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修了生論文

自社の売上を安定させるための分析と考察

東京校 (T-college) 坂巻 敦子株式会社ミッション 役員)

1、企業概要

社名      株式会社ミッション

事業内容    エクステリア工事・一般住宅建築・リフォーム工事・建築資材物販

設立      平成10年12月設立

事務所所在地  埼玉県川口市

展示場所在地  埼玉県川口市(資材置場兼用)

代表取締役   坂巻雄一

従業員数    役員7名(兼務役員として4名のうち営業部門3名、経理部門1名)・社員4名(工事部門2名、設計部門2名)・パート1名(原価管理事務)

外注職人    25名

 

経営理念    『楽しい家 愉しい庭づくり』

『新しい住空間と心豊かなくらしづくり』

『地域づくり 景観づくりへの貢献』

 

 

2、動機

次項の表に示したように、自社の売上の9割はエクステリア工事で占めています。そのうちBtoBの発注が7割で、他はBtoCからの発注と物販、設計プランから成り立ちます。利益率はBtoBが22%、BtoCは33%前後と、企業の工事は10%以上も下がります。以前は9割が企業からの受注でした。その頃の工事の受注は、今よりも利益率が高かったために、利益を創出していました。ところが、7年前に、売上を一番多く占めていたハウスメーカーが、大幅に受注の方針を変えてしまい、利益計上が厳しくなりました。そこで5年前から改善策として、一般顧客の獲得に力を入れる事にしました。わずかではありますがBtoCの比率は伸びてきました。しかしその事によるマイナス要素もあります。ハウスメーカーによる受注は数か月前のため、売上予測が組みやすいのですが、一般顧客の場合は、工事直前に発注するので、売上予測が組みにくいのです。また、エクステリア工事は、外仕事が多いため、天候や職人の体調、都合などで生産性が落ちます。

このような外部要因に振り回されることが無いように、フレームワークで自社の現状を分析し、問題点を明らかにした上で解決策を提示し、問題解決を図りたいと考えます。

 

 

3、現状分析

自社の売上の現状を比較しました。

年間売上高順位表                           【29年度】

工事内容 売上高(千円)
1位 BtoBからのエクステリア工事 217,600
2位 BtoCからのエクステリア工事 102,400
3位 室内リフォーム、その他工事 3,000
4位 物販等 200
5位 設計図面プラン作成 100

 

この表から、その期によって売上の変動はバラつきがあることが分かりました。

そこで、天候が影響しているか検証しました。

 

お天気調べ(気象庁発表参考) 埼玉県

春~秋
24期 ・春から夏の前半及び秋に晴れの日が多い(5月頃より急に暑い日が続いたと思われる)

・一方低気圧や台風の影響でたびたびまとまった降水となる

 

・2月に関東甲信越で過去、最深積雪を上回る記録的な大雪を降らせる
25期 ・7月中旬から8月上旬にかけて猛暑となる

・9月上旬までは記録的な大雨となり河川の氾濫など大被害が発生した

・秋の平均気温は高く、降水量も少雨傾向である

・暖冬で積雪量が少ない
26期

 

 

・全国的に平均気温が高め

・7月後半に気温が低い日が続く

・降水量は6月が平年並みで7月は少ない

・8月の台風上陸数が統計開始から第1位

・暖冬傾向であった

・積雪量が少なく日照時間も長かった

 

期ごとの天候の状況と、3期月別売上比較表を参照してみると、天候との関係による影響はとても大きい事がわかります。

25期の猛暑と24期の冷夏の年では、売上に差が出ています。近年の暑さは尋常ではなく、職人にとっては命の危険さえ感じるほどです。実際は早朝と夕方の時間帯しか働けない日もあります。以前はその穴埋めとして日曜、祝日の出勤で対応しましたが、昨今は休日に現場を動かすことが厳しくなりました。

