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修了生論文

『経営理念について』

東京校 (T-college) 山岸 正雄 (株式会社アクシア 代表取締役)

はじめに

綺麗ごとと思われると思うが、私が職業を選ぶ際に最優先順位として、仕事を通じて人の役に立ちたいという気持ちがあった。20代30代前半の私はイラストレーター、漫画家として児童向けの雑誌にて自分が考える『子供に喜んで貰える仕事』をしていた。子供に向けた仕事は、子供との年齢が乖離していくに従い、子供の感性も掴みきれなくなると考えていたので、最初から30代までと決めていた。実際に33歳で長男が生まれるタイミングで次の職業に就く決意をし、同じく人の役に立てる仕事という観点で職業を探し、数ある職業の中から不動産業を選び、結果独立する事となった。新人として不動産業界に飛び込んだ際には、お客様の一生で一番高い買い物をする機会に携わり、お客様の一生に関わる選択に携われる喜びを実感しつつ、仕事に取り組んでいた。独立直後もその気持ちが変わらなかったが、『人の役に立つ』という点において『お客様』から優先する対象が現れた。それは自分の会社で働く従業員である。

今回は論文のテーマとして『経営理念』を選んだが、当社の経営理念そして私が働く上での理由として『誰かの役に立てる事』が根底にあり、その誰かとは当社従業員の比重が高いのでそれについて掘り下げていきたい。

 
 

第一章 人の役に立つためには

 

第一節 不動産業界の就労状況

不動産業界は稼げる業界と思われている。未経験からの入職も敷居は低く、個人の営業数字が給料に反映される歩合制の給料体系の会社が多いので専門知識を持たない未経験者であっても本人の努力次第によって収入は伸ばしやすい状況となっている。その反面他業種に比べて労働環境等整備されていない事も多く、長時間拘束されたり、パワハラ、モラハラがまかり通る業界でもある。コンプライアンスに触れる話しも頻繁に聞いたりもするし、従業員が挨拶もまともに出来ないような会社も存在する。また当社のような零細企業では社長の一存で方針が決まり、退職金等も無く使い捨てに等しい待遇が常識と思われている業界である。

未経験からの入職がしやすい反面、過酷な労働環境や整備されていない就労条件から離職率も他業種に比べて高い業界である。

 

第2節 当社の就労状況

当社は平成25年2月設立の会社でまだ4年と創業間もないため、全従業員数は8名である。全員が中途採用で20代のスタッフはいない状況である。営業職の給料に関しては、他社に比べて歩合率も高く設定しており、給料を稼ぐという事を第一目的にする人間にとって、希望に応える場を提供できているとは自負している。幸い優秀なスタッフが在籍している為、ピタットハウス全国(581店舗)で見た際も各営業が営業成績ランキングに入賞、表彰される機会も多く九州、北海道の加盟店からも名前は覚えられる頻度での入賞暦を誇る。業暦の浅い当社の唯一他社に誇れる強みとしてマンパワーがある。全国的にも上位5%に入るであろう優秀なスタッフが2名在籍している事が現時点での強みであると自負している。

ただ、業界の特徴として、優秀なスタッフ程稼げるのでどんどん独立、離職する傾向がある。起業する時点で一握りの優秀な社員に売り上げを頼る危険性を回避したいと感じていたので創業時から業績の平準化、再現性、マニュアル化、情報の共有化をまず当社の取り組む課題として掲げており、誰もが再現できる仕組み構築に取り組んでいる。

 

 

第2章 従業員の役にたてるとは

 

第1節 定義

『人の役に立てる』という事は漠然としているので、整理をしたい。お客様にとって有利な情報を提供し、取引が無事に終えた後も継続してフォローし有益な情報を提供し続ける。私が思い描く『人の役に立てる』不動産会社従業員とは前述のような内容であった。創業4年を経過して私の目はお客様よりも従業員の役にたつ事、もっとわかりやすく言えば従業員を幸せにする事にシフトしている。

まず従業員が何をもって幸せと感じるかには従業員個々により優先順位が違うと考えるが、大きく分けると『仕事、収入』を第一順位にする従業員、『福利厚生やプライベートの充実』を第一順位にする従業員に分かれるのでは無いかと考えている。大きくくりとして『仕事』と『福利厚生・プライベートの充実』に分類したが、それ以外に2点を加え『従業員を幸せにする』方法とは、下記4点だと考えている。

