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修了生論文

「家業から企業へ」-創業100年に向かって

大阪校(O-college) 南 真紀子池鉄工 株式会社 取締役)

1. 研究動機

当社は株式会社クボタの協力会社として創業以来80年歩んできました。その日々は厳しい要求に応える一方で、守られてきたようにも感じます。しかし世の中の価値観が目まぐるしく変化する時代において、これからはこの庇護意識から脱却し、「一企業としてお客様は何を求めているのか?」「私達に何が提供できるのか?」ということを常に追求しながら、会社を発展させ、従業員の幸福を考え、社会に貢献するために歩まねばならいと、今回のビジネススクールでの学びを通じて感じました。そこで今回学んだ理論を活かし、現状を分析して、組織力を強化するための一考察にしたいと考えます。

 

 

2. 企業概要

社  名 池鉄工株式会社
創  業 1938年(昭和13年) 3月
設  立 1968年(昭和43年)11月
住  所 大阪府泉北郡忠岡町新浜2-3-50
電  話 072-430-6551
FAX 072-430-6552
URL http://www.iketekko.co.jp
取扱商品 アルミ鋳物製エンジン部品及び農業機械部品の加工及び組立
グループ会社 IKE TEKKO(THAILAND)CO.,LTD. (=ITKT)(1997年設立)
ISO取得 2013年 ISO 9001認証取得

 

当社は久保田鉄工株式会社(現株式会社クボタ)(以下クボタ)から私の祖父池甚九郎が、独立して「池鉄工所」を創業致しました。1945年に戦災で工場が焼失し、4年後に堺市に再建を果たします。高度成長時代と共に業績を伸ばし、1968年に池鉄工株式会社を設立しました。1970年代に入り高度成長時代の終焉と共に、大量生産から多品種少量時代へ、専用機から汎用機(マシングセンタ-等)へと移っていきます。その結果、設備投資の資金や給与上昇で会社の経営は厳しくなっていきました。1980年代に入りますと、当社の主要部品「シリンダーライナー」がタイ国産化協力という名の下で、現地生産が決定します。この時に自社のノウハウも含めた設備を販売し加工技術を現地の加工会社に伝授したことがタイ国の大手企業に評価され、クボタ外の自動2輪の部品の設備依頼が次々に舞い込み海外との直接取引が開始されます。しかし経営管理の未熟さゆえ、この時期の国内の部品加工の業績は悪く海外売上で国内のマイナス補填をしている状況でした。

そんな経営状況の中、1997年タイにIKE TEKKO(THAIAND)CO.,LTD.を設立しタイ国内で設備製作の販売を開始しました。しかし設立直後にアジアの通貨危機がおこり、仕事がゼロになり一からの客先開拓に奔走しました。その苦労が実を結び20周年を越えた現在は、設備製作と部品加工の2本の柱でタイにようやく根付いた会社になりました。

日本では2004年に利益性の高い加工部品の受注をきっかけに、製造部門の改善だけではなく、資材、経理部門を含めた管理業務を含めた改善を行い、徐々に利益を生む体制になってきました。2013年にISO9001の認証を取得し品質確保の体制作りにも力を注いでいます。

 

 

3. 問い これから何をあきらかにするか?

当社は「5ゲン主義」という、現場に行って現物を見て現実を知り、原理、原則に基づいて誤りや欠陥を是正し、より良い状態にするという改善手法を使って会社の経営体質、加工技術を強くしてきました。またISO9001の認証を取得したことで、漠然としていた業務内容を業務に適した標準を作成することで、決め事が明確化し「無駄のないものづくり」を行えるしくみができてきました。全社あげての取り組みの効果はB/S,P/L分析にもあらわれており、経営体質強化につながっています。

しかし、今までは悪いところを改善したに過ぎず「守りの経営」で「攻めの経営」にはなっていません。そこでまず我々がどういう社会の環境下にいるのかを考え、次に当社が置かれている業界についてファイブフォース・モデルで分析した後に、SWOT分析を使って、客先、競合他社、自社の各立場を検証しながら3C分析を行っていきます。最後に、現在の「組織力」をいかに強化して、「企業」へと成長させていくのかをあきらかにしたいと考えます。

 

 

4. 我々を取り巻く経済環境

①IT、IOT技術の急激な進化。

②異業種の参入。

③環境問題対応

④情報技術の進化により顧客が多くの情報を得て賢くなる。

⑤個人の発信する情報が全世界に瞬時に拡散。

⑥シェアリングエコノミー

⑦通信販売の拡大で無店舗業態。

⑧仮想通貨

⑨中国経済の成長の鈍化

⑩為替変動の流動性激化

⑪企業に海外進出の拡大。研究開発部門も海外進出。

⑫製造業界の海外移転、海外購入

 