大変なのは雪による影響です。降雪日から雪解けまでの数日間は工事が止まります。また関東に雪が降らなくても、材料工場のある、地方で大雪になると、流通がストップし、材料が入らなくなります。このような理由から、大幅に着工日数が減り売上は落ちるのです。

 

そこでSWOTを使って分析をしてみました。

SWOT 分析

  プラス要因 マイナス要因
内部環境 強み

⒜プランから施工まで一貫した工事ができる

⒝室内工事ができる

⒞各専門分野の職人がいる(タイル工6名、ブロック工13名、左官工2名、金物工3名、造園3名)

⒟自社の仕事を専属にしていて設立時より働いている経験豊かな外注職人が多い

⒠若い職人が多い

⒡従業員資格推奨制度があり退職者が少ない

⒢資格保有者人数が多い(2級建築士1名、2級土木施工管理技士3名、エクステリアプランナー1名、ブロック診断士1名、)

⒣展示場の活用ができて、地域密着型なので顧客対応が早く、顧客との信頼関係がある

⒤大手メーカーの紹介が多い(LIXIL、三協アルミ、タカショー)

⒥建設業許可及び産業廃棄物収集運搬等免許取得業者である

弱み

⒜人員不足で余裕がない

⒝顧客対応が遅い時がある

⒞仕事内容がシステム化していない

⒟仕事量が多い

⒠天候に左右される

⒡仕事の内容が可視化できていない

外部環境 機会

⒜天候に影響されない室内工事と室外工事のプランから施工までを短期間に一貫して出来る

⒝天候に影響されない室内工事を拡大する

⒞職人の技術向上で信頼度が上がる

⒟経験豊かな職人が若手の育成をする

⒠職人の高齢化に悩まされない

⒡従業員不足に悩まされない

⒢社員全員が資格保有者で施工技術が向上する

⒣展示場スペースの使用が誰でも自由に使えることで企業としての価値が向上する

⒤大手メーカーのサポートセンターと直結していて新商品の開発に携わる

⒥企業として信頼度が高い

脅威

⒜顧客離れがおきる

⒝工事ミスや労災がおきる

⒞職人の環境に左右される

⒟職人が集まらない

⒠住宅購入者の減少

⒡他業種からの競合の参入

⒥価格競争が激化する

⒣原材料の値上がり

⒤天候の影響による生産性低下

 

弱みへの対策 脅威への回避
⒜システムを強化し人材不足を補う

⒝個々の仕事内容を可視化する

⒞システムを強化し社員全員で共有する

⒟営業および現場監督、職人の仕事の進め方をフローチャートにして、仕事内容の一律化で無駄な動きをしないようにする

⒠室内工事件数を増加させて天候の影響を避ける

⒡システム強化にスケジュール管理も導入し社員全員で共有する事で可視化する

⒜顧客管理台帳を見直す

⒝安全対策の教育を徹底する

⒞職人の健康管理への意識を向上させる

⒟外注職人との協力体制を強化させる

⒠顧客にDMやSNSにより住宅に関心を持つように発信する

⒡競合を常に意識する

⒢付加価値を付けたプランと施工をする

⒣在庫のシステム強化で発注ミスや材料の無駄を省く

 

SWOTによる分析結果として、内部環境の強みの部分が多いことは、自社の誇りだと感じました。また、多数の資格保有者は、自社の信頼度を高める要因だと思います。設立から20年の間、長きにわたり築き上げた職人との強い絆は、社長の人柄の良さだと思いました。これも強みの1つだと思います。

弱みへの対策としては、人員不足解消のために、システム強化は必要です。室内工事も今後、着工数を増やす方向で、戦略を立てることも可能だと思いました。

脅威への回避としては施工技術を上げることが回避につながり、それには職人のスキルアップのために、定期的な勉強会を開かなくてはならないと思いました。回避できない脅威は天候だけであると感じました。しかしこれも、天候は左右できなくても、室内工事の着工数の増加対策で解決すると考えられます。

 

