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修了生論文

自社分析とこれからのビジョン

大阪校(O-college) 吉田 創 (吉田工業株式会社 )

1. 自社概要

会 社 名;吉田工業 株式会社

代   表;吉田 稔

創   業;昭和44年

会社設立;平成28年10月

資 本 金;300万円

    商;4.500万円

 

当社は、私の祖父が昭和44年に吉田工業所として創業し平成14年から現在までは父が代表に就任している。平成28年10月法人化した。

従業員は7名(作業者はうち5名)で家族経営の小さな町工場で、大手取引会社の下請けとして、ダイヤモンドドレッサーの旋削加工・切削加工を行っている。

 

(ダイヤモンドドレッサーとは)

簡単に言うと、砥石を整える工具である。砥石は研削中に砥粒の破砕や脱落によって切れ味を保つが実際の加工では、目詰まりや、目つぶれが発生することで作業の効率が低下する。形状崩れを起こしている砥石の目直し・形直し・成形を行うものが当社で加工しているダイヤモンドドレッサーであり現在の産業には欠かせないものである。

 

 

2. 入学動機

2015年、私が28歳のころ、取引先様のご厚意で「研修に来ないか」とのお話をいただいた。当時はペットショップで店長をしていたが、30歳までに父のあとを継ぎたいと思っていたので、転職を決意した。1年間お世話になる中で、金属加工のイロハを学びその後、吉田工業株式会社(当時は吉田工業所)に入社した。

 入社直後は、ネット環境すら整っておらずFAXのみで受注していた。製品在庫も、乱雑に並んだおかきのカンカンの中に、入っていた。なんともアナログな、創業当時から変わっていないんだろうと思った。入社して最初にパソコンを買い、商品の在庫管理の方法を変えた。また、最新のNC旋盤をものづくり補助金を利用して購入し、稼働させた。エフアンドエムの担当の大西様の勧めにより、スクール体験を受講することになった。私のやっていたこと考えていたことは、いわゆる店長仕事で「経営とは違う」ということがわかり、経営について勉強してみたいと思い入学を決意した。

 

 

3. 研究動機

「成長しなければ死んだも同然だ」

企業家研究で題材にしたユニクロ柳井社長の言葉である。これを見て、「成長していない、目標すらない・・・」と思った。ある日、私は、会社にとっての一番の課題は何か?と聞かれたことがあったが、私はその問いに明確に答えることができず、恥ずかしく思った。そのことが会社にとって一番の問題である。自分は何をすべきなのか?どんな会社にしていきたいのだろうか?と自問自答した。来年創業50周年を迎えるにあたり、まず自社の分析をしてそこから見えてくる課題を整理してみることにした。

 

 

4. 財務分析

 

4-1 過去の売り上げ

(万円)

目立って売上が減少したのは、(あ)平成21年(リーマンショックの影響)(い)平成24年は東日本大震災(平成23年)の影響である。平成21年以前も含めて、その他は3.000万円程度で推移しているが、平成26年から増加傾向にある。当社は取引先である大手一社に依存している形態であり、ラインの一部のような存在であるため、このグラフの形は取引先の売上推移とおおよそ一致する。

 

4-2 平成28年の売上(法人化して一期目)

*守秘により一部は非記載

累計損益計算 累計利益率
売上 000000000
売上総利益 000000000 93%
営業利益 000000000 16%
経常利益 000000000 15%
税引前利益 000000000 15%
税引後利益 000000000 12%

 

加工賃による収入を主としているため、材料費がかからないことで売上総利益が93%と高くなっている。製造業でありながらサービス業に近いかもしれない。こちらも過去のデータと比べてみたが利益率について、それほど変動はなかった。

 

 次に、なぜ当社が50年もの間、存続しリーマンショックや、震災の影響にも耐えることができたのか。当社の強みとこれからの課題を明らかにするためにファイブフォースモデル分析とSWOT分析を行った。

 

 

5. ファイブフォースモデル分析

当社は現在、大手取引会社一社に依存した形態であり、取引会社のダイヤモンドドレッサーの売り上げの影響をもろに受けるため2つに分けて考えてみることにした。

 

下請け金属加工業界 ドレッサ業界
新規参入者 〇他製品を製造している工場が設備の有効活用のために参入してくる。

〇メーカーからの技術者独立による新規参入。

〇ドレッサーを使用する大手のユーザーにとって信用に重きを置いていることが多いので新規参入の障壁は高いと考える。

 

業界内脅威 〇後継者不足。

〇当社で使用しているような、汎用機や手作業の機械がメーカーの撤退によりサポートを終了するおそれがある。

〇営業力の強い工場に仕事を奪われる。

〇価格競争により利益の圧迫。

〇取引先の生産能力が上がることにより内製化を進められる。

〇業界内での価格競争。

〇RoHS指令などの規制が強まり違反するリスクが高くなる。

 

