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修了生論文

今後の事業展開についての考察

大阪校(O-college) 福井 暖株式会社エナテクス 社長室 室長)

1.研究動機

近年は時代が大きく変化しており大転換の時代と言われている。少子高齢化による人口減少、それに伴う地方の仕事の減少、技術者や技能労働者の減少、また、東日本大震災を契機に発せられたエネルギー問題、IT技術の急速な進歩など、多くの問題・変化がある。当社は地方の中小企業ではあるが、これら時代の流れに適応し、リスクを最小限に抑え、機会を最大限に活かす経営戦略を立て実行していく。動機になった理由は、以下の通りである。

1、外注の1人親方や施工を行う企業の高齢化により工事を依頼できなくなったり、廃業したりしている。[(1)建設業の高齢化と人口推移]

2、2020年の東京オリンピック終了後から公共事業が減少するといわれており対策について検討したい。[(2)建設業の発注見通しと予算]

3、当社は時代の流れに合わせて積極的に営業手法をかえてきた。時代の変化に乗り遅れることなく、さらに売上を上げていきたい。[(3)今後の社会情勢]

現在、大きな問題が顕在化しているわけではないが、変化に対応し攻めの経営を行っていきたい。

 

 

2.企業概要

当社は電気設備工事業(建設業)を主体としている。従来の建築附帯の電気設備工事を主軸とした経営に限界を感じ、電気に関わる分野で仕事の領域を広げてきた。具体的にはメインの電気設備工事に加え、3つの事業を展開している。第1の柱として「太陽光発電事業」、第2の柱として「遠隔監視事業」、第3の柱として「防災行政無線事業」である。従来から行なってきた電気設備工事業は公共工事を中心に受注している。小規模の工事(修繕工事や民間工事)では当社の管理のもと1人親方の職人に依頼することがあり、以前は公共工事でもマンパワーが必要な大型物件は職人チームの外注に依頼することが多かった。しかし、現在は自社で行うことが多くなっている。売上は全体の3割を占める。第1の柱「太陽光発電事業」については、固定価格買取制度(FIT)が2012年に開始され、20年間固定価格で電力会社に電力を販売することが可能になったため、先を見越せる事業として着手した。グループ会社でもメガソーラーを2施設、小規模の発電所を31施設運営している。また、自動追尾式や農業と太陽光発電を同時に行うソーラーシェアリングにも力をいれており、全国的に最大規模のソーラーシェアリングも行っている。「太陽光発電事業」は、売上げの6割を占める。第2の柱である「遠隔監視事業」では上下水道施設に設置する通報システムの設計、施工、販売を行っている。当社が扱う通報装置は小松電機産業株式会社の商品であり、2000年から他社に先駆けてITを利用したクラウド監視を開始、現在でもクラウド通報装置部門でNo.1のシェア率を誇っており、長年のノウハウ、高いセキュリティをもった品質の高いシステムである。売上の割合は1割に満たないが、上下水道関連の電気設備工事の受注を引き寄せ、付加価値の高い事業である。第3の柱である「防災行政無線事業」では従来型のアナログ方式の電波をデジタル方式の電波に変えて音声を聞き取りやすく確実に伝えるシステムを企画・設計・設置している。これは当社と他の開発会社とでシステムを共同で開発し、地元自治体に採用されている。この事業は1度受注すると金額は大きいが、失注するとすぐに他の案件が発生するわけでもなく、設計からかなりの時間と手間がかかる。これらの事業をグループ会社を含め37名のスタッフで行っており、変動はあるが、年間10億円程度の売上を計上している。鳥取県を中心として近隣の自治体を始め、全国に営業展開している。

 

 

3.問い

(1)建設業の高齢化と人口推移

当社は今後、建設業界の高齢化と人口減少により、協力業者に施工を依頼できなくなるのではと不安を抱いている。今後の建設業はどのように人口が推移するのか?

(2)建設業の発注見通し

建設業界としても縮小傾向に向かうと言われているが、公共事業はどのように減少していくのか?

(3)今後の社会情勢

当社の事業に関係する出来事として、どの時期に、どのようなことが予定されているか?また予測できるのか?

