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修了生論文

自社の業務改善への取り組みについて

東京校 (T-college) アドヴァンス 大内 純子常陽通商株式会社 代表取締役社長)

1.動機

 

元々、ビル管理業で出発した当社だが、私が事業継承をした後に、ポスト投函型フリーペーパー発行業へ業態転換し14年目を迎える。しかし、フリーペーパー業界は、2017年の市場規模は2136億円(同年94.2%)と昨年より約6%下がっている。今後も減少傾向か継続しダウントレンドの市場であることは間違いない。よって、フリーペーパーのみの事業展開では、受注単価の下落、受注件数の減少が加速し業績不振が予測される。そこで、アンゾフの成長マトリクスに基づいて既存市場に新サービスを投入すべく、当社も新サービスを着手することにした。業務拡張準備のため2人の中途採用をしたが、3ヶ月の研修期間でどちらも退職した。退職理由は、長時間労働で採用者を不安にさせてしまったことが考えられる。

また、当社スタッフは全員勤務年数6年以上であり仕事の仕方が、その人にしか分からない状態、つまり属人的になっていることも問題であると考えられる。スタッフ全員が業務過多のため忙しく新人が相談しにくい育成環境と、覚えることが多い業務内容も要因であるかもしれない。

そこで再度、全体の業務を見直し、属人的な業務の標準化を図りマニュアル化を進めていきたい。そうすることで、新人にも指導しやすく覚えられるようになる。さらに、当社は女性が多い職場なので多様な働き方の導入もしていきたい。無駄な作業の切り捨て、自動化、アウトソーシングやパート採用でもできる業務が何かを細かく分類し、労働時間の短縮、仕事の効率化、生産性の向上ができたらと考え業務改善を取り組むことにした。

 

 

2. 企業概要・現状

 

社名      常陽通商株式会社

事業内容    広告代理業(フリーペーパー発行)・不動産賃貸業

設立      昭和52年

事務所所在地  茨城県土浦市桜町1−6−13 常陽通商土浦駅前ビル4階

代表取締役   大内純子

従業員数    役員2名(母・妹) 社員6名

 

当社で発行するポスト投函型フリーペーパー「月刊Plaza県南版」は毎月105,000部で茨城県つくば市の全世帯約7割に配布されている。フリーペーパー業界の収益面での課題は長時間労働にも関係してくると考えられる。

なぜなら広告代金は単発での計上方式であり、広告掲載期間は単発1ヶ月から最長でも1年契約だからだ。年間目標予算に対して進捗率が見えにくく、広告は景気に大きく左右されため非常に不安定である。毎月、季節や時流に合わせてつくるための企画もあり、その度にクライアントを開拓しなければならない。

当社の仕事は、地域のお店や企業との信頼関係構築がとても大切である。私たち一人一人がクライアント先の広報担当の役割を本気で担う気持ちで、クライアントと一緒になって集客するための広告を真剣に考えて作る。これまで、クライアント毎の各担当者が広告企画営業・編集を一貫して行う営業スタイルでやってきた。営業一人あたりの月平均クライアント数は約20件である。月刊誌のため毎月1ヶ月という限られた期間で企画営業から制作まで行い、締め切りに追われる。特に締め切り1週間前の制作期間は、原稿の打ち合わせや写真撮影と色々重なり長時間労働となる。さらに、競合も当社のマーケットである茨城県つくば市に進出をしてきた。

読者に飽きられないために、そしてライバル誌との差別化をするためにも毎月の企画に悩み、さらに、締め切りに追われている。

今後、時間とともに間違いなく社内は疲弊していくと考えられる。働き方改革という言葉が社会的な関心を集めている昨今、業界がこのような体質だから長時間労働になるという言い訳は通用しない。大切な社員のためにも長時間労働の見直しは急務である。

 

【当社発行フリーペーパー「月刊Plaza県南版」の1ヶ月の流れ】

 

【スタッフの人数・勤務年数・業務内容】

 

 

3.問い

 