代替品 〇取引先の内製化。

〇海外への委託。

〇3Dプリンタなど技術の発達により誰もが製造できるようになる。

〇モノタロウなどのプライベートブランド(汎用の製品のみ出回っている)

〇海外製模造品。

 

売手交渉力 〇鉄は大きく重たいわりに安価なため、小ロットで売ってくれる業者が少ない。(あっても割高)価格交渉は不利である。

 

〇人工ダイヤの品質のばらつきにより、不適合製品の発生リスクの増加。

〇下請工場に対しての価格交渉は有利。

買手交渉力

 

〇右記に伴い

価格、納期、精度、更なる多品種生産と厳しい条件になってくるものと考える。

 

 

 

〇ユーザーの経費削減のための工程改善によりドレッサーの細分化が求められる。

(多品種・高精度生産)

〇ユーザーが在庫を持たないことによる短納期化。

〇そもそも砥石を使わなくなるとメンテナンス工具であるダイヤモンドドレッサーの必要性がなくなる。

 

(ダイヤモンドドレッサ業界)

ある程度すみわけされた業界ではあるが、今後、諸外国の技術向上による、自国生産が脅威である。各メーカーは修理のいらない使い捨てタイプの開発等、付加価値を付けた特色のある製品を打ち出している。特徴のない製品は、技術力の劣るメーカーや、アジア諸国の製品が安価に出回り、価格の下降が目立つ。今後ますます競争は激化するものと考える。そのことからユーザーからの要求は厳しくなってくると考えるので、精度・納期、価格のバランスをどう取るかが問題である。

ダイヤモンドドレッサのユーザーはベアリングやドライブシャフトなど車関係の製品を作る会社が多いため基本的には車の販売台数とダイヤモンドドレッサの売上額は相関関係にある。

 

(下請け金属加工業界)

当社のような零細工場は、規模の大きい工場が割に合わないような市場で仕事を取り合わなくてはいけない。そのため、工程改善による効率化や、小ロット多品種生産でも確実に利益を残せる体制を整えなければならない。また、少子化により、工場で働きたい人が明らかに減少しているのも業界の特徴である。現在では、工業高校の機械科や大学でも、教えるのはNC旋盤のみで手作業の汎用旋盤を置いているところが少なくなってきている、当社のような手作業の機械をメインでやっている工場は、人材育成がますます大変になり、後継者不足からやむなく工場閉鎖ということもしばしば聞く話である。

 

 

6. SWOT分析

内部環境強み

① 加工に際し必要最低限の人数で人件費が低く抑えられ、加工費も抑えることができる。

② 手作業での加工が多いため小回りが利き、多品種・小ロットの生産が得意である。

③ 後継者がいる

④ 毎日仕事に集中できる環境である

 

内部環境弱み

Ⓐ 加工費の計算の仕組みが確立していない。

Ⓑ 特定の技術者に依存している工程があり、代わりがいない。

Ⓒ 予算などの数字を誰も見ようとしてこなかった。

Ⓓ競合を知らない

 

強みを機会に

当社の最大の特徴である、丁寧な手作業での加工をメインに小ロット多品種生産ができ、最新のNC旋盤も所有し、稼働している事により生産数を確保することが可能である。

新・旧の機械の特徴を活かし、その両輪で新規開拓していく。他社のやりたがらない小ロットの製品を取っ掛かりに、利益率の高い製品の加工依頼につなげる狙いである。

当社は家族経営であり、営業部門もなければ管理部門もなく、社員全員が直接利益を生む作業に専念できる環境にある。その結果が、長年にわたり利益を出せてきた理由の一つであり、強みであると考えた。

しかしこれは、表裏一体であり危険な状態ともいえる。必要最低限の人数というのは、層が薄いと言えるし作業に専念しているというのは言い換えれば作業以外のことをする余裕がないとも言える。そして管理部門はなくとも、全員が数字についてある程度の知識を持って意識しているほうが良いということは言うまでもない。

家族経営においては親世代と、子世代で30年近く離れている事になるため、ミドルクラスの中堅の職人がいないことは、人件費の面では有利であるが、技術の継承は早急に行うべき課題である。

技術の継承においては、授業で習ったスマートフォンでのビデオ撮影を始めることにした。

また、一社依存型の経営から、新規開拓を狙うのであれば、弱みⒶの加工費の仕組みが確立していないのは致命的である。そこで、加工費の計算の仕方を確立するため、また管理会計の第一歩として、製品ごとにかかる経費(材料費・人件費)を調べてみることとした。