ネットによる情報の拡散スピードの速さは、瞬時に地球規模に大きな影響を与える。そしてこのスピードが、業界の短寿命化、企業の短寿命化、商品の短寿命化、しくみの短寿命化、考え方、感じ方の短寿命化となり熾烈な競争社会を生みだしている。この中で、我々は必死に企業を発展させて社員を守るために努力している。

 

 

5. 「ファイブフォース・モデル」による業界の脅威の分析

今回自社の脅威を把握するため、国内でクボタの機械加工を行う狭い業界としての視点で分析を行う。業界を広くすれば脅威も違って見えてくるのでその視点も大切だと考える。

 

(A)新規参入

1.海外の低価格部品業者

2.鋳造メーカの鋳造と加工、組立までの一貫体制で販売

3.資本力のある自動車部品の加工業者が産業用エンジン部品の加工

 

(B)業界内の脅威

1.クボタの海外輸出率が高いため、アメリカ景気に生産量大きく影響うける

2.多くの国から部品調達しているため海外の災害にも影響うける

3.メーカの海外進出で日本技術の流失とレベルの低下

4.海外現地生産化で日本国内から海外加工移転

5.海外との価格競争。大ロットは海外へ。小ロットは国内

6.人件費の高騰と人手不足

7.エンジンから電気へ。電気化による部品点数の減少

8.後継者不足

9.利益の生みにくい時代

 

(C)代替品・サービス

1.インターネットの普及で距離に関係なくテレビ会議等で打ち合わせが容易になる

2.輸送スピードが向上し短納期実現

3.IT化、IOT化で技術の進化 (加工技術、管理技術等)

 

(D)売り手の交渉力

1.インターネット等の普及で距離感がなくなり、世界へ販路が見いだせる。

2.写真や動画がすぐに配信できるため製品等の説明が容易になる

3.輸送網の発達で短納期実現

 

(E)買い手の交渉力

1.インターネットの普及で、世界中の業者と価格競合させ調達が可能

2.インターネットの普及で、情報をサプライヤーに常時展開できる。

3.短納期が可能になり、在庫レスが可能

 

 

6. 客先、競合、自社の順にそれぞれの立場でSWOT分析を行うと共に3C分析をする。

 

6-1 Customer =クボタ

本社を大阪に置く産業機械、建築材料、鉄管、産業用ディーゼルエンジンのメーカ。農機メーカとしては世界3位。

 

クボタのSWOT分析

強み 弱み
 

1.新規参入難しい業界のシェアのため

業績安定

2.「食料」「水」「環境」と命に直結する事業の展開

3.世界の抱える環境課題の解決に貢献

4.農業へIT化導入の推進ができる

5.自給率の向上へ参画できる

 

1.基本内製内作主義は急速なIOTなどの 先進技術を取り込みが他社より遅い

2.新製品の開発が遅い

3.グローバル開発体制不充分

4.大型農業機械のシェア

5.業界世界3位

6.日本では耕作放棄が増え、農地面積と

農家数減少

機会 脅威
 

外部環境

1.ICT=情報通信技術を使った効率的生産

2. GPSの活用で自動運転農機

3. グローバルな技術開発によるシェアの拡大

1.国内の農業市場の低迷

2.就農人口の高齢化

3.為替リスク 関税

4.アメリカ景気に左右される

5.農家の大規模化

6.グローバル化による国内工場の存続

 

「壁がある。だから、行く」テレビCM等で、女優長澤まさみさんを使った大胆な企業イメージ転換を感じながら、上記の分析をながめると「グローバルメジャーブランド」として進化をしようとする企業の意図が浮き彫りになる。又、上記のグラフで示すように海外売上比率が70%弱ということも重要なポイントである。

2018年2月26日付け日本経済新聞にもクボタは、2022年までに農機開発拠点をフランスとアメリカに建設し、またアメリカには日本で製造しているディーゼルエンジン組立工場も建設すると報道され、このことはエンジン部品を加工している我々の大きな脅威であり、今後の課題である。

 

6-2 Competitor =A 社

当社の競合はアルミ部品の機械加工会社で、特に 日本のアルミダイカストの鋳造メーカによる、鋳造、加工、及び組立の一貫体制で製造ができる会社は、資本力等もあり競合となる。

 

