お問い合わせ・資料請求

修了生論文

当社の改善に向けた取り組みについて

東京校 (T-college) アドヴァンス 山中 啓壽株式会社山中兵右衞門商店 代表取締役)

1、研究動機

 

昨年4月から始まったベーシッククラスでの学びを通じ、経営の基礎的な知識を得ることができた半年は、非常に充実した期間でした。いままでカンを頼りに思考をしていたものには実は法則があり、フレームワーク等に照らし合わせれば、結果はある程度予測できることが分かったのは、学校の勉強を懐疑的に思っていた私にとって、大変新鮮なことでありました。人は身を置いた環境によって、良くも悪くも影響を受けることで変わることができます。ベーシッククラスでの半年の環境は、仲間との磨き合いで学びの習慣を得ることができました。

しかし卒業後に元の環境に戻ることで、考え方や学びの習慣を手放してしまう不安を持っていた私が、アドヴァンスクラスへ進学したのは必然の流れでした。

今回の卒論のテーマを考えた時、はじめに候補に挙がったのはベーシックでの卒論の内容検証でした。

しかし、ベーシックでの卒論の内容を中期的な経営戦略をテーマにしておりましたので、検証するにはデータが不足していました。そこで、このアドヴァンスクラスでの授業内容を今一度振り返ってみました。内容としては、ベーシックの知識を活かして自社の改善を具体的にどのように進めているかの発表と、それに対しての意見・質問を出し合う授業形態でした。それらを勘案し、今回の卒論テーマを、この半年の当社の改善とこれからの取り組みについて述べていきたいと考えます。

 

 

2、当社の現状

 

今回、当社経営の現状把握を決算書を基に考えました。

当社は昭和7年の法人化より数えて今期で86期目を迎えますので、84期の決算内容と85期の決算内容の比較によって、どのように改善できたかが比較できます。

以下、当社の現状(84期)を述べていきます。

 

①B/S分析

単位を千円とし、次の通りの金額でした。

A)総資産 0,000,000千円

B)流動資産 000,000千円

C)固定資産 000,000千円

D)流動負債 000,000千円

E)固定負債 000,000千円

F)純資産 000,000千円

 

以上AからFの金額から、以下の数値が算出されます。

a)自己資本比率 30.43%

財務体質の健全性・安定性を総合的にとらえた指標です。

30%の数値は比較的高い数値といえます。

 

b)流動比率 98.01%

企業の支払能力や資金繰りの余裕度を表す指標です。

一般的には200%以上の数値が目安といわれていることを考えると、非常に脆弱な数値に見えます。

 

c)固定長期適合率 101.82%

設備投資を安定的な資金で賄われているかを判断する指標です。

一般的には100%以下の数値が目安といわれていることを考えると、不安のある数値と言えます。

 

このように、自己資本比率は適切な数値ですが、流動比率や固定長期適合率の数値は良い印象を与えることができない値となっています。

 

②P/L分析

主要数値は以下の通りです。

A)売上金額 0,000,000千円

B)売上総利益 000,000千円

C)営業利益 △00,000千円(減価償却費:00,000千円)

D)経常利益 △00,000千円

E)当期純利益 00,000千円

 

84期は、営業利益・経常利益ともにマイナスでしたが、資産売却(土地)をすることで含み益を吐き出すこととなり、最終の利益はプラスに転じています。

卸売業が主体ということで、売上総利益率は7.76%という低水準です。そしてその低水準の粗利益では賄えない販管費が発生しているのです。減価償却費を差し引いた償却前利益でも営業損失となっているのが現状です。また、この営業損失の状況が数年続いております。

 

以上①②の状況から、自己資本は比較的充実しているが資金の流動性が悪く、財務体質が脆弱であることがわかります。また、84期は資産売却によって最終利益は確保されましたが、営業赤字は数年続いていることから、内部留保の切り崩しが常態化しているのが現状です。

 

 

3、現状からみる課題

 

