お問い合わせ・資料請求

修了生論文

組織改革と人材採用

東京校 (T-college) アドヴァンス 土屋 将貴株式会社文優社 代表取締役)

1.動機

 

今回、論文のテーマを組織改革と人材採用にしました。このテーマにしたのは、ここ数年にわたる業績の不振と幹部の退職が理由です。会社を継いでから約7年、業績アップのために自分自身が営業の先頭に立ち、新規開拓に明け暮れました。その甲斐もあって取引先数も増え、3年前に売上は過去10年という期間の中では最高、というところまではいきました。しかし、そこが業績のピークになってしまい、更に業績アップを目指し努力は続けるも、じりじりと売上は下がり続け、結果、下げ止まっておりません。

そこで新規開拓の営業だけではなく、さまざまなことに取り組んできました。私は2代目ですが、父の時代にはなかった「経営理念」を自分なりに考え、成文化する。古参幹部が退社して、より秩序のなくなった組織に秩序を確立すべく新幹部を任命する。組織に階層をもたせることで指示命令系統を確立する。任命した幹部が、幹部としての役割を認識し、何をすべきか迷わないように、3名の幹部全員と外部の幹部研修に社長も含めて出席する。そこからの幹部との対話、一般社員さんとの対話を進めてきました。しかし過去の動乱の傷跡は深く、お互いの不信はあまり解消されないままになっておりました。

結局のところ、ベーシックでの学び、気づきを社内に落とし込めておらず、「合意形成」があまりないままに、物事を進めてきたことにも原因があるのではないかと思っております。そこで今回、幹部の退社というピンチをチャンスに変えるため、今まで以上に合意形成を意識しながら、組織改革と人材採用に取り組み、業績の回復を目指します。

 

 

2.企業概要と現状について

 

会社名:株式会社文優社

設立 :昭和60年

会社所在地:東京都江東区東陽1−17−11

資本金:2000万円

社員数:12名(パート1名含む)*女性は1名のみ(2018年2月時点)

事業内容:印刷業(デザイン、印刷、ノベルティ、AR等の企画、制作)

年商:3億円程度(ピーク時の3分の1程度)

私の父、土屋文四郎が昭和60年に創業した会社で、現在の売上構成は上場企業3社に大きく依存しており、全体の7割を占める状況です。

しかし大手企業は広告媒体を紙から電子へ、また環境への配慮等からも印刷物を減らす傾向にあるため、大手に依存しない体質もしくは印刷物以外の売上を作っていくことが急務と考えます。

 

 

3.印刷市場の動向について

 

自社の属する業界は印刷業界になるが市場規模は右肩下がりで、それは今後も継続していく傾向にあります。以下が参考資料です。

 

 

「工業統計による印刷産業の出荷高は、2004年には7兆2127億円、2014年には5兆5364億円となり10年間で1兆7千億円の減少となりました。印刷産業全体の市場規模は、出荷額にソフト・サービス、精密電子部品や産業資材等、他の製品分類の事業分野を加算して推計します。SMATRIX2020では、2010年の市場規模を約8兆円、2020年約7兆4千億円に縮小すると予測し、今後、デジタル化、高機能化、ソリューション&アウトソーシング分野への参入、さらにはビジネスモデルの進化等、印刷産業の高度化が進むと考えられます」

出典:日本印刷産業連合会『SMATRIX2020』https://www.jfpi.or.jp/topics_detail6/id=77

 

以上の資料から印刷業全体市場はますます縮小(2010年 ⇒ 2020年 ▲約5千億円)傾向にあることが分かります。これは当社の規模の会社が2,000社近くなくなることを意味しているとも言えます。実際、事業承継から7年。同業の仲間の会社がいくつも廃業や解散に追い込まれるのを見てきました。

 

 

4.問い

 

そこでまず、現在の当社の大手依存型の売上体質を改善し、縮小する市場で生き残り、成長発展する企業になるために自社の分析をし、今後どう展開していくべきかについて検討していくことにする。

 

 

5.研究の手段

 

社内でSWOT分析を実施し、社員全員で課題を認識し整理してみたいと思う。その後、3C分析、STP分析、4P分析を行うことで戦略を検討することにします。

 

