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修了生論文

経営計画の策定
~中期計画から短期計画へ~

大阪校 (O-college)アドヴァンス 邨井 康祐株式会社住機トータルサービス 代表取締役)

1.【動機】

 

平成28年O-collegeを受講し、終了論文にて新事業の開始を決めた。平成29年1月より新事業を開始し、収益を作り出すことの難しさを痛感した一方、既存の事業との相乗効果も期待できることがわかった。

新事業への参入からはじまった挑戦の流れをさらに加速し、確実な成長につなげるため今回の研究論文を活かしたいと考える。論文作成に取り掛かるにあたり、再度 企業経営を再度自分の中で問い直し、会社の存在意義、目的を考えた。会社とはそこで働く人たちの意志のつながりそのものである。建物=会社や、設備=会社ではなく、会社=人の意思のつながりであるという考えに至った。
会社経営においての目的は、従業員が幸せになること、そしてその従業員が仕事を通して社会に貢献し、社会を幸せにすることであると強く認識できた。その為に重要なことは、永続的な会社の存続と発展である。

従業員が安定した会社で安心して個々の能力を発揮して成長する。それにより会社が発展し、社会に貢献していける場を作り上げていくのが 経営者である私の使命であると考える。

会社(事業)の永続的な存続と発展のためには、安定した財務状況と高収益体質が必要である。財務状況の具体的な目標として 自己資本比率70%以上、高収益体質の目標として いかなる外部要因があろうとも経常利益率10%以上と定める。

この目標に対して中期的にどう成長し、達成のため短期的に何をしなければいけないのかを明確にしたいと考える。

 

 

2.【事業の概要】

 

当社は平成10年に個人事業から合資会社として創業し、平成26年1月に先代の父より引継ぎ私が代表に就任した。

もともと赤字の会社であったが、平成29年には経常利益率7.5%程度確保できるようになった。しかしながら、事業規模が小さいこと、営業ができない事業構造のため少額の利益は出るものの毎期安定した利益は確保できていない。従業員10名。役員5名(非常勤含む)。

当社は、平成29年度現在TOTOメンテナンス㈱サービス代行店として、TOTO製品のメンテナンス及び販売取付業務を行うアフターサービス事業(以下AS事業)とマイスターコーティングFC店として、ハウスコーティング事業を行うマイスター事業部(平成29年1月より)の2事業部を有する。TOTOメンテナンス㈱との資本関係はない。

 

 

3.【目的】

 

「5年後従業員30名以上の会社になる」が当社の中期ビジョンである。

会社の永続的な存続と発展のためには売上規模の拡大と雇用の拡大が必要であると考えたからだ。

今回の研究では、ビジョンからの中期計画を可視化し、そこから短期計画、BSCへと落とし込み、売上規模と雇用の拡大のために今なにをすべきかを明確にしたいと考える。

 

 

4.【経営理念】

 

経営理念

 

『幸せになり 幸せにする』

一、私たちは、全従業員の物心両面の幸福を追求します

一、私たちは、地域に必要とされ、地域に愛される企業を目指します

一、私たちは、社会を幸福にし、輝ける未来の創造を目指します

 

目指す姿

  • 仕事をとおして、自らの成長を実現し関わる全ての人に感謝できる人間になる
  • 社会に貢献し、社会から必要とされ、社会から愛される理想の企業となる
  • 常に全力を尽くし、将来世代に誇れる仕事をする

ビジョン

「5年後従業員30名以上の会社になる」

 

 

5.【ビジョンの可視化】

 

上記の経営理念、ビジョンより30名の雇用という観点から以下(表①②)の売上、利益目標を立てる。

条件:従業員の平均給料が日本の平均年収+20%の水準となる。

経常利益率10%以上、売上高人件費率30%で試算する

 

表①

22期 23期 24期 25期 26期
従業員数 AS事業 10名 12名 13名 14名 15名
新事業 2名 3名 6名 11名 15名
合計 12名 15名 19名 25名 30名
売上高 AS事業 150,000 172,500 198,375 228,131 262,351
新事業 13,000 30,000 75,000 200,000 300,000
合計 163,000 202,500 273,735 428,131 562,352
利益 売上/人 13,583 13,500 14,388 17,125 18,745
経常利益 16,300 20,250 27,388 42,813 56,235
経常/人 1,358 1,350 1,439 1,713 1,875

(千円)

※マイスター事業部は23期に新事業として統合予定

 

表②

上記(表②)の試算より、毎年売上高24%~57%の成長が必要である。また、経常利益10%を達成するうえで、事業の収益構造の改善・改革が必要であると考える。

 

