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修了生論文

F&Mビジネススクールでの成果について

東京校 (T-college) アドヴァンス 石井 由行株式会社グランベリーツー 代表取締役社長)

1.論文の目的

 

F&Mビジネススクールの一年間で知り得た知識や経験を自社に実行し、具体的にどのような成果が出たかを私自身の変化と共に分析する。

 

 

2.「学ぶ」に至ったきっかけ

 

私は中古車販売業を営んでいるが、1992年の創業から数年は「中古車販売」のみだったのを、自分なりには「会計、経営、マーケティング」にある程度の知識を増やし、「国内自動車販売」「車検・整備」から「中古車輸出」と多角化経営に移行していたつもりだった。

ところが10年ほど前の2008年、私自身に衝撃的なことが起こった。

当時、フォークリフトの輸出を始めていた私は、その業務拡大のためジェトロに支援申請をしたところ、3名の人材が送り込まれてきた。彼らはそれぞれ「伊藤忠商事」「豊田通商」「日立建機」のOBで、年令は全員60代後半から70代。まさに日本企業が海外へと進出してゆく基盤を築き上げた世代である。

その3名とは、2007年の実績がロシア最大のフォークリフト販売台数(年間8,000台)だった会社への売り込みをしたわけだが、その仕事に対する視点と考え方、その進め方と早さを見て、私は自分の知識と考え方の浅さに愕然とした。その時、痛烈に感じたことが「これは彼らの職歴や年齢による経験だけではない」「自分はもっともっと勉強し、知識を増やさない限り、経営者として今後行き詰る」という危機感だった。

それからは、機会を見つけては単発の講習等には出かけていたが、2016年8月「F&Mビジネススクール」の案内FAXに、「上場企業役員が講師」という文言を見つけ、「一度ここで、じっくりと一から学んでみよう!」と思い、入学に至ったわけである。

もちろん入学までには、スクールに掛ける時間や費用を考えたら、「その間、仕事をした方が稼げるのではないか」という思いもあったが「まずは勉強してみよう!」という思いが勝ったのである。

 

 

3.気づきと意識改革へ

 

2016年9月からスクールが始まり、2回目の授業で学んだ「統計」では、今までの知識がまったく足りていなかったことを実感することになる。

それは「車検料金の分析方法」である。2015年の当社車検台数は652台、平均単価は37,636円であった。全国業界平均単価は48,971円(日整連:28年度版自動車整備白書)となっており、当社とは11,335円の差があったが、私はそれまで「平均値」のみの比較をしながら「確かに差はあるが、この安値で客足が伸びているからしかたない」と考えるだけで終わっていた。

しかし「中央値」「ヒストグラム」と学び、分析してみると、全体の49%が30,000円以下だったことが判明。仮に車検最低価格を30,000円とすれば平均単価は41,636円となり4,000円単価アップとすることができる。このくらいのアップ率なら実現可能だった。

私はこのことから、知識を持って見方を変えることで解決方法が見えてくることを学んだ。そして、数字は視覚化することでより詳細に分析できると気づいた。

さらに、視点である。私は、車検の「全国業界平均」に対して、営業車やトラックなどすべての車が入っているから、乗用車メインの当社より高くなるのだ、と決めつけていた。つまり、自社の詳細な分析をする前に業界内の知識を持ってきて自分の思考を停止していた。それは私自身が業界の経験も長く、「自動車新聞」「オークション関係者」「取引ディーラー」等からの情報もよくチェックしているという自負で自分側、業界側から見た要素だけで判断していたからだ。「全方位の要素から考える」、特に「消費者視点から考える」という視点が欠落していたのだ。

私は、2回目の授業で早々に、当社においては今後、私を先頭に全社員の思考回路を「素人考え、玄人実行」に意識改革していかなければならないと実感させられたのであった。

 

 

 

 

4.自社の変化と成果

 

スクールの「学び」を活かし当社の業務にて具体的に実行した結果、私自身と従業員にどのような変化が起こり、成果につながったかを主に5つの視点で説明していく。

 

①会計

「会計」を過去から見直し、しっかり理解できたことが一番の成果であり、新たなスタートに立てた最大の成果であった。

今まで私は、会社の「損益計算書」しか見ていなかった。「いくら儲かったか?」にしか興味がなかったのである。「貸借対照表」に至っては「刺身のツマ」くらいにしか思っていなかった。もちろんセットであることは知っていたが、興味を持って見たこともなかった。

