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修了生論文

現状と戦略から見える当社の「見えざる資産(知的資産)」について

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 砂川 杏里株式会社テラ・ウェブクリエイト

第1章 本稿の目的

筆者は、クラウド型の顧客管理・営業支援システム「Salesforce(セールスフォース)」という製品の開発パートナーとして、導入支援や開発を行っている企業の経営企画部門にて業務を行っているが、「Salesforce(セールスフォース)」製品の提供における財務分析や経営戦略において、企業の資産には財務諸表に表れる「見える資産」と「見えざる資産(知的資産)」がある中で、企業の価値はこの「見えざる資産(知的資産)」から生まれてくることが多いと知った。

そこから、当社にはどのような資産があるのかを会社全体が認識し、それを有効活用することで、企業の継続的な発展に繋がると考え、当社にはどんな「見えざる資産(知的資産)」があり、それがどのように繋がり、どのような価値を提供しているのか、そして、顧客から何を得ているのかを、本稿のテーマとして研究することとした。

 

 

第2章 当社の持つ「見えざる資産(知的資産)」とはなにか

当社における知的資産を分析する前に、まずは「知的資産」の定義を明確にする。

「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものである。

 

そこで、今回の研究をするうえで、まずは当社の事業および業務プロセスを洗い出し、見えざる資産(知的資産)となるヒントを得たいと考え、以下にまとめた。まず、事業内容は以下のとおりとなっている。

 

・クラウドサービスの提供

・クラウド導入支援開発、構築

・運用、定着化支援

 

当社は、沖縄県内唯一のSalesforce(セールスフォース)パートナーとして、顧客管理システムと連携した営業支援=営業の見える化・効率化を実現し、顧客の満足度を向上するシステムをコンサルティングしており、Salesforce(セールスフォース)に特化したビジネスモデルである。

Salesforce(セールスフォース)とは、Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社が提供する、クラウド型CRM(顧客管理)アプリケーションである。営業支援や代理店管理、データ集積・分析などのアプリケーションに、Webブラウザを介して場所を選ばずアクセスでき、目的によりカスタマイズが可能なので、利便性にも優れており、短期間かつ低コストにより運用を開始することが可能である。また、最先端、世界最高水準のクラウド型CRM(顧客管理)アプリケーションを導入した企業の多くが、業務の効率化、コスト削減を実現し、業績を伸ばしている。

 

当社の業務プロセスは以下のとおりとなっている。

 

(1)マーケティング

・見込創出

見込客を獲得するマーケティング活動。Web広告やイベントなど、効果的なチャネルを活用し、見込み客の母数を増やす。

・見込育成

獲得した見込客の検討確度を上げるためのマーケティング活動。マーケティングオートメーションツールを活用し、セミナーやイベントのコンテンツ配信を行う。その中から商談に繋げられる確度の高い見込客を選別する。

 

(2)営業

・商談進行

訪問や電話、WEB会議などで提案活動を行う。ビジネスにおいて解決すべき課題を顧客からヒアリングし、差別化の価値訴求するための情報を収集する。

・提案資料、見積書作成

提案資料や見積書の作成にあたり、具体的な表現で課題解決策と効果を表記し、意思決定者(経営層やキーマン)に導入価値を理解してもらう。

・契約

正式に発注に向けての合意がとれ、発注処理を行う。

 

(3)開発

・開発

顧客の要望に合わせてアプリケーションをカスタマイズし、提案したスケジュールのもと開発を進行する。

 

(4)CSM(カスタマーサクセスマネジメント)

・活用状況の確認、契約更新(解約防止)

導入したシステムを実際に活用しているか、背景を調査し状況を正しく把握する。調査したうえで、活用していない状況の導入先へは早急に訪問アポイントをとり、活用定着支援を行う。また、継続してシステムを利用してもらうためにも、契約更新6ヶ月前には導入先へ訪問し、活用状況のヒアリングを行い定着化支援プログラムの提案をする。

