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マーケティング
業界分析
シェアリングビジネスを支えるテクノロジー
O-college 福島 利昭 (株式会社ランドコンピュータ 代表取締役)
1. テーマの選定理由
・シェアリングビジネスはカルフォルニアのシリコンバレー発祥である
・シェアリングビジネスを実現するテクノロジーは自社に活かせるかもしれない
数あるシェアリングビジネスの中からITを活用していて、実際に検証可能という観点で自転車のシェアビジネスにフォーカスして調査する。また、IT以外のテクノロジーについても調査する。
2.研究対象
「Ford GoBike」「LimeBike」を研究対象とする。どちらもカルフォルニアに本部をおいており、検証可能であり、GoBikeはカルフォルニア州においてShareBikeの火付け役であり、LimeBikeは昨年彗星のようにデビューした新進気鋭のスタートアップ企業である。共通点、相違点などを調べて結論を得たい。
3.概略
概略だけを見ていると業界が同じというだけで共通点が少ない。GoBikeは現在Ford社の支援を受けているが、サービス開始当初はパブリックファンディングで約12億円の資金を得た。LimeBikeもベンチャーファンディングで約13億円の資金を得てスタートしている。事業計画、事業戦略があり、他人の資本を使ってサービスを開始している点が共通点である。
※ドックレス・・・他の自転車シェアサービスがドック、またステーションと呼ばれる自転車を保管する特定の場所が必要なのに対し、LimeBikeは柵やポールに自転車を固定して乗り捨てすることができる。
3-1.概略と実態
Go Bikeについては都市部でステーションが多く、返却先にも困らないという状況ではあるが、一度返却したにもかかわらず「未返却」通知がメールで届き、確実に返却した旨を返信し、その後の請求額を確認したところ、追加の請求はなかったが旅行者としては次回また使うか迷ってしまうような事案に遭遇した。利用方法はシンプルで、自身で2回利用し、乗車返却問題なく行えた。また、GoBIKEを利用した伊藤氏、平良氏からコメントをもらった。
伊藤氏:「都市部から離れるとステーション数が減り、返却のために行きたい方向とは逆方向に行くことになった」
平良氏:「しんどいから二度と乗らない」
この両者のコメントを予見していたかのようなLimeBikeのサービスが、LimeBike Scooter(以下、Scooter)である。こちらはLIME Bike同様ステーションレスである。GoBikeが普及しているせいか、LIME Bikeはほとんど見かけず、Scooterばかり地図上に表示されていた。このScooterは返却先に困らず、疲れない+楽しい乗り物である。これはScooterに乗ったすべての人の共通認識で今後細かい問題点を改善していけばもっと普及すると考えられる。
4.利用方法
GoBike:旅行者が利用するプランはすべて30分毎のレンタルが基本となっており、30分以上乗り続けるとエクストラチャージが発生する。細かく駐輪しないと行けないので、自由なルートを組むのは難しくなる。観光コースを巡るには適しているが、1日中自転車であちこち行くという使い方には向いていない。ApplePay登録済みの場合、アプリを取得するだけで利用開始できる。年間・月間パスが用意されていたり、低所得者向けのメニューが用意されたりしていることから住民をターゲットにしていると考えられる。
※ 旅行者向けに1日中使いたい場合はレンタル自転車を進めているのは潔い
LIME:こちらはシンプルに30分1ドルとなっている。電動アシスト自転車やキックスケーターなども導入し始めている。登録にはFacebookのアカウントが必要。GoBikeと違って、プランの選択がないのでアプリの画面は地図がメインとなっており、使いやすく感じる。Webサイトで走行方法や駐車方法に関して様々なアプローチで啓蒙活動を行っており、アメリカでの自転車走行未経験者向けの情報がGoBikeに比べて多いところが旅行者をターゲットにしていると考えられる。
4-1.利用方法の実態
GoBike:
1・2・3のボタンが各自転車のドッグにあり、アプリに表示された番号を入力すると、その自転車が利用可能となる。3の5乗=243通りの組み合わせだが、時間制限が30秒なので、セキュリティは十分と考えられる(30秒以内に同じ番号を発行しなければOK)。
LimeBike(Scooter):
こちらはアプリ内のカメラでQRコードを読み取り、個体を認識する。借りる前にバッテリーの容量を確認することができるが、早朝以外は「Battery Low」という車両が多く、夕方以降は使ったことがない。一番電力を必要とする発進時だけ人力にしており、省電力化へのアイデアといえる。使い心地は爽快で、ステーションレスのため、使い終わったら適当に放置できるのはありがたい。しかし、再び使おうと思っても、別の利用者の手に渡っているということもあった。
その他のサービス:
「Bird」・・・ゴールデンゲートブリッジ付近で見かけた。使い心地はLIMEと全く同じだが、登録の際に日本の免許証が必要であった。LIMEと真っ向からぶつかるか、地域を分けるのか、あるいは合併するのか、今後の動向を注視していきたい。