 

6.【目標達成へのマイルストーン】

 

次に、目標達成への道筋を可視化する。(表③)

 

表③

  • 22期に新サービス(売上を自ら作れるサービス)を開始する。
  • 23期に新会社を設立し、現状手を制限された領域に進出しマイスター事業を統合する。
  • 24期以降は元請け会社とのより良い関係を構築し、他エリアへの出店を目指す。
  • 全期を通して経常利益率は厳守し財務状況の改善を図る。

 

 

7.【戦略マップ】

 

上記の考察より短期(1年)の目標を、売上高+24%、経常利益率10%に定める。

次に短期の戦略MAPを作成する(表④)

 

表④

 

上記(表④)より、従業員の成長を営業力の強化と生産性の向上につなげ、顧客ロイヤリティの拡大を目指すことが必要であると考える。

 

 

8.【AS事業BSC】

 

次に上記(表④)戦略マップよりAS事業のBSC(表⑤)を作成する。

 

表⑤

 

(用語補足)

  • 取替リモデル・・・修理ではなく、製品の販売取替業務。リフォームも該当する。修理に比べ利益率は低くなるが売上金額は上がる。売上高と正の相関が高い。
  • 直受率・・・元請け会社からの依頼ではなく、当社が直接受注したものとなる。お得意様比率ともなり、いわゆるリピートの顧客である。売上高と正の相関が高い。

 

(考察)

戦略マップ(表④)より、管理者の教育及び全社員の意識の改革が必要と判断する。

日々採算を分析、管理し緻密な管理会計を実施できる仕組みが必要となる。

顧客数(現場数)の拡大が必要であり、財務体質の改善と共に従業員の意識改革を行うことによりサービスの範囲を拡大する必要がある。

 

 

9.【新事業BSC】

 

次に新事業のBSC(表⑥)を作成する。

 

表⑥

 

(考察)

現状、継続して飛び込み営業を実施している成果が少しずつ現れてきている。

しかしながら、単体として事業化できるほどでもなく善戦とは言い難い。

今期末に新しく独自性のある技術を手にしているので、当社の強みであるAS事業との連携を密にし、今後計画している分社化に向けて事業の領域を広げる提案が必要と考える。

ターゲットの設定を正確な分析で行い、住環境改善のための提案をしていくことで目標の達成に近づくと考える。

新規顧客の獲得と経費の分析が必要であり、社員の成長により達成していきたい。

 

 

10.【重点項目】

 

今回、研究論文を作成することで、3つの重点項目を再確認できた。

  1. 顧客数の拡大
  2. 財務体質の改善
  3. 従業員の意識改革

次に上記3項目を達成するための具体的施策を事業部ごとに考える。

 

 

11.【AS事業の戦術】

 

・顧客数の拡大

a.任せられる会社になる
現状、メーカーの代行店という縛りもあり自社内で施工できない案件に対しては断っていることが多い。今後は協力店との繋がりを強化し、なんでも相談でき、「あそこに言えば何とかなる。」と思われる会社になる。

b.新サービスの開始

老健施設、ショッピングモール、公共施設等に向け、提案型の点検サービスを実施する。定期的に施設内を点検し、専門家の目で不具合をチェックしこちらから修理提案する。そのことで、施設を利用される方のお困り時間を少なくする。

施設管理の方への負担も低減されると考える。

c.重点顧客の設定

現状、個人、法人問わず同じように接しているが、多くの顧客を持つ工務店、建設業者、設備業者に対し今後は直接取引できる関係を作り、いわゆる業者の困りごとにも相手の立場を考え対応していく。

現在、直接取引をさせていただいている建設業者からは信頼も得ることができており、粗利率もよくなっている。

 

・財務体質の改善

a.徹底した計器の整備

財務帳票は、飛行機に例えれば計器である。その計器が精密でなければ勘で操縦しているのも同然である。これでは目的地に無事着陸できるはずがない。

会社で言えば日々の採算を緻密な精度で示してくれる数字が計器にあたる。この数字が間違っていればどんないい対策を打とうとも的外れになってしまう。まずは、計器である数字を整備し、正確な会社の現状をあらわす指標が出せる体制を構築する。

b.日々採算を追う

言うまでもなく日々の採算が月次決算を作り、将来の会社を作っていく。

現状、月間で私だけが見ていた数字を、全員が見て共有できるようにわかりやすくする。その数字を日次に落とし込み、管理者、事務、施工者全員が改善できる仕組みを構築する。

c.徹底した経費管理

見積、消耗品、備品、車両等コントロールできる経費に関して徹底的に管理し、予算を厳守し決済の仕組みを変える。
固定費に関してもゼロベースで分析を行い徹底した削減を実行する。