5-1 SWOT分析

 

内部環境 S 強み W 弱み
  1. 商材が多い(印刷+α:デザイン、ノベルティ、電子ブック、AR、梱包発送、内職など)
  2. 価格競争力(デザインが比較的安く、案件ごとに勝負できる)
  3. 対応力(営業担当にかなりの権限が移譲されている。スピード、金額、ワンストップサービス)
  4. 社内にはデザイナー、社外には多数の協力会社の存在
  5. 顧客密着営業
  6. 歴史(地域で30年以上の営業実績)
  7. 好立地(都内どこでもすぐに行ける)
  8. 金融機関との良好な関係

社内メンバーが若い

  1. 特化したもの、目玉商材がない
  2. ネット印刷と同じ価格では提供しずらい
  3. 個人に頼りすぎる。組織化されていない。ルールが少なく自由すぎる。
  4. 社内のみで完結できるものが少ない(協力会社依存)
  5. 新規開拓力が弱い
  6. 地元を開拓しきれていない
  7. 従来のアナログ体質から抜け切れていない
  8. 借り入れ依存体質
  9. 組織に規律がない
  10. ITに弱い。アナログ体質。
  11. 社長のリーダーシップ

 

 

外部環境 O 機会 T 脅威
  1. 未開発の商材がある(まだまだできることがある?)
  2. 紙とデジタルの融合が進む
  3.  face to face(直接会うことの価値が高まる、ネット印刷の台頭により、会って話せる印刷屋は減る。)

二極化が進む(値段とクオリティ)

  1. 業界の将来性(協力会社、職人の高齢化、若い人が志望しない業界?)
  2. 競合の増加(我々の市場への大手の参入、地方からの進出、M&Aによる競合の大型化)
  3. お客様の要求の高度化(クライアントの即レス要求、すぐに簡単にできると思われる。時間・納期の短さ)
  4. コストの上昇(印刷物はデフレ、原材料、発送料等はインフレ)
  5. 環境意識の高まりによるペーパーレス
  6. ネット印刷の台頭
  7. スマートフォン、タブレットの進化によるペーパーレス化の進展
  8. AIに進化によってデザイン制作が人間じゃなくてもできるようになる。

 

以上、忌憚のない意見を出してもらいました。今回驚いたのは、業界の将来性そのものへの不安を持つ社員の存在でした。実際、今回退社するベテランの一人は、退社理由を業界の将来性への不安としていました。かつて入社時のインタビューでそのような話は出なかったので大きな変化を感じます。その他、弱みのところで「社長のリーダーシップ」が挙がっていることには申し訳なさを感じました。社員さんの期待に応えられていない、経営者としての仕事ができていない、ということの表れと感じます。業界の将来への不安を払拭できるだけの夢やビジョンを私自身が語れていないということが課題として浮き彫りになりました。

 

以上、業界の市場規模の推移と当社の現状を見てきました。今後当社が大きく成長発展するためには、規模の縮小が進む印刷市場だけで戦い続けることは非常にリスクが高いことが分かりました。

強みと機会を踏まえた自社の取るべき方向としては、face to faceで顧客自身も気づいていなかったニーズを把握し、ワンストップで幅広い商材とサービスを提案、速さとそれなりの安さで対応してくれるサービスを必要とする市場へアプローチすることが大切であると考えます。

実際、あらためて当社の売上の中身について分析をすると、従来は売上のほとんどは印刷物によるものでしたが、近年はデザイン・印刷用データの制作業務(印刷はクライアント自身がネット印刷に発注、もしくは自社機械にて行う)や梱包・仕分け等の発送代行業務などの売上も若干(現在は全体の7%程度)ですが、増加傾向にあることが分かりました。これは印刷物の仕事が減る中でどうやって売上を作っていくか悩み抜いた末に営業マンが生み出した新しい売上項目になります。これらを踏まえ、さらに分析を進めます。

 

5-2 3C分析

Company

→デザイン、印刷、ノベルティ、電子ブック・AR、梱包発送等においてface to faceで顧客の真のニーズを把握し、ワンストップで幅広い商材を提供できるスピードと価格の対応力がある。

