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修了生論文

当社が目指すべき経営戦略

名古屋校(N-college) 河本 尚広株式会社相賢 取締役)

1.テーマを選んだ動機

私は現在、父が創業し社長を務めている株式会社相賢で取締役として勤務している。2年後を目処に事業承継する予定であり、目下の所その修行中といったところである。私は今から12年前、30歳の時に入社した。それまでは別の会社に勤めていたのだが、当社は当時経営的にも運営的にも大きな壁に直面していて、立て直しのため入社を打診されたのだ。当初は数年程度の手助けのつもりで入社したのだが、社長の長男が事業に携わると知った周囲は当然のように次期社長と期待した。次第にそれが既定路線としてみなされるようになると、私の心境に変化が生じた。父の創業したこの会社を、自らも含めて関係する全ての人達から「相賢に携わることが出来て良かった」ともっと喜んでもらえる会社にしたいと思うようになったのだ。そのためには当社がこの先も持続可能な企業でなければならない。そのために目指すべき経営戦略とは-これよりこれを明確にしていきたいと思う。

 

 

2.企業概要

会社名 株式会社相賢
所在地 愛知県一宮市今伊勢町本神戸字中町21番地
創業 1982年
事業内容 コイン洗車場、コインランドリー、レンタル収納庫の経営
コイン洗車場、コインランドリー向け機械や洗剤など用品の販売
コイン洗車場、コインランドリーの企画・設計・施工
中古機器の売買
中古海上コンテナ・JRコンテナの販売

 

当社は30年前よりコイン洗車場の経営を始め、その4年後からはコインランドリー業も開始。現在は直営店としてコイン洗車場7店舗、コインランドリー10店舗、レンタル収納庫2店舗を経営しており、無人店舗型コインビジネスの経営が主力事業である。

また主に自社イーストアを活用した機械・用品販売、直営店経営のノウハウを活かした企画・設計・施工業務も行い、顧客層は北海道から沖縄・宮古島までと幅広い。

売上比率は、昨期の実績ではオーナー業であるコイン洗車場事業が約35%、コインランドリー事業が約28%、各種商品売上は約36%であった。

典型的な同族経営であり、役員・社員を含め少人数経営であることも特徴である。

 

 

3.問い

当社が今後も持続可能企業となるためにとるべき戦略は何かを明確にしたい。装置産業に近く利幅の大きいオーナー業を拡大していくべきか、自社の強みを活かした販売業に力を入れるべきか。マンパワーの限られる少人数経営のため優先順位をつけることが大事であろうと考えるが、出来るだけ効率的に成果を出すにはどこに注力すべきか、当社の主力3事業の分析を通して明らかにしていく。

 

 

4.各事業の分析と考察

 

①コイン洗車場事業

<事業のあらまし>                                                                               ※1店舗当たり

敷地面積 250~400坪
年商 600~2,400万円
ユーザーの利用動機 自宅に十分な洗車スペースがない
近所の住人にあまり見られたくない
コイン洗車場の機械で効率よく洗車をしたい
気兼ねなく洗車だけに時間を使える場所が欲しい

 

<コイン洗車場事業のファイブ・フォース・モデルによる分析>

 

 

<コイン洗車場事業のSWOT分析>

 

<分析結果からの考察>

コイン洗車場経営の最大の特徴は『無人店舗』だということである。人件費がほとんど必要ないため粗利益率が高い。だが無人店舗ゆえ場内が荒れやすく、ゴミの不法投棄や騒音問題、ユーザーの操作ミスによる車両の破損といったトラブルもつきものである。また、屋外施設のため機械や設備が劣化しやすく、店舗を健全な状態で維持するには計画的な修繕計画が要求される。

これらを回避するため、防犯面では高精細なビデオカメラ導入とその周知徹底、警察へ日常的な防犯パトロールを依頼している。また操作ミス・準備不足による車両の破損については巡回スタッフによる声かけやユーザーの注意を喚起する張り紙により啓蒙に努めている。

これらは個人経営のオーナーにとっては大きな負担であることから廃業が続く要因になっており、かつ参入障壁にもなっている。異業種からの参入は伝統的にサービスの親和性が高いカー用品店や油外収益の向上を目指すガソリンスタンドなどがあり、最近では郊外型ホームセンターのような小売店やパチンコ店などが空きの目立つ駐車場対策として乗り出す動きがあるが、やはり管理の難しさから本格化するには至っていない。このように、コイン洗車場業は元々ニッチなマーケットである上、競合他社の廃業や新規の参入が少ないことから当社にとっては『よく儲かる商売』である。

しかし、その将来性については心許ない部分もある。特に自動車の所有に熱心でない(もしくは金銭的に余裕が無い)若年層ではカーシェアリングに抵抗を感じない層が多数派になっていくであろうし、そもそも人口減少時代に突入した日本において、マイカーを洗車する文化は徐々に衰退していくことが予想される。今後はコイン洗車場の廃業だけでなく洗車機メーカー間でもさらなる吸収・合併の動きが表面化していくだろう。コイン洗車という物理的ドメインだけに頼らず、機能的ドメインに属する洗車サービスの開発に取り組まなくてはならない。