 

 

4.分析

(1)建設業の高齢化と人口推移

図.我が国の労働人口の将来推移(参考文献:国土交通省)

我が国の生産年齢人口は2015年~2030年では5年毎に約5%、300万人ずつ減少していくと予想される。65歳以上の高齢者の数は10年間の推移でみるとほぼ横ばいである。しかし、14歳以下の数は100万人ずつ減少していくことが考えられるため、

全体として人口が減少し、高齢者数は横ばい、生産年齢人口は減少、若年者は減少となり、高齢者の人口は増加していないが、高齢者人口割合の増加が予測される。

 

図.建設業における高齢者の大量離職の見通し(参考文献:国土交通省)

高齢者の退職見通しで考えると10年後退職者数は78.1万人に対して、入職者数は35.7万人と約半数以下になり建設業の生産人口の減少、高齢化が予測される。

また、中小企業の経営者も高齢化し、減少していく。後継者不足のため企業の廃業が多発する可能性もある。

 

(2)建設業の発注見通し

図.公共事業費の推移(参考文献:国土交通省)

 

バブル経済以降(1986年~)公共事業費は増加してきた。特に1990年代から2000年代初めまで、政府は景気対策として公共事業費を増額。最大15兆円をつぎ込み、毎年10億円の予算を投じた。だが税収赤字に直面し小泉政権以降、予算削減へと方向転換を図った。「コンクリートから人へ」という政策転換の結果、建設事業費は8億円程度まで減少。

 

図.景気動向(参考文献:日本経済新聞)

 

図.公共事業費の推移.景気動向を照らし合わせてみると、2000年から2007年までは景気は上昇しているが、公共工事削減政策のため公共工事は減少している。それ以降も景気は回復傾向にあるが、公共工事は増加傾向にはない。

図.公共事業の内訳と予算(出典:内閣府-公共事業/公共事業関係費の推移)

 

公共事業については、建設投資額が減少する傾向にある(図.公共事業費の推移)。1955年~1973年の19年間、高度成長期に整備したインフラが急速に老朽化し、今後10年間で建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなる見込みである。

図.国の歳入と歳出の推移(参考文献:財務省)

歳出と税収のバランス(図.国の歳入と歳出の推移)を考えても約100兆円の歳出に対して、60兆円の歳入と赤字経済である。既存社会インフラの維持修繕と更新が必要となる中、赤字経済下において新設公共事業費が大きく増加することは考えにくい。

 

(3)今後の社会情勢

これからの時代の流れに適応するために、現在・5年後(2025年)・10年後(2030年)に予測される社会情勢について調査した。

社会情勢年表

 

当社に関係する5年、10年後の社会情勢について検討した結果、キーワードは「1.再生可能エネルギー」、「2.IT技術の普及」、「3.少子高齢化」と考えられる。

図.エネルギーミックスの電源構成

(出典:日本原子力文化財団、長期エネルギー需要見通し等より作成)

 

「1.再生可能エネルギー」については、太陽光発電の買取価格の低下、2030年のエネルギーミックス実現のための再生可能エネルギーの導入推進が考えられる。

「2.IT技術の普及」についてはITのさらなる普及が予想できる。特に物のインターネットIoT(Internet of Things)が普及、定着し生活の中で当たり前のようにITが溶け込んでいくのではないかと考えられる。すべての情報がITにつながり、その機器を販売・設置する需要も多く生まれる。

「3.少子高齢化」については少子高齢化による人口減少が建設業にも大きく影響を与えることが考えられる。特に人材確保の問題、労働者の高齢化、後継者不足が起こることが前項の分析により推測できる。

 

機会、脅威をSWOT分析を用いて分析し、戦略を考察する材料をそろえる。

SWOT分析:機会、脅威を現状の経営環境から分析

 

<Strength 強み>

経営環境の強みについては、太陽光発電事業を行っていることもあり再生可能エネルギーについて豊富な知見、技術、人脈をもっていることがあげられる。毎年開催されるPVエキスポや環境展に行き情報を収集したり,各種セミナー等にも参加している。技術については、電気工事士の技術を基に、電気主任技術者や電気工学修士の学位等、高度な資格の保有者を有し、人脈については鳥取大学、鳥取環境大学、協力業者に木質バイオマス燃料供給会社、地域の自治体の木質バイオマスエネルギー活用検討会とコネクションをもつなど、準備段階としては、良い条件が整っている。

