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業界分析
シリコンバレーでの次世代自動車産業に関わる最新の現状を視察
1. 動機
自社での整備車両には、次世代自動車である電気自動車(以後、EV車)の入庫は未だ1台もない。平成29年のHV車、車検取り扱い台数は141台。国内でもプリウス等のHVの販売台数増加に伴い、自社でも整備士の教育を進めているところである。
今後大きくシェアを伸ばしていくハイブリッド車(以後、HV車)やEV車に関して、普及台数が特に多いカルフォルニア州での、整備や販売の現状を直に見聞きしたいと考え、視察旅行へ参加する。
2. 背景、事前調査結果
米国内でのEV車の販売に関しては、カルフォルニア州が、2位のジョージア州に12倍の差をつけてダントツの1位である。2017年、EV車の販売に関しては、アメリカ全体の販売台数の5.5割がカルフォルニア州となっている。これだけで見ると、カルフォルニアでの普及率は顕著であるが、全体の車両販売台数から比較すると、EV車は未だ全体の1.16%でしかない。(参照1)
しかし、近未来の自動車業界は、「自動車業界内での新分野EV車やHV車」という自動車固体のスペック等への話題から、大きく変換しつつある。(参照5)
IOTサービスの一環の中の「移動サービス」の一部に自動車産業が治められつつある、といっても過言ではない。その構造変化の波が日本よりも進んでいる、シリコンバレーに近い都市、サンフランシスコから発信される最新の“シェアリング”や“自動運転ビジネス”の現状も実際に肌で体験し、見聞きする。
(参照1:http://evadoption.com/ev-market-share/)
(参照元:http://evadoption.com/ev-statistics-of-the-week-phevs-by-the-numbers/)
(参照元:http://evadoption.com/ev-market-share/ev-market-share-california/)
(参照元:https://ischool.co.jp/2017-05-31/)
(参照5:http://www.dbj.jp/ja/topics/region/area/files/0000029853_file2.pdf)
3. 問い
A: EVを専門に販売しているディーラー(テスラ)や日本では未発売のEV車(シボレのBoltやBMWのi3)の人気や普及の理由など、見聞きする。そして、その車両の現状の整備点検がどのような内容であるのか。
(参照:http://evadoption.com/top-us-ev-sales-trends-from-2017/)
B: 大都市での移動サービスを実際に利用し、その利便性を体験する。
C: EV車、プラグインハイブリッド車が普及する背景にある、「充電所」などのインフラも、街の中でどれほど見かけるのか、確認する。
4. 検証結果
A: 米国EV車の2017年販売実績トップのテスラ、シボレ、そしてBMWの3社を訪問。
<<テスラ>>
シリコンバレー発祥で現在EV3種を取り扱う。EV販売台数1位のModel S、3位 Model X、日本にはまだ未入庫のModel3の全車種が揃っていた。テストドライブを予約し、ModelX(SUVタイプ)の試運転に同乗させてもらった。サンフランシスコ特有の坂道の多い街中を、ガソリンエンジン車では体験したことない加速パフォーマンス、しかもモーターがうなるような音は殆どなく非常に静粛で、スタートから1分でこの車の走行性に魅了された。
性能をリスト化すると、際限がないので突出した部分だけ。
*新車購入時、メーカー保証8年 距離の上限はなし
*パネルは全てタッチパネル。
iPadPro程の大きな パネルで、車の全てを設定できる。(例:A/C、ナビ、走行タイプ、世界中の音楽を無料で聴く、ブレーキの種類、等)
*24時間ネットにつながっている 車両は夜、駐車している間にアップデートされる 常に最新の性能で走行が可能。
*ブレーキパッドは回生ブレーキのため、8年位交換は不要。
*速度100kmに到達するのに、ModelXは2.9秒、ModelSは2.5秒。電気とは思えない加速力。
*自動運転は、最高のレベル5まで機能的には可能である。しかし、法律でまだ規制されているため、まだレベル2までの運用が可能。
*整備箇所はなし。消耗品のワイパーブレード、ウィンドウォッシャー、タイヤ交換、エアコンフィルターくらい。不備があれば、ソフトウェアのアップデートをすればよい、とのこと。物質的な不備があっても、8年保証があるので、整備コストは発生しない。
ディーラー巡りの1軒目として訪れたが、従来の自動車とは全く違う機能に、正直衝撃を受けた。日本国内でもEV車が数年で増加をしていけば、車検整備という法律もいずれ変わってくることは容易に想像がつく。近い未来に訪れるEV車の普及に伴ない、整備箇所減に対して、自社の取組みや対策を今一度考え直すよいきっかけとなった。
<<BMW>>
日本で一度だけ見かけたことがある、BMWのi3。ボディが特徴的で、見た目もユニークである。セールスマンに話を聞くと、フル充電で183kmほど走行可能、とのこと。しかし、日産のeNoteと同じように、ガソリンで発電して電気をチャージする機能をオプションでつけることも出来、距離に対して、安心材料は追加できる、とのこと。
