お問い合わせ・資料請求

修了生論文

スクールでの学びをこれからどのように生かすか 独自戦略の可視化と今後への生かし方

東京校 (T-college) 石井 由行株式会社グランベリーツー 代表取締役社長)

1.研究動機

いま、この課題論文を書きながらつくづく思うのは、 このスクールに参加してよかったということだ。その理由は校長や仲間と出会うことができた、新しいことや専門知識を「知る」ことができたなどいくつもあるが、なかでも自分にとって最も価値があると感じているのは、これまでの自分になかった、もしくは無意識だった「視点」に気付くことができた、ということだ。
スクールで学びながら、私はよく、ここまでの20数年を思い起こしていた。自分が開店当時から、一応「店の戦略」と考えて行ってきた「車の販売方法」である。その方法は、ある時代だけのものもあり、繰り返し行っているものもある。ただ、これまで、その方法を自分の中で、言葉や専門知識で「可視化」したことはなかったように思う。
スクールで学ぶたびに「あのやり方は、実はここに根拠があったのか」「だったらもっと、こうすればよかった」と反省し、そのあと必ず「今の自分だったら、あの決断はもっとこうしたはずだ」「だったら、今の方法はこう変更しよう」などと、日々の経営のことを考えてきた。つまり、これまでの戦略含め、今の経営に、スクールで修得した新しい「視点」をあてることで、根拠のある、より効果的な戦略を考えたいのである。
そこで、今回はこの研究論文を利用して、これまでの自分の戦略のなかでも代表的なものを3件あげながら、改めてそのやりかたを分析し、今後の新しい経営戦略を生み出したいと考えている。

 

 

2.過去の戦略分析と評価

 

①「ここにしかない車」があれば売れる!

<状況>
当社創業は1992年。当初は中古車販売のみで、なかでも希少性のあるスポーツタイプを主力商品として扱っていた。一言でいえば、当時まだ若かった自分が興味ある車を仕入れて並べていただけだ。
当時はインターネットもなく、広告媒体は雑誌『カーセンサー』のみを利用していたが、「ここにしかない車」を並べることで、30キロ圏内が一般的であった時代に、約100キロ圏内まで集客できていた。しかも、仕入れを都内近郊より安い名古屋圏で行うことで、価格的にも他より安価で出せた。
さらに、例えば「相場より安いスカイライン」に「高いアルミホイール」が付き、「高いオーディオ」が付いている。顧客は、その条件をピンポイントで狙ってくるので、そこに競合はなかった。「ローンが通らないブラックな客」という競合ではない敵はあったが、年齢層は18才から30才までの男がほぼ100%。しかし、リピートはなかった。
<分析>
車の販売という性格上、商品である車の魅力の訴求は当たり前である。が、しかし、当時の自分は、本当にそこしか見ていなかった。つまり「自分の嗜好」に自信があり、間違いない商品、利幅のいい商品を仕入れることのみに集中していたのだ。したがって、その車が売れてしまったら「次を仕入れなければ!」、また売れたら、はい次!という繰り返ししかなかった。
また、顧客に対しては「その車が欲しくて回に来た人」という見方しかなかった。つまり、「顧客層」という考え方は皆無であった。リピーターがいないのも「そりゃ、ピンポイントで希望の車が無きゃ来ないでしょ」と解釈していた。その車が好きな顧客の周りにいるはずの潜在顧客を掘り起こそう、新たな「顧客層」を生み出そうなどという考えは無かったのだ。
この当時の「かなり嗜好が明解なターゲット層」は、実は今はほとんど存在しない。今更ながらにあの当時、例えば「購入時に比較検討した車は?」などというアンケートを取って集計していれば、かなりの強い相関関係を示す車がわかったのではないかと考える。
また、購入した顧客の周りには同じ嗜好の「顧客層」が間違いなくいたはずであろうから、こちらから提案営業をしていたら、当時の数倍の売上になっていたと考えられる。

 

②「人気の車」がたくさんあれば売れる!