しかし、今考えるとそれは、貸借対照表の正確な見方がわからず、その結果常に、運転資金に対するわからない不安があった。「利益が出ているのだから、金が無くなるはずがない」という根性論的な考えだけでいた。貸借対照表の「流動比率」の見かたも知らずに、単に「売れているが、未収金が多いことで現金が不足している」と思い込んでいたのである。それで24年間続けてこられた自分を褒めたいぐらいである。

私は、過去12年分の貸借対照表をグラフ化し、どのように変化してきたのかを詳しく分析ことから始めた。すると、そこから「どこがまずいのか」「これから何をすれば良いのか」が見えてきた。私は、そこから新たに戦略を立てることにしたのである。

まず、銀行からの借り入れが「証紙貸付」で月々の返済が多く、それが現金を不足させる一番の原因であることに気づいた。私は改めて、当社の現状の分析、今後の事業計画書を作成し、銀行との交渉に入った。その結果、プロパーでの「手形貸付」に切り替え、キャッシュフローが改善でき、月々の返済を100万円減らすことができたのである。

このことで私は、10年後の純資産額の目標を定め、それを達成するための「理念、ビジョン、戦略」の組み立てに入れたのである。

 

②会社理念

スクールでは、いままで「戦略」だと思っていたすべては「戦術」であったことにも気づかされた。軸がないまま、自分の思いつきで始める「戦術」に右往左往していたのである。ましてや「理念」などには、たいした重きも置いていなかった。例えばWEB作成時の「会社理念」の項目に「良い言葉がないかな?」とインターネットを検索したこともあった。つまり、「理念、ビジョン、戦略」などという考え方はしたことがなかったのである。ここでも、この考え方で24年間やってこれた自分を褒めたいくらいだ。

「理念、ビジョン、戦略」を繰り返し学習していく中で、私は、私自身の言葉でそれらを社員たちに伝えられるようになってきた。

現在は「お客様に、車を通して快適な生活をご提供する」を会社理念とし、社員たちには「車のことなら何でも相談できて安心だと信頼される店」を目指すよう日々繰り返し伝えている。そして「判断に迷う時は理念に照らして判断をする」ということも徹底してから約3か月経つが、彼らの接客時の対応を見ているとその姿勢は徐々に浸透し、接客対応に統一感がでてきたと感じられる。

 

③リーダーシップ

「リーダーシップ」、この言葉も理解しているつもりであった。私のイメージでは「どんどん新たな指示を出す」と思っていたのである。

授業中に<自動車会社で新規にレンタカー事業を始めるに当たり、一番信頼を置いている社員で、20年間マジメに整備一筋でやってきたベテラン社員にゆだねるにはどのような注意をはらうべきか?>という例題があったが、私の経験でも過去に同じようなことがあった。その際私は「職歴が長いからわかるだろう」とだけ決めつけて指示をしていたが、今であれば、P・ハーシィの唱えた状況対応型リーダーシップ「SL理論」の図を頭の中にイメージしながら、丁寧に説明できる。

「リーダーシップとマネージメント」に限らず、今までの私はビジネスに係わる言葉を大雑把に想像していただけであったことに気づいたのである。そして、これまで「どれほど伝わっていなかったのか」を反省し、「伝えるためにはどうようにするべきか?」を徹底的に見直すことを始めたのである。

 

④可視化

社員全員が「一目でわかる」ことを強く意識して資料等の作成をしている。具体例では会議資料等でパワーポイントを使う場合はページ数を増やして、説明の工程順に図式が完成していくようにしている。

 

 

甘やかし過ぎとの考え方もあるとは思うが、全社員の理解度をそろえるためには徹底して行うことにしている。社内会議は事前に資料を配布して、時間のスケジュールも予定通り管理している。アイデアを求める場などではゲーム性を取り入れるようにし、採用者には「一週間弁当代会社持ち」。これで以前より意見も出やすくなった。さらにプロジェクターを購入し、全員が説明に集中できるようにもした。

こうしたことをひとつひとつ改善していると、今までの私はいかにリーダー側視線でしか見えていなかったかを痛感する。スクールのグループ発表の「フォロワー経験」を参考に会議スタイルを変えられたのだ。

