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修了生論文

『待ちの営業から攻めの営業への転換』

福岡校 (F-college) 松尾慶子 (宝来軒別館 代表取締役社長)

1、事業承継からの動機

当社は、創業50年の中華料理店で、私は、2017年10月 4代目社長として母から受け継いだ駆け出しの新人社長であります。社長になることは、2015年8月までは全く予想しなかったことであり、私は外資系保険会社で、ユニットマネージャーという職務に就き、夢は、東京本社の高層オフィスビルをさっそうと歩く、バリバリキャリアウーマンになることでした。

保険会社での仕事は、私の人生そのものが大きく変わるほど、衝撃的でありました。なぜなら、40歳にして初めての就職をし、社会人としてのマナーやルールーを、私に遠慮なく教えてくれたからです。この時、無知ほど怖いものはないと思い知らされました。自分で稼ぐという喜びは、人生の喜びとなりました。この喜びを教えていただいた会社に恩返しをしたいという思いと、お客様の人生のお役に立てる仕事に誇りを持っていたため、一生続けていくと決めていました。

このときの経験で一番気付かされたのが、人は思いや感情によって、現実を生きていくもので、起きている事実にどう向き合うかで、幸せを感じる度合いは人それぞれだということです。それから、思いは大切、人生は思いだということに気持ちが満たされていきました。そして、ある出来事があり、急遽家業に戻ることになったのが、2015年12月。思いの大切さを知ったことで、両親や従業員に感謝、お客様のお蔭だと日々伝えてきました。そんな中、このスクールで経営について初めて学び、思いだけでは経営は成り立たないことを学びました。

さて、創業当時は、お客様は黙っていても来る時代でした。

ホテルが今ほど多くない時代は、中華料理店で団塊の世代にあたるご夫婦の結婚披露宴を行うのが、長崎の文化でした。また、高度成長期でもあり企業の宴会も多く、仲居が30名もいたほどです。その後、長女である母が25年間かけて、レストラン・厨房・大中小宴会場の大小規模改修工事を幾度となく繰り返し、設備投資には、莫大な資金をかけてきました。

母は、経理は全くの無知ですが、この莫大な改修工事の資金計画は、どんぶり勘定のエキスパートといえるほど、返済に遅れたことはなく、借入れも 1000万以下のものであれば、業者と交渉し、数か月かけて支払うということをやってきました。バブル最盛期のあおりもあり、売上も順調だったこともありますが、母がこだわってきたのは、他の店とは違う料理を出したいという思いを常に持ち続けてきたことです。

調理人を連れて、料理研修にも行き、自らも他店の料理を参考に更にアイデアを加え、新しい料理を提案することは、今も続けています。

そして、改装を続けてきたのは、お客様のニーズに耳を傾け時代に合わせた快適な空間の提供をしたいというお客様ファーストの精神。また、従業員も働きやすい環境で、スムーズな料理の提供ができるように日々考え、思い立ったらすぐ実行していました。これは、長年、現場でやってきたからこそ、自らの経験から出てくる発想であり、従業員よりもいいアイデアを出してきました。どうしたら、売り上げが上がるかなんて、考えたことはありませんでした。お客様と従業員のためと思うだけで、商売が成り立っていました。

しかし、時代は大きく変化してきました。以前はなかった人手不足、店舗が清潔で料理が美味しいのは当たり前、少しの不満でも対応を間違えるとネットで流される、従業員教育については、厳しい指導は早期退職に繋がるので、以前よりも更に、丁寧な指導且つ納得を与えられる指導を求められる時代となりました。

そして、原田校長から言われて初めて気付いたことが、全てのお客様が、料理が美味しくて来店しているわけではなく、経営者の思いが伝わっているから来店しているわけでもなく、顧客が何かを基準に来店しているということでした。顧客は、本当に料理が美味しくて来ている人もいれば、特に美味しいと感じていなくても、会社から近いから、大宴会場があるから、駐車場があるから来店しているかもしれないということです。

ある飲食店が流行っているのは、美味しさを求めて行くのではなく、有名人が来たから行ってみたい、ただそれだけの理由の時もあるということです。また、飲食に限らず物販の業界においても、腕時計を最近使用している人が減少傾向にあっても、使用する人が好きなブランドを持ちたいというこだわりから、売上を伸ばしています。

このようなことから、世の中の真実を知ることの重要さ、顧客目線からの自社の傾向に目を向けないと、大変なことになるところでした。そこで、これからは顧客目線で何を求めているのかを突き詰め、色々な角度や情報の中から売上を予測し、売上目標を掲げることでしっかりと戦略を立て、目標達成していくことが、これからの経営ではないかと気付きました。

