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ワインの物流についての研究

O-college 南 昌憲有限会社ミナミ 取締役)

今回サンフランシスコのワイナリーへの訪問の機会をいただき、ワインの国際物流についての事前研究を行った。日本で近年多く見るワインにチリ産ワインがある。10年前まであまり見かけなかったが、今や手軽に買えるワインとしてコンビニ等にもよくおかれる様になった。身近に感じるワインについて、となれば趣味なのか仕事なのかよくわからないが、楽しく研究が行えそうだ。中には意外な情報などもあった。

 

まずカルフォルニアワインの輸出の歴史は1869年の大陸横断鉄道の全線開通までさかのぼる。合衆国東部との経済活動が盛んになり、ニューヨークの商人によりヨーロッパに輸出されたのがはじまりである。その10年後にはオーストラリア・東アジアにも輸出される様になった。

現在、船便で海上コンテナを使用しての輸出に、大きく分けて2種類の方法がある。

①船会社からコンテナを1本借り切っての FCL(Full Container Load)

②フォワーダーが行うコンテナの混載サービスを利用しての LCL(Less Than Container Load

 

そこでサンフランシスコにて確認をしたい内容が大きく分けて2件。

輸出の際に使用しているであろう、FCL・LCLサービスについてである。

通常の常温輸送可能な商材に関しては、サービスが行き届いているが、それがワインの輸送にも当てはまるのか。

またそこからそれぞれの輸送の詳細について確認を行いたい。

 

1、FCLでの出荷が可能なワイナリー

①輸出量が多い(生産量も多い)

②輸出の際の温度管理等、こだわりが強い

港からのコンテナの手配、フォワーダーが行っているのか?

コンテナへの積み込み(VAN積)はワイナリーで行っている?

 

2、LCLでの出荷が多いワイナリー

①フォワーダー(国際輸送を行う利用運送事業者)のサービスである混載便を利用する=輸出量が少ない(生産量も少ない)

②混載便のため、温度管理ができない・商品破損などの問題から品質へのこだわりが低い

③混載便を利用する(温度管理ができない)のであれば、出荷時期に制約がある(夏場は出荷をしないなど)

港の保税倉庫までのトラック手配はフォワーダーが行うのか?

またその輸送方法は?(パレットでの出荷なのか・ケースでの出荷なのか?)

 

また飲食店が提供している紙パックでのワインは、大量に仕入れてコストを下げることのできるタンクコンテナでの輸送で行われていると思うが、その実績があるのか?

 

輸入時にかかる税金を知ると、チリ産ワインが急激に増えた理由が垣間見れた気がする。それは2007年に結ばれた日本・チリ経済連携協定(EPA)によりチリ産ワインの関税が2019年に撤廃される。またそれまでに段階的に関税率を引き下げられるというものだ。それにより2015年にはそれまでワイン輸入量一位であったフランスをチリが追い抜くまでに至った。

ただ2019年にはEUとのEPAによりフランスからの輸入ワインの関税が撤廃される。そうなった時に、現王者(もともと価格の安いチリ産ワイン)にとって、元王者(価格の高いフランス産ワイン)が脅威になるのか、楽しみだ。

余談ではあるが、フランス産ボジョレーヌボーの解禁のニュースを毎年みると、「一年経つのは早いな」と実感させられるが、ボジョレーの物流も非常に面白いと感じたので紹介したい。

ボジョレー解禁日の1週間前がフランスからの出荷が認められる日である。そこから世界に向けて出荷が行われる。

解禁日に間に合わすため、最初の貨物は航空便にて輸送を行う。フランスから日本の主要空港に向けそれぞれ輸送を行われてる。しかし、仕入れ単価が安い商品に対し輸送コストが高くついているため、輸送方法が変化してきた。大阪向け一部貨物の輸送ルートの情報を入手したので紹介したい。

フランスから航空便にてまず韓国の仁川空港へ送られる。そこから釜山港に運ばれ大阪港まで船便にて輸送されている。釜山〜大阪港への輸送を担っているのがフェリー船(PANSTER DREAM)である。貨客船のため、運行スケジュールに遅れが出にくい。また航空便に比べ、安価である。またフェリーを使用するため入港日当日出荷が可能である。大阪港入港が週3便と便数も多い。航空便とフェリー船を組み合わせる面白い輸送だと感じた。

 

今回の研究のポイント

①輸出の際のロット(最低数量)の取り決めがあるのか。またその輸送方法は?

②商品への温度での品質低下を考え、発送時期の調整を行ってるか?

③製品をビンで輸出されているのか?

④商品(品種など)によって、発送方法が変わるのか?

 

上記内容を確認することに重点を置きつつ、ワイナリーでの見学・試飲を楽しみたい。

 

研究結果

この度のナパヴァレーでの2社のワイナリーの訪問は、カリフォルニアワインの印象を大きく覆した。まず商品作りへのこだわりと品質管理である。大型農園であるにも関わらず葡萄を全て手積みで行なっている。また熟成を行う際の樽や環境へのこだわり。そしてカリフォルニアワインのブランドイメージのための出荷先へのこだわりである。今回訪問したオーパス・ワンに関しての検証結果は下記の通りだ。

 

①日本向け出荷は、買付られた商品にケース梱包を行い航空便(FedEx)にて輸出をしている。輸送費は1ケース(6本)で$15である。出荷単位は1本から可能。ただ運賃が割高である。

②航空便であるため、温度調整等は行わず発送をしている。元々の原価もさることながら、輸送費等も含めると日本の国内での上記ワイナリーの商品を購入しようとしても、他に比べ非常に高額になる理由がわかる。

③ビン詰めされた商品にケース梱包を行う。

④発送方法は全て同じである。

 

現地で$350であったものが、日本でのネット販売でも¥45000〜¥50000で取引されている。その為そのワインの価値を理解できる相手に販売を行う。

 

カリフォルニアワインの輸出市場は下記の通りだ。

1位ヨーロッパ 553百万ドル

2位カナダ   444百万ドル

3位香港    119百万ドル

4位日本    94百万ドル

5位中国    79百万ドル

 

2019年経済連携協定によりチリやEUからのワイン輸入の関税が撤廃される。しかしアメリカからのワインに関しては引き続き15%の関税が課せられる。より一層販売価格に差が出るであろう。ただカリフォルニアワインにとってみれば、それは微々たる問題だと感じた。価値がわからないやつは飲む必要がないし、安いワインが欲しければ他を探せ。そのような声が聞こえてきそうだ。

 

今回のワイナリー訪問で、生産者のこだわりは今後の日本の農業においても必要であると感じた。今はインターナット社会である為、販路は世界中に広がっている。

今回の視察は、日本という小さな市場しか知らなかった自分自身の恥を気付かせていただいた。弊社は物流業者である。世界への道はまだ遠いかもしれないが、少なくとも日本全国に視野を広げて行きたい。

輸送品質・サービス品質へのこだわりを持って、他者との差別化をはかりオンリーワン企業を目指していく、ということを意識し今後の経営戦略に活かしていきたい。

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