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マーケティング
業界分析
サンフランシスコの店舗におけるディスプレイとしてのダクト配管の調査
O-college 4期生 天野 貴夫 (有限会社エーエムイズミ 代表取締役)
1. 動機
当社は空調ダクト工事を営んでおり、主にビルや商業施設の空調ダクト・排煙ダクト・厨房ダクトを工場で製作し現場で取り付けを行っている。ダクトには主に角ダクトと丸ダクトに分類される。当社では角ダクトを生産し、現場での取り付けは角ダクト丸ダクト両方の取り付けをおこなっている。
ダクトは快適な室内環境をつくりだすために、明治時代に伝えられた。当時から昭和40年代ごろまでは全て職人が板金をハサミで切り、ハンマーで叩いて、手作業で折り曲げダクトを製作していた。またこの頃は工場生産ではなく、現場に鉄板を仕入れ現場で加工し取り付けを行なっていた。全て手作業で行い、現場で合わせるダクトを作っていたので生産性はとても低かった。昭和40年ごろにボタンハンチはぜ形成機が導入されると生産力もあがり機械化が進み工場生産が支流になった。昭和60年頃にプラズマ切断機や共板工法(TDC工法。現在の主流)がアメリカより導入され機械化と生産性の向上が一気に図られ、ダクト先進国であるアメリカやヨーロッパ並に生産能力が向上した歴史背景がある。
ダクト形成機のメーカはアメリカでのシェアトップはSpiro、日本では深川機械販売、韓国ではジンウォンテクノロジー社、中国ではByfo社、などがあり今まではメンテナンスの面から輸入や輸出はあまり行われていなかった。しかし、最近では韓国のジンウォンテクノロジー社がオートメーション化されたダクト形成機を代理店契約で販売し世界的にシェアを広げている。日本ではジンウォンテクノロジー社のダクト形成機は3台納入されており、この先は3台が契約済みと聞いている。この先のダクト製作もオートメーション化は避けられないであろう。日本トップの深川機械販売はダクト生産の一部をタイへ移し製品を東南アジアや日本に輸出しており、グローバル化の戦略を取っている。
アメリカのダクト製造の規格は角ダクトではSMACN規格があり丸ダクトではSPIDA規格がある。いずれも日本の国土交通省標準仕様書より種類が多く細かく分類されているのか特徴である。またアメリカのダクト製作をする工場は私達のような小規模で専門的な工場ではなく、金属加工や溶接などを組み合わせた巨大な工場が多い。
当社が製作し取り付けを行っているダクトそのものは空調設備でありほとんどが天井内に収まっている。天井面に設置している吹き出し口や排気口などから空間の空調を行っており、ダクト本体を見ることはあまり無い。しかし近年は受注物件の5%程度は天井が無く、天井内設備が露出しているスケルトン天井の場合がある。(外部を除く)10年ほど前にはほとんどスケルトン天井は無かったが、近年は徐々に増加傾向になっている。確かに設備配管がむき出しの天井は天井が無い分、高さが取れるので開放感があり、スタイリッシュに見える。また、天井工事が無いので建築のコストも下げる事ができる。しかし、ダクトや配管が見える事によって配管施工者の技術や丁寧な施工が求められる。
アメリカのダクト工事を見学するにあたって、工事現場には安全の為に立ち入りは難しいと考えられた。ダクト施工方法や技術を観察するには天井の無い店舗へ行き、露出部分の空調ダクトを観察してどのような施工方法なのか、また空調ダクトをどのようにしてオブジェとしてレイアウトしているのか調査したいと考えている。
2. 問い
アメリカのダクト製作や取り付けの技術は日本より優れているか。またスケルトン天井のダクトはオブジェ的に配置されているのか。
3. 仮説
アメリカの建設費は2006年(11670億$)をピークに2011年(7880億$)まで減少したか2016年には1186億$まで回復シており今後の伸びも予想される。しかし、建設業の労働人口は2006年では約1千万人だったが2011年には約700万人まで減少し2016年には860万人が雇用された。建設費が上がってきているが雇用者数が2006年のピーク時より減少しているのは、機械化やIT化が更に進んだものと考えられる。
[引用元:The Statistics Portal]
