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修了生論文

ドメインの再設定と組織創り

大阪校(O-college) 多田 宗弘株式会社多田文房堂 専務取締役)

1動機

 

①戦略

事務用品業界の価格競争は25年前に大手事務用品メーカーが通信販売を始めたことが引き金となり、それ以降毎年価格の競い合いが激しくなりました。また昨今ではスマートフォンが普及し、個人個人がICTのサービスを手軽に使える時代となりました。これにより、今後の事務用品業界の行く末は価格競争が更に厳しくなり、販売形態もICTに取って代わられる時代になるのではないかと感じています。このような中で、もう一つの柱であるオフィス家具の販売をより強化して業界内の競合、通信販売のサービスに負けない態勢を取るにはどうすれば良いかが課題です。

 

②組織

今年の4月に社長交代をする予定です。当社の弱みは会議で決まったルールを実行するが、持続できない傾向にあるということです。今後自分がリーダーとなり、どう部下を指導して組織を変えていくかが大きな課題です。

 

 

2企業概要

種別売上集計表 (単位:千円)
63期 64期 65期
文 房 具 ■■■ ■■■ ■■■
オフィス家具 ■■■ ■■■ ■■■
O A 機 器 ■■■ ■■■ ■■■
リサイクル家具 ■■■ ■■■ ■■■
合       計 ■■■ ■■■ ■■■

 

 

 

①戦略

財務分析をした結果、文房具の売上げは官公庁の年間契約を獲得しない限りほぼ横ばいです。民間企業の取引も人手不足が相まって、営業・配達とサービス不足に陥り、今後大きな売り上げを生み出す期待は持てないと考えます。

OA機器の売上げは、ほとんどがコピー機本体とパーチャー料です。長年競合と金額の叩き合いをして来た結果、コピー機本体を買い替えると保守共に安くなる傾向は顧客も認識するようになっています。そんな業界の為、安売りをすると売り上げは上がりますが肝心の収益が低くなる為、OA部門も収益性から見ると魅力的ではないと考えます。

オフィス家具に関しては企業・施設の新築状況、また事務所のリニューアルの獲得件数にもよりますが、法人のみをターゲットとした活動で年々売り上げを上げています。その中でも、リサイクル家具の販売に関しては事業を立ち上げてから7年で今の状態まで成長しました。リサイクル家具の宣伝はホームページのみで、専任も立てておらず問い合わせが入ると手の空いている営業が対応しています。そのような状態でも運営できているという事は、大々的に看板を作成し、店舗販売として専任のスタッフを常駐させたならば、売り上げは更に上がると考えます。

 

②組織

持続してルールを守れない背景にトップセールス型の経営が有ると考えています。現在は私の母が社長をしており、営業マンでもあります。毎年売上トップの業績(全体の1/4)で会社を引っ張っています。業界内では有名な営業マンです。その反面、経営が疎かとなり組織の事を充分にマネージメントできていないと感じます。また現在の中間管理職は私よりも年齢が上であり、トップダウンで社長の指示を受けています。私が社長になる事で部下の年齢が逆転する為、明確な目標を立てて指示を出さなければならないと感じます。

 

 

3問い

 

①戦略 【オフィス家具の展開は本当に出来るのか?】

・現在の販売方法は図面への落とし込みやカタログのみで提案し、カタログに書いてある機能を充分説明できていないまま、見た目と価格で購入されていると感じます。実際の商品を手に取って見て頂く機会が無い為、お客様にはデザインさえよければ安い商品でも良いと考える方が多くいると感じます。

・実際に競合である■■■の大阪ショールームへ買い手に成りすまし接客を受けてみたところ、商品価格の違いを展示商品で使い比べて機能と素材、なぜ製造されたかの経緯まで分かりやすく説明して貰いました。客側の立場としては、実際考えていた予算よりも自分の働き方に当てはまる備品なら、少し予算を足して希望の商品を購入しても構わないと感じました。

・実際の商品に触れてみたいと言う声は今までにも多数ありました。

事務椅子であればメーカーから1、2脚貸し出す事が可能です。しかし、そのような選定された商品ではなく、幅広いラインナップの中から実際素材に触れ、機能を実感した上で購入に至りたいと思うようです。

 