<Opportunity 機会>

機会については、再生可能エネルギーの導入推進、IT技術の普及といった今後の社会情勢を考えると、当社にもチャンスがあると思われる。特に再生可能エネルギーについては水力発電(1950年~)、風力発電(1990年~)、太陽光発電(2012年)~以降、次の再生可能エネルギーが求められている。エネルギーミックスでの再生可能エネルギー詳細の中に、水力、風力、太陽光とならんでバイオマスエネルギーがあるが、当社はバイオマスエネルギー事業を展開するためすでに情報収集を開始している。この事業を次の柱とできるよう研究を進めていきたい。

そして、IoT技術についてだが、当社が扱う上下水道施設用通報装置はクラウド仕様のものであり、パソコン、スマートホンを使用し、ITを活用する機器を地域限定(鳥取県、兵庫県北部、岡山県の一部)で独占販売することが可能である。IT技術が普及すれば、売上がさらに増えると予測される。

 

 

5.研究結果と考察

この度の分析を通して、以下の答えが導き出された。

(1)建設業の高齢化と人口推移については、高齢者の人口割合が増化し生産年齢人口が減少することが読み取れることから、下請け業者の高齢化や後継者不足により外注による施工が困難になることが予想される。そのため自社で施工者を育てる必要がある。対策として工業高校等の求人活動を積極的に行い人員確保を図る。またSNSを利用し情報発信を行う。

(2)建設業の発注見通しと予算については、今後発注量が大幅に増化ことは想定できないため、受注を増やすために活動エリアを広げる必要性がある。後継者不在の優良な会社をM&Aすることや他地域に出店することでエリア拡大を図る。

(3)今後の社会情勢については、エネルギー分野で再生可能エネルギーの占める割合が増加することから、当社の得意分野である再生可能エネルギー新事業を行いチャンスとする。特にバイオマスエネルギーは国の施策と合致しており、当社も注目し情報収集していることからこの分野に注力し事業化を行う。以上が問いから導き出された答えになる。

 

 

6.事業計画

研究をもとに、事業計画を部門毎にまとめる。

(電気工事業、太陽光発電事業、遠隔監視事業、防災無線事業、新規事業)

 

「電気工事業」

①公共工事は、減少することが予測されるため従来と同じ地域だけでの活動を行っていては先細りになることが考えられる。

戦略:活動エリアを拡大する。(人口の多い地区の近隣自治体を拠点とする)

戦術:1,他地域に支店を出店する。 2,M&Aで後継者不在の会社を吸収,合併する。

 

②少子高齢化により、下請け企業の高齢化や後継者不足により外注による施工が困難になるため、自社で施工者を育てる必要がある。

戦略:毎年、新入社員を採用する。

戦術:工業高校に毎年新入社員を採用することを伝え、他社より優先的に呼び込む。

SNSでの動画配信やプレゼンで生徒、学生が入社する動機付けを行う。

 

「太陽光発電事業」

①買取価格が年々低下している一方で、同時に機器コストも低下している。

固定価格買取制度はあくまで太陽光発電が軌道に乗るまでの起爆材として考えられる。このことから受注は減少するものの販売がなくなることはないと予想される。

戦略:地域一番店を維持し、受注を確保する。

戦術:SNS、マスコミ、人脈を通し活発な営業展開を図る。

②農地における太陽光発電が注目を集めている。儲からない農業、高齢化により後継者不足が問題となっている中、国は農地転用の規制を緩和しつつある。今後は田んぼに於けるソーラーシェアリングにビジネスチャンスがあると見込む。

戦略:田んぼ用の追尾式発電システムの販売

戦術:特許を取得し、実績を基に更なる規制緩和を促し拡販を行う。

 

「遠隔監視事業」

○以前から、岡山県の自治体に直接営業をかける手法を用いてきたが、地元業者の力が強く入札に参加することが困難である。

戦略:元請けにならず、下請けとして地元業者に通報装置を販売する。

戦術:現在は少数の協力業者に通報装置を販売しているが、営業訪問により更に協力業者を増やす。価格、性能では他社に負けない自信があるため、県外事業者のみでは入札に参加できないといった県外業者排除策をかいくぐる。

