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修了生論文

地方銀行における労働組合について

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 比嘉 逸人株式会社琉球銀行

一般に企業が成長を遂げてゆく過程において。労働者の権利を維持改善する目的で社内に労働組合が組織され、経営側と労使関係においては対立または協力する組織内組織が構成されます。

私は現在琉球銀行労働組合の執行員を務めており、組合活動が銀行経営にどういった影響を与えていけるのかを検証していきます。

 

 

1.  琉球銀行労働組合とは

沖縄県の地方銀行で初めて労働組合を組織し今年で50周年を迎えます。

組合員数1,107名(琉球銀行全職員1,258名)であり、役員、経営層となった職員、パートを除く全ての職員で構成されております。圧倒的な組織率の理由として、ユニオンショップ制度(入社と同時に強制的に組合員入りする)を導入していることが挙げられます。

 

(1)組織

①執行委員会

大会や中央委員会で決められたことを具体的に実行していくための機関で、賃上げ要求や労働条件の向上等、実際に銀行側と交渉にあたるのもこの機関です。執行委員長、副執行委員長、書記長、執行委員で「執行委員会」を構成し、現在11名がその任にあたっています。なお、この内3名(執行委員長、副執行委員長、書記長)は一旦銀行を休職し組合の仕事を専門に行っており、給料も組合費から支給されています。これらの人を専従者といいます。

 

②書記局

組合の事務処理機関として、組合本部に書記局が設けられています。専従者をもって構成され、組合ニュースの発行や銀行との窓口交渉等を行なっています。

 

③青年婦人部

執行部の下部組織という位置付けであり、29歳以下の行員で組織され、現在は11名おります。専従者は居りません。

主な役割は、若手行員の柔軟な発想と行動力をいかして、組合活動を活性化すること、

 

④組合員

分会とは、組合の最小単位組織で、銀行の本部・支店を基本に設けられています。分会の呼称は、一般的には支店の名前を取って○○分会(例:大道分会)と呼んでいます。

現在当組合には、79分会があります。分会での活動状況が、組合の組織活動の基本となり、組合活動全般の大きな原動力となります。

各分会には、組合活動の中心となり、分会の意見を取りまとめ代弁する分会役員(分会長・副分会長)が選出されており、重要な役割を担っています

 

 

2. 労働組合がなぜ必要か

労働者はなぜ労働組合を作るのでしょうか。このことが労働組合の必要性を理解するポイントになります。当行に就職した全員に共通し、かつ最も基本的な目的は“自分で働き収入を得て、その収入で自分の生活を維持すること、又は家族の生活を支えること”にあると思います。銀行と“雇用関係”を結ぶことにより、生活を維持・向上させることができ、この“雇用関係”の中にある働く者にとって“雇用条件”すなわち“労働条件”をより良い水準に引き上げることが生活を豊かにすることにつながります。

この“労働条件”を銀行の経営者と働いている私たちが交渉して決めていくわけですが、一人ひとりが経営者と個別に交渉した場合、力も弱く不利な扱いを受けて良い労働条件を確保することは困難です。そこで、みんなの力でより良い労働条件の維持・確保を図るため、労働組合を作っているわけです。

しかし、私たち労働組合は、会社と対等の労働関係において、会社側に私たちの労働条件の改善を求めていきますが、あくまでも、「交渉する力」において対等という意味で、経営者を攻撃することが目的ではありません。経営者攻撃ばかりして生産活動に支障をきたすようでは、会社の存立まで危なくなってしまいます。

また、反対に労働組合が経営者に対して発言を遠慮するようでは、健全な労使関係とはいえないでしょう。つまり、今日のように民主主義、人間尊重の思想が尊ばれる社会では、社会的に協力しない労働組合や働く者の幸せを考えない企業はともに意義を失っているといえます。現代の社会では、企業も組合も、社会の構成員として重要な社会的機能を有する組織です。

また、企業がその社会的価値を十分に発揮するためには、その企業で働く労働者の集団である労働組合が健全に発展しなければなりません。

私たちが自分たちの生活を維持・向上させる手段として選んだ企業(琉球銀行)の繁栄のなかで、労働条件を常により高い水準に到達させるためには、働く者の総意を経営に反映させ、企業が私たちの望む労働条件を許容し得るだけの十分な体力を持ちうるように私たち自らも努力していかなければなりません。

このように、労働組合を作ることについては、企業にとっても、組合員にとっても共通した重要な意味を持っています。

 