・問合せ対応

内容のヒアリングを行ったうえで社内対応し、対応終了後はお客様の了承を得る。

・追加商談

訪問、電話、WEB会議などを通して、顧客の次の課題や実現したいことを確認し、追加契約や新しい製品などの追加受注をする。

 

上記業務プロセスの中から、当社の強みと弱み、機会と脅威を把握するため、SWOT分析を用いて整理した。また、その中から知的資産と考えられるものを抽出することにより、当社のどのような強みが知的資産として蓄積されているのかを分析する。また、弱みの認識により、将来の事業展開に向けて、どのような知的資産を獲得・強化していくべきかを明らかにした。

 

【SWOT分析】

*定着化支援サービスとは、システムを導入する前から顧客に合わせた活用プログラムを作成し、提供するサービスである。まずはCRM(顧客管理)の基礎知識や運用・活用にあたっての認識共有、実際にシステムを使ってレクチャを行い、導入後に活用定着化してもらえるようにするのを目的としている。

 

上記SWOT分析から、次のことが明らかになった。

 

■強みから機会を捉える

A. Salesforce(セールスフォース)導入県内シェアの拡充

・Salesforce(セールスフォース)に特化したビジネスモデルであることから、スピーディかつ低コストで顧客の課題解決ができ、また、県内唯一のSalesforce(セールスフォース)パートナーという強みから、既存客からの紹介が得られ、県内導入シェア拡充の機会が伺える。

B. Salesforce ventures(=セースルフォース・ドットコム社の投資組織)

・現在、TOKYO PRO MARKETへの上場を目指し、上場支援事業社であるOKINAWA J-Adviserと2020年6月上場に向けて準備を進めている。これにより、事業の拡大はもちろんだが、より、優秀な人材を確保する機会や、Salesforce ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)からの投資機会が伺える。

*TOKYO PRO MARKETとは、東京証券取引所が開設する日本で唯一の特定取引所金融商品市場、いわゆる「プロ投資家向け市場」である。

 

■弱みの克服策

ア´ 採用拡大やアウトソーシングの活用、採用イベントへの参加

・システムを開発する人材不足は、募集している給与を本土企業に近い水準まで上げることで応募・採用率を上げる。

イ´ 定例会議の開催を行い、情報共有の徹底

・毎朝30分のミーティングを行い、情報共有を徹底することで業務効率を図る。

ウ´ Salesforce(セールスフォース)製品への依存

・他の製品での売上拡大を図る。

 

■脅威の回避策

あ´ 優秀な人材確保、非即戦力(新卒)人材の育成

・Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社が直販に力を入れてくる前に、未経験者である新卒採用や社員教育に力を入れ、人材を育てていく。(機会Aへ)

い´ ビジネルコンサルティングスキルの獲得、サービスの質の向上

・企業評価低下を回避するために、当社で働く社員それぞれのビジネスコンサルティングスキルの向上を目指し、サービスの質を上げていく。(機会Aへ)

う´ 新しい製品や技術動向を調査し、経営戦略を練る

・現在は飛躍的成長をしているビジネスアプリケーション分野だが、Salesforce(セールスフォース)やクラウドサービスに代わる新たな製品や技術が登場する恐れがある脅威に対し、新しい製品や技術動向を調査し経営戦略を練り、今後の事業拡大に繋げる。(機会Bへ)

 

【SWOT総論】

当社の強みとして、ビジネスアプリケーション分野で毎年飛躍的成長をしているSalesforce(セールスフォース)に特化したビジネスモデルであることが挙げられる。クラウドサービスの利用やITを活用した生産性向上ニーズが高まってきているので、今後の売上拡大も期待できる。また、Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社より、Customer Success Management Partner of the year2017を受賞。こちらの賞は、システム導入後の定着化が難しい中で、導入前に使い方のレクチャや意識レベルを上げることでシステムの活用定着化がスムーズになり、より顧客の課題解決に貢献してきたとして評価され、受賞したものである。県内唯一のSalesforce(セールスフォース)パートナーであることや、この賞を受賞したことなどにより、TOKYO PRO MARKETへ上場する機会を得ることができ、今後の事業拡大に繋げることができる。