①従業員を稼がせてあげられる事(収入)

②従業員が安心して働ける場を提供できる事(福利厚生、職場環境)

③従業員を成長させてあげられる事

④従業員に対して私や周りから必要とされていると実感出来る場を提供出来る事

 

第2節 仕事、収入面の現状分析

特に不動産業界で働く従業員は収入面の優先度が高くなるので、同規模の同業他社に比べて多くの接客機会、成果報酬を与えるようにしている。私がベンチマークとしている会社の一つセンチュリー21H社(センチュリー21加盟店873店舗中3年連続全国1位)を大きく飛躍させた前社長、現グループ会社代表取締役K社長がH社の社長時代に目標としていた数値が営業1人あたりに対し13件の反響を渡す事を重要指標としていた。私も同じ数字を目標としており、2016年はその数値を達成は出来た。

(株式会社アクシア 2016年 売買反響割り振り数)

 

一月に1人当たり23.25件を割り振れたので目標数字は超えたが、多すぎても従業員の取り組みの内容が薄くなるので、費用対効果の面で見た場合、過剰な配分となっており数字管理が甘いと言わざるを得ない。ただ、潤沢といえる反響数を渡しているので成約機会は同業・同エリア他社に比べれば多く、収入に関しては業界平均を超える結果となっている。

 

平成 27 年賃金構造基本統計調査の概況 – 厚生労働省

 

比較検討 平成28年6月給料 業種別平均賃金6月支払給与

当社 従業員A男性 47歳 課長職 46.9万円 38.2万円

当社 従業員B男性 36歳 主任 39.4万円 32.7万円

当社 従業員C男性 30歳 役職無し 43.5万円 29.7万円

 

収入に関しては個人による成績に加えチームの数字に応じたインセンティブを全従業員に用意し、個人主義よりも全体主義を根付かせるようにしている。回りの同僚が業績を上がる事が自分の収入増加にも繋がるので、結果として知識・手法・人脈・情報の共有化(ナレッジマネージメント(マイケル・ポランニーの著書The Tacit Dimension(1967 『暗黙知の次元』)に一つの端を発するアイデア))に繋がり、経験の浅い従業員に優秀な従業員の手法や成功体験の再現をしやすい社風を目指している。浅はかではあるが、ただ稼ぐという事よりも従業員が『従業員の役に立つ』事にメリットを持たせたのである。

また競合他社の存在しないブルーオーシャン戦略(INSEAD(欧州経営大学院)教授のW・チャン・キム とレネ・モボルニュが提唱する経営戦略論)を模索・構築している最中である。今すぐ不動産を買いたいというお客様をほとんどの不動産会社が奪い合っており、そういった顧客は不動産業界内において最も競合する顧客層である。当社が他社と競合せず積極的にターゲットとしているのが、いずれ購入したい、なんとなく興味があるという将来的に顧客になるであろう潜在的需要顧客である。

物件で勝負をするのではなく、まずは会社のファンになって貰う為の継続的なアプローチとフォローを行い来店を促すまでを専門チーム(当社ではインサイドセールスチームと呼んでいる)が担当し、来店してからが営業の担当(当社ではフィールドセールスチームと呼んでいる)という割り振りにしている。前述したが、反響を営業に対し毎月13件以上割り当てるようにし、成約率、来店率、決定率、案内率といった各種データを残し、週単位、月単位の重要目標数値を決定し、PDCA(事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ)を行い数値データの達成、向上に取り組んでいる。

ある重要指標において優秀な数字が出ているスタッフの成功要因を分析し、全員で共有及び、再現性を持たせる事を目的としている。

 

第2節 福利厚生の現状分析

当社は2016年の年間休日95日となっており、厚生労働省の就労条件総合調査の概況による30人以上の従業員数の会社の平均108.3日には劣るので、数字面でまずはその数字を目指したい。その先にピタットハウスの母体であるスターツコーポレーション株式会社の福利厚生に準拠する制度を目指したいと考えている。

平成 27 年就労条件総合調査の概況 – 厚生労働省])

 