アメリカは全館空調(セントラル空調)が主流であり、一軒家でもセントラル空調の設備が整っている。一方、日本においては大型施設ほどセントラル空調になり、オフィスや病院など建物が小さくなるほど個別空調になる傾向が強い。一軒家においてはセントラル方式の空調はあまり無いだろう。一般家庭のセントラル方式では空気を巡回させるので埃やチリが溜まりやすい。その為、アメリカではダクト内掃除業者が多く存在する。セントラル方式ではパッケージエアコン(冷媒)の代わりに空気を送るダクトが必要となる。機械室で生成された暖気や冷気はダクトを通って各所に送られる。空間全体を空調する事が目的なので部屋の隅からでも吸排気ができる。一方、個別空調方式では冷媒・電線・排水が必要となり、空調できる範囲も小さいので、配置は部屋のセンターに列することが多くなる。その為、セントラル空調の方が空間も広く取れすっきりとしたレイアウトができる。セントラル空調が主流のアメリカにおいてダクトはスケルトン天井でも違和感がなく配置できると考える。
サンフランシスコにおけるスケルトン天井の割合は10%ぐらいではないだろうかと考えている。理由はサンフランシスコのいろいろな店舗を検索したところ、200店のうち18店だった。また、カフェを検索すると約40%が天井は無く配管やダクトが露出していた。しかしこれは実際に数えなければ、わからない数字である。
ダクトの製作や取り付けの技術は写真で見る限りは日本の方が優れているように見える。これは国民性が出ていると考えられる。端的なイメージであるが、アメリカ人は大雑把な所があり細かい所はあまり気にしない。一方で日本人は職人気質であり細かい作業でも丁寧に仕上げる。またオーナー側の要求も細部まで指示する事が多い。その為、技術は日本の方が優れていると考える。
また、大型のスパーマーケットやモールは買い物をする時は商品を見るので、目線は下に行き天井はそれほど目線に入らない。一般客は店舗の天井の汚れ等は気になるかもしれないが、天井の形状や天井に付いている吹き出し口や吸気口、エアコンや照明といった天井設備はさほど気にならないと考える。天井が無い事によって空間は広くなり、大きくスッキリとした印象を与えているのではないのだろうか。
天井ありと天井なしのメリットとデメリットを考えてみた。
今回のカルフォルニアの視察ではいろいろな店や店舗を訪れ、アメリカではどのような空調設備で、天井ではどんなレイアウトを採用しているのかじっくりと観察したいと考えている。
4. 現地検証
現地のサンフランシスコにおいて食事や買い物、休憩や調査に入った店舗の天井内設備が露出しているか、天井内に隠れているか調査した。少しでも配管が露出していれば露出の方へカウントした。
調査数 58
内訳
レストラン 6店
物販 36店
カフェ 7店
施設 6店
調査した店舗の割合は上記のとおりである。物販は店内に入りやすく調査数が多くなっている。飲食関係はオーダーせずに店舗に入るのは難しかった為に調査数は少ない。
配管設備露出割合
天井あり 31店
天井なし 27店
配管の露出の割合は上記の通りである。
個人的な見た目ではあるか、店舗は改修工事をして新しいのか、古いままなのか調査した。
(左)古い建物のレストラン。吹出口が梁に取り付けされておりダクトを囲っているのがわかる。
(右)同じぐらいの年代の建物の改装しているカフェ。客席に天井が無く開放感がある。
また、今回の旅行同行者に帰国後、印象に残っている店舗の天井を覚えているのかアンケートを取った。
コンピューターミュージアムでは天井は無く、露出ダクトだったが日本ではほとんど使われないオーバルダクト(楕円形)だった。
コンピュータミュージアムのオーバルダクト
5. 検証結果
サンフランシスコにおける天井の無い店舗は10%と予想していたが、実際には40%近くの店舗の天井が無かった。カフェに関して調査した所70%近くの店舗では天井が無かった。この数字も予想より上回っている。
個人の調査だとレストランやカフェは調査だけには入り辛く、物販などが多かったが、同行者たちの「どの店が印象に残っているのか」といアンケートには食事やカフェなど、多く時間を過ごした店舗が印象に残っている結果になった。
サンフランシスコは建物自体が古い歴史のある物も多く、新たに内装工事をした店舗は天井の無い店舗が多かった。
露出ダクトは保温しておらず、ほとんどスパイラルダクトで塗装をしていた。
日本ではほとんど使われないオーバルダクトを使用していた。
6. 検証結果への考察