一方、当社の弱みとして、人材不足による売上の機会損失が挙げられるが、弱みの克服策として、アウトソーシングの活用などをして採用拡大を図る。非即戦力の人材には徹底した社員教育をすることで、ビジネスコンサルティングのスキルを向上させる。スキルが向上することにより、より良いサービスを顧客へ提供することができ、顧客満足度にも繋がると考える。

*Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社は2018年度の売上高を104億ドル(前年比24%増)と見込んでおり、また2019年度の売上を125億ドル(前年比20%増)として予測している。(参考URL:https://www.salesforce.com/jp/company/news-press/press-releases/2017/11/171122/)

 

 

第3章 当社は顧客にどのような価値を提供しているか

前章において、当社が顧客へ提供している価値を分析するため、実施にシステムを導入して頂いたお客さまへインタビューをし、当社がお客さまから得ている価値がどのようなものであるか調査してみた。

 

【インタビュー結果】

■導入前に困っていたところ

A社:担当の営業だけが知っている、他は誰も知らない、ということに一番困っていた。

その営業が休んだり退職したりすると、またゼロからのスタートになってしまう。など、業務が止まってしまうことにとても困っていた。

B社:店舗が広がっていくにつれて、紙やFAXでの受注管理では追い付かず、常に人海戦術になっていた。情報を集めようとすると、全部ひっくり返して行わなければならず、とても効率が悪かった。

 

■Salesforce(セールスフォース)導入の決め手は?

A社:一番の導入目的である、「会社にとっての財産が蓄積できること」が、日常の業務を行うだけで非常にスムーズに蓄積され、安全に運用される、とても便利なシステムだから。

B社:テラ・ウェブクリエイトの担当者に、「御社の売上はこの金額ですよね?導入した場合の、年間での投資額はこれくらいになります。売上のたった1%を、ITへの投資に回しても全然問題ないのでは?」と言われた言葉が刺さった。

 

■導入後、課題は解決されましたか?

A社:はい。段階的な改善だと感じている。

B社:現時点ではまだまだ改善したとは言い切れない。ただ、以前に比べると、集計ができるようになり情報が探しやすくなった。FAXでは1対1だったのが、みんなで情報をシェアできるので、今までやっていることを知らなかった部署でも共有できる環境ができたと思う。

 

■売上への効果は前年比に対してどのぐらいUPしたか?

A社:直接的な効果であるかどうかはまだ検証段階だが、会社の利益はUPしている。

B社:そこまでの反映は、まだないように感じている。ただ、アクションの幅や選択肢は確実に増えた。

 

【インタビュー総論】

顧客からの要望を完全に理解することで、両社が同じ土俵に立つことが大切である。インタビューに協力頂いた2社は、結果としてSalesforce(セールスフォース)を導入して良かったと回答しているが、そのためには、顧客が何を課題として、何を要望としているのかを当社が理解し、顧客からの要望に対する解決策を相手の気持ちになって一生懸命考えたからであると考える。

ただ、いくら考えても解決できない要望は存在する。よって、実現できない場合は、代替案を提案するなど解決策を共に考えることによって、Salesforce(セールスフォース)を導入して良かった、テラ・ウェブクリエイトを選んで良かった、と思ってもらえることが、当社が顧客から得ている価値ではないかと考える。

 

以上の業務プロセスや、SWOT分析、実際に導入して頂いているお客さまからのインタビューから見えてくる、当社の「見えざる資産(知的資産)」が明らかになった。これらを人的資産・組織資産・情報資産・関係資産に分けてみると、下記のとおりとなる。

 

■人的資産(=組織活動において、人に依存している資産)

(1)Salesforce(セールスフォース)認定資格保有者

・Salesforce(セールスフォース)の認定資格者は、昨今のクラウドスペシャリストスキル、専門知識、実際のノウハウがあることを証明する資格である。当社には、Salesforce(セールスフォース)の認定資格保持者がいることで、顧客へより良い提案ができる。

