウハウの提案・提供を実践し、環境衛生管理のパートナーとしての地位を築ける会社となる。

 

戦略マップ

 

バランス・スコアカード

戦略目標 重要成功要因(KSF) 重要目標達成指(KGI) 重要業績評価指標(KPI)
財 務 売上の増加 ②~⑱の達成 1年目 1.17億円

2年目 1.31億円

3年目 1.5億円

予算(月次・年間)
経常利益率の向上 適正人員の配置と受注金額 経常利益率〇〇%以上 予算(月次・年間)
人時生産性の向上 適正人員の配置と受注金額 人時生産性〇〇〇〇円以上 現場ごとに算出
顧 客 ロイヤルカスタマーの獲得 顧客のセグメント
購入頻度・累計購入額で分類
A-1ランク顧客

(〇〇件以上/担当者)

提案書提出(〇件/月)
リピーターの獲得 購入頻度 5年以内の再購入顧客

(〇〇%→〇〇%)

リコール

(1日〇〇件×〇〇日、=〇〇〇件/月)

顧客単価の向上 役務・商品購入併用顧客の割合 〇〇%→〇〇% 提案件数
クレームの削減 事前調査・事前説明 エアコン(〇%→〇%)
その他(〇%→〇%)
事前説明(全現場)
移動時間の短縮 岡山市内の顧客割合 〇〇%→〇〇% 日次のルートの精査
業務プロセス 受付から初期訪問までの

日数の短縮

適正なスケジュール管理 受付後〇日以内 受付後〇日以内
見積りからサービスまでの日数の短縮 適正なスケジュール管理 見積り後〇日以内 見積り後〇日以内
作業マニュアルの見直し 本部マニュアル・自社オリジナルの精査 年4回の実施 1/3カ月の実施
資器材のメンテナンス スケジュール化・給与連動 メンテナンス費〇〇%減少 30分/週の実施
整理整頓の徹底 スケジュール化・給与連動 準備・片付け時間

1日15分の減少

1/2週の30分の5S活動
学習と成長 技術・知識の習得 店内研修会の実施 年6回の開催 1/2ヶ月の頻度で開催

単位:店舗ごと

対象:社員・パート

将来を担う人財の育成 外部研修への参加 年6回(店長職以上)

年2回(その他の社員)

1/2ヶ月の頻度(店長職以上)

1/6ヶ月の頻度(その他の社員)

人員確保 社員の増員 1名/年 増員計画と比較
人員確保 パートの増員 社員:パート=1:3→1:6 増員計画と比較
モチベーションの向上 処遇の改善

コミュニケーションの強化

人事考課制度の導入

年3回社内レクレーション

1年目:研究及び下地作り

2年目:作成

3年目:導入及び検証

1/4ヶ月

の頻度で開催

 

営業戦略

① 顧客の“キレイ・快適・衛生”に対するニーズに対し、お困りごとの本質を捉え、ワンストップで問題解決を行う。

② 人時生産性の向上を最重要なKGI・KPIとし、適正な金額での受注の徹底を図る。

③ 顧客を年間の購入金額と購入頻度により、9つのグループにセグメントし、購入金額と購入頻度の最も高いロイヤルカスタマー(A-1グループ)の獲得と維持を行う。

④ サービス実績のある顧客へのフォロー営業を徹底し、リピート顧客や定期顧客の売上比率を高める。

⑤ 他のダスキンFC店やダスキン本部と連携し、ダスキンブランドの強みを活かし、新規顧客の開拓や既存顧客の維持を行う。

 

サービス・人材育成戦略

① 人時生産性の向上を最重要なKGI・KPIとし、適正な人員配置でのサービス実施の徹底を図る。

② 社内外の研修を計画的に実施し、将来を担う人材の育成を図る。

③ 計画的な採用活動を実施し、人手不足による失注を防止する。

 

3か年 目標損益計算書

P/Lの記載は省略

バランス・スコアカードの戦略目標の実施により、上記のP/Lの達成を目標とする。

 

 

5、今後の取り組みと監査

 

