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修了生論文

修了後の取り組みについて(VRよりもFRの増加に向けて)

東京校 (T-college) アドヴァンス 山岸 正雄 (株式会社アクシア 代表取締役)

はじめに

 

2016年9月6日がT-college2期生の第1回目の授業だったので丁度一年が経過する事となった。1年前から学び始めたT-college2期及びアドバンス(以下、ADV)の授業の中で初めて学ぶことはたくさんあり、日々事業への落とし込みやマネージメントの工夫には取り組んでいるが、明確にT-collegeをきっかけに意識改革し取組み始めたと明言できる事の一つとして管理会計への取組みがある。

授業では貸借対称表を理解する為に恐竜のフィギュアや車のオモチャ等を使い仕入れと販売のミニゲームを通じて資産や負債を解りやすく学ぶミニゲームを行った。そのゲームは銀行借り入れを効率よく行い流動負債をいかに短期間で現金に替えていくかという趣旨のゲームであった。

現在5期目で社歴の浅い当社は今まさに成長期であり資産を増やすという事において大きなヒントを貰った授業であった。さらにその授業においてVariable Revenue (可変売上、以下VR)とFix Revenue(固定売上、以下FR)という言葉を知り、FRで会社を成り立たせるのが理想という言葉に会社の方向性を示して貰った気がし、授業を機にその為の取組みを始めたので①資産(売上)を増やす②FRを増やす為に行った当社の取り組みを以下に纏めてみた。

 

 

第一章 資産(売上)を増やす為の取り組み

 

第1節 在庫を抱えるリスク

貸借対称表の中の売上を増やすという事を念頭に置き、まさに授業で行ったように銀行からの融資を基に仕入れを行い一年以内に売却と返済を行うプロジェクト案件を授業を機に積極的に取り組む事とした。それ以前もプロジェクト案件は取り組んでいたが受動的な取り組みであり、決して能動的な姿勢では無かった。

当社は不動産仲介業であるため、通常は在庫を抱えることは無く、主な支出は販売管理費の中の人件費や広告費になるが、プロジェクト案件は土地や不動産を安く仕入れ、リフォームや土地造成、建物建築を行い転売をするので不動産の仕入れをする際にはいわゆる原材料費が発生する。もちろん売れなければ長期在庫となるし、諸費用等を含んだ原価以上で売れなければ売却損も発生するのでリスクを負う形になる。

下記図1のデータによると不動産業と不動産業に近く在庫を抱える必要がある建設業の倒産件数を比較した際には約6~7倍に近い件数で建設業が倒産しているのである。劇的に売上を伸ばす不動産のプロジェクト案件は在庫や借入の発生により倒産確率が格段に跳ね上がる諸刃の剣ともいえる。

 

(図1)帝国データバンク 平成26年度全国企業倒産集計

 

 

第2節 当社の強み

SWOT分析による当社の強みを考えた際、不動産会社のフランチャイズであるピタットハウスグループ600店の中や埼玉県南エリアの不動産会社の中でもトップの実績を誇る売却受託数であると考える。売却受託とは不動産所有者が手持ちの不動産を売却する際に不動産会社に売却の依頼をする媒介契約を締結をする事を指し、売却受託数とは不動産会社がその売却の依頼を受けている件数である。通常一店舗としては10件前後の売却受託案件が平均と思われるが(※数字はセンチュリー21グループ、ピタットハウスグループ内であり地場業者はもっと下がる)当社は70件超の売却受託数を誇る。

不動産仲介会社の手数料は仲介成約時に売却受託を受けた販売会社が不動産所有者から売却手数料を受領し、購入者から購入依頼を受けた仲介会社が購入の仲介手数料を受領するため売却手数料と購入手数料の2種類が存在する。