(2)豊富な開発経験

多様な業種業態にシステムを導入してきた豊富な経験があり、顧客の希望や要望に応じたシステムを構築し、開発を通して課題解決を支援している。

 

■組織資産(=組織活動において、人に依存していない資産)

(1)定着化支援サービス

当社独自の定着化支援サービスを提供することによって、他社よりも早く顧客を成功へと導くことができる。ノウハウ、導入提案および実績が定着化支援サービスを可能にしている。また、2017年には当社の定着化支援の取組みが評価され、Salesforce.co(セールスフォース・ドットコム)社より、Customer Success Management Partner of the yearを受賞した。

*Customer Success Management=カスタマーサクセスマネジメント(通称CSM)とは、顧客の成功を支援するという意味である。

(2)Salesforce(セールスフォース)に特化したビジネスモデル

当社は、世界シェアトップのCRM(顧客管理)プラットフォームを提供するSalesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社の県内唯一のパートナー。飛躍的成長を見せるSalesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社のビジネスモデルに特化し、安定した事業を実現することができる。

 

■情報資産(=組織活動において、情報として蓄積された資産)

(1)セミナー開催ノウハウ

当社は、船井総研と共同で戦略を練った、セミナーを開催するノウハウがある。Salesforece.com(セールスフォース・ドットコム)社や、取り扱うクラウドソリューション開発社とタッグを組み、時流に即したセミナーを毎月開催している。

 

■風土資産(=組織に根付いていない資産)

(1)新しい取組みに挑戦

2017年6月より、新人事制度「WAA(Work Anywhere and Anytime)」を導入。WAAとは、働く場所や時間を社員が自由に選べる制度である。

また、毎週水曜日は「同じ釜の飯を食う会」と題して、みんなでランチをしながらコミュニケーションをとるなど、いろんなことに取組んでいる。

 

■関係資産(=外部との関係で生み出されている情報提供などの資産)

(1)Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社との良好な関係

Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社からの手厚いフォローや、標準化的な資料・情報・多業種の導入事例を共有してもらい、顧客獲得に大きな協力を頂いている。

 

以上の結果より、当社が知的資産を用いて顧客に提供している価値とは、クラウドスペシャリストスキルおよび、豊富な開発・導入実績の量、独自の定着化支援ノウハウ、Salesforce(セールスフォース)パートナー企業として県内における希少性、集客におけるセミナー開催ノウハウ、WAAなどの新しい人事制度導入や働き方改革の取組における優秀な人材流出防止、Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)社からの豊富な資料および情報の共有などであることが分かった。

 

当社は知的資産として蓄積してきた業務知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせてコンサルティングからシステムの開発、運用まで行っているプロセスにおいて、顧客の視点にたち、顧客に対する理解を深めたことで、他社では得られない感動を与えることができ、それによって当社の製品やサービスそのものの価値を高めることができる。

加えて、当社ならではの付加価値を提供することで顧客から利益や契約更新、紹介などの高い評価を得ていると考える。

 

 

第4章 考察

当社の強みである知的資産を会社全体が正しく把握し、活用することで業績の向上や、会社の価値に結びつくのだと考える。企業が勝ち残っていくために、差別化による競争優位の「強み」を確保・維持することで、企業価値を高め、将来ビジョンに向けての経営となるのではないか。企業の代表がどんなに良いアイデアを持っていても、それが社員に伝わり、共感されなければ意味がなく、見えざる資産(知的資産)を「可視化」することによって、会社の方針と目標が大きく共有され、社員の士気が高まることが期待される。

今回の研究をまとめることにより、取引先や金融機関などのステークホルダーに信憑性の高い評価を開示し、当社の将来性を評価してもらうことによって、取引や融資に関するプラスの影響が期待されると考える。私自身、気づかなかった当社の強みや価値を知ることができ感謝している。研究していくうえで、強みとは対照的に当社の弱みや回避すべき課題にも気づくことができ、これらを今後の経営改善や経営方針の策定に繋げていきたい。

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