A社のSWOT分析

強み 弱み
 

1.鋳造、機械加工、組立の一貫体制

2.加工の取代が鋳造で設定できる

3.自社の改善で最適加工ができる

4. 一貫体制は短納期可能

5.一貫体制は物流コスト低減

1.鋳造設備は場所、資金が必要

2.品質「巣」の問題が多く不良率高い

3.金型費用が高い

4.3Kのイメージで人材確保が厳しい

 

機会 脅威
外部環境 1.IOTの積極的活用で人の負担軽減

2.設計に提案が行いやすい

3.一貫体制で営業活動が行いやすい

 

1.自動車業界低迷

2.アメリカ景気に左右される

3.為替リスク

4.電気自動車への移行で部品点数減

 

エンジン部品を鋳造している会社は、生産ロットからターゲットは自動車部品の鋳造であるが、近年の自動車離れ、及び電気自動車への移行による部品点数の減少は脅威であり、産業用のエンジン分野の仕事確保にも努めており、同時に鋳造に付加価値をつけるために、機械加工や組立の一貫受注体制を整えている。鋳造メーカが加工を行うことは、加工で起こる諸問題に素早く対応し、改善を図れるので客先としては管理効率等で好都合である。またCompetitorとしては、中国、インドの鋳造メーカ並びに加工メーカによる安価な海外調達部品も競合である。

 

6-3 Company=池鉄工株式会社

当社は、FANUCのマシニングセンタの設備を中心に、1ライン完成型の量産部品加工を得意としている。

加工後に部品を組み付けし客先のラインに一部「順序引き」という、毎日変わる順序指示どおり専用台車に荷詰めして客先ライン納入している。

 

当社のSWOT分析

強み 弱み
 

 

 

 

 

 

 

① アルミ鋳物の多品種少量生産

② 0.001ミリの精密加工ができる

③ 加工、組立、検査用の治具や検査装置又はからくり装置を自社製作可能

④ 生産技術力と加工技術力で客先と共にQCDの要求を追求する体制がある

⑤ 加工と組立の一貫受注受けることができ短納期かつ時間指定納期対応

⑥ 生産量の変動に応じた汎用性ライン

⑦ 在庫資金削減で経営効率化を推進して客先要求に対応しながら利益確保

⑧ タイの子会社との技術連携体制

⑨ タイの子会社による情報収集

⑩ 大手との取引実績による信用力

⑪ 客先ラインへ直結の順序引納入可能

 

① クボタ依存率が高い

②  顧客が限定されていたため、営業力低い

③ アルミ鋳物に特化してきたため加工の汎用性が低い

④ 規格品製作は得意だが、発想力が乏しいため「もの」を生み出す力が弱い

⑤ 部品加工以外の売上の柱がない

⑥ メーカでないため自社製品がない

⑦ 切粉飛散、切削油による汚れがある

⑧  客先の予定変動により生産計画が変動する。材料調達指示にも影響がある。

⑨ 活動範囲及び世界が狭い

⑩ 社員教育が乏しい

⑪ 社内のIT,IOT化が遅れている

⑫ 沿岸部のため地震発生時の津波の脅威

⑬ マーケティング力が低い

機会 脅威
 

 

 

外部

環境

① 会社移転による効率生産構築可能

② 加工技術力を活かし新分野への営業

③ 移転で社員のモチベーション向上

④ 自社製作の装置類を販売展開

⑤ 全部門の改善活動は組織力向上

⑥ 在庫短縮改善で、在庫が使える資金

⑦ 情報、人材の共有でITKTと支援体制

⑧ 会社移転で津波のリスク回避

⑨ 客先の困りごとを集めて営業展開

⑩ 鋳造メーカに営業を行う

① 移転に伴う土地購入資金、建設資金、移転費用と経営に大きな変化がある

② 移転による人員変動での品質管理

③ 自動車メーカ傘下の加工会社が参入

④ 中国、インド等の海外調達との価格競争

⑤ 若手社員の人材確保が進まない

⑥ 入社1年程度の退職者が多い

⑦ 働き方改革 賃金上昇 単価反映

 

当社SWOT分析の結果強みは、自社の生産技術グループにて、治具や装置の製作ができ、短納期で量産精密加工及び組立ができることである。弱みは、クボタ依存型のマーケティング力低さであることが明らかになった。

当社にとっての鋳造メーカは、通常は材料を供給してもらう材料先であり、同一客先よりの共に引き合いがあった場合に自社で鋳造、加工して一貫体制で納品されると競合先である。考えれば他社からの引き合いも多く集まるため、営業先として考えられる。