仲介手数料は完全に成功報酬となっているため成約しないと受領は出来ない報酬である。購入者は複数の不動産会社を回るデータがあり(問い合わせ平均3.3社、訪問2.7社/不動産情報サイト事業者連絡協議会データより)、優良な購入客を各不動産会社が奪い合う状況となっている。購入客を誘導する為のツールとしてチラシといった紙媒体もあるが、現在の主流はsuumo(スーモ)やHOMES(ホームズ)といったインターネットの不動産ポータルサイトに不動産情報を掲載し購入客からの問い合わせやそこからの来店を促すのが通常の不動産仲介会社の取り組みである。なので各不動産会社はポータルサイトにこぞって不動産情報を掲載し、一人の購入客が複数の不動産会社に問い合わせをする状況となっている。

翻って売却から発生する仲介手数料であるが、売却主は不動産会社に販売を委託する形態として専属専任媒介契約(以下、専属専任)、専任媒介契約(以下、専任)、一般媒介契約といった3種類の委託方式があるが、専属専任と専任は一社単独の委託契約となるため、その形式で委託契約を受けると必ず成約時に仲介手数料が受領できる契約形態であり、当社は会社設立時からこの形式での受託を増やす取り組みをして来た。

当社の大きな特徴として、通常の不動産会社は地域密着を志向するが当社はインターネットによる集客に特化しているので、売却受託も本社所在地である埼玉県草加市に留まらず、東京、千葉、茨城、千葉、神奈川と広域に跨っており、広域から売却受託出来る事と受託した売却物件を高値で売却する営業力が当社の強みと言える。地域密着を目指す不動産会社の特性からするとだいぶ特殊な立ち位置ではある。

なお当社が売却委託を受ける顧客は法人が多いため、反復継続が多い事も特徴であり、常に多数の売却物件を抱えているので『売却に強い不動産会社』という評価が広域の同業他社に浸透しつつある。

 

 

第3節 強みから機会に繋げる

第1節で述べたプロジェクト用の不動産を仕入れるにあたっては、銀行や弁護士、税理士といった不動産トラブルの一次相談を受けた相手からの紹介が主な仕入れルートとなる。

ただ、こちらの情報は大手不動産会社であったり太いパイプを既に構築している不動産会社に流れる事が多く、社歴が浅く地域密着への意識が薄い当社は地場の地主や銀行、士業との結びつきの薄さが弱みであり、主要ルートとして上記ルートは考えにくい状況である。

転じて強みである売却受託に繋がる売却相談を受ける機会が多い点を生かし、売却依頼主から直接購入できる機会を他社に比べて優位性がある点と考えた。通常は3ヶ月から6ヶ月といった長い時間をかけて売却活動を行うが、中には離婚や相続、その他特殊な理由で早急に現金化しないといけない売主がおりその場合に流通価格より安くてもすぐ現金化となる買取を希望するケースが発生するのである。

上記のようにすぐ現金化したい買取希望の相談を受けても在庫を抱えるリスクや高額な現金を用意できず買取を主業務とする会社へ仲介をしていたが銀行融資を利用し当社が直接買取を行うプロジェクト案件として自社で取り組む事とした。売却相談からの買取希望相談をリスクを取る代わりに大きく売上を伸ばす機会としたのである。

 

 

第4節 リスクとその対策

仕入れをしても売れなければ最終的には売却損や金利、固定資産税等といった継続する支出の発生及び不動産の価格下落リスクを負うが、成約金額の予測を図る上で当社が売却依頼を多く受けて実際の売買成約を数多くこなしている事が役に立っている。

売却受託をするにあたっていくらで売れるかを予測する売却査定を広域で毎月100件近く受け、1件毎に査定書を作成している事により広域での相場観が養われる事に繋がり、当社に数多くの売却を依頼している最大手売主A社は当社が例えば2000万円で査定した物件を2900万円といった高値で売り出し、当社が実際に2000~2900万円といった相場以上での売却に複数成功しているので、相場観の醸成と高く売却する為の様々な売却手法の確立とその手法の裏づけをA社の資本とリスクでさせて貰っているのである。