サンフランシスコの建物は古い物も多く店舗内の高さの制限があるので、新しい店舗では広く開放感を出すには天井が無い方が良いと考えられる。流行っている店舗やカフェのほとんどは天井が無かった。しかし、店舗に合わせて天井とダクトを塗装しており店の雰囲気に合わせていた。その為に開放感がありリラックスできる空間を提供しているのだと感じた。
新しい店舗ほど天井をなくし、配管やダクトを塗装し、空間を広く取る傾向にある事がわかった。
天井と同色のダクトや器具。違和感なく開放感がある。
無塗装または天井と別色の塗装ダクト。存在感が出て無骨な感じだが店の雰囲気に合わせインテリアとしても見栄えが良い。
露出ダクトでオブジェ的に配置と施工をしていたのはコンピューターミュージアムだった。コンピューターミュージアムのオーバルダクトのメリットは空気抵抗が少なく省スペースで施工できるが、コストが高いので日本ではほとんど使われない。コンピューターミュージアムは天井が無いので露出ダクトの見栄えにこだわりオーバルダクトを使用したと考えられる。
サンフランシスコにおける店舗の露出ダクトは施工技術的には少し雑な所が見えたが、塗装で綺麗に見えるようにしている印象であった。
7. 今後の取組、自社への活かし方
ダクト施工において天井は無いほうが良い。なぜなら天井の工程に追われる事もなくなり、また天井施工後の工事(天井器具取り付け)もなくなるので、コストダウンに繋がる。天井のない店舗は広く開放的でお洒落に感じる事を店舗オーナーや設計施工業者に伝え、施工のコストダウンを提言していきたいと考える。
8. 感想
サンフランシスコは3回目だったが、前回は25年以上も前だったので、所々しか覚えていない。今回は事前調査や現地の歴史を知る事によって旅行も深く知識を得ることができる事を知った。これから旅行に行く際は、最低でも現地の歴史を調べてから行こうと思う。
サンフランシスコは都会であり、ホームレスも多かった。日本ではあまり女性のホームレスは見ないがサンフランシスコではよく見た。朝にスターバックスで女性のホームレスと店員が揉めだしびっくりしたが、すぐに警備員が来てホームレスを追い出した。ホテルや店の前に警備員が立っている理由が分かった。西の太平洋へ自転車で向かった時はホームレスは居なかった。都会の方が住みやすいのだろう。しかし、朝から大麻や覚醒剤を打ちコカインを吸っているのを見たのは衝撃的でドラッグは普通に蔓延している感じがした。
JETROの中沢さん資料は読み返してもとても面白くベンチャーの難しさもよくわかった。コンピューターミュージアムではコンピューターの歴史を追って説明さており、40年前のコンピューターでもかなり大きい。現代と比べ物にならないが、この先はAIやIoTの普及で更に生活や仕事も変わって行くのだろうと思った。
コンピューターミュージアムでインカムを使い授業をする原田校長
ナパバレーではワインを試飲した。カルフォルニアワインは安くて美味しいというイメージだったが、実際は消費量の少ない日本はほとんど相手にされていない事を知って以外だった。
(左)オーパス・ワン貯蔵庫 (右)ワイナリーにて記念撮影
フォードのシェアバイクは便利だったが長距離は想定してないのだろう、サドルが硬く乗り心地は悪かった。サンフランシスコは道幅も広く自転車専用レーンが有るので走りやすかった。また、いろいろなモビリティが有り、日本での使用は道路交通法により使用できないが現地では効率良く移動できた。
フォーフォドのシェアバイク。自転車専用レーンがあり走りやすい。
電動スクーターであるLIMEは便利だった。現在は州法改正により乗れないが、体験出来てよかった。日本では使えないがUberはとても便利だった。海外旅行でかなりの不安要素であるタクシー(・道がわからない・ボッタクリかもしれない・危険かもしれない)をスマホアプリで解決できるのは画期的だと思った。UberやLIMEなどのスマートフォンとアプリでいろいろな事が出来るのを知ったのは良かった。
サンフランシスコの名物のケーブルカー。ケーブルカーミュージアムへ行けば動力(ケーブル)が動いているのが見れる。
全体的に日本と比べて規模が違う。すべて大きい。道や公園やその他諸々。買い物では小銭を一回も持たなかった。公園の屋台ですらカード決済しそれが当たり前の社会になっている。その点では日本は遅れをとっているように感じた。
今回、サンフランシスコに行けた事はとても有り難く、貴重な経験が出来たのは家族や従業員のおかげだと思い感謝している。