これまで、「待ちの営業で50年」、これからは「攻めの営業で 50 年」を乗り切るために、この論文に着手することが経営者としての本当のスタートを切ることとなりました。

 

 

2、企業概要

(業種)      飲食業:中華料理店      (役員)        3 名

(設立年月日) 昭和 42 年 11 月 19 日      (従業員数) 正社員 13 名

(資本金)      5,500 万円           パート・アルバイト   33 名

(年商)      2億円

 

【立地】

 

5F 会長室
4F 和室大広間 *最大収容人数136名
3F 洋室大広間 *112名 立食*200名
2F 和洋中小個室 10部屋 *143名
1F レストラン席 70席

 

 

3、歴 史

昭和初期 中国福建省より初代社長夫婦、初代社長の両親と共に、来日。新地中華街で中華菓子店 宝来軒を開店。
昭和20年~

 

 

 

 

42

~53年

初代社長 (四代目祖父)お菓子作りに興味がなく、料理の修業に県外各地をまわり、長崎丸山料亭花月で料理人として働き、中華料理店宝来軒を開店。戦後の食糧難を乗り切り、結婚式と披露宴を同じ店内に完備したことが、中華料理店での結婚式ブームの先駆けとなる。その後・・宝来軒別館開店 写真スタジオまで完備し、一日最高8組の披露宴をこなすこともあった。

昭和53年

~平成2年

二代目 (四代目祖母)以前はお菓子作りを手伝っていたので、いろいろな中華菓子を作っては、お客様はじめ親交のある方に配り、あの味が忘れられないと今でも話す。細身でありながらも、中華鍋を握り、料理を作っていた。
平成5年

~29年

三代目 (四代目 母)結婚式ブームは過ぎ、厨房も世代交代となったことで、料理を劇的に変えることにし、それに伴い厨房・レストラン・ロビーの全面改装。今後は椅子席の希望が多くなると予想し、和室大宴会場を椅子席に改装、結果売上増となり、1億7千万の借入れをわずか10年程で完済目前まで返済する。しかし、これに終わらず任期が終わる年まで大小様々な改装を繰り返し、全ての宴会場を改装した。また、遠くは京都や沖縄など慰安旅行を定期的に開催、厨房全員を台湾への料理研修に参加させるなど、従業員を大切に思ってきた。

平成29年~ 四代目 11月 50周年記念祝賀会を開催。攻めの営業転換へ・・

 

4、平成27年9月~これまでの取り組み

正式には、12月から役員として戻ることとなり、幼少のころから母の働く背中を見て育ち、よく手伝っていました。母が社長に就任した時に社員として入社。

また学生のころから遊ぶよりアルバイトをする方が楽しく、マクドナルド、ハウステンボス、展示会スタッフ、年末アルバイト、ビアホール、喫茶店など、数々のアルバイト経験があったため、サービス業には、慣れていました。

また、保険会社でのマネージャーとして経験から、自分なりに思いつくことは、改革をしてきたつもりでした。

 

【改革や取り組みの内容】

企業理念を掲げる

『私たちは感動する中華料理店をいつも全力で追求します』

(毎朝朝礼の最後に全員で唱和します)

 

平成29年 平成30年
年間テーマを決める 全 力(個人の持てる力を全力出しきる仕事をする) 協 力(と書いてチームプレーと読む)
ホームページ 2月よりリニューアル
*レストランメニュー 9月末よりリニューアル

全品写真つき、英語版も作成

見やすくなって好評

当日焼いた焼き豚がある日は、

POPを挟み、注文増

組織図制作 4月より役職を任命、職階の明確化
幹部会議 厨房・フロア  週1回実施 →継続
グループ編成 正社員・パート・アルバイト 混合で4グループ

リーダーはフロア部に依頼

グループ内でリーダー副リーダー選出。グループ名(チームワークを連想するもの)をチームで決定

個人目標を決め、リーダーは時々声をかける

個人年間目標設定
月間〇〇賞

1位に5000円

笑顔賞・・笑顔が一番良いと思う人を毎月一人投票

*段々投票率が下がる

挨拶賞・・挨拶が一番良いと思う人をグループで1名選出(グループ外から)
原価算出 単品料理・コース料理
お礼状発送 宴会後の幹事様や名刺交換した方
店休日
結果 問い合わせの電話が激減半年間の店休予定日を決め、カレンダー式の店休日表を掲示、縮小版を受付やロビーに常備

年間通して不定休

1.3.8.12月→不定休

上記以外の月→第2第4火曜

 

また、右記に示した以外に、50周年を記念してキャンペーンを実施しました。

内容は、以前のメニューより何品増えたか答えを3択にしたクイズとしました。

当選商品は、特賞1本:コース料理4名様ご招待の他、料理単品1品や新デザートプレゼントなど、50本用意しました。約3ヶ月の期間中、応募総数 4024枚。予想に反して、県外からのお客様も多く応募してくれたことでした。