 

Competitor

→安いだけの印刷屋は多い。

 

Customer

→発注の金額は大事だが、他の仕事もたくさん抱えているため、とにかく早くこの案件を終わらせたい。

ネットが安いのはわかるけど、印刷の知識がないから、これでいいのかわからない。調べている時間もあまりないからとにかく誰か手伝って欲しいが社内は人員削減により人手不足…

 

5-3 STP分析

Segmentation

→東京都内 特に某地域が増えている。

 

Targetting

→ある程度の規模の売上(年商10億円以上?)を持つ企業。 販促を定期的に行うが、リストラ等で配置されている人員が少なく、時間に追われている担当者がいる企業

 

Positioning

→デザイン、印刷、ノベルティ、電子ブック・AR、梱包発送等においてface to faceで顧客のニーズを聞き出し、ワンストップで幅広い商材を適切な価格で素早く提供できる。

 

5-4 4P分析

Product

→デザイン、印刷物、ノベルティ、電子ブック・AR、梱包発送のワンストップサービス

 

Price

→単品ではネット価格に合わせづらい。

しかし単品、単発ではなく、デザイン→印刷→発送までの全行程を一括で注文をいただければ、時間的にも金銭的にもコスト削減提案が可能。

 

Place

→東京の下町に拠点があるため、都内どこへでも素早く行ける。

 

Promotion

→飛び込み等の人海戦術に加え、印刷屋ならではの折り込みチラシやネット広告を、今伸びてきている地域に集中投下する。

 

以上、3C→STP→4Pと分析を進めてきました。この分析自体は私が一人で取り組んだものなので、あらためて社内で時間をとって営業と一緒に検討し共有、合意形成を図ることで確実に実行に移せるようにしたいと思います。
最後に人材採用を通じた組織改革について検討し、今後の展開について考えます。

 

5-5 人材採用と組織改革

今回、自社の強みである、「デザイン力」を支えるベテランのデザイナーが3名中2名退社という事態に陥ってしまっております。これは先ほども述べましたが、縮小する業界の中で自社のビジョンや夢を明確に示せなかったこと、また私のリーダーシップの欠如が原因であると考え、今後はビジョンの共有をより一層進めていくつもりですが、この再び起きた大ピンチを組織改革のチャンスと捉え、今回、これまでしてこなかった人材採用を積極的に進めました。

募集したところ、予想以上の反響で200名以上の応募がありました。結果、3名のデザイナー経験のある方と、未経験の新卒学生1名の採用に成功することができました。

業績回復があまり進まないにも関わらず、新卒の採用に踏み切ったのは、これまで自社に欠けていた「人を育む社風作り」に挑戦するためです。奇手奇策かもしれませんが、この社風作りを通じて、過去の組織の過ちを払拭し業績回復を目指したいと思います。

さらなる改革としては、従来は女性が1名しかおりませんでしたが、思い切って女性を3名採用し、男女比のバランスを従来の11:1から10:4と男子校風から共学風に変更しました。3月時点では、まだ女性が1名入社して2名体制となっただけですが、1人女性が増えただけでも、職場には以前よりも活気が生まれ、訪問された金融機関担当者にも元気な会社ですね、と言われるほどでした。

そして今回の採用によって、デザイナーは従来の3名から4名に体制を増強することで、営業マンとの同行訪問を積極的に強化し、デザイン案件に対して強い会社であることをさらにアピールしていく予定です。

 

 

6まとめ

 

以上、自社の属する印刷市場の動向と自社の分析を進めてきました。これによって自社の強み、攻めるべきターゲット、そしてエリアが明確になりました。

具体的には、縮小する印刷市場のみで戦わず、周辺のデザイン、ノベルティ、梱包発送の市場を跨いで戦う。顧客が集中しており、売上が上昇している特定の地域に特化して戦力を集中的に投下する、という戦略ができました。

今後は引き続き、戦略の実行と定期的な人材採用をセットで進めることで組織改革を進め、最終的には、社員さんや顧客、関係者のみなさまに「文優社があってよかった!」と思ってもらえる会社にしたいと思います。

pagetop