これからは機会を常に狙い、脅威は改善活動で取り除く努力をおこなって「強み」に変えていきたい。

 

 

7. 分析結果より

今回の分析結果及びこの半年の学びで、私は情報通信、輸送の発達により、世界の距離感が急速に縮まり常に世界に目を向けて判断しなければならないことを痛感している。

これからの社内改善は視野の狭い1C分析での問題解決であってはならない。

社会の変化が激しい現代において、情勢を注視しながら、常に「買い手のニーズの追求」、「競合他社の研究」を踏まえたうえで対策を行っていかなければいけないと考える。

例えばクボタにおいては、現在北米向けエンジンの輸出が好調である。その好影響を当社は受けているが、前述の海外売上比率の高さは、アメリカでの雇用問題等にも関連し海外拠点での生産にシフトしていくことも「グローバルメジャーブランド」としては当然の課題である。2018年2月26日付、日本経済新聞に「クボタ 仏米に農機開発拠点、米国にはディーゼルエンジン組立工場建設計画」と発表された。当社は、このクボタの動向に対しても注意を払い、社の体質強化を推進しつつ、新たな経営2本、3本の柱を見つけ育てていかなければならない。

 

 

8. 今後の取り組み

我々は「もの」を加工して組立てるという技能だけでは、100年を迎えることは無理です。そのためには協力会社という「受け身の姿勢」から脱却し、一企業として取り組んでいくことが必要です。私の考える5つの取り組みは以下の通りである。

1.「顧客のニーズ」を追求し、当社独自の「ものづくり」の技術が提案できること。

2.「ものづくり」を行う社員の能力と個性を活かし時代に応じた「良き組織」であること。

3.「守るべきルール」が間違いなく守られ管理されていること。

4.「枠を超える」発想力を持つこと。

5.「学ぶ」「鍛える」「探る」が自然にできること。

 

当社では、すでにISO9001の取得を機に「組織」としての活動を大切にしています。

12月はじめに社長が翌年度の事業方針を発表します。本年度は下記の通りです。

 

2018年度事業方針

これまでは悪い中から脱皮するための目標を掲げてきた。これからは真に向上するための目標です。足元をひとつひとつ改善しながら先を見て活動に取組んで下さい。また昨年と同様、社員一人一人のスキルが発揮できるよう、”チームワーク”や”モチベーション”

向上にむけた社内環境つくりに取組んで下さい。

1.安全第一:危険個所はまだまだ潜んでいる。

2.品質向上:”再発防止”及び”水平展開”

3.コスト低減:ロス工数低減活動をより具体的な対策で改善に取り組み可動率の向上

4.納期厳守:目標0件

5.人材育成:「能力評価基準」、「フィードバック面談」の実施

6.工場管理:スリム化したISOの仕組みを定着化させる。

7.生産改革:購買先を巻き込んだリードタイム短縮

8.営業活動:積極的な営業活動で受注拡大

9.事業拡大:設備(リークテスター)の外販開始、自社オリジナル商品の販売、

10.海外事業:ITKTへの事業支援及び総合交流を継続する

 

この方針を受けて、各部門別に毎年改善目標を設けて1月より、改善に取り組んでいきます。社長出席の下に、定期的に部門別改善報告会を行い、改善進捗を共有すると共に意見の交換が行える場となっています。

また定例会では毎月、損益状況、人事状況、営業状況、製造状況の報告に加えて、経営方針目標進捗管理のデータ目標(安全(災害件数)、売上、経常利益、新規事業額、人材育成、客先評価 社内評価、加工可動率、組立可動率、製造原価率、加工不良金額、客先求償額、在庫日数、納期遅延)が報告され管理や運営を図ったり、課題を検討しながら会社の方向性を決定しています。

 

 

6. まとめ 「家業」から「企業」へ

当社の歴史の中で、経営を悪化させ厳しい状況が長く続いた時期があります。その時の「悪さ」を冷静に分析して、同じ過ちを我々が二度と起こさないように、「家業」から社員のための「企業」へ発展させていく所存です。

当社は本年社名変更を行い来年末に会社移転も計画しています。この大きな節目に、今回学んだことを自分自身の頭の中だけの「知識」としておくのではなく、実践に活用して会社を支えてくれる仲間達と共に強い組織を築いて参ります。最後に尊敬する方の雑感の中より自分が指針としている言葉を記します。

 

「良きしくみ、組織は平凡な人に非凡な仕事をさせる。悪しきしくみ、組織は非凡な人に平凡な仕事しかさせない。」

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