次にVRIO分析で検証してみたいと思います。

VRIO分析(内部環境)

経済価値

(value)

・各専門分野の資格を持ち熟練の職人の手により施工された質の高い商品を提供している
希少性

(Rarity)

・埼玉県南地区で展示場を併設しているのは自社だけであるため消費者が商品を体験することができ選択肢を広げることができる
模倣困難性

(Inimitability)

・エクステリアの一貫したプランから施工までの工事と室内リフォームを同時に請負ができる体制とその職人確保は難しい
組織(Organization) ・専門的な資格を持つ社員や外注を多数そろえている

・大手メーカーと融合し協力体制を整えている

 

今まで私は、自社にVRIO分析の該当は無いと判断してきました。しかし今回の検証で希少性と、模倣困難性は自社の強みになると思いました。まず希少性として、エクステリア業は建設業の中では、簡単に参入できるので競合も多く、昨今では価格競争も激しくなりました。起業してから日の浅い競合は、価格にばかり焦点がいき、利益をもたらさない仕事を請け負うことになります。自社の場合は競合には無い展示場を活用させ、顧客が商品を見学し、体験しながら選択する事ができます。

模倣困難性では、社長自ら建築士の免許を持ち、住宅に詳しいため、建築リフォームができます。そこで住宅の内外含めて、一貫した提案ができ、工事に携わる職人も、経験を積んだ手で施工されます。これは顧客にとって安心材料であると思います。

ここで、自社のバリュー・プロポジションは何かを検証したいと思います。

 

3C分析

競合

①    情緒的ベネフィットを狙うコアな顧客層をターゲットにしているA社

②    総合力があり比較的顧客のニーズに合わせた提案をするB社

③    消費者が新築の場合は住宅を建築したハウスメーカー

顧客

①    カーポートや駐車場、玄関ポーチ等の機能的ベネフィットの要素を多く含む工事を依頼する顧客

②    ガーデンルームの取り付けや、庭園を充実させたい情緒的ベネフィットの要素を多く含んだ工事を依頼する顧客

③    顧客の指示通りの依頼をする、または、決められた予算内の工事依頼をするハウスメーカー

自社

①    機能的ベネフィットの要素を含む顧客にも、情緒的ベネフィットの要素を多く含む工事を希望する顧客のどちらにも対応できる

②    エクステリア工事と室内リフォーム工事が同時に、提案から設計、工事まで一貫して出来る

 

さらにSTP分析で絞り込んでみました。

STP分析

市場の細分化(segmentation)

埼玉県南地区およびその周辺に絞り、地域密着型とし顧客の要望により敏速な対応に応じる

標的市場の選択(targeting)

情緒的ベネフィットの要素を多く含む工事を依頼する顧客に絞ることにより、価格帯を下げずに利益率を上げて、売り上げを伸ばしていく

 

市場における優位性(positioning)

 

ここでバリュー・プロポジションを考えるとともに、4P分析で自社と競合を総合的に比較してみました。

 

4P分析

(1)自社

立地・流通(PLACE)

・事務所と展示場は、首都高、外環、関越、東北道のICに近くて自動車によるアクセスが良い

価格(PRICE)

・受注前の打合せと、見積を提出した後に契約成立となるために安心である

・独自の戦略で価格競争に参加しない

宣伝(PROMOTION)

・ホームページによる周知

・大手メーカーのショールームの利用により知名度を上げている

製品(PRODUCT)

・専門職の職人チームによる施工が可能なので情緒的ベネフィット要素が満たされる

・5年間の保証書発行

・大手メーカーの協賛により新商品や使用目的の明確なアドバイスが可能である

・室内を含めた提案ができる

 

(2)競合Ⓐ社

立地・流通(PLACE)

・広大な敷地を持ち静かな住宅地に存在する

価格(PRICE)

・受注前の打合せと、見積を提出した後に契約成立となるために安心である

・独自の戦略で価格競争に参加しない

宣伝(PROMOTION)