高値で売却する手法に関してはT-collegeで学んだ事から離れるので説明は省略するが、数多くの査定、売却業務をこなして来た結果、成功に繋がる具体的な参考となり得たので当社のプロジェクト案件への取り組みへの敷居は低かったのである。

一点細心の注意をもって気をつけたいのは第1節にあるようにプロジェクト案件として融資と在庫を抱える事は倒産確率が格段に上がるので代表性ヒューリスティックとして都合の良いバイアスをかけ、当社にとって都合のいい予測を立てずに、常に客観的で冷静な分析を持ち続ける事を心がる事である。

 

 

第5節 高値買い取り

こちらは仕入れの基本である安く仕入れをするという事からは反するが『高値で売れる』という当社の強みを生かし一般の流通物件から『高く仕入れをする』手法である。安く仕入れをする事が第一ではあるが、高値仕入れの唯一のメリットは『高く仕入れをする会社』と情報供給元に認知して貰う事である。

こちらは埼玉、東京エリアで急拡大しているレジデンシャル不動産の経営戦略に倣った。高値で売れる予測が立つのであれば高値での仕入れもデメリットばかりでは無く、仕入れ情報の集約という点でメリットが発生するのである。今季は流通物件から2件の高値仕入れを断行したが無事にプロジェクトは成功した。

 

 

第6節 売上増加の取り組みの成果

当社は1月が決算月になるが積極的なプロジェクト取り組みの結果、平成29年度の上半期を持って平成28年度の売り上げを上回る形となった。特に仕入れた土地に建物を建築して販売する建売のプロジェクトに関して言うと原価2100万円であったが、当社の投下現金は仕入れにかかった諸費用や税金等で実質100万円前後の投下でそれ以外の金額は銀行融資で賄った。粗利が500万円だったので回収率に換算すると500%であったのでROEで見た際には非常に効率が良かったと考えている。売上をただ伸ばすだけでなく投下資本に対する回収率を極力伸ばす融資活用はリスクとのトレードオフではあるが、やはり積極的に取り組んで行きたい。

 

 

第2章 Fix Revenue(固定売上)を増やす為の取組み

 

第一節 当社の状況と業界のRF

当社は不動産仲介業務を主とする会社である為、主要な売り上げは不動産仲介に伴う仲介手数料と前章で述べたプロジェクトによる不動産売買益となっている。仲介手数料、不動産売買益共にVariable Revenue (可変売上、以下VR)であるため、大きく売り上げがあがる月もあれば、大きく割り込む月があったりと、VRの特徴通り安定性には欠ける売上となっている。

不動産会社が持ちうるFRとして、アパートや戸建てといった賃貸物件の管理手数料がある。これは一般的には不動産所有者に代わって家賃の回収や不動産のトラブル対応等を代行する代わりに家賃の月額5%前後を管理手数料として、不動産所有者から毎月受領する手数料であり、管理戸数が多い程この管理手数料が増えるので収入は安定する。

ただ不動産仲介会社は賃貸系と売買系に分かれるが、当社は売買系を標榜し、管理手数料は賃貸系の会社の分野であるので、当社の強みが生かせない分野であり現在ある会社の組織力からターゲットとしづらい顧客層となっている。

 

第2節 過去のFRを作る取り組み

会社設立直後から固定収入の確立の大切さは感じていたので、管理戸数の獲得には初年度から取り組んで来た。売買系の不動産仲介会社であった当社には管理獲得の人的資源及び仕組みが無かったので、スタッフでは無く私がマンパワーで直接管理戸数を獲得する取り組みをして来た。通常は空室のあるアパートや駐車場のオーナーを訪問し管理受託をしていく方法が一般的ではあるが、売買系の当社は一棟のアパートやビルを売買仲介し、購入者から直接、賃貸管理を受託する方式を取り管理戸数の確保をしていた。管理数は2期目までに全国の不動産会社の平均的な管理戸数349戸の約4分の1にあたる80戸を獲得したが、ここで人的資源の弱みに直面し、トラブルやクレームへの対応が遅れがちになりつつあったので3期目以降は管理戸数獲得を鈍化させる事となった。