 

「防災行政無線事業」

○2022年電波法改正により、現在使用されているアナログ無線機が使用できなくなるため、全国で更新時期を迎えている。こうした中、弊社独自の無線方式が更新を 控えた北海道地区で評価を得ている。北海道では179自治体が更新を控えており、 大きな商機が見込まれる。

戦略:北海道に支店を出店し、営業活動を開始する。

戦術:支社の開設。地元企業を元請けとし、当社は機器とシステムを卸売りする。

 

「新規事業」(バイオマスエネルギー)

1、社会情勢

バイオマス活用推進基本法(2009年)に基づき、2025年までに5,000億円の市場規模に拡大することが決められているため、成長の可能性のある事業である。補助金も各種ある等、国が後押しており今後の先行きも明るいと考える。

 

2、エナテクスバイオマス事業イメージ

当社は木質バイオマス燃料を供給する地元企業と連携し、現在化石燃料で給湯している施設にバイオマスボイラーを販売設置する方式で事業化を目指す。北栄町や近隣自治体には石油燃焼式ボイラーを使用する老人介護施設、病院、宿泊施設、温泉施設等が多数あるため、これら施設に向け設計、販売、保守までを一貫して行う。

 

○風力発電、太陽光発電に次いで注目を集めるバイオマスエネルギー。再生可能エネルギーが注目される中、当社支社所在地である北栄町は環境先進自治体としていち早くバイオマスエネルギーに注目している。

戦略:自治体とタイアップして事業モデルを作る。

戦術:バイオマス産業都市を目指す自治体と協力して、共同研究を行いバイオマス事業モデルを作成する。それを基に手法を確立し営業範囲を拡大する。

 

 

7.今後の取組みと監査

今後の取組みを以下の表にまとめる。

事業ごとに取組みをいつ、だれが、何をするのかを時系列に書き出した。表にしてみるとかなり過密なスケジュールになっていることがわかる。基本的には事業毎の担当者が取組みを行うが、支社開設やM&Aについては取組み後の事業継続に常駐の担当者が必要になり少ない従業員を効率よく配置をする必要がある。場合によっては他の取組みとタイミングをあえてずらしながら行う必要もある。

監査については次のように行う。計画が予定通り行えているか、変更の必要はないかを監査する。基本的には半年に1回確認を行うが、必要に応じ進捗状況を監査し是正する。担当は常務取締役が行う。

 

 

8.結びに

当社は1989年の創業から1999年頃まで一定の売上を保ってきた。転機となったのは風力発電が注目された2000年。この頃、支社のある北栄町に大型の風力発電所が複数基建設される計画があり、そのための研究を大学と共同で行った。当社からも研究生として社員を派遣したり、調査用施設の建設に協力。再生可能エネルギーに取り組むきっかけとなった。多くの講演やセミナーの受講等を通じ、今後は再生可能エネルギーがビジネスチャンスになることを予測することができた。結果的には風力発電所建設工事は受注に至らなかったが、その後の太陽光発電特需時に即時に行動する原動力となった。2012年からの太陽光発電特需時には、山陰地方初のメガソーラー施設を自社で建設、注目されマスコミ等で報道された。地元での知名度を基に、お客様に設計、販売、保守一貫のサービスを提供する販売手法をとり、また1級農地に全国でも最大規模の農電併用太陽光発電所を自社で建設。中規模の追尾式発電所も県内に30施設建設しさらに知名度を上げ、県外のお客様からも受注している。今後、太陽光発電の買取価格は低下していくが、システム価格と電力販売価格との経済的統合を保ちつつ、2030年のエネルギーミックスに向け継続的に販売ができるのではないかと考えている。新しい展開としての田んぼでのソーラーシェアリングにも期待している。現在進めているバイオマスエネルギー事業も農林水産省の推奨するバイオマス産業都市計画等、5年後、10年後に期待できる事業として今から準備をしておくことが大切なことだと考える。今後のエネルギー事業に積極的に関わっていけるよう社会情勢等、世の中の動きに注視していく。

 

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