また、2016年12月に導入した「車検整備ソフト、整備機器」の取扱い方法は直接責任者が口頭で説明するのではなく、まず責任者がアイフォンで動画を録り、「ユーチューブ」にアップしたものを各自が見れるようにした。この方法にすることで、責任者も、より伝えるために工夫をするようになったこと、説明を受ける側も何度でも同じ内容で確認できるので業務の正確さが増した。以前は、一つの新たな事柄を共有するのに、個々の理解度の違いよる間違い、操作忘れによる質問などが起こっていたが、現状のやり方にしてからは、正確性も増したことはもちろん、同じような質問の数が減ったことで、業務に集中する時間が増えている。

社内会議では売上の話はやめ、日々の集計を全員で共有できるグラフを作り、一日一日で全員が徐々に毎日積み上げていくことを習慣にする方法に切り替えた結果、昨年度比売上高で13.25%増、営業総利益12.08%増となっている。その他のこともできる限り「システム図」「フロー図」にすること意識している。

 

⑤サンクコスト

当社は、3年間の期間をかけて資格取得、工場設備等を準備し、2016年5月に「自動車指定整備工場」(以下:指定工場)の資格を取得した。自動車整備工場には「認証工場」と「指定工場」の2種類があるが、全国の約92,000件のうち約30,000件(日整連:全国整備事業者数)が指定工場、通称「民間車検場」と呼ばれている。

認証工場の場合、車検の車両は一台ごと必ず陸運局まで持ち込んで検査を受けなければならないが、指定工場は車両を陸運局まで持ち込まず、その車両の書類だけを陸運局に持っていけばいい。したがって、一度に10台でも100台でも手続きができるので効率的ある。

ただし当然、指定工場には「保安基準適合」「書類と車両の同一性確認」を陸運局に代わって検査する業務が求められる。「保安基準適合」とは安全性が確保されているかの検査である。「同一性確認」とは車両と書類の検査である。例えば「ナンバープレート」と車検証の記載が一致しているか? 車両の重量に対してブレーキの力が満たされているか? というような確認作業であるが、車両の製造年度ごとに規制値が違っていたり、記入項目が多いため、ここにミスが起こりやすい。陸運局の監査でも重点的に指摘される部分でもあるとの認識から、指定工場準備時には、そのための機械にばかりに投資をしてしまったのである。

しかし、2016年5月に指定工場の許可が取れてから実際の業務が始まると検査業務は非常に順調であった。にもかかわらず、営業面の業務(見積作成など)が遅いために、予定では一日2台から4台へと倍増するはずであった車検業務が、一日2台から増やすことができなかったのだ。

この時点で、指定工場関連全体の費用は約2000万円かかっており、そのうち、この検査業務機械には200万円かけていた。今までの私なら、ここまでかけてきた金額のみに注目し、営業業務に「何とかしろ」と指示を出すだけにとどまっていたかもしれない。ここで私の中に登場したのが、スクールで学んだ「サンクコスト」の考え方だ。

このままいけば、多大な機会損失の原因になること、受付や見積りに時間がかかることで顧客の不満が増えてしまう可能性があると考え、「やはり、新たに機械を入れ替えた方がいいのではないか?」との考えに至った。

ここで新たに、営業部分まで一括して行える検査業務機械にそっくり入れ替えをした。その費用に300万円を投入したが、その効果は抜群だった。その機械は、会計ソフトとも連動しており、「見積もり書」→「車検帳票」→「会計」を一度の入力ですべてが完了できる。課題だった事務業務も効率化がはかられた結果、車検業務は当初の目標であった一日4台を、余裕をもってこなせている。

 

 

 

5.まとめ

 

今回のスクールの最大の成果は、私の「知ってるつもり」や「曖昧」をすべてクリアーにしてくられたことである。

こうした論文にしても、これまでの私は文章にすることが苦手で、写真に対しても「書き示す」なんてことはほとんどしてこなかった。そんな私が、修了論文に書いた内容を利用して「小規模事業者持続化補助金」も獲得した。

問題の解消にしても「複雑性によるものか、不確実性によるものか」と考えてから「どのような過程で話すか」など、私自身に知識として選択肢があることで、考え方も変わり、説明のしかたも増えた。

社員たちに対する態度もかなり変わったと思う。説明する言葉の使い方、声のトーンでさえも敏感に感じて受け止めていることに気づき、それによって、彼らの動きにも大きな違いが出ることを学んでいる。また、これまでは、いくら「任せれば育つ」とは聞いても、任せるつもりには全くなれなかったがいまは、段階を踏んで成長をしてきた場面で任せればうまくいくのであろうという確信も出てきている。

彼らを、段階を踏んで成長させるためには、私自身も成長し続けなければならない。

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