 

・従業員の意識改革

a.理念の浸透

まず、管理者に対し理念教育を徹底するため管理者研修を実施する。その中で社風の改善のため社内で統一する価値観(哲学)を見出していく。その後、従業員に対し、勉強会、研修を行っていく。現状従業員に対し強制的な研修は前向きに受け取れる状況ではなく、まず私の考えの一番の理解者である管理者3名に良きフォロワーとなってもらい従業員を巻き込んでいきたいと考える。

b.モチベーションの向上
定期的な個別面談を開き個別の目標設定、進捗確認を行う。

また、会社の現状を共有し、従業員の困りごとを聞き取り、会社への安心感、会社の目標の共有を行う。

c.チームワークの向上

定期的に社内コンパを開催し仲間が今何に困っているのか、目標は何なのかを共有する。また、理念共有、社内言語の統一にも利用したいと考える。

事務作業の効率化のため、業務交換日を設定しお互いの業務を知ることによりチームワークを向上させたいと考える。

 

 

11.【新規事業の戦術】

・顧客数の拡大

a.営業力の強化

新規の飛込み営業のほかに、今期発注いただいた顧客にも継続的に訪問し受注につなげる。また、AS事業にて利用いただいている顧客に積極的にアプローチを開始する。

d.提案内容の改善

既存のコーティング業務のみならず、内装、設備等の受注を増やすべく協力店との関係を密にし、当社がワンストップで受注できる関係を築く。

e.ターゲットの絞り込み

現状のターゲットとして、住宅管理会社、リフォーム会社等で比較的小規模な法人に対して主なターゲットとしている。今後は再度、ターゲットとなる顧客の要望の分析、マーケティングを行い大規模な法人、老健施設、公共施設にもアプローチしていく。そのため当社の強みを再考し、顧客にとっての価値がどこにあるのかを見定め、受注率の高い提案をする。

 

・財務体質の改善

a.事業部別管理会計の実施

管理会計の仕組みを作り、予算を組み日々採算を追っていき、タイムリーな改善策が打てる体制とする。事業部間の取引もあるので各事業部が単価を決定し、社内取引の適正化を図る。

b.業務の絞り込み

現状受注が少ないこともあり、同業他社からの利益の低い下請け仕事を受けている。今後は、当社で単価を設定し、適正な粗利を生み出せるよう採算の合わない業務は受注しないようにする。また、業務ごとの粗利率を計算し、粗利率が高く顧客への価値が高い業務を中心業務として設定する。

c.在庫・備品管理の徹底

現状薬剤の種類も多く、必要のない備品も見受けられるため、必要なものを必要な時に必要な分だけ在庫とする。また、サービスの選定を行い不必要な在庫を減らす。経費に関しても事業部内でしっかりと管理し、経費最小の原則を守る。

 

・従業員の意識改革

a.理念の浸透

管理者研修を毎週開催し、理念教育、リーダーシップについて学ぶ。

b.モチベーションの向上

定期的な個別面談を開き個別の目標設定、進捗確認を行う。

今後新事業における重要な役割を果たす人材であるのでより多くのコミュニケーションをとり、考え、施策を共有する。

c.計数感覚を身につける

新規事業部であるため、様々な可能性を模索し、日々考えて行動しなければならない。

担当部長も50代であるため、モチベーションにつなげるためにも共に考え計数感覚を身につけていきたい。

研修、勉強会等を頻繁に開催し共に成長したい。

 

 

12.【まとめ】

 

以上の研究により、理念から中期的なビジョン、そして戦略、短期のBSCに落とし込むことができた。私の考えを明文化することにより私自身のやるべきこともより明確になった。今後はより具体的な個々のアクションプランに落とし込み経過観察をしながらより効果的な施策にしていきたい。

会社経営とは、一人でできるものではない。従業員と一丸となり目標に向かって遂行しなければならないものだと改めて強く感じた。従業員の意識改革が絶対条件であり、成長できる場を作るのが私の使命だと感じた。今後は、よりシンプルにわかりやすく可視化を意識して、o-collegeで学んださまざまなツールを使いながら伝わる努力をしていきたい。

従業員個々が、仕事を通して自身の成長を実感でき、その成長が会社の成長につながる仕組みを構築できるよう、全力で徹底的に努力を重ねていきたいと考える。

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