「月刊Plaza県南版」を制作するまでの1ヶ月間に行う業務の全てを可視化し工数管理することで、アウトソーシングできるもの、パートへ任せられる仕事を明確にしたい。さらに、社員の業務量を減らし、労働時間の短縮、仕事の効率化、生産性の向上ができるかを検証したい。

 

 

4.業務改善への取り組み手段

 

下記の流れで「月刊Plaza県南版」を制作するまでの1ヶ月間に行う業務を再度、見直すことにする。

 

①全業務を抽出し、業務構造・業務目安時間を把握する。

②アウトソーシング、パートへ任せられる業務を絞り込む。

③マニュアル作り、業務フローを作成する。動画を取り入れる。

④すぐできる業務改善を実装する。

 

 

5.自社の業務改善への取り組みの結果

 

①全業務を抽出し、業務構造・業務目安時間を把握する。

全業務を抽出し、業務の内容、周期、回数、時間を洗い出し下記のような表を作成した。

 

 

役割内訳 業務数 時間
A 企画営業・編集(5名+大内) 27 146時間以上
B 制作(3名) 5 90時間
C 経理(1名+大内) 26 40時間
D 属人的業務(6名) 65 234時間
業務数合計 123 約510時間

(図1 全業務抽出工数測定表)

 

上記(図1 全業務抽出工数測定表)で全業務数は123項目あった。さらに属人的業務数(図1 全業務抽出工数測定表D部分)が65項目あった。誰にどのくらい時間がかかるかを測定する。

 

役割内訳 業務数 時間
企画営業・編集 中村 4 4時間
企画営業・編集 泰山 18 28時間
企画営業・編集 羽成 7 3時間
企画営業・編集 野原 6 9時間
制作 三津井 10 20時間
制作兼経理 安部 13 116時間
複数人で行う業務 7 54時間
業務数合計 65 234時間

(図2 属人的業務工数測定表)

②アウトソーシング、パートへ任せられる業務を絞り込む。

上記①内で示した(図2 属人的業務工数測定表)で分かった属人的な業務数65項目234時間を経験年数が少なくてもできる業務に分類する。

(図3 属人的業務分類表)

 

属人化の業務をさらにC部分(経験年数不要で収益に直結する業務)とD部分(経験年数不要で収益に直結しないが大切な業務)に仕分けする。

 

役割内訳 業務数 時間 C業務 時間 D業務 時間
企画営業 中村 4 4時間 なし 0 なし 0
企画営業 泰山 18 28時間 3 14.5時間 2 0.5時間
企画営業 羽成 7 3時間 なし 0 1 0.5時間
企画営業 野原 6 9時間 なし 0 1 4時間
制作 三津井 10 20時間 なし 0 2 4時間
制作兼経理 安部 13 116時間 なし 0 5 15時間
複数人で行う業務 7 54時間 1 5.5時間 2 27.5時間
65 234時間 4 20時間 13 51.5時間

(図4 属人的業務C業務・D業務測定表)

 

③マニュアル作り、業務フローを作成する。動画を取り入れる。上記②で示したD部分(経験年数不要で収益に直結しないが大切な業務)は在宅でもできるようにマニュアル動画を作成する。

 

④すぐできる業務改善を実装する。
すぐできた業務改善は以下の通りである。

  • 上記②B部分(経験年数必要で収益に直結しないが大切な業務)は、原稿を印刷所に送付してから月刊誌が刷りあがるまでの2日間で行うことにした。この2日間は、スタッフ全員を内勤日とし、定時退社できるようにそれぞれが固定スケジュールを作成した。
  • 上記②D部分(経験年数不要で収益に直結しないが大切な業務)内の一つを業務委託した。社員5名で30分かかっていた業務を1,450円で委託できた。
  • 経験と感覚で業務を見積もっていたが、業務時間を計測し検証することで仕事のスケジュールが組みやすくなった。締め切り週以外の水曜日は定時退社日とした。
  • 可視化されたルーチン業務を月間スケジュールに落とし込み、さらに「見せる化」しスタッフ全員が見える場所に掲示した。