(スターツ2017年新卒採用募集要項より)

 

福利厚生に関しては整備途上であるが、創業と同時に社労士と顧問契約を結び、その後エフアンドエムクラブにも入会した。就労規則の制定や新しい制度への対応等随時図れるようにしたいと考えている。顧問税理士、顧問弁護士への無料相談の場も従業員には設けており職場以外でのトラブル相談も専門家に相談できる仕組みにしている。

弊社所有施設はないが、スターツが保有する設備の利用、スターツ提携の各会社の会員価格での利用等可能となっている。

また、社風醸成の一環として、愚痴、不満、悪口等ネガティブな言葉は社内では禁止しており、発した者からは罰金を取り、食事会等の開催時に充当している。特にお客様、オーナーの悪口は厳禁としている。ただ従業員の不満のはけ口を一方的に潰してはいけないので、何かあればいつでも私に直接もしくは、ライン、メールで伝えて貰うようにしており、月に一度、給与明細を渡す際に職場環境や待遇、仕事の仕方に関する個人面談の時間を全員と設けているので、その場では私の方から積極的に問題点、改善点等を聞き出すようにしている。

 

第3節 従業員を成長させてあげられる環境の現状

当社ではパート、正社員問わず全員が週単位、月単位、年単位で重要指標という形で目標設定を行っている。目標数値は私やリーダーと相談面談しながら本人に設定して貰い、成果を週、月で確認し成功した要因、失敗した要因はどこかを洗い出すようにしている。その際に際立った失敗や成功の要因は全員で共有するようにしている。

情報の抱え込みは禁止とし、共有する事を徹底しているので、顧客情報、業者情報、物件情報、人脈等も全員が閲覧出来るリストにしており、情報の共有化(ナレッジマネージメント)に取り組んでいる。こちらは成功体験の再現性が最大の目的である。

また、営業面のスキルに関してはフランチャイズ加盟しているピタットハウス主催の研修制度やセミナー、勉強会が充実しているので積極的に参加活用し、全国581店舗の直営・加盟店の成功事例も取り入れるため、該当店舗に積極的に訪問を行い、先方の経営者・従業員とも交流を持つようにしている。成長という面で特に私がスタッフに対して求めるのは、この先『経験の浅いスタッフを指導出来る事、平均的なパフォーマンスを引き出せる上司になる事』である。教えるという事は論理的に説明できなくてはならないので、自分自身が言葉で説明できるレベルまで整理、理解している必要があるからである。これは正社員、パート問わず全員に常に求めている。

また、仕事のスキルとは別に倫理法人会発行による『職場の教養』を朝礼の際に当番から指名された従業員が朗読し併せて内容に関する感想を自分の言葉で述べてもらっている。普段が重要指標等の数字を追いかける環境になりがちなので、『職場の教養』の朗読は従業員の情緒面の醸成、成長を目的としている。

 

第4節 従業員に対して必要とされていると実感出来る機会の提供についての現状と分析

私(社長)がその従業員を本当に必要としているという気持ちが伝わり会社のために働きたい、お客様がその従業員を必要としている事が伝わりお客様のために働きたい、上司や同僚、後輩のために働きたい、どれであっても構わないと思っている。私が不動産業界に飛び込んだ時と同じように誰かのために働きたい、結果役に立てていると実感した時、人生における充足感を得られるのではないだろうかと考えているからである。

 

当社経営理念と行動指針について触れたい

◆アクシア経営理念

1、アクシアに関わるお客様・関係者・従業員の幸せを追求し、地域に貢献する事を目的とします。

2、お客様に安心・安全な取引、サービスを提供し、一生涯のパートナーとして、永く信頼をお寄せいただける誠実な企業でありつづけます。

3、従業員の『もの』『こころ』両面の豊かさを目指し、『人財』として成長・活躍出来る場を提供しつづけます。

 

◆行動指針

1 私たちはお住まい選びというお客様の人生に大きく関わる責任を忘れず、不動産のプロとして、お客様に心から喜んでいただけるサービスを提供いたします。

 

2 私たちはお客様にとってセールスマンではなく、生涯のパートナーとなれる事を目指します。

 

