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修了生論文

パーソナリティ診断からの生産性向上の考察

大阪校(O-college) 天野 貴夫有限会社エーエムイズミ 代表取締役)

1. 研究動機

ある日の仕事終わりに現場の職長であるOがやってきました。職長Oは「Mさんとは現場に行きたくない。」と言います。理由を聞くと、「Mは文句が多く指示どおりに動いてくれない。」との事です。なぜ職長の指示に従わないのか?Mに理由を聞くと「Oの言い方が腹立つ。」と言いました。職人の世界ですから、売り言葉に買い言葉でよく有る事だと思います。長年従業員と一緒に仕事をしてきた私としては、その職長Mの言い方に棘があるのはなんとなくわかりますし、言われたOも短気なのは知っています。ある職人は技術があるけど物静かであまり話さない。ある職人はとても真面目だけど技術がない。人それぞれです。このような例で職長Oが自分の短所を少しでも理解していて、言い方を少し変えれば、言われた方も快く引き受けてくれたかもしれません。反対に言われた方のMも自分が短気なので、相手の言い方にすぐに反応しないよう少しでも心がければ、この様なトラブルは避けられたと思います。従業員各々が自分の性格や技術を理解し、職長をサポートして生産性の高いグループになるに為にはどのようにしたらよいのか?これが今回の研究動機です。

 

 

2. 企業概要

当社は昭和61年に創業し創立31年目になります。平成8年に泉工業所から法人化し有限会社エーエムイズミを設立しました。平成21年3月に代表取締役を天野勝から二代目の天野貴夫へと交代し現在に至ります。大阪府堺市の鳳近くに自社工場を構え、ビルや商業施設といったいわゆる大型物件等で必要とされるダクトを製作し現場で取り付け工事を行っており、その他にはビルの空調改修工事などを主な業務としています。従業員は17名で現場作業員は10名。工場内勤務は6名、事務員が1名、外国人実習生4名が働いています。

「ダクト」とは空気の通り道であり、冷たい空気や温かい空気を送り、またはトイレ等の臭いを排気するなど、ビルや商業施設で快適に過ごすには無くてはならない設備です。人間で例えるなら、吸った空気を肺へ送る「気道」にあたる部分ではないでしょうか。

その他のダクトの用途としては、火事が起きた時に必要な排煙設備、厨房用排気設備などがあります。

ダクトには2種類あり、角ダクトと丸ダクト(スパイラルダクト)があり、自社で製作しているのは角ダクトで主に亜鉛鉄板0.5mm〜1.6mmの厚さの板を切断し、機械で折り曲げ、手作業で組み立てます。組み立てて製品となったダクトを現場で作業員が取り付けていくのが主な施工の流れです。

建設業界の主な発注形態の例です。

当社は元請けからみると二次下請けとなります。建築にもたくさんの業種があり、建物を建てる時には多種多様な職種の人たちと協力しあって建物を作り上げていかなければなりません。その為にもリーダーである各職長同士の連携が必要になります。

現場作業員は職長をリーダーとして、2名〜5名を1グループとし現場で作業をしています。自分自身も27歳から入社し、現場作業員や職長を経験し工場での製作など努めてきました。自社の年齢層は同世代の40代が多く上下関係はほとんどありません。また、「祭り」(泉州ではだんじり)の盛んな地域であり、言い方や言葉は大阪の方でもキツイ方なのかもしれません。

その職長の主な業務は、他職との打合せ、従業員への指示や施工品質の管理、材料の発注など多岐にわたります。従業員全員が職長の資格を持っていますが、従業員全員が優れた職長ではなく、全てを任せても安心できる職長は現場作業員10名のうち4名です。また、平成29年1月には労働派遣事業許可書を取得し、工事現場で必要な施工管理者を派遣しておりダクト工事と施工管理を連携させたスムーズな現場運営を目指しています。

 

 

3. 問い

現場の作業員(職人)が自分の長所や短所を客観的にとらえ、長所を伸ばし短所を補い職長を中心とした生産性の高いグループにするにはどのようにしたらよいのか。

 

 

4. 手法

 

4-1 3C分析

まず、会社の置かれている状況を整理する為、3C分析を行いました。

 

製作している製品は国土交通省の標準仕様書があり、それに基づいて製品を製作しているので競合他社(同業者)との製品の差別化はしにくく、競合他社(同業者)も同じく差別化がしにくいと推測します。顧客のニーズは現場施工における標準仕様をいかに安全に安く効率よく、そして丁寧に施工できるか?であると考えられます。各現場には標準仕様書があり、施工手順も事故防止の為にマニュアル化が進んでおり、予定外作業や施工手順の変更などは打合せが必要になります。同業者である競合他社は、人手不足もありこちらから応援に行ったり逆に応援を頼んだり、仕事を請け負ったりして閑散期を埋めています。どちらかといえば現在は協力関係となっている事が多いです。しかしながら、4,5年前のリーマンショック後の不景気には受注競争が起こり、製作単価や労働者単価も大きく値崩れしました。取引先の上位会社もいい値段では受注できず、下請けへの発注も「安ければ良い。」という判断になっていました。競合他社は同じ規格の製品を作るので製品の差別化は難しく、また現場での施工も手順が決まっているので、バリュープロポジションは小さいと判断できます。