 

第3節 FR増加への再チャレンジ

会社組織が対応しきれていない状況ではあるが、4期目の途中に受講したT-collegeの第三回目の授業にてFRの重要さに気づかされ、現在の会社組織で対応できるFRを増やす取り組みに挑戦する事とした。

その手法とは第一章で触れた売上増加の為に銀行融資を受け転売用の不動産を取得する事とは別に長期保有目的の不動産を購入しそこから賃料収入を得るものである。こちらは営業外利益に分類されるものではあるが、毎月の安定的な賃料を得る事で疑似FRとみなし、先々は売却時に売却益まで見込む事の出来る長期プロジェクトとしての側面もある。

『仕入れ』『客付け』『管理』『売却』は現在の会社組織力でも対応できる事と『仕入れ』『客付け』『売却』は当社の強みを生かせる分野なので孫氏にある『負けない戦場』になり得ると判断したのである。

 

第4節 実際の取り組み

今期に購入した不動産会社は賃貸を保有する別会社があるのでそちら名義で1件、当社名義で1件購入した。2件合計で毎月49万円の賃料収入であり銀行返済額が25万円であるため差額24万円のFR確保となったが、1件は同業他社の社長から購入したい旨の打診を受け即時売却してしまったため、結果プロジェクト案件となってしまった。

2017年9月10日現在、新規物件の取得のための融資を銀行打診中であり、同様の形で年間に3~4件の取得を継続していきたいと考えている。

 

第5節 FRに関する目標

表面利回り(購入額に対する満室時家賃収入の割合)が10%に及ぶ不動産は多いので、こちらは購入を積極的に取り組んで行きたい。現在不動産投資が非常に加熱している為、一般のサラリーマンや主婦までも参入しバブルの様相を呈しているが、第一章で触れた当社の強みである『仕入れ力』、最終的に売却利益に繋げる『販売力』を駆使しFRとVRの両輪として取り組んで行きたいと思う。

また業界の一般的FRであるアパートや駐車場の管理受託も増加を目指し、必要な人的資源の配置や他社に打ち勝つ戦略作成をしていきたいと考えている。

 

 

第三章 その他及び今後の取り組み

 

具体的な取り組みは第一章の売上増加と第二章のFR構築の動きであるが、その他にT-collegeで大きく変わった点として本を毎日読む習慣を付けたいと思っている。

こちらはADVの課題で出た課題図書が非常に興味深く読めた事と、私が知らない良書、考え方がまだまだたくさん存在すると思われると気づいた為である。

またリーダーの姿勢としてしっかり学び続ける事、知識をスタッフに伝えて行く事は授業及びコーチョーの姿勢を見て強く必要と思った点である。

綺麗事では無く従業員の生活を抱えている責任を忘れず、とことん学びつくし、やれる手立てをやりつくす事は経営者の務めだと思っているので、学び続ける事、成長し続ける事はリーダーにとって大事な責務だと気づかされた。

ベーシックやADVを通じて学んだ手法はどれも有効であり得ると考えるが、社歴の浅い当社はオペレーションに近い取組みの実践となってしまっているので、各手法、特にマネージメント手法の具体的な落とし込みや活用方法、成功事例はエリア、期を問わず積極的にスクール生から伺いたいと思っている。これこそMix-collegeとして様々な場で意見を交わす機会を提供して貰っているスクール生にとってはあるべき姿であると考え、私からも実践した取り組みの成果、感じたことを各スクール生と共有でき、それが誰かの役に立てるのであれば大変嬉しく思う。

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