・ホームページの利用

・リピーターによる宣伝

製品(PRODUCT)

・大手メーカー協賛により新商品や使用目的の明確なアドバイスが可能である

・専門職の職人チームによる施工が可能なので情緒的ベネフィット要素が満たされている

 

(3)競合Ⓑ社

立地・流通(PLACE)

・国道から近いため車での便が良い

価格(PRICE)

・受注前の打合せと、見積を提出した後に契約成立となるために安心である

・比較的安価な商品を対象としている

宣伝(PROMOTION)

・ホームページの利用

製品(PRODUCT)

・大手メーカーの協賛により新商品や使用目的の明確なアドバイスが可能である

 

4P分析で気付いたのは、A社との間に自社の優位性が少ないという事です。しかし絶対的な違いが1つありました。地域密着型の情緒的ベネフィット要素が高い顧客に対し、独自の提案力と、質の高い施工技術に特化することは必要です。そこまではA社と同質の提供です。しかし、室内リフォーム工事はどの競合にも真似ができる事ではありません。これがまさに戦わない戦略であり、自社のバリュー・プロポジションだと思いました。

 

 

4、問題点

これまでのフレームワークを使った当社の現状分析を踏まえたうえで、売上高の安定という観点から問題点を次のようにまとめました。

(1)BtoCの受注を増やしたいが、天候や職人の体調に左右されやすく受注数が変動する

(2)BtoCの受注を増やしたいが、急な受注が多く売上予測が立てづらい

(3)競合Aとの差別化があまりない

 

 

5、解決策

4で示した問題点を解決するために、以下に解決策と実現する期日を示しました。

(1)エクステリア工事と室内リフォームを組み合わせた提案を、顧客に提供し、より多くの顧客に周知させるため、チラシ、SNSによる配信をします。駅や商業施設に近い貸会議室で、自社の社員とメーカーの営業で、3か月毎に「お庭のお困り事相談会」を実施して新規の顧客獲得に注力します。これは8月より開始します。既存顧客へは顧客管理台帳を半年以内に見直し、アフターフォローもかねて室内リフォームの提案をDM、SNSでします。この作業はパート社員と図面作成社員の2名で行います。

(2)新築を建設中および設計中の顧客には、飛行機のチケットと同様に、早割特典などのサービスを提供します。1年以内に全社員で取り組みます。さらに顧客管理のデータベースを強化して、エクステリアの完工後も○○な付加価値を付け登録を有料化してメンバーシップ制を取り入れます。このようにロイヤリティを高めることでリピーターを増加させ、(1)の宣伝に繋げます。これは全社員で1年以内に始めます。

(3)当社の最大の強みである(1)の商品力だけではなく、業務の標準化、効率化も徹底することで、利益率を向上させます。具体的には次のA~Cのとおりで6月より開始します。

A.5S委員を設けて、在庫管理を徹底し、無駄をなくすことで資材置き場の整理整頓を定着させます。

B. 1つの現場ごとにフローチャートを作成して、工程管理とスケジュールを可視化することで、材料費、外注費を削減します

C.社員研修を習慣化し、スキルアップを図り、外注職人は動画による定期的な勉強会で生産性や健康管理の意識も向上させます。

 

 

5、まとめ

売上を安定させるためには、多方向からの戦略とアイデアが必要です。それが自社の経営戦略になると思います。私は経理部門のため、営業に関する実務的な意見は、社長や社員から、たくさん却下されてきました。私も意見を押し通す勇気がなかったのです。今後はスクールでの学びを活かし、意見を述べ、大いに自社の発展に貢献したいと思います。近い将来、事業承継の時が訪れます。その時に慌てないように、売上げを安定させることで、確実に利益を残せる会社にしていきます。それが企業にも従業員にも重要な事だと思いました。自社の従業員に、ミッションの社員でよかったと、心から思ってもらえる会社作りを目指したいと思います。

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