②組織 【オフィス家具の展開をした時、組織はついて来るか?】

・自社の弱みは克服できるのか?弱みを分析して改善点を分析します。

・組織をまとめるにはどうしたらよいかを考えます。

・組織力を高め、企業の価値を高めるにはどうしたら良いか分析します。

・オフィス家具を展開する為に、自分の考えをどう社員全員に浸透させるか考えます。

 

 

4章. 研究手段

 

【業界内の脅威】

・営業型の同業社が市内で15件(同規模の企業13件、中規模2件)

・オフィス家具の店舗販売では市内で3件、中古オフィス家具の店は2件、通販型が8社

・同じグレードの商品なのに、メーカーによって販売価格の差が大きい

・現金を回すことが目的の競合が度々価格破壊を引き起こす。

・一度競争に敗れると(家具が入ってしまうと)競合の担ぐメーカー色

一色となる為、追加発注など巻き返すことが困難になる。

・オフィス家具は製品の差別化が起こりにくい為、価格の叩き合いになる。

(業界内の成長スピードが遅い)

・高松市は新築案件などの大量購入案件が少ないので、発生すると競合が群がる。

・アスクル・カウネット・オフィスコムなどの大手通販がインターネットに販売価格を表示している為、同等商品はそれ以上の価格で販売することが難しい。

・オフィス家具の輸入品に関税がかからず価格破壊に。

 

【新規参入者】

・今後懸念されるのが工具・工場用品販売業者、自動車メーカーの参入。

・日用品大型店舗の参入

・オフィス家具レンタル・リース会社が販売へ参入

・同業種の中古オフィス家具販売参入

・2020年以降建築業界の案件減少による川下への参入。

・アマゾンの4月から始まるBtoBによる参入

・DIYブームによる個人でのオフィス家具製造

 

【売り手の交渉力】

・メーカーが配送費や鉄の高騰を理由に定価と仕切りを値上げする。

・コクヨの場合は市内で買い手が10社ほどいる為、集約体制が取られていない。

よって売り手の交渉力が強い。

・備品4大メーカー(コクヨ、オカムラ、イトーキ、内田洋行)は

安全性、開発力、提案力、環境への配慮があり交渉力が強いメーカーである。

・顧客の追加発注、修理などは独占である。

・メーカーが通販で直接販売(オフィスコム、カウネットなど)

・メーカーが異業種と取引開始(開拓できていない分野への参入)

(医療機器販売企業、メーカー系OA機器販売企業、建築関係企業など)

 

【買い手の交渉力】

・オフィス家具を購入できる業者が多いので買い手の競争力は高い。

・買い手にこだわりがなければどのメーカーも同じである。

(他社との差別化が分かりにくい)

・インターネットに全国の安い販売価格が表示されてある。

(買い手が購入価格に対して十分な情報を持っている。)

 

【代替品・サービス】

・大手通販業者が無償で見積・レイアウトサービスを提案する。

・レンタルオフィス・シェアオフィス・在宅勤務など

 

②組織 SWOT分析

【強み】
・高松市で商売をして94年続いている老舗企業である(知名度がある)
・若手社員が多い為、フットワークが軽い(緊急な対応が可能)
・社内のチームワークが良い
・活気があり、新しい企画に取り組む前向きな姿勢がある
・自己資本比率 56.7% 流動比率 238% と高い
・販売メインのメーカー(■■■)からの支援がある
・中古家具の引取り商品のHP掲載へのレスポンスが良い
・顧客、仕入れ業者の協力で備品引取りの情報が早く入る

 

【弱み】
・トップセールス型経営の為、社長の意思決定に依存している
・部門ごとにリーダーがいない為、忙しくなると組織が機能しない
・会議で決定した会社ルールが持続して守れない
・営業利益率1.8%と低い水準である(収益が低い)
・取扱メーカー、製品が多く商品知識が広く浅いので専門的知識がない
・業界の流行を把握できていない ・人手不足である
・メーカー提案に依存している為、独自の創造性がない
・マーケティング力がない(情報収集力が無い)
・来店型の接客ノウハウが無い
・会社が目立たない場所に有る為、集客しにくい
・会社の面積が狭く作業するにも手狭である
・在庫倉庫が市内南北に2箇所あり、常は無人の倉庫に事前にアポを取った上でお客様に来店して頂いている

 