「Jump」・・・サンフランシスコ市の認可をもらっているサービスで、ステーションレスでソーラー発電システムを備えており、LimeBikeの問題点をうまく解消しているように考えられる。しかし、実際にはソーラーパネルだけケーブル切断され、盗難されている車両を3台目撃した。
5.テクノロジー
GPS&モバイル通信・・・利用可能な自転車を地図に表示することができる。古くからある安定した技術の組み合わせでドッグレスを実現している(LIME)。
モバイルアプリ・・・昨年の7月にスタートしたアプリがすでにバージョン1.38.1。基本的にマイナーバージョンアップでリリースしているが、ビルド番号の変更でリリースしているときもあり、頻繁に改良が進められていることがわかる(LIME)。フォードの支援が入るまえの2013年からのアプリが継続しており、バージョン11.0.0となっている。1週間に1度のペースでリリースしており、こちらも頻繁に改良が進められている(GoBike)。
CSVによる過去データ&JSON形式によるリアルタイムデータ・・・1ヶ月ごとの細かいデータが手に入るのと、現在の利用状況をJSON形式で公開していて、誰でも入手できる。投資家目線だと安心できる(GoBike)。
6.自転車シェアの課題(解決済み、未解決)
パンクしないタイヤ・・・チューブより重いので、乗り心地が硬い。コストがチューブの7倍。素材も進化するし、流通量も増えるので、少しずつチューブの市場を奪うと考えられる。
盗難のリスク・・・リスクを犯してまで盗難するほどの価値はない、というところが自転車のシェアビジネスのハードルの低さになっていると考えられる。
7.今後の発展
アメリカでの自転車シェアビジネスはネット検索で見つかるだけで46社あり、利用者の利便性を欠いている。そこで、Transit社のような複数の自転車シェアサービスを取りまとめるアグリゲートサービスが出始めている。
8.まとめ
特別高度なITを駆使しているのではなく、ハードウェア的には枯れた技術を安定的に使っており、開発リソースをアプリの改良に注いでいる。また投資家からの信頼を得るためにデータの公開やニュースリリースで今後の戦略について数字入りで(自転車台数、ユーザー数、ステーション数など)発表することで増資を得ている。旅行者の目線ではLIMEのほうが使いやすいと考えられるが、これは現地で確認したい。また、Transitのような「まとめアプリ」が、本家のアプリを複数使い分けるのと比べて、本当に利便性があるかも検証した。
自社に何をフィードバックできるかはっきりしたことは言えないが、LIMEに勢いがある点をあげたい。
1) ドッグステーションをなくすことで、設備投資が少ない
2) ハードウェアで特徴を出さずに、アプリやWebサイトの使い勝手でGoBikeより優れている
3) 他人資本を利用している
4) 機能、性能ではなく、使い勝手でGoBikeより優れている。
5) 大学のキャンパスなど小さな範囲でサービスを限定的にスタートさせ、検証をしているところが、デザイン思考的だと考えられる。
6) 楽しい
以上
所感:
出発前には課題図書もあり、準備もたくさんあり、ちょうどそういうときに仕事が忙しくなり、何かのきっかけで中止にならないかな、と思っていたくらいでした。しかし、実際には課題図書のおかげでコンピューターヒストリーミュージアムも楽しめましたし、Apple、Googleだけでなく、この研究テーマであるバイクシェアも、UBERも十分に活用出来ました。また、カリフォルニアがアメリカの中でも特に発展している風土や文化を感じることが出来ました。「ああ、よかった」で終わらせず、せっかく研修として参加させていただいたので、その「感じた」ことを活字で残したいと思います。
「様々な人が住む街、サンフランシスコ」
障害者が多く、浮浪者も多く、社会的な弱者が住める街だと思いました。気候もいいですし、住んでいる人たちも受け入れているのではないかと思います。
「コミュニケーション」
近所のスーパー、カフェ、ダイナー、どこに行っても明るく声をかけられます。日本人であっても笑顔で接してくれます。仕事=辛いもの、という印象はなかったです。どこか楽しんでいるような雰囲気も感じられます。
「ミスを許容する」
Appleの社員の方のインタビューで最も日本企業と違う点として教えてもらいました。ミスをしていない人はむしろ評価されないとのこと。以前、ハワイでレンタカーをし、交通事故にあい、車両を傷つけてしまい、レンタカー屋さんに謝ったとき、「そのために保険に入っているのだから謝る必要はない。It could happen.」と言われたのとつながりました。これは大きな気づきでした。
「やはり英語はわかったほうがいい」
ANNONYMOUSという団体がデモをしていたので、思い切ってインタビューしてきました。卵食の問題を説明してもらいましたが、今までにない視点で、非常に勉強になりました。タクシーの運転手にUBERについて質問してみたり、39階のレストランで席をまとめる交渉をしたりと、意思疎通ができることで単なる旅行者ではなく、積極的に旅から学ぶ姿勢になれると感じました。
今後は中国にも行きますので、今回の研修旅行を真似して、しっかり現地のことを言葉と文化を事前に勉強して旅をして、また気づきを得たいと思います。この素晴らしい研修旅行を企画してくださった原田校長には大変感謝しております。ありがとうございました。