 

3.  直近の組合臨時大会概要

日 時:平成30年3月16日(金) 18時開始(終業後)

全営業店から代議員80名が参加

<議案審議事項>

第1号議案 内容:定年を55歳から60歳へ引上げ

 

第2号議案 内容:昇格基準の見直しとボーナス査定の変更

 

第3号議案  内容:ボーナスの引上げ要求

 

第4号議案  内容:年に一度の36協定の更改

*36協定とは

「使用者(銀行)は、労働者の過半数で組織する労働組合と時間外及び休日の労働について書面による協定を締結し、事前に所轄の労働基準監督署に届出することで、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定に関わらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」(第36条)【要約】

第5号議案 内容:育休を1年6カ月から最大2年取得へ改善

 

第6号議案 内容:定年変更に伴う組合規約の変更

 

6議案全て代議員の了承を得ております。

 

 

【本組合臨時大会からわかること】

労働組合がある会社においては、従業員に影響がある変更を行う際には、経営側が勝手に変更することができず、必ず組合員へ了承を得る必要があります。労使面について経営側へ牽制機能が働いております。

過去当行が赤字に陥った際にも、経営側がボーナスカットについて組合員の了承を得て実行しております。

 

 

3.  当行分析と労働組合の関与の可能性

 

(1)ファイブ・フォース分析

上記のファイブ・フォース分析で、労働組合が経営に関与若しくはサポートできる余地はほぼ無いと言えます。

 

(2)SWOT分析

上記のSWOT分析においても当労組が関与する余地は有りません。

 

上記代表的なマーケティング分析で見ても、当労働組は経営に直接的に関与できないのが実状です。マーケティング面から関与ができない以上、経営に関与できないのか検討していきます。

 

 

4.  先行研究との比較

 

(1)「労働組合と生産性」 野田知彦(桃山学院大学・経済)

野田氏は著書で労働組合の企業業績についての効果を分析することは、これからの労使関係のあり方を考える上でも非常に重要とした上で、労働組合の存在のメリットとデメリットを説いています。

 

メリット

①離職率を低下させる事によって生産性を向上させるという発言メカニズム

ア. 組合が従業員の不満を吸い上げて経営者に伝えるという「集団的発言機構」としての活動は生産性の向上をもたらすと考えられます。

イ. 経営者が従業員の不満を把握して適切に改善をすることは、従業員の士気を向上させて労働に対するインセンティブを高めることにつながり、離職率を低下させることにもつながります。

 

②従業員の経営参加による生産生向上

ア. 日本の企業別組合は経営や生産などの経営する事項について積極的に発言します。

イ. 注目すべき特徴は、経営の基本方針、生産販売の計画など、およそ経営の状況、政策に対して発言していることであります。

ウ. こうした発言の基礎には従業員の経営への高い参加意欲があります。

エ. 労使間のコミュニケーションや信頼関係を促進し、企業との従業員の一体感を高め、従業員の技能形成や労働に対するインセンティブを高めることにつながります

オ. 労使間や労働者感の信頼、協力関係を醸成して企業組織の効率性を高め、生産性の向上をもたらすと考えられます。

 

③組合の要求する高賃金に対する経営側の対応

ア. 組合が経営側に高賃金を要求すれば、経営側は良質の労働力を採用しようと対応します。

イ. この対応は企業の生産性を高めることにつながります。

 

デメリット

①組合が経営の政策に過度に規制を加えることは生産性に対してマイナスの影響を及ぼします

ア. 従業員間の競争を過度に規制すること

イ. 出向や配転などの労働力の効率的な利用に対して過度な規制を加えること

 

(2)「労働組合と離職率」 外館光則(千葉商科大学桃山学院大学・経済)

外館氏は著書で労働組合の昨日・存在価値を実証的に明確にする必要性が高まってるとした上で、労働組合の離職率への効果について分析をし、以下の事実を判明させた。

①組合組織率が10ポイント上昇すると男性の個人的理由離職率は約4ポイント低下する。

②組合組織率が上昇しても女性の個人的理由離職率は低下しない。

③組合組織率が10ポイント上昇すると、男性の経営上の都合離職率は7ポイント低下する。

④組合組織率が10ポイント上昇すると、女性の経営上の都合離職率は約0ポイント低下する。

 

 

5. 当労組のアンケートからの考察

質問内容:従業員が経営側と最も議論して欲しいことは何ですか?