 

②コインランドリー事業

<コインランドリー事業のあらまし>      ※1店舗当たり

面積 敷地:60~160坪、建物:15~30坪
年商 700~1,300万円
ユーザーの利用動機 雨の時の乾燥需要
日常衣類のまとめ洗い
毛布・羽毛布団のような家庭で洗えないものの洗濯
花粉・黄砂・台風といった特殊な気候の時の乾燥需要

 

<コインランドリー事業のファイブ・フォース・モデルによる分析>

<コインランドリー事業のSWOT分析>

<分析結果からの考察>

現在、コインランドリー業界では未曾有の出店ラッシュが続いている。5%前後といわれる低い利用率ゆえの成長性への期待と、なにより投資に対する利回りの良さが注目されたからである。昨年のファミリーマート参入の報道は記憶に新しいが、従来は見向きもしなかった大企業も注目するほど異業種からの参入が増え、厳しい競争環境に晒され始めている。

当社でも競合店の出店により売上を落とす店舗が増えてきた。コインランドリーはサービス内容の差別化要素に乏しく、商圏内に競合店が進出してくると基本的にはその周囲のユーザーはほとんど奪われてしまうためである。

では、販売業者が煽るほど実際にコインランドリーの利用率は上がっているのであろうか。当社の実績では以下のような傾向が見られた。

・競争環境に変化のない既存店の売上には有意と見なせるほどの変化は生じていない

・商圏内に競合店が進出してくると売上はおおよそ10~30%低下する

・何もしなければ競合店によって売上が落ちた店舗はその後に元の売上まで回復することはほとんどない

・既存店が存在しないエリアに出店するとほぼ計算通りの売上が見込める

上記から分かることはコインランドリーには需要があり一定の利用率が期待できるが、既に成熟した商圏内では利用率の上積みは進んでいないということである。基本的には先行者利益より立地の善し悪しに左右される装置産業であるため、元々好立地へ出店しているコンビニエンスストアにコインランドリーを経営されると、周囲の既存店ではかなりの顧客流出が起こる可能性がある。

「装置産業のため差別化要素が少ない」と従来型のサービスに甘んじていると、より激しさを増していく競争環境中では埋没してしまう可能性が高い。既存店が競争力を維持出来ている間に当社ならではの特色を見いだしていく必要がある。

 

③機械・用品販売事業

<機械・用品販売事業のあらまし>

年商 約1億円
販売方法 自社イーストア
主な取扱商材 オリジナル洗剤
オリジナルデザインのノボリ
その他、用品類
コイン洗車場・コインランドリー用機械(新品)
コイン洗車場・コインランドリー用機械(中古)
中古海上コンテナ・中古JR貨物コンテナ

 

<機械・用品販売事業のファイブ・フォース・モデルによる分析>

 

<機械・用品販売事業のSWOT分析>

<分析結果からの考察>

販売事業については分野毎に特徴が異なるので、それぞれ分けて以下の通り考察する。

(1)用品販売について

早い段階からインターネットによる用品販売を始め、業界内での認知度は高い。販売価格は戦略的に安く設定しているため、営業利益率は低いもののソーゲンブランドの知名度獲得に貢献している。ただし、最近はフォロアーから露骨にターゲットにされており、特に主力の低価格ケミカル販売において顧客の流出が見られつつある。低価格商品は売上高や利益額への影響は少ないものの、これら用品販売は機械の販売に繋げるチャンネルの役目を担っているため、顧客の流出を見逃すわけにはいかない。現状は商品ラインアップにあまり特徴が無いことから顧客から飽きられている可能性も考えられる。

(2)コイン洗車、コインランドリー用機械の販売事業

ほぼ全てのメーカーと取引があるが、販売数量が多くないため、直営店舗でよく仕入れているメーカーを除いては価格交渉力が弱く、仕入価格はあまり安くない。よって競合他社との価格競争には負けることが多い。保守部門は外注に任せていることからトータルでのサポートに自信が持てないのも積極的な販売が出来ない原因である。ただし、直営店の経営ノウハウを元にした企画・提案は高評価を受けることが多いため、保守部門の問題を解決できればより拡販が出来るものと考える。

(3)中古機器の販売事業

当社販売事業の大きな柱の一つである。用品販売先の顧客から直に情報を掴むことが出来るため、競合との競争において有利である。古くから取り組んでいる事業であることから業界内での知名度が高く、大手リース会社とのパイプも太い。

仕入れた機械を効果的にリノベーションして販売する手法に長けており、競合他社と比べて利益率は高めであると思われるが、買い取りした機械の状態によっては思わぬ出費を強いられるなど、販売後に故障を巡ってトラブルになることもある。