<状況>
前述①の方法で5年くらいは会社を続ける事ができた。とはいえ、確かにピンポイントでは売れたが、人気の車「1台」に対して顧客が何人も来てしまい、無駄が多かった。
そこで考えたのが「人気の同一車種を揃えることで取り逃がしを防ぐ方法」である。
1997年からは2店舗に増やし、敷地が広く在庫置場が近い方の店には、ミニバンの日産セレナとラルゴだけを各50台、合計100台を揃え、もうひとつの店には、軽自動車だけを揃えた。
ミニバンの店の顧客は30代から60代のファミリー層。自分自身に家族ができたこともあり、その利便性も熟知していた。この方法は、売り逃すことなくよく売れた。3月の最需要期には顧客が並ぶほどよく売れた。フィリップ・コトラーの唱える「業界地位別の戦略」におけるニッチャーのミニリーダーにはなれた。
しかし、月により大きく販売台数が上下することと、模倣困難性が低く、近隣で、当社より資金力のある店に同じ形態をとられたことで、たちどころに販売数は激減した。
<分析>
この販売方法は、現在もその中身を変化させながら踏襲している。
当時は「車種」を決めていたが、現在はこの経験から軽自動車という「ジャンル」に特化する方法を継続し、販売数の平準化を心がけている。
詳しくは、後述「3.現在の戦略分析と評価」にて触れる。

 

③市場開拓すれば、もっと売れる!!

<状況>
2000年からは、インターネットを利用した市場開拓を考え始めた。インターネットが利用できるのであれば、なにも国内に限る必要はないということで、中古車輸出も開始。海外、とくにイギリスなど右ハンドルの国にスポーツタイプの需要があったので、国内、海外ともに、当初のようなスポーツタイプのラインナップにもどした。
年間扱い高が約1,000台となり、売上高も4~5億と安定してきたこともあり、新たな市場開拓として2008年3月から「ロシア向け建設機械輸出」の準備を開始する。
しかし、リーマンショックにて国内の売上が激減。2009年は売上高1.7億まで落ち込んだ。準備が整ったロシア向け建設機械輸出で2010年に売上高2.7億まで戻したが、その後、為替変動の影響で輸出が不安定となり、結果、2012年に国内販売のみとした。
<分析>
落ち込んだ売上を戻そうとは考えたが、当時は「損益計算書」と「利益」しかみていなかった。つまり「貸借対照表」をまったく理解していなかったのだ。
いま、改めて「貸借対照表」を見ると、2008年純資産が減りはじめている。

その時点で2009年のある程度の売上予測はできたはずなので、いまなら「このまま行くと、もっと純資産が減る」ということが予想できる。しかし、当時は手元の資金があったので、売れれば何とかなる、としか考えていなかった。
つまり、会計の仕組みを、まったく理解していなかったのだ。結果、資金繰りがきつくなり輸出をやめる決断をしている。多角化への分析、企業ドメイン設定という過程を行わずに、儲かりそうだからというだけで拡大していれば、いずれ同じようなことは起こったと予想される。

 

 

3.現在の戦略分析と評価

 

①業界情勢把握

世間でいわれている通り、若者の車離れは甚だしい。 当社があるのは「千葉県」である。開店当初からの記憶としては、高校を卒業した男子ともなれば「まずは車っしょ!」と、勉強はしなくても免許だけは必死にとる若者が、普段は口もきかない保護者を伴い車を買いに来たものであった。毎年1~3月の新卒購入需要の売上は大きかった。それが、2005年ごろからその光景が消えた。
同じ現象はもちろん各社ディーラーにもあり、新車も売れ行き不振つづきだった。スポーツタイプなどは2000年ごろから、各メーカーともに新車販売を中止していたほどだ。新車が売れないということは、結果として良い中古車が生まれない、中古車販売会社は、売れる中古車を仕入れられないということだ。いわゆる負のスパイラルである。
当社が、その市場の変化に具体的に対応し始めたのは2007年くらいからであった。

 

②特化商品の変更

前述したとおり、それまで売れ筋だった車の減少で相場が高くなり、利益が取れなくなってきた。そこで考えたのが「コンパクト」「効率」=「軽自動車」への、再びの路線変更である。
それまでのように、買えるか買えないかわからないピンポイントの車を、オークション会場で長時間待つというようなことはやらない。さらには、一人を獲得するためにかかる広告費も大きい。そこで、過去にも経験のある「軽自動車というジャンル」を商品に、コンパクトで効率のいい販売をしてみようと策を得た。

<「軽自動車」への路線変更の理由>
1. 登録方法からして普通車と異なる。住民票だけで名義変更ができるので、売れてから納車までの時間が早い
2. 顧客の車種へのこだわりが低い。例えば「ダイハツのタントが欲しい」と来店しても「ホンダのN-BOXでもいい」となりやすい。また、同じ機能の車であれば、ボディの色が好みだという理由だけで車種が変わる
3. このような「車種にはこだわらない顧客」は、でも「軽自動車というジャンル」にはこだわる。したがって、多種多様、たくさんの軽が並んでいれば、何かしらは買っていく。つまり、展示場のスペースの回転は早まる
4. この顧客層は、やはり軽自動車に代替することが多いので、社内流通の仕組みが組みやすい。つまり、一台軽自動車を売れば、一台仕入れができるということである
5. この顧客層をつかんでいる限り、代替え時の下取りによる仕入れが期待できる