北海道・石川・京都・名古屋・東京・大阪・宮崎・鹿児島など、当選者中データのみから県外来客数は 16%でした。またこの時は、何を得たいという目的はなく、集客に繋がれば良いという考えしかありませんでした。

研修を終えた今となっては、もっと戦略的に捉え、有意義なキャンペーンとすることができたのではないかと思い、次回のキャンペーンに繋ぎたいと考えました。

 

 

また、フェイスブック・インスタグラムのアカウントを作成し、お客様がアップしてくれたものにはコメントを記入するようにしています。インスタグラムからの来店率も少しずつ増えてきています。

この2年間、アルバイトでの経験や保険会社でのマネージャーとしての経験が、全てにおいて役に立っていることは間違いありませんでした。

この経験がなければ、この中で1つか2つくらいしかできなかったかもしれません。

保険会社では、仕事のスキルアップの研修を毎週土曜日受講し、目標設定をすることで達成した時、達成感を感じる喜びから、その後のやる気に繋がり、自信となっていくことを自ら経験できました。

それに、自己啓発セミナーにも相当通いました。そのお陰で、ポジティブに考えることや、ピンチの時に人のせいにしないこと、事実と解釈の捉え方な ど、沢山学びました。

また、これも受講していなければ、このスクールでホームワークやグループ課題を出される度に、仕事や家事が忙しくて、出来るわけがない、絶対に無理だと思い込み、申し込んだことを後悔していたことでしょう。

動機でもあったように、色々な経験を踏まえて、思いに満ち溢れていたので、思いがあ ればなんでも上手くいくと思っていました。

しかし、このスクールでは、思いは一旦横に置き、経営ということはどういうものなのか、また経営者としての心構えやビジネスにおける常識を含めた内容で、初めて聞く常識もありました。次の章ではスクールで学んだこと、気付かされたことを述べていきます。

 

 

5、スクールでの学び・気付き

〇訪問先でコートを脱ぐタイミングを教えて頂いたにも関わらず、やっていない自分に気付き、他のことでも同様のことをしているのではないかという気付き。

〇相手先への文章の中での「致します と いたします」の違い。

〇代々家族経営で自社の土地や建物を持っているところは、売上があるなしに関係なく、危機感がない、と言われ納得。

〇自分のお店が一番美味しいと感じ中華街のどこにも負けていないと思っていること。

また、お客様の中でも涙する方、感動しましたと言ってくださる方を毎日というほ ど、目の当たりにしているので、長崎ではナンバー1 の中華料理だという自負があることに満足。競合店や流行っているお店はどこなのか、など情報収集を一切してこな かった。

〇顧客に経営者の思いを伝えるというよりはおしつけになっていた。

〇アンケートの取り方は、接客はいかがでしたか?という従業員の評価をしてもらうのではなく、顧客の情報収集をする方がお店にとって必要な情報となるので、来店きっ かけや来店頻度などを質問する。

〇5F分析や SWOT分析による初めての自社分析をし、社員とも共有したいと思った。また、銀行に決算書提出時、自社分析も添付することで、評価が高くなる。

 

SWOT


 

Å、イベントなどの情報収集、過去データ参考に売上目標を設定することで、売上とシフトのバランスがとれる。また友好的なミーティングスケジュールが可能となる

B アルバイト編動画の採用案内制作をして、接客の学びは就職役立つメリットを伝えて、採用に繋げる。

C 経験者を採用したので、今後指導強化できる

Ð 近隣大手住宅メーカーの駐車場を繁忙期や週末に拝借することで、駐車台数確保

E 10%を見込み、メニューリニューアル時、税込み価格にて値上げ済。10%実施時は値上げしないことで、顧客来店控えを解消できる

F 定期的に業者相見積実施することで、業者にも競争意識をもたせ、仕入れ原価を少しでも抑えることができる。また、大量仕入れやめ、こまめに在庫管理することで、食材未使用廃棄を抑える

G 社員と共に情報収集しながら、対抗策を話し合っていく

 

 

6、まとめ

このスクールで自分に足りなかったものが明確になったことは、経営者として、何を考え、何をしなければならないかということでした。思いと現実の違いを理解し、常に問題意識をもち、将来を見据えた改革を行っていく、そして結果を出すことが経営者としての評価だということを教えていただきました。

まとめとして、今後やりたいこと=攻めの具体的戦略として以下のことを実行していこうと考えました。

 

〇お得意様企業訪問

忘新年会や歓送迎会など、イベントシーズン前の営業も兼ねて、宴会会場の決定の ポイントやどんな特典が喜ばれるのかなど、情報収集を目的とした訪問をします。

 