 

4-2 SWTO分析

3C分析をふまえてSWTO分析を行いました。

 

4-3 パーソナリティ診断の実施

この診断はF&Mのサービスを利用しました。受験された方の「まじめさ」「根気強さ」や「心理的ス トレスに対する対処法」などのパーソナリティ(=資質)について、 統計的手法をから客観的な診断を提供するものです。(F&Mホームページより抜粋)

 

実施日 平成30年2月20日 18時30分〜

場所  自社事務所にて

対象人数 13人

(ベトナム人実習生には難解な日本語が多く、後日に通訳の方と一緒に実施しました。今回は入れていません。)

 

パーソナリティ診断の結果をA=5 B=4 C=3 D=2 E=1として点数化し表にしました。

 

各個人の分析

【】内は個人的な見解です。

天野(代表取締役):明るくポジティブでコミュニケーションと社交性があり外交的であるが、低めの点数をみると「やる気はあるがだらしない奴」としてみえる。

大畑(職長):明るく根気強い。社交性は高く内向てきであるがポジティブではない。【責任を負いたくないのか、自分の判断で行動をしない所がある。】

木下(職長):全体的に点数は高めであり、協調性や計画性、自己管理が高いので一番職長向きといえる。【取引先全体では評価は良いが少し怒りやすい所がある。】

林(職長) :コミュニケーションが高くまじめであるが、達成意欲が低く排他的である。【入社歴は一番長い。寡黙で黙々と仕事をしている印象である。】

泉谷(職長):全体的に低めだが、自己判断基準が厳しいためだと思われる。【仕事は出来る方だが心配症な所がある。】

山元(作業員):全体的に低めだが、真面目であり達成意欲も強い。【20年以上仕事をしているが覚えが悪いが真面目である。】

村田(作業員):外交的でありコミュニケーションが高いが達成意欲や向上心といった所が低い。【言葉遣いが荒い所があるが面倒見は良い。】

北野(作業員):明るいが達成意欲や向上心などが低い。【普段から向上心はあまり感じられない。たまに遅刻もするので自己管理は低いがムードメーカー的な所はある。】

川島(作業員):全体的に点数は高めだが向上心や努力といった所が低い。【指示にはよく動くが自分からの行動はあまり無い。真面目である。】

寺口(作業員):自己基準が高く甘めの評価と思える。向上心や達成意欲コミュニケーションが低い。【高齢であり、昔の職人といった感じである。】

橋本(作業員):最年少であり仕事歴も浅く、点数も全体的に低い。前向きと計画性が低い。【いい加減な所があるが、20歳と若いので今後に期待したい。】

福田(工場作業員):真面目であるが、コミュニケーションが低く内向的である。【面倒見がよく、ベトナム人実習生達を根気よく指導している。】

宇高(工場作業員):点数が高めであるが、自己評価が甘いためと思われる。真面目ではあるが、社交性が低い。【物静かで真面目。たまに感情のコントロールが出来ない事がある。】

従業員全体で考察してみると行動分析では、前向きや努力明るく気配りができると言った点数が非常に低い。点数が高いのは感情のコントロールやストレス耐性といった項目でした。以外だったのは内向マイペース型の人が多かった事。従業員たちはお互いに協力をしているので協調型が多いと思っていました。

パーソナリティ診断では全体的に低い点数が多いが、真面目やコミュニケーションといった点数は高く、意思の伝達はできていると考えられます。しかし達成意欲、積極性、向上心といった「頑張る意欲」が非常に低い結果になりました。

また、4人の主要である職長はコミュニケーションが高く共同性やリーダーシップといった所が高いので現場での他職とのコミュニケーションはうまくいっているものだと推測できます。

 

 

5. 結果と考察

これから数年の仕事量はたくさんあるが、人手不足と自社のキャパシティオーバーで仕事を断るというジレンマに陥る可能性があります。(現在もその傾向はある)即効的な手段で人手不足を解消するには外注が手っ取り早いですが、その外注も今は捕まりにくい状態で繁忙期と予測されるこれからの状況は変わらないとかと思われます。人手不足で労働者単価が上がっていくと予想していますが、上昇した平均単価より更に高い単価で受注するには施工管理とダクト施工の両方で受注できたら可能だと推測しました。

パーソナリティ診断の全体的な結果で達成意欲、積極性、向上心といった「頑張る意欲」「やる気」といった所が低いのは残念ですが、これら従業員の意識の底上げは従業員教育しかないと考えています。

以前に積極性や向上心を上げる為、国家資格取得者(建築板金1級2級)には毎月の手当を出す事にしました。それでも資格取得の希望者は出てきませんでした。金銭面ではなく、いかに向上心や積極性が低いのかが自分なりによくわかりました。「現状維持では危機になる」そういった事から教育していく必要性があると結論付けました。

