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カーシェアリングの現状から自動車業界を類推する モビリティーイノベーション⇒「車は所有する」から利用する乗り物へ変容する
N-college 1期生 小笠原 裕二 (小笠原自動車株式会社 代表取締役社長)
シリコンバレー発の自動車ブランドであるTesla. GoogleやAppleなどのテクノロジー企業の自動車ビジネスへの参入、Uberによる自動車をツールとして”活用”した新しいビジネスモデルの出現も見逃す事は出来ない。最新のインターネットビジネス動向をキャッチアップして、現地でしか使えないサービスを使う、サービス体制・方法について学ぶ。
1. シェアリングエコノミーの概念
“インターネットを介して、使われていない資産を活用すること”が基本概念
(1)そもそも「シェアリングエコノミー」とは何か。
空き部屋や空き家など、目に見えるものから料理やDIYの代行など目に見えないものまで、「個人が保有している遊休資産の貸出を仲介するサービス」を指している。また、こうしたサービスがインターネットを介して行われることも大きな特徴である。
2. シェアリングエコノミー普及の背景
(1)ますます便利になったモバイル・タブレット端末が、普及を後押し
シェアリングエコノミー普及の背景にはインターネットやスマートフォン・タブレット端末の普及などテクノロジーの発展がある。インターネットが整備され、端末によって手軽に利用できるようになって、急速な成長を遂げてきた。ユーザー側でいえば、スマートフォン一つでいつでもどこでもシステムを利用できる。また、システムを提供する供給側にとっても、従来専用機や特別なシステムで管理されていたが、全てスマートフォンひとつでアクセスできるようになった。ユーザーや情報を管理しやすくなった。
(2)人にモノを貸すリスクに対応、レビュー機能(評価)で個人間の信頼感を高める
「見知らぬ人同士がモノを貸し借りする」というリスクはもちろんある。そうした問題に対応したのが「評価制度」だ。個人と個人の信頼関係構築がこのサービスにおいて非常に重要な要素だが、多くのシェアリングエコノミーサービスでは信頼性を高めるためにユーザー同士のレビュー評価制度を導入している。Facebookなど既存のSNSとの連携が必須であるケースもある。米国では、オンライン活動履歴や既存サービスからスコア化するサービスも提供されている。
3. シェアリングエコノミーの市場規模
(1)拡大するシェアリングエコノミー市場
日本でも広がりを見せているシェアリングエコノミーだが、その経済効果は非常に大きなものになると予想されている。英国大手コンサルファーム PwCによると、2013年に約150億ドルだった市場規模が、これから約7年後の2025年には、約3,350億ドルまで成長すると見込まれている。日本でもAirbnbやUberといった米国発のサービスが上陸した他、日本発のシェアリングエコノミーサービスの提供も浸透してきている。矢野経済研究所によると、日本での国内シェアリングエコノミー市場は2014年度で233億円と推計され、今後も高い成長率で推移するものとみられている。
また、シェアリングエコノミーによる社会への影響について、これまでとは違う新しい人の働き方や移動方法を実現している。こうしたUberのシステムは、単にタクシーに替わるサービスというわけではなく、人の移動手段を変えている。他のシェアリングエコノミーの領域でも、単にサービスの置き換えではなく、全体のシステムを変えることになることを考えると、まだまだシェアリングエコノミーが拡大する可能性があると言える。
(2)シェアリング事業の普及を支える「保険」の動きにも注目
シェアリングエコノミー市場の急成長にともない、事業者はユーザーが安心・安全にサービスを利用できるよう、さまざまな対策を講じる必要がでてきた。その一つに専用保険がある。日本では2016年にシェアリングエコノミー協会が保険会社と提携し、同協会の会員向けにシェアリングエコノミー専用の賠償保険の販売を始めた。
東京海上日動火災保険や損害保険ジャパン日本興亜はシェアリングサービスのプラットフォーム事業者を対象に保険を提供している。保険の補償範囲や契約形態 (年間契約や利用単位ごと)はそれぞれ異なり、事業のニーズに応じて各社の保険を選べるようになっている。こうした保険の存在は、新規事業者の参入を促進はもちろん、シェアリングエコノミーに興味はある一方でトラブルが心配という潜在ユーザー層の利用につながると考えられる。
4. シェアリングエコノミーのサービス一覧
(1)シェアリングエコノミー協会が考えるシェアリングエコノミーの4つの領域
①モノのシェア(各種フリーマーケット・衣服などのファッション等)
②場所のシェア(駐車場・会議室・民泊・ルームシェア等)
③移動のシェア(カーシェアリング・ライドシェア等)
④リソースのシェア(労働力・技術・お金等)
国内外における代表的なシェアリングサービスは、4つの領域に大きく分けて考えている。
自動車業界は、③ 移動のシェア(カーシェアリング・ライドシェア)が主な
シェアリングサービスとなる。現地で体験したレポートも含めて後程深堀をする。
[引用元:運営会社 Sharing Economy lab株式会社ガイアックス]
5. 自動車業界を取り巻く3つの大きな変化
3つの変化とは、カーシェアリング、EV、そして自動運転テクノロジーであり、これら全てはシリコンバレーの技術とサンフランシスコを中心とした新たなサービスモデルが重要な鍵になってくる。UberやLyftの出現によりタクシーに乗る事はほぼ無くなったし、人によってはバスや電車といった公共交通機関に乗る事すら減っている。また、日々の通勤にライドシェアを使うなど、これまでは自動車を所有していないと無理だと思っていた生活スタイルも可能になった。また、ZipCarやサンフランシスコ地域限定ではあるが、ユーザー同士が車を貸し借りするGetAroundなどのサービスを上手に利用すれば、必要な時にだけ好きな車両を時間単位でさくっと借りる事も可能。これは同時に都心部に生活する人々にとっては、自動車を購入する理由が減ったという事にも繋がる。
その一方で、アメリカ国内でUberやLyftを利用した事のあるのは人口の15%で、このトレンドはまだ都心部に限定される。しかし、そのトレンドは今後急激に郊外にも広がっていくと予想される。
特に、この3つの変化の1つ「カーシェアリング」に注目して問いを立てることにする。
【問い】この変化は自動車業界にどのような影響を与えるのであろうか。
①もちろん長期的に見れば消費者の自動車購入率は下がる可能性がある。しかし同時にUberのドライバーや、ZipCar社は引き続き車両が必要になるわけで、自動車の販売量がすぐに下がる見込みは無さそうである。
②自動車の販売先と販売方法の変化は可能性が高い。これまでは一般消費者向けにディーラーで販売される事がB2B向け、カーシェア系サービスを通じた販売チャンネルの構築が必要とされる。
③現在の法律ではアメリカの多くの州ではディーラー経由で無いと車両の販売が難しい。しかし、この法律が改正されれば、オンライン販売や、ZipCar, Uber, Lyft, そしてGoogleなどのテクノロジー系企業に対しての販売が主なチャンネルになる可能性も秘めている。
④今のところ世界的な利用率が限定的なこともあり、カーシェアサービスの存在自体が自動車メーカーや整備工場に大きなダメージを受ける事は少ないだろう。しかし、自ずと今までとは異なる顧客層に対しての新たな価値の創出と販売戦略を考え始める必要性はかなり高い。
※これらのことも踏まえて、現地で動向をキャッチアップし自動車業界の影響を類推する。