〇ワインの充実

これまで中華料理に合う飲み物は、台湾紹興酒限定でお勧めだとPRしてきました中華料理店で一番売り上げているのはワインだということを、以前から把握していま したが、これまで全く導入する気がありませんでした。ワインは普段飲むことがあっても、紹興酒は中華料理店以外飲む機会がない方が多く、紹興酒は中華料理しか合わないという私だけの持論がありました。

しかし、顧客の希望を第一に考えた場合、好きな飲み物がなければ、いくら料理が美味しくても来店していただけません。せっか くの美味しい料理に、好みの飲み物がなければ、満足感が得られるわけがありませ ん。

また、紹興酒を飲まずして敬遠する人、以前飲んだ紹興酒が美味しくないと感じ た人もいるので、そんな人には接客の中で、台湾紹興酒のアピールをすることも可能 だと思いました。ワイン好きの顧客を掴むことで、売上増を狙います。

 

〇ムービー作成

ようやくインスタグラム・フェイスブックを開設でき、ホームページもリニューアルできましたので、もっとインパクトのある動画を見ることで、来店意欲を更に向上させることが可能と考えます。

例えば ・ムービーパンフレット ~宴会編~ ~レストラン編~

・採用動画・・課題にあった動画を採用で作成してみました。

実際に働いている場面やバイト生にインタビューをするなど もう一度編集し直して、発信していきます。

 

〇企画:1年に1度プレミアムスペシャルコース

料理のみお一人様2万円(予定)で、特別なコースをお得様限定でご案内。高級食材や一般のコースではできないめずらしい料理などを振舞います。年代の古い紹興酒や料理に合うワインなど、ドリンクも充実したものを準備します。おもてなしは顔馴染みのお得意様ですから堅苦しくならないようにします。繁忙期を除き、売上の低い月の平日に開催、他のご予約は不可とし、このコースに全力をかけます。

この企画の主旨は、料理に対する探求心を継続できることと、お得意様に特別感を感じていただけます。そして更に感動を与え喜んでいただくことで、ご紹介を得るこ とができると確信しております。また、中華料理をもっと知ってもらいたいという(ここでは思いがメイン)熱い思いを全開に出し切ることが大事です。

 

〇黙々タイム

女性が多い職場なので、あちらこちらでおしゃべりが盛んでした。「仕事のことを話してました」と言われたら、何も言えなくなります。何かいい方法はないものかと思っていたところ、修了生の論文集の中に「黙々タイム」というのを見つけました。これは毎日時間を決めて、その時間は業務のことでも今解決しなければならないこと以外、後からでも良い要件や私語をしない時間にするということです。とても良いアイデアだと思い、早速 3/17~はじめました。この結果はプレゼンのときでも、発表できればと思います。

 

◎どんなときも感動企画

私は、満席の時、お席をお待ちいただいているお客様には、本当に有難いと思っています。待っても食べたいという思いもあるからかもしれませんが、通常は平均5分~20分程ですが、繁忙期は、長くて1時間待ちの場合もあります。日頃から待ちの有無の電話問い合わせも多く、できればお待ちはない方がよいと思うのは、誰でもそうです。しかし、そこに満席時でもお客様を思う気持ちとして、そこまでやるかということをやってみたいのです。そして、考えに考えた結果・・・男性社員:Mにマジシャンになってもらい、手品を3分披露して、お客様に驚きと笑顔を提供できないかと思いました。(M は某ホテルよりヘッドハンティングしてきましたが、笑顔がイマイチなので、マジシャンなら満面の笑顔は求めないかと思い)料理やサービスに感動してくださるお客様はいても、満席時のお席待ちのお客様の対応は、未開拓でしたの で、これができたとき、企業理念がより強いものとなると考えました。

慣れるまで は、マジックをするタイミングは非常に難しいと思いますが、お待ちのお客様をも感動させる意外性に驚いてもらい、お待ちのストレスを少しでも軽減してあげたいと考えています。逆に待って良かったと思わせられたら、私の本望です。

M には3月中にこの企画をやるかやらないか、又はマジックでないものにチャレンジするのか、彼の答えを待っているところです。

 

最後に、企業理念である『感動する中華料理店をいつも全力で追求する』ことは 私の信念でもあります。感動する中華料理店は、お客様も従業員も感動するお店でなければなりません。感動すると人は笑顔になります。笑顔は人の怒りや恨み、悪の心を静めてくれます。

私は自分の店から、感動を発信することで世界平和に繋がると信じ、これからも人が感動することを、常に考えていく社長でありたいと思います。その原点となる攻めの営業の重要さに気付かせていただいたことは、経営者としての私の財産となりました。

そして、先生と仲間の皆さんとの出会いも一生の財産となりました。

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