 

 

6.自社の業務改善への取り組みに対しての考察

 

業務の工数を測定することで、「月刊Plaza県南版」を制作するまでの1ヶ月間の業務を全て可視化することができた。経験と感覚で業務を見積もっていたが、実際に業務時間を計測し検証することでスタッフ全員が仕事への取り組む姿勢が変わった。時間を意識しもっと効率よくできないかと考えるようになった。属人化していた業務は、担当者任せになっていたが、業務をしながらマニュアル作成を同時進行ですすめていき、新入社員、パートに任せることができる業務も明確にすることができた。ルーチン業務は、可視化からさらに「見せる化」することにより管理がしやすくなった。また、いつやるかを決めたことにより、気分や裁量で業務をすることがなくなった。結果、定時に帰れる日を増やすことができた。

動機のところでも述べたが新サービスに着手するため、スタッフの業務がさらに増える予定だ。そこで属人化対策、労働時間の短縮、即効性など総合的に考え対応策としてパートを採用することにした。早速、5月から週3日10時から16時まで(1時間昼休憩)1日5時間勤務のパートに業務を任せる予定だ。時給850円で月給51,000円(60時間)で属人的な業務の問題は解決する。引き続き子育て中のママさん採用も積極的に行い多様な働き方ができる会社にしていきたい。

 

 

7.今後の対応、改善点と監査方法

 

①今回、業務の可視化をしたが、まだ全てのマニュアル作成はできていない。パートにまかせる業務は教えながらマニュアルを作成する。

②ルーチン業務は可視化しスケジュールに落とし込み、さらに「見せる化」し掲示した。毎月、検証していく。

③業務構造を検証していくと部分的な業務もあったが、グルーピングをすることで効率よくできる業務になることも見えたので、全体工数をもっと減らせるように改善する。社内のスタッフで業務改善チームをつくったので毎月、業務構造を検証していく。

④企画営業、広告原稿案制作・編集の部分を採算に合う形で、アウトソーシングできるか検証したい。退職したスタッフで結婚して宮城に住んでいる者が在宅で仕事をできるということなので5月までに、業務フローをつくり検証していく。

⑤属人的な部分の仕事を⑴正社員追加⑵契約社員追加⑶パート追加⑷アウトソーシング⑸自動化のどれができるか見極め労働時間削減できるようにする。そのためには、管理会計を5月までに行い採算が合うのかの検証をする。

⑥スタッフ安部が制作と経理を兼務していたが、経理はクラウド会計を取り入れ簡素化したいと考えている。担当者は勤務年数9年目で当社業務を全部理解しているので制作兼企画営業として企画営業のフォローをし、業績に関わる業務へ移行したい。

 

 

8.おわりに

 

今回、業務改善に取り組むことで、まずは労働時間の短縮へとようやく一歩を踏み出せた。また、改善のためにはそもそもの業務プロセスを見直さなければならないことにも気づいた。業務改善を進めることは様々なことに派生していくため大変奥が深いと感じる。ようやく全体の業務内容や工数を知ることができたので、これを機にもっと細かく掘り下げていき、更なる改善を進めていきたい。

このビジネススクールで学び2年になるが通い続ける理由は、学びながらすぐに自社に落とし込み、課題解決ができる有り難い場だからだ。また、会社を経営するという責任の重さでとてもやるせないときが正直あるが、校長や学ぶ仲間と会うと前向きになれる。仕事が終わってからスクールの課題に取り組み、追い込まれることも多いが、知らないことすら知らない無知な自分と向き合い、学べば学ぶほどやらなければならないことや、できていないことに気づかされる。私のような怠け者は、常に前回の発表からの進展を聞いてくれる存在がいることは大変心強い。知識、経験豊富な校長をはじめ、一緒に学ぶ素晴らしい仲間にアドバイスや相談ができることも醍醐味である。貪欲に学んだことを自社に活かし、学び続けながら実装することで社員が誇れる会社にしていきたい。

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