【移転後の機会】
・立地を重視して移転する事により、人材募集の宣伝効果に期待できる
・移転先をショールーム兼中古家具販売の店舗へ
・備品買替の情報が早く入ってくる
・空間提案をする時、ショールームがある事で質の高い商談ができる
・SNSで業界の流行など情報を発信する
・実際の商品を見比べて頂き、製品の価格帯の差を説明することにより競争を避ける
・BtoBからBtoB、BtoCへ販売先を増やす
・オフィス家具のみを目当てに来店されたお客さんに文具、OAも営業できる

 

【脅威】
・社長との引継ぎがうまくいかず良い固定顧客を落としてしまう
・組織が機能せず退職者が増え、引継ぎが疎かになる
・人手不足で対応できない案件が発生する
・売上不振に陥り、家賃が重荷になる
・専門的知識、説明力不足は価格競争に巻き込まれる
・メーカーの提案に依存すると差別化が出来なくなる為、収益が下がる
・中古にクォリティを求めないと単なるリサイクルショップになる
・口コミ、悪い評判などによる風評被害

 

 

5章.研究結果

 

①戦略

競合(Competitor) ・カタログのコピー若しくは商品画像貼り付け提案

・簡単レイアウト作成(平面図に備品を落とし込む提案)

・実際の商品を確認できるのは椅子ぐらい

(メーカーショールムは近くても岡山)

・顧客の会社に何度か訪問して営業活動

・メーカーに修理依頼して修理

・発注して納品まで時間が掛かる

・廃棄代を頂いて備品を処分

・WEBにて簡単発注(大手通販)

顧客(Customer) ・良い商品を安く買いたい

・実際の商品を見て購入したい

・家具購入のアドバイスが欲しい

・新しい家具を入れる事により雰囲気を大切にしたい

・コミュニケーション・効率を図りたい

・仕事へのモチベーションを上げたい

・企業イメージを良くしたい

・安全に利用したい

・すぐ使用したい

・長持ちする商品が欲しい

・支払い条件を相談したい

・不要となった備品をどうにかしたい

自社(Company)
新品オフィス家具 リサイクルオフィス家具
・搬入設置・組立まで細かい指示に対応

・商品が送られてくる梱包の処分

・耐震・転倒防止への提案と施工

・他メーカー混在の3Dパース作成

・顧客の支払い条件に応じた相談可能

・納期が掛かる場合はリサイクル家具貸出

・家具に合う壁・天井・床の提案が可能

・「産業廃棄物収集運搬」資格取得により

廃棄のみの仕事も可能

・不要備品を買取り

・普通では高すぎて購入できない

高機能な備品を安価で販売

・在庫にあれば今すぐ使いたいを可能に

・大手の参入は瀬戸内海の送料が掛かる為、

海を渡る壁は高い。

・安定した供給のパイプがある

・自社で修理できる

・自社で椅子のクリーニング

・香川県下NO.1の品揃え

 

【自社のバリュープロポジョン】

・業界内で店舗を展開している同業社は、外回りの営業活動を行う競合に比べて意外と少ないと感じました。この結果により店舗を展開すると言う事は、個人客に備品を販売する業者としては寡占的であり、従来のターゲットである法人に対しても、展示している商品で説明が出来る数少ない会社だと言えます。それにより、ワークスタイルに合わせた提案と商品の機能を充分納得したうえで備品の販売ができると感じました。

・通信販売の競合に至っては、購入後のメンテナンスや既存備品の入れ替え時に生じる廃棄物の処理、故障時による相談など担当者の顔が見えないと言う不安を解消できると感じました。また、インターネットで検索した大阪にある中古オフィス家具店に聞き込みをしたところ、気に入った商品があってもいざ四国に運ぶとなると、送料が高くなり中古家具の価格が新品と変わらなくなるそうです。よって、本土からの中古参入も海と言う高い障壁があると言う事が分かりました。この結果により当社の経営は地元密着型で、お客様の困りごとに早く駆けつける事ができ、配送費等お客様にとっては無駄なコストを最小限に抑える事が可能となります。

 