 

 

7. 原価率調査

調査方法

① 対象の製品の箱にストップウォッチを入れ、作業者がその箱を持った時点から、加工が終わり次の工程の作業者に手渡すまで、全工程終了の場合は加工終了時までの時間の計測をする。

② 材料費の欄が0の製品は、二次加工のため材料費がかからない製品である。

③ 材料費は1キログラム当たり280円で算出している。

④ 人件費については、担当者の賃金を時間給に計算し、総和の数値を記入した。

 

製品A(50個) 製品B(300個) 製品C(50個) 製品D(10個)
材料費 1.380円 7.980円 728円 242円
総時間 3H10M 4H 4H30M 1H
人件費 5.858円 7.400円 8.325円 1.850円
販売価格 480円×50個 140円×300個 600円×50個 300円×10個
原価 13.096円 15.380円 9.053円 2.092円
原価率 54% 36% 30% 69%
製品E(1個) 製品E(10個) 製品F(10個) 製品F(50個)
材料費 0 0 0 0
総時間 15M 30M 1H30M 3H30M
人件費 463円 925円 2.775円 6.475円
販売価格 480円×1個 480円×10個 480円×10個 480円×50個
原価 463円 925円 2.775円 6.475円
原価率 97% 19% 57% 26%

 

結果

原価率にかなりのばらつきがあることがわかる。製品の数が増えれば原価率は大幅に下がっている。これは機械加工において段替え(製品にあった機械のセッティングにやりなおすこと)の工程に多くの時間を費やすためである。

商品を仕入れて売る、というような単純な構図ではなく同じ製品でも個数によって加工にかかる時間が大きく変わってくる。赤字になる加工は極力避けたいが、その加工があるからもらえる仕事もある。また、取引先に試作品をどんどん作ってもらえるようにあえて安い値段で加工することもある。加工費の算出は、このような会社特有の考え方を整理してある程度の基準を作成し取り組まなければならないと考える。

 

課題

① 個数別の人件費を含めた原価のデータを集める。

② 各作業者の一時間当たりの生産金額のデータを集める。

③ ①②のデータから理想の人件費率を算出する。

④ 価格決定に関する当社の考え方を整理して基準を作る

 

この調査の目的は原価を知ることであったが、作業者一人一人が自身の一日の稼ぎを知ることができ、管理会計の一歩としては意味のあるものになった。

また、価格決定において決まり事がなく、取引先の担当者から相談を受けたり交渉しながら臨機応変に対応しており現状の良い部分は残していきたいと考える。ただ全く何の基準も決まり事も無いのはリスクがあり、ある程度、誰が対応しても同じ金額になるようなシステム作りは必要である。

 

 

8. 今後の取り組み

① 毎月の売上と予算を、社長、私、弟で共有し掲示する。(H30年4月より)→月の残業代等の予測を立て目標の残業時間を決めておき人件費の無駄を防ぐ。

② 金曜日の午後(時間が取れなければ土曜日の午前中)を技術継承の時間と定める。(実行中)→工程表を作成し、記入してもらい、実際に指導を受けて、その様子をビデオ撮影をする。忘れても工程表とビデオを見れば確認できる状態を作る。

③ 加工費の仕組みを確立するにあたり、主要製品30種類にて原価率票の作成。(5月末までに)

 

 

9. まとめ

今まで誰も数字のことを知ろうとしてこなかったが、この論文を通して、社長をはじめ従業員とも、自社の数字の話をすることができた。自分の一日の稼ぎを知り、「今日は全然稼げてないから頑張らな!」とモチベーションのアップにつなげてくれている場面もあった。私が弱みだと考えていた「従業員の層が薄いこと」、「全員が作業以外のことをしていない」という事柄は、実は当社が利益を出せてこれた理由でもあった。法人化して間もないため、漠然と会社が大きくなればいいなと思っていたが、コンパクトに稼ぎ続ける事を考えなければならない。社員一丸となって数字を意識し小さな町工場だからできる商売人に近いやり方を、きっちりした管理会計の下で行いたいと考える。

 

 

10. 最後に

このスクールでは「企業人たるもの紳士たれ」というように、小手先の経営テクニックではなく、企業人とはどうあるべきか。というところから教わることができた。私にとってタイトなスケジュールでのグループ発表などは非常にハードに感じたが、無理やりにでもやる環境、やらなければならない厳しい環境を作っていただき感謝している。次期経営者として当社の強みを活かし、確実に利益を出せる会社を実現して、零細な町工場の手本になること、そして一社依存型の経営から独り立ちするという目標に向かって、着実に前進していきたい。

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