(平成30年1月アンケート結果より 有効回答数全組合員1,107名)

1位 当行の今後の方向性(77.9%)

2位 当行の現状把握(16.4%)

3位 中期経営計画の進捗状況(4.5%)

4位 その他(1.2%)

 

アンケート結果より、ベアやボーナス等賃金面での改善ではなく、当行の経営状況を議論して欲しいとの要望が多いのがわかります。特に、マイナス金利の影響で、銀行業にとっては益々厳しくなる観測から、今後の方向性を議論して欲しいとの回答が大多数を占めております。

以上を踏まえた当労組の取り組みについて

 

 

6. 当労組の施策「働きやすい職場と充実した生活への取り組み」について

 

(1)メリハリのある働き方の実践

「健康で明るく働きやすい職場」「ゆとりと潤いある生活」を実現するためにも、メリハリのある働き方の定着化向けた取り組みが必要と考えます。今年度もアンケート調査やオルグ等により実態把握を行ったうえで、全職場において適正な労務管理が行われるよう取り組むと共に、「恒常的な時間外勤務の縮減」「年休の取得促進」「早帰り運動の推進」等、総労働時間の短縮に取り組みました。また引き続き銀行側に対しては、更なる業務の見直し・効率化や職場の実態に沿った適正人員の配置を要請していくと共に、組合員に対しては時間管理意識の高揚を図っていきます。

 

(2)ワークライフバランスの実践

私たちが『ワークライフバランス』を実践し豊かな生活を築くためには、まず充分なライフの時間を確保しなければなりません。そのためには一人ひとりの意識変革は当然に、職場メンバーが一体となって取り組む必要があることから、各職場にて取り組んでいる工夫や好事例等の共有化を図っていきます。また、サークル活動や個々人の余暇を充実させるための事例等を情宣することにより、各人がワークライフバランスを実践するための支援を行っています。

ワークライフバランスの活動イメージ

 

(3)組合ニュースによる情報還元

経営側と議論した内容を都度組合ニュースで報告しております。

また、毎月、各分会が計画的に早帰りできるようにパワーアップデーニュースを発行しています。毎年開催されるパワーアップ週間では、「早く帰るために仕事の工夫について全員で考えてみよう」と組合ニュースにて周知しております。

 

 

7. 当行の人件費について

 

(1)沖銀との人件費比較について

(1)平成30年3月期第3四半期決算内容(2/2発表分) (百万円)

*経費は新規採用等の人員増加に伴う人件費の増加などにより前年同期比147百万円増加。当行は人件費が高く、人件費率も沖銀比劣勢となっている

 

 

(2)当行組合員の給与を時間給換算した場合

①当労組から組合員への啓蒙活動もあり、直近1年で1人当たりの平均退社時間が約1時間早まりました。

②経営側から情報開示は無いのですが、単純に人件費平均を主任クラスとした場合、

1人当たりの1カ月の時間外手当 2,372円

1人当たりの1年間の時間外手当 2,372円×12カ月=28,464円

組合員1,107名の年間時間外手当 28,464円×1,107円=3,150万円

③3,150万円人件費を削減したことになります。

 

 

8. 結論

(1)地方銀行の労働組合は、ファイブ・フォース分析やSWOT分析等のマーケティングの側面からは経営に影響力を与えることはできません。

 

(2)ただし、アンケートや営業店訪問で組合員の意見を集約し、経営と議論する事で、

①離職率の低下と従業員の経営参加による生産性向上

②組合の要求する高賃金に対する経営側の対応による良質の労働力を採用

上記2点により、生産性は向上します(野田氏と外館氏の論文より)。

 

(3)組合員へ常にワークライフバランスの重要性を説き、時間外活動削減の啓蒙活動をしており、人件費削減による労働生産性向上に繋がっております。

 

(4)経営側も、毎年36協定を更改するには従業員の意見を無視する訳にもいかず、牽制機能も働いております。

 

(5)地銀の労働組合は、正常な組合活動を通して銀行の労働生産性向上に繋がる働きをしており、銀行経営に寄与できております。

以上

 

 

〈参考文献等〉

「労働組合と生産性」 野田知彦(桃山学院大学・経済)

「労働組合と離職率」 外館光則(千葉商科大学桃山学院大学・経済)

琉球銀行労働組合 議案書、分会長会議資料、組合ニュース、アンケート

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