整備箇所に関して聞いてみたが、テスラと同じ回答であった。ソフトウェアのアップデートは特に無いようだが、特に整備する必要な箇所はない。むしろ、2,3年のリースで購入し、2020年をめどにまた新しくEV車が発売される予定なので、買い換えていくのがお勧めだという。
日本でもMINIは積極的にリースを促している。一度購入したら長く乗る傾向にある日本人も、リースの利点を更に取り入れ、車両入換えのタイミングが短くなる車両が増加すると、更に整備業務の仕事がなくなるので、ここでもまた自社の自動車整備業だけに特化したスタイルを改めて考えさせられた。
<<シボレー>>
2017年のEV販売2位につけているのは、「Bolt」というEV車。ただ、カルフォルニア州内だけでみると、EV車の販売1位はこの「Bolt」であるという。
(参照:http://www.futurecar.com/2004/Chevrolet-Bolt-Becomes-Best-Selling-EV-in-California-)
同じような発音で同社には「Volt」という車種もある。こちらはPHV車である。2017年に発売されたBoltの売上げ台数で見ると、以前からマーケットに出ていたVoltの方がやや劣るが、30,000ドル台で購入できる手頃さや、走行距離もそこまで大差はない。(テスラModel S は259マイル=416km Boltは238マイル=383km)テスラの次に人気の高い車種となっている。
シボレのディーラーは、サンフランシスコ市内にはなかったので、隣のデイリー市まで足を運んだ。EV車としては、他と比較しても突出して目立った特長はないが、値段と距離、そして大きすぎないコンパクトなボディで、高所得層以外でも手の届くEVとして人気なのだという。すでに2社を見てきた後なので、整備に関しても新たな情報はなかった。しかし、ディーラーとして、お客さんもあまりなく閑散として、接客もほどほどであり、車もひどく汚れているものが展示されていたりして、EV車以外の部分で目に付くところがあり、その点では勉強になった。
B: 大都市での移動サービスを実際に利用し、その利便性を体験する。
サンフランシスコ市内での長めの移動には、ウーバーを利用した。実はアプリを導入し、国内での設定を完了させておらず、自身の携帯での利用は出来なかったことが非常に残念である。同じチームでの移動時に利用した。行き先を事前に入れ、金額も分かってから予約した。現金での支払いは発生せず、ドライバーも客もそれぞれから評価される、という画期的なアイデアで、都市では非常に有効なビジネスであると関心した。乗車後にチップの金額も要求とドライバーの評価を聞かれる。サービスがよかったらばチップも多めになる。利用している限り、マイナス面は見つからなかった。
視察チームの皆が利用していたLIME(ライム)は、実際には公道で利用はしなかった。ヘルメットや免許が必要、という点で、気が引けてしまったのだ。利用した数名から話をきいたが、便利なだけでなく、乗っていて楽しい!という感想を聞き、実際に公道を乗ってみればよかった、という悔いが残る。帰国してからライムの使用規制が入ったというニュースを聞き、更に残念でならない。
ホテルの前にタクシーが客待ちをしているのに、その後ろでウーバーが客を乗せて出ていく光景は、サンフランシスコで起きているシェアリングビジネスの波に世の中が一気に飲まれていく様を目の当たりにし、まさに百聞は一見にしかずであった。
C: EV車、プラグインハイブリッド車が普及する背景にある、「充電所」などのインフラも、街の中でどれほど見かけるのか、確認する。
こちらに関しては、サンフランシスコの街の中で多く見かけることはなかった。テスラのセールスマンから話を聞くと、Walgreensや映画館、ショッピングモールには充電所が設けられている、とのこと。
サンフランシスコの高級ホテルにも、充電所があるようだ。
実際に見かけたのは、スタンフォード大学近くのショッピングモール、コンピューター歴史博物館の駐車場敷地内に、5、6基設置されていた。日本でも高速などで見かけるが、6基も設置されているような場所は見かけたことがない。この比較だけでも、日本よりアメリカの方がEV車の普及が多いことが分かる。
5. 今後の取り組み、自社への活かし方
テスラをはじめ、シボレのBoltも、サンフランシスコの街中や、シリコンバレーツアーの道中、見かけることが多々あった。
実際にEV車に試乗し、保証内容や整備内容を見聞きし、自社の未来は今のままでは明るくないことは明確であった。自社に所属する18名の整備士も、EV車の整備箇所がかなり減少することは理解しているとは思うが、7月の社員研修の時間を利用し、サンフランシスコで実際に見聞きしてきたことを共有したいと考える。そして、現在チャレンジしている新しい事業への取り組みにも、皆が同じ方向を見て進めるよう、更に注力し、自社にとって「自動車」だけにとらわれない柔軟な会社となることを目指す。
今回、このような視察研修ツアーを計画していただき、事前にこのような考察も立てたことで、より多くの気付きを得ることが出来き、原田校長へは大変感謝をいたします。