前項で述べたことより、この状況が続くようでは創業より300年続いてきた当社の歴史の幕引きは、火を見るより明らかです。B/S・P/Lともに改善の必要があるうえ、その改善の手法によっては現在の主力事業である酒類卸売業からの撤退も必要になる可能性もあります。この状況を打開するため、より詳しく紐解いていきます。

 

①B/S

  • 流動負債の総額の半分以上は当座貸越による借入である
  • 流動負債の有価証券の帳簿価格に対し、現在の時価評価格で000,000千円以上の含み益がある
  • 固定負債の土地の帳簿価格に対し、直近の路線価格で000,000千円以上の含み益がある
  • 借入依存度が50.27%あり、P/Lに影響を与える(金利負担が大きい)
  • 金融機関への年間返済額が約00,000千円あり、資金不足分を補うために折り返しの借入を行っている

 

②P/L

  • 売上金額に対し、売上総利益金額が小さい(売上総利益率が低い)
  • 販管費の科目では人件費以外に大きい金額の科目はない(少人数で業務運営ができるように改善が必要)
  • 経常収支がマイナスになっている

 

上記のようにB/Sにおいては、当座貸越の「見せ方」を変えることで見栄えを変えることができ、更に含み益が潤沢なことから、それをどのように活かすかの戦略が必要なのが見えてきました。

また、借入金の返済額を少なくするために、借り換えを行って借入期間の長期化や当座貸越による借入へのシフトの必要性も見えてきました。

P/Lからは、ベーシッククラスの卒論でも記述した利益率改善の他に、業務改善による少人数運営が喫緊の課題であることが分かりました。

 

 

4、これまでの改善の取り組み

 

4-1 財務改善

まずは手をつけ易く社長の決断で改善の進む財務部門から着手しました。

①流動負債の短期借入金の科目に載せていた当座貸越の借入金 約000,000千円を、固定負債の長期借入金の科目へ付替える(借り換えではない)

②その他の資産に載せていた積立保険料並びに積立配当金 約00,000千円を、流動資産の科目へ付替える

③静岡銀行の3本の証書借入を2本にまとめ、ともに返済期間を10年として返済金額の減額を図る(返済月額 1,166千円 ⇒ 416千円)

④静岡銀行から00,000千円の当座貸越枠増額

 

①②によって、85期のB/Sは右図のようになっております。各数値は次の通りです。

a)自己資本比率 29.22%

b)流動比率 214.43%

c)固定長期適合率 62.52%

前期のものと比較すると、流動比率並びに固定長期適合率の数値が一般的な値に収まりました。

金融機関以外にも決算書類を提出する先があることを考えると、見栄えの良さも必要なことかと考えます。

また③により年間の返済額は9,000千円減額となっており、以前に比べて金利を下げての借り換えとなっています。

更に④によって資金調達余力がアップし、証書借入の前倒し返済も含め、今後の選択肢が広がってきました。

 

 

4-2 業務改善

P/Lに影響を与え、継続的な収益を生み出すには業務改善を進めていかないとなりません。次の通り進めております。

①財務ソフトを税理士と連携とれるものに入れ替え

②現在2フロア使用している営業業務を1フロアに集約する

③40年来使用している事務机を廃棄し、新しく使いやすい(大きい)事務机を導入

④保管の必要ない書類や事務用品の入った書棚を廃棄

業務改革は即効性ないが故に、スピード感をもって押し進める必要があります。①は86期(今期)が始まる昨年11月から導入しました。今までは税理士には決算書類作成のみ依頼をしていましたが、年1度のやり取りでは財務処理の間違えの訂正に無駄な時間を費やし、更には間違えを発見できないリスクがある点から、財務ソフトの入れ替えを行いました。税理士との連携を密にして不要な財務処理を止めることや、給与ソフトや全銀システムと財務ソフトとの連動を進められるように現在調整をしています。