 

③エリアの選択と顧客の特性

この「軽自動車というジャンル」の利点を最大限に生かすためにはライフ・タイム・バリューの創造が必要であった。
そのためにも「南流山」という立地は最適であった。この立地を取得した当時は、つくばエクスプレスが開通しており、人口増加がはじまっていた。当初は、街道沿いのガソリンスタンドの居抜きだったが、2009年まさにリーマンショックの煽りを受けて、主要道路角地300坪の店舗が閉店。すかさず、移転を決めた。もちろん、当社も同じくリーマンの影響はあったが、その時だからこそ他が手をこまねいた状態で獲得できたと考えている。
「軽自動車というジャンル」を派手に打ち出すためには、広大な店舗、豊富な在庫自体が「広告」であると考えた。これは、広告費用をかけない集客のひとつである。
現在も、南流山地区の再開発は着々と進んでいる。店舗徒歩5分には大型ショッピングセンターもでき、また周辺には次々と大型マンションが建設されていく。スターバックスコーヒーまでもが開店した。
このような2009年の思い切った移転の選択は、結果的にはよかったと考えている。また、今後ますます可能性のある場所であると考えられる。
また、「軽自動車というジャンル」に特化したここ4年間の「購入者」について、いくつかのデータをまとめてみた。

 

<2011年~2015年データからの読み取り>
1. 販売台数1342台
2. 購入者総数744人
3. 年齢層は男女とも40代が中心ながらも、満遍なく分布
4. 顧客層を下記に分類した比率
・トライアル層(初めての顧客):23%
・リピート層(車のことはすべて当社という常連顧客):68%
・ロイヤリティ層(顧客の紹介もしてくれる協力顧客):9%
5.顧客層を販売エリアとリンクさせると、「リピート層」を中心とした顧客が、5キロ圏内にしっかりと根付いている様子がみれた

以上の結果から、目指しているライフ・タイム・バリュー創造の一端が見え、一定の効果が確認できたと考えている。

 

 

4.ここまでの反省

ここ数年の業界情勢をつかみつつ、自分なりに幾つかの戦略を考えてきたつもりであった。ただ、こうして思い出し、言葉にして自分で読んでみると、私はつくづく視野が狭かったなと感じている。すべての戦略において立案はしてきたが、いま振り返ると「もっと売らなきゃな~」ぐらいの気持ちであることに気づいた。また、従業員に対しては、自分がこれだけ考えているのだから売れるだろう、あとは営業の責任だと考えていた。つまり自分は、顧客、スタッフなどピープルに対する考えや分析が欠落していたのだ。顧客の分析などやった覚えがない。その言い訳としてよく「ずっと車業界にいるからわからない」と口癖のようにいってきたが、今回、このスクールに参加して、まず事実を正確に捉え、考え、分析して答えをだせるようにならなければならないことに気づいた。
また、授業の中で校長が話した「とにかく全力でやる」ということを忘れかけていた。過去を思い起こすと、確かに何もわからないまま感覚だけで方法を考えてはいたが、それでもある程度の成果をみたのは、成功させるために、ただただ前をみて必死にやっていたからだと思う。従業員の教育の前に、まず自分が「とにかく全力でやる」という姿勢にもどさなければ、どれだけ方法やシステムを構築したところで、大した成果は上がらないと、改めて思った。

 

 

5.今後の取り組みと監査方法

 

◆取り組み1:効率化の推進

まずは、目標に掲げている「コンパクトに効率よく動けているか」を確認してみることにした。
昨年11月、従業員全員の動きを一日中観察してみた(防犯カメラがあるのでほとんど把握できる)。また、会話もなるべく記録した。どのように動き、伝達しているか、顧客対応はどうかなど、なるべく詳細に記録し、当日の夜に全員で検証してみた。
一番目立ったのは、伝達における動きにかなりの無駄があるということ。事務所と工場との行き来に、とくに無駄が多いと気づいた。この伝達での無駄な動きの原因は、私が明確な指示系統を決めていないことにあった。「細かいことは各自判断してくれるだろう」という勝手な思い込みがあり、自分の中にある「効率よく動く」の考え方を論理的に説明できていなかった。
そこで、伊丹敬之、加護野忠男の唱えた「組織構造を決める5つの要素」に基づきルールを明確にする必要があると判断した。早速、伝達系統の組織図、受付表、作業指示書の運用ルールのチャート図を作り、視覚化した。そして、P・ハーシィの唱えた状況対応型リーダーシップ「SL理論」の図を頭の中にイメージしながら、ひとりひとりに丁寧に説明した。