②組織

財務分析の結果から当社の自己資本比率の高さは良い事であり、収益性の低さはダメな部分であると考えていました。SWOT分析の手法を用いて考えられることは、自己資本比率の高さと収益性の低さは、社長の意思決定が絶大であり、今まで必要な設備投資が出来ていない体制であったと感じています。チームワークが良く組織全体で稼ぐと言う事に関しては、今まで社員に大変な苦労を掛けていた事に気づきました。これからは財務分析をして、業績のバランスを見ながら積極的に設備投資が出来る体制を整えたいと感じます。そして、今まで以上に競争力を上げる為には、各部門にリーダーを配備し会社の決定事項や経営者の指示を素早く社員全員に浸透させる組織にしなければいけないと感じました。スピード感を持って働くことが出来れば顧客の満足度や新しいサービスへの挑戦にも繋がると感じます。こうした研究結果から、当社の強みをこれから移転する店舗の機会に変え、弱みを克服できる組織づくりにする為に社員全員で実行していきたいと考え、経営理念と店舗名を下記の通り考案しました。

 

 

【経営理念】

時代の流れと共に新しい創造性を持ってオフィス空間を提案すること

 

 

【店舗名】

「カレント」

・サーフィン用語で離岸流(潮の流れ)の意味

・海岸付近の水の流れは多様である。波がブレイクすると、水が打ち寄せるエネルギー

が逃げる場所がある。その流れの事を「カレント」という。

大きな波である競合の隙間を狙い、逆にそのエネルギーを利用して機会を得る。

時代の早い流れに乗れるよう買い手のニーズに耳を傾け新しい流れ(流行)を

創造出できる集団となる。

 

 

6.結果に対しての考察

 

①戦略

店舗展開
新品オフィス家具 リサイクルオフィス家具
・店舗に関してデータが無い為、時間帯、性別、年齢層、職種等の統計を取る。

・通販や既に価格が公になっている商品は展示を避ける。

・事務椅子はグレード、メーカーが異なる商品を15脚程展示。

・机、収納庫は展示スペースが無い為

ライブオフィスにして見学形式とする。

(実際の使い道を想像してもらう為)

・空間を提案できる店舗づくりにし備品購入の囲い込みをする。

(壁紙・ブラインド・床材展示・造作家具張地・素材等の展示の見本)

・リサイクルオフィス家具に対するお客様のグレーな考えを払拭する

=クリーニング完了後店頭設置

=明るく、小奇麗な空間の店にする

・購入してもすぐ壊れる不安を払拭する

=購入後3ヶ月の保証

・HPに掲載している画像では細かい傷、汚れやヘコミなどが伝わりにくい

=HP上にキズ・ヘコミのチェックシートを作成し可視化

 

②組織

・経営理念を社員全員に浸透させる為、経営理念を基に仮説を立てた議論を全体会議で都度行うようにする。

・リーダーを育成し、部下を評価する人事戦略を立てる。

・月次試算表だけではなく自社の管理会計も行い、投資する。

・お客様の声に耳を傾け新しいサービスの立案をする。

 

 

7.今後の対応、改善点と監査手段

今後の対応 改善点と監査手段
・アンケートによる情報収集

・来客の統計からSTPマーケティング

・専門分野の資格を取得する

(オフィス管理士、インテリアコーディネーター、インテリアプランナー等)

・接客応対研修の参加

(外部講師、セミナー)

・流動比率を考え立地重視のテナントを探す

・HPのリニューアル

・SNS等の無料広告を利用

・Facebookによる社内コミュニケーション

・F&M担当者に定期的な監査指導を受ける

(四半期に一度)

・F&Mのリーダー育成定期診断を行う

(半年に一度)

・定期的な専門分野の勉強会を実施し理解しているかテストする

(毎月営業会議の初めに1度)

・月に一度アンケートのデータ入力し店舗の商品、レイアウト変更

 

 

8.まとめ

ビジネススクールに入学して経営に関しての奥深さ、学生時代では考えられなかった学問の大切さ、学ぶと言う喜びを凝縮して実感した半年間でした。何より良き仲間たちと楽しく学べ、悩み事を共有したり、グループワークで協力したりと普段では出来ない体験をした事は、自分の人生の中で宝物となりました。特に心に残った授業は5FMです。私自身7年間この業界内で働き実績を積み上げ、それなりに業界を把握してきたつもりではいましたが、いざ競争相手の事を聞かれるとまったく答えられなかったのです。毎年売り上げを上げる為に自社の事や顧客の事は分析してきましたが、授業を受けて肝心な競合が抜けている事を実感しました。ビジネススクール修了後、業界を取り巻く脅威をもっと深く分析し、今後の事業の方向性と真のリスクに備えて強い組織にしなければいけないと感じました。

 

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