それと資格取得にこだわったのも、平成30年秋から運用が始まる予定の「建設業キャリアアップ制度」が開始されるのも理由の一つです。

建設業キャリアアップ制度とは現場経験や保有資格が業界統一のルールでシステムに蓄積されることから、十分な経験を積み、技能の向上に努める技能者が適正に評価され、それを通じて処遇の改善につながる環境を整えていきます。(キャリアアップシステムHPより抜粋)

この新制度の運用にあたって自分が感じたのは企業や労働者は「値踏み」されるということです。有資格者や長年の経験者は評価するが、資格が無ければ企業や労働者は評価できない。そんな風にも感じとれます。逆に有資格者がたくさん在籍している企業は有利になる。資格があれば労働者単価が上がる。仕事が安定する。といったところでしょうか。これから資格取得は競合他社との差別化にも必須項目であると考えています。

強い達成意欲や大きな向上心があれば、この論文の問いでもある「生産性の向上」にも大きく関わってくると考えられますので、まずは資格取得に向けた教育から始めていこうと思います。

 

 

6. 今後の課題、監査方法

パーソナル診断を行い診断結果を各従業員に配りましたので、自分の強みと弱点を少しでも意識してくれたら、これからの仕事にも生かされてくると考えています。

なにより自分自身のパーソナリティ診断が役に立ちそうです。コミュニケーションや積極性といった部分の点数は高いですが、真面目さや達成意欲といった項目の点数が極めて低いです。自分では真面目と思っていたけど第三者から見れば、そんなに真面目ではなかったのかもしれません。特に達成意欲や根気強さといった所が低く、代表者として恥ずかしい部分です。

自分が達成意欲の意識が低いので、社員全員の意識が低いのかもしれません。小規模な会社こそ代表者の意思が従業員全体に伝播し、従業員全体で法人の性格を決めているものだと感じました。その為にも代表者が先頭に立って問題解決に挑み、目標やビジョンを明確にし、それに向かって目標を達成しようとする姿や言動が重要ではないのかと考えられます。

今後の監査の方法としまして、各現場の終了時には現場監督から他社と比べてどのような点が勝っているのか?また他社と比べてどのような点が劣っているのか?アンケートやヒアリングを行い、社員教育は月一回の全体会議の中でビデオや資料を使って指導し、来年の同じ頃にパーソナリティ診断を実施して、1年前に比べてどう意識が変っているのか調査したいと考えています。

 

 

取引先アンケート解答例

 

 

7. 結び

生産性を高め達成意欲の向上を図るには代表者自身の意識改革と社員教育からという結果になりました。

来期は社員教育に力を入れる事を決定し、この前の月例会議で発表したところ、勉強や会議が嫌いな職人達なので反発が大きいと予想していましたが、意外と反対意見は無くすんなり聞き入れてくれました。なぜなのか。いつもなら必ずと言っていい程、自分の意見を言ってくる人達なのに。僕はなぜなのか考えました。今回の会議では「絶対に来期は社員教育を充実させる!教育が嫌なら辞めても構わない!」といった意気込みで望んだので、その意気込みが伝わって反対意見が出なかったのではないのか?ビジョンや方向性は明確に力強く示すのが伝わりやすいと感じました。

いかに経営理念やビジョンが大切か。このスクールで学んだ事でもあります。そこで僕は今まで当社には無かった経営理念を決めました。

 

経営理念 【共成】

共に成功し共に成長する事を目指し、全従業員の物心両面の幸福を追求する。

 

後半は起業家研究しました稲盛和夫さんの経営理念をお借りしました。経営理念を決めた事によって、自分自身が楽になったような気がします。例えますと、船で大海原を西の方角に進んでいたとします。海は広いです。沖に出て陸地が見えなければ、どこに居るのかさえ分かりません。だいたい西の方に進んでいると思っていても、合っているのかは定かではありません。そこに経営理念というコンパスを手に入れ、向かうべき方角がはっきりとわかった。そんな感じです。ビジネスや思考の世界はとてつもなく広く深くて、時代の流れもとても早いです。迷わないよう自分や会社の進むべき道を示すコンパスのように経営理念があるものだと感じました。

 

また、来期は社員教育に力を入れる!と従業員に話して「なぜ今更!?」と反発があったとしても、「自社の経営理念である、【共に成長する】を目指すからだ。」と説明できます。これからいかに経営理念を社員に浸透させるかが今後の課題です。

 

当初F&Mの担当者から勧められたビジネススクールは不安でした。なにせそんなに勉強もできないし、今までたくさん勉強した覚えも無い。ついていけるか心配でしたが、知らない事や新しい発見も多く、クラスの同志と学び勉強する事はとても有意義な時間でした。今からでも学ぶのは遅くない。そう思えるようになり、これからもいろいろと積極的に学んで行きたいと思います。

最後に、半年間にわたって指導と勉強を教えてくださった原田校長をはじめ、学ぶきっかけを与えてくださったF&M担当者の絈さん、卒論を担当して頂いた大西先生、グループワークや一緒に勉強したOC04の同級生、このビジネススクールで出会った人達、皆様に心から感謝し結びと致します。

 

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