 

 

5.分析・考察から、今後の取り組みと監査

当社の主力3事業についての分析・考察を元にそれぞれ以下のことに取り組む。

 

●コイン洗車場事業

・非消費者の取り込み

業界自体がニッチであることからサービスに対する認知度が低い。非消費者を取り込むべく、プロモーションの強化をする。具体的には直営店を店舗毎に動画撮影し、サービス内容と共に各店舗の魅力を伝えるなど継続的な情報発信に努める。

・新店舗の出店

一番の高収益事業で新規出店が出来ていない。同業他社の廃業が進む中、市場獲得のチャンスであるため、以下のように優先順位をつけ出店を検討していくこととする。

①売上一番店のキャパ不足解消のため、その近辺に小型店舗を出店(通常型も可)

②長期金利で有利な条件が得られる間に、初期投資のかさむ通常型店舗を出店

③廃業を検討している他社店舗の経営権取得

・既存店の設備更新

ユーザーにとってより使いやすい店舗となるよう設備の更新・機能向上を図る。特にコイン洗車場ユーザーが直面することの多い「ちょうど小銭を持っていない」問題の解決策として、コインレス決済機能の後付けが出来ないかの検討を始める。

・新しいサービスの開発

野心的なサービスをもった新規参入者によって現在のビジネスモデルが覆される可能性がある。他業種での成功例を参考にするなど新しいことへのチャレンジを恐れず、「DSDK(どうすれば出来るか)」を合い言葉に、『コイン洗車場』という枠にとらわれずイノベーションを起こすつもりで取り組む。

 

●コインランドリー事業

・非消費者の取り込み

業界の知名度は以前より向上したが、サービス内容に対する認知度はまだまだ低い。『非消費者目線』でどのような情報が得られれば利用する気になるかを研究し情報発信を行う。実際の利用シーンを動画撮影し、サービス内容と共に各店舗の魅力を伝えるなど継続的な情報発信に努める。

・新店舗の出店

競争力のある物件は賃料が高くなりがちなため、場合によってはコインランドリー単体での出店にこだわらず、他の業態を組み合わせることを検討する。ただし他社の出店にありがちな失敗パターンの組み合わせは避け、当社事業の機能的ドメインに関連した組み合わせで検討する。

・新しいサービスの開発

30年近く利用率5%からの上積みが進んでいない業界である。過去の装置産業としての成功体験に執着することなく、新しいサービス業としてユーザーに何が望まれているかを汲み取る努力を続ける。他業種とのタイアップが実現できないかを研究する。

 

b●機械・用品販売事業

・顧客の取り込み

自社の直営店舗でユーザーにアンケートを行う。その結果ユーザーから望まれる商品機能は、イーストアの顧客も望むものである可能性が高い。自社店舗の魅力向上も兼ねた高価格・高付加価値用品の開発・販売を行っていく。

・設置業者との連携強化

中古機器販売は当社が販売面において独自性を発揮できる分野である。全国規模に販売するため、各地の設置業者とより深く連携していく。

 

 

6.監査

それぞれの事業毎に取り組む行動をリストにし、アクションプランとして社内に掲示して可視化する。毎月最初の会議でそれぞれの取り組みの進捗管理を行っていく。

 

 

7.まとめ

これまで当社には漠然とした思いはあるものの経営戦略や計画と呼べるものが無かった。その時選択出来るものの中でベターだと思われるものを選び続けることで今の規模にたどり着いたというのが実情である。それでもこの規模まで成長できたのは商売における大きな流れを外さなかった社長の経営センスがあったからだが、事業承継を前にいつまでも現社長の勘だけに頼った経営を続けるわけにはいかない。

元々エフアンドエムのビジネススクールに参加した動機は、税理士任せでなく自ら管理会計を実践する社長になることを目標にしたものだった。しかし6ヶ月間にわたる授業や論文を通して、今後の経営戦略を考える機会を得られたことは大変有意義であった。4年後には創業40周年という大きな節目も迎えることから、中長期の視野に立った経営計画の策定を行っていきたい。

そして今ひとつ。本文中では述べてこなかったが、実は当社にとって大きな課題に人材採用がある。機械の保守や集金といった管理業務は現在役員、社員が全員で分担しているのだが70歳手前の社長と部長が近い将来現場業務から退くことを考えると、増員が必要である。しかし単独で現場にて現金を扱うことになるため全幅の信頼を寄せられる人材が必要であり、採用が進んでいない。ひたすら適した人材を探し続けるのか、不正を防げるようなシステムを開発・構築するのか。入社当時は若手だった私も気付けば40代である。将来に向けて若い人材の登用はなんとしても必要であり、継続して解消策を考えていく。

今後も持続可能企業であり続けるために、『GGBK』『DSDK』が無意識のうちに実践出来るよう、スクールでの学びを忘れず、歩みを止めず、常に前を向いて取り組んでいきたい。

ありがとうございました。

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