‘②から④は全て関連しています。2階の人員を1階に集約するため、1階事務所の片付けをしたところ、必要ない書棚が事務所スペースを占拠していたのです。また、古い事務机は最近の事務机に比べて最大50cm狭いために、1人が2台を使用している状況でした。事務机と書棚の廃棄をして新しい事務机を入れたことで、事務所が明るくなりました。また、書棚がなくなったことで「しなくて良い作業」の削減も図れています。現在、段階的に人員を1階フロアに移動しています。今年5月には完了する計画です。

人件費に直結する人員数を比較すると、昨年の同時期(3月末)と比べ2名が減っています。現在社員が20名ですので、1割の人数が減りながらも業務ができているのです。今後も人員の自然減が起こっても、その人数で業務ができるように改革を進めていきます。

 

 

5、これからの取り組み

 

今後も継続的に改善を続けています。現段階で検討している取り組みを記載します。

 

①新規銀行取引

現在借入をしている金融機関は3行です。地銀2行と政府系金融機関1行となっています。それぞれの借入比率は、地銀㋐が約7割を占め、地銀㋑が約17%、政府系㋒が約13%の割合です。かつては取引が一番古い地銀㋑の借入比率が高かったのですが、リテール部門への積極展開に比べ企業向け融資への消極的な取組によって、地銀㋐の借入比率が高まっていきました。銀行取引の1行集中は、リスクが伴ってきます。リスク分散のためにも地銀㋐の借入比率を抑える方法を検討してきました。ですが現在取引のある残りの2行では借入比率の大幅な改善には至らないと判断し、地銀㋓との新規取引を検討しております。

地銀㋓との商談では証書貸付による融資のご提案を受けましたが、現在の当社の財務内容を鑑みると、当座貸越での融資を受けることによって資金調達余力を強化し、同時に返済付きの証書貸付を返済(借換)する方法が望ましいと考えています。現在は当座貸越融資の交渉を続けております。また地銀㋓からの証書貸付の金利は、現行の地銀㋐の金利と比べて約0.4%低い提案を受けました。これからの金利交渉をするうえで、有利な情報を得ることができました。

 

②業務ソフトの入れ替え

現行の業務ソフトは、かつてビールメーカーが作成したものを使用しておりましたが、現在はビールメーカーが自社でのソフト開発・メンテナンスを手放したため、別のシステム会社にメンテナンスを依頼しています。

しかし導入から30年近く経ち、最新のシステムと比べると使い勝手の悪さが浮き彫りになってきました。最新のシステムを導入することによって作業効率・生産性が上がる算段が付いたことから、早ければ今期中の導入に向けて準備を進めております。

 

③組織図の導入

組織が最高のパフォーマンスを発揮するためには、組織内における役割や役割間の指揮命令関係を明確にすることが必要と考えます。組織図は役割・指揮命令関係を明確にするには適したツールです。

当社において、かつては複数の支店や酒類製造部門等を保有していたために組織図は存在していたはずです。しかし近年、単一の事業所となったことが理由か、組織図を持ち合わせていませんでした。各個人がカンと経験から役割を担っていたと言えます。改めて組織図の導入をすることで、Ⓐスタッフとしてやるべき仕事や役割の認識や、Ⓑ管理職としてどのようにして指示伝達を行うかの整理が必要であると考えました。その組織図(案)が下図となります。次回取締役会で導入を決議し、役割変更の際には変更をするように進めてまいります。

組織図を作ることが目的ではなく、組織として最高のパフォーマンスを発揮するためのツールとして活用をし、縦割り組織ではないひとつのチームづくりに利用してまいります。

 

 

 

6、まとめ

 

平成27年12月の当社株主総会における代表交代より2年。恥ずかしながら、最近になりやっと自社の現状把握ができてきた認識があります。現状に悲観せず、常に前を向いて自分自身が先頭を切って改善に取り組んでいくことが必要です。資産を有効に活用しB/Sのスリム化を進める点、そしてムダな業務を削ぎ落とすことで生産性を上げる点の2点につきます。

論文で述べたこと以外にもまだまだできることはあるはずです。柔軟な思考を持ち、社内の改革意識を醸成し、社員自らが改善に向けての行動する組織へ導くことで社員の成長と会社の成長につなげてまいります。

pagetop