 

<改善点>
① 車検の受付方法
今までは「車検の受付は整備士が工場で行う」としていたが、今年1月からは「車検の受付は、まずは営業が顧客の意思を確認し、受付表に明記したうえで工場に回す」とルール化した。
これには、「車検の見積もり時は、代替えの最大のチャンスである」という「機会」の認識を改めて共有することからはじめた。そのためにも、当初、営業が懸念を示した車検に関する技術的なチェック項目等は、営業と顧客がわかりやすいようシートに工夫を持たせた。そうした入口を通しながら、営業が代替え希望の有無、可能性を聞き出せるようにしたが、すでに数件の効果が出ている。今後のますますの効果が期待できる。
② インカム導入
年末年始の休み中に準備をし、1月の初日から使用している。数日間、その様子を観察しているが、無駄な動きがかなり減り、仕事量の多い日でも定時に終われるなど、従業員の「成功体験」としても実感され、その効果は絶大であると現段階では感じている。今後は、その効果をさらにアップさせるべくシステム構築にもつなげていこうと考えている。

 

◆取り組み2:目標達成力の強化

目標達成力が欠けていた。
中古車販売業界には、特有の考え方がある。例えば「少し高めでも欲しい人が現れるのを待つ」という考え方。「なにはともあれ、商品が無ければしょうがない、売り様がない」という考え方。これらの考え方は、目標を達成していく意識を弱める傾向にある。
改めて、この業界的な考え方を変えたいと思った。そこで当社では「目標達成のためにどうするのかを毎日考えることが仕事なんだ」という意識に変革していくことにした。

 

<改善>
①ファイブフォースモデルの書き出しからSOWT分析を全員で行ってみた
結果、「強み」は出やすいが「機会」は出にくかった。
具体例としては、前述の車検受付。最初は、営業は技術的な説明も苦手だし、業務も増えるということで難色を示した。SWOTの自社の「強み=車検での集客ができる」、これは営業にとっても自動的に「商談のチャンスが増える=機会」につながるというところに結びつけた結果、納得して車検の受付ができるようになった。
車検の料金も見直し、平日に入庫すると2,000円割引をするようにし、土、日は営業の負担を減らす工夫もした。タイミングよく2件続けて販売につながり、ここでも「成功体験」ができたこともよかった。
②「今日の成果報告」を表す棒グラフの掲示
意識を変えていくためには、継続性を持たなければ身につかないが、日常業務の中、毎日そのことだけに関わっているわけにもいかないので、単純棒グラフではあるが、「今日の成果報告」を全員がよく見える場所に掲示し、終礼にて記入していくことにした。単純ではあるが「今日は棒どう?」が意外な掛け声になって良い方向で継続している。まずはこれを定着させ、目標達成力をつけていきたいと考えている。

 

◆取り組み3:会計システムの効率化

会計における、現状の最大の問題はその処理の遅さである。2015年から売上データを会計ソフトとCSVファイルにてリンクさせ会計の合理化を図っているが、担当者は保険業務、受付業務と兼務のため日常の業務に追われ、半期で試算書を作るレベルである。
社内では20日締めとしているが、昨年までは利益が目標に達しない月には20日の締め切りを過ぎて入力しているのも妨げとなっている。今年から20日締めを厳守することと、売上データと会計ソフトのリンク項目を増やし、2017年4月からは翌月15日までに試算書が作れるよう準備中である。

 

◆監査手法

監査方法は現在二つとする。
①日常的には売上のグラフと受付表の管理を終礼時に週単位で担当し、本日の成果を発表する。簡単ではあるが、全員が確実に参加できることで忘れることがない。
②前月の試算書を月中の会議で発表できるようにすることである。そのためには20日に確実に当月の伝票を全員が提出するようにしなければならない。これにより事務処理のスピードは増すはずだと考える。

 

 

6.まとめ

独自戦略を続けてきた自分だが、これからは自分のバイアスは外し、冷静に事実を捉え、さまざまな「視点」から客観的に解釈をし、そのときの条件下で最適な選択をして行きたいと思う。戦略の成り立ちを「可視化」できるようになったことは、その成果が倍増すると確信している。

pagetop