最重要のKGI・KPIと位置付けた人時生産性については、担当者が記入する日報により、毎日チェックを行う。また、月単位で把握できる指標については月次の定例会議で、その他の項目は四半期もしくは半期ごとに確認を行い、PDCAサイクルをまわすようにする。

監査頻度 戦略目標 内容
日次 ③人時生産性の向上 日報に記入後、集計、実績を確認
月次 ①売上の増加 進捗状況を確認
②経常利益率の向上 実績を確認
④ロイヤルカスタマーの獲得 実績を確認
⑤リピーターの獲得 実績を確認
⑥顧客単価の向上 実績を確認
⑦クレームの削減 実績を確認
⑧移動時間の短縮 実績を確認
⑨受付~初期訪問の日数短縮 実績を確認
⑩見積~サービスの日数短縮 実績を確認
⑫資器材のメンテナンス 計画と実績確認
(自己目標を設定し給与に反映)
⑬整理整頓の徹底 計画と実績確認
(自己目標を設定し給与に反映)
四半期 ⑪作業マニュアルの見直し 計画と実績確認
⑭技術・知識の習得 計画と実績確認
⑮将来を担う人財の育成 計画と実績確認
⑯人材確保(社員) 計画と実績確認
⑰人材確保(パート) 計画と実績確認
半期 ⑱モチベーションの向上 社内の環境整備
(人事制度についての知識の習得・雰囲気作り・適正検査の実施、社内レクレーションの実施)

 

 

6、おわりに

 

今回、O-Collegeアドバンスコースを受講させていただきありがとうございました。

第1回目の授業で、原田校長より「今こそ死ぬ気で学習しよう!」、「目標設定のレベルをどの様にするのか?それは、即死しない程度の困難を与えよ!」等のコメントがあった。また、ベーシックコースの際には、大西校長より「経営者は、会社やお客様そして銀行の前では恥をかけない。このスクールでしっかり恥をかいて学んでもらいたい!」との言葉があった。

そんな言葉の数々が私のGGBK(ガンガン勉強)の原動力の一つであった。アドバンスコースでは、ベーシックコースの振り返りと新たな学びと気づきをいただく事ができた。ベーシック終了後に、頭の中で漠然としていたものを戦略マップやバランス・スコアカードを活用することにより、すっきりさせることができた。

全体の大きな方向性と日々チェックしていく点を整理できた。アドバンス受講期間中に、同業企業にベンチマーキングすることができた。ダスキンのFCとしてスタートし、今は東証1部に上場、企業規模は売上約1,000億円になったN社である。理論で学んだ事の現実・現場・現物がそこにあった。

その際、その企業の会長からこんな話があった。

①後継者として、既存の事業を引き継ぐだけでなく、0から事業を立ち上げる様な気概を持ってもらいたい。失敗の先に色々な成功がある。

②経営者は、その人の才覚だけではなく運を引き寄せることも必要。そのためには、積極的に行動することを心掛けること。

③新しい事業をする時は、社内で一番優秀な人にやらせなくてはならない。それは、成功の確率を上げるということだけでなく、もっと大切なことは、失敗しても指示を出した自分(社長)も会社のまわりの人間も納得するからである。

という内容であった。実績に裏付けられた言葉のひとつひとつに重みがあり、勇気をもらえた。

今回のアドバンスコース受講で、本当に多くの事を気づき学ばせていただいた。今後もGGBKし、経営者として多面的・俯瞰的に物事を捉え、強い意志(心)と分析する力(知性)を備え、リーダシップ(行動)を持って、経営理念の実現にむけて邁進していきたいと思う。また、従業員と共に、“喜びを持って”学びあい、学び得たものを表現しあい、感謝の気持ちを持って、お互いに接し、【良い会社】を実現させていきたいと強く思う。

結びに、共に学ばせていただいたO-Collegeアドバンスコース一期生の皆様、また、アドバンスコースへの進級の際に、背中を強く押してくれたベーシックコース同期の中井さん、酒木さん、大坪さん、谷崎さん、そして、何よりも素晴らしい成長のチャンスを与えていただいた原田校長、大西ベーシックコース校長には大変感謝申しあげたい。ありがとうございました。生涯GGBK!

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