3 私たちは『お客様』『関係企業』『会社内』『地域』からたくさんのありがとうを

いただけるよう、ホスピタリティの気持ちを持って日々の業務に取り組みます。

 

4 私たちは、自らを高める努力を怠りません。

 

5 私たちは、健康、身だしなみ、言葉遣い、行動に責任を持ちます。

 

上記行動指針1~5全てが『人の役に立てる』ために必要な事であると考えている。行動指針1、2、4、5は心構えに該当するが、3は具体的な数値として換算できる目標でもある。

お客様、関係企業、会社内、地域からありがとうを貰える取り組みをするとあるが、ありがとうという言葉をいただける事と同等にありがとうを言える人間である事も非常に大事な事だと考えている。ありがとうを言う事に関しては日々の終礼で強制的ではあるが、その日感じた感謝の気持ちを発表する場を設けており、当社では毎日の終礼の際、終礼当番に指名された人間が『本日のありがとう』を発表している。

いつもありがとうという感謝の気持ち、身の回りの人間の感謝の行動を探していないと突発的に指名された時には発表出来ないと考えるので、自然と誰かの行動に対して感謝の気持ちを持つ習慣付けを狙いとしている。

ありがとうを言う対象者は会社内の人間と限定はしていないが、ありがとうと言われた対象者が従業員であった場合、その行動を他のスタッフも認識できるので、されて嬉しい事、したら嬉しい事が会社内で積み上がっていっていると考えている。

 

実際の言葉

1/9 朝の掃除の際、(スタッフA)が皆の車を拭いてくれていた。ありごとうございました

1/7 賃貸契約の際、(スタッフB)と(スタッフC)が助けていただきました。ありがとうございました。

1/6 業者さんのあいさつ回りでお品をいただきました。ありがとうござました。

 

やって貰って当たり前と思う事に対して忘れてはいけない感謝の気持ちを常に持てる人間はとても素晴らしい人間だと考えるし、実際私もそのような人間となれる事を目指している。

 

 

第3章 従業員を幸せにする為に今後どのように取り組んでいくか

1、従業員を稼がせてあげられる事(収入)

2、従業員が安心して働ける場を提供できる事(福利厚生、職場環境)

3、従業員を成長させてあげられる事

4、従業員に対して私や周りから必要とされていると実感出来る場を提供出来る事

 

従業員によって優先順位が変わると思うが上記4点が私が思う従業員を幸せにする方法であり、どれが欠けてもいけないと考えている。今後の取り組みは現在の取り組みの継続であるが、各従業員が上記4点のどれの優先度が高いかを把握する事、そして私の思いを伝えつづけていく事、具体的な方法を示し続けていく事が肝要だと考える。

 

1.従業員を稼がせてあげられる事(収入)

目先の結果に驕ることなく、当社の強み弱みを常に把握し、特に手法の流行り廃りが早い業界でもあるのでマーケティング分析と100戦して100回負けない戦略の決定、改善をしていく。他社、他エリアでも成功体験は貪欲に取り込み弊社の強みと共存できないかを模索する。イノベーションを起こすという気概を常に持ち続ける。

 

2.従業員が安心して働ける場を提供できる事(福利厚生、職場環境)

制度の制定(顧問社労士、エフアンドエムクラブ)と、まずは従業員30人以上である厚生労働省就労状況平均を目指し、最終的にはスターツコポレーション株式会社に順ずる制度を目指す。

・しっかりとビジョンを示し継続的な社風の醸成を行う(経営理念、ビジョンの浸透)

・毎日の朝礼終礼(情報共有、報償、本日のありがとう、職場の教養朗読)

・毎月の個人面談(積極的に改善点、不満点を汲み上げる、ビジョンの浸透)

・従業員満足度の高い会社の取り組みは積極的に取り入れる(従業員満足度の向上)

 

3、従業員を成長させてあげられる事

・重要指標の設定と結果分析(PDCAサイクル)

・情報共有による成功体験の再現(ナレッジマネージメント)

・積極的にポジションを与え後進の指導を任せる(権限委譲)

・積極的な社外研修の活用

 

4、従業員に対して私や周りから必要とされていると実感出来る場を提供出来る事

・一番はありがとうと常に言える社風の醸成

・毎月に個人面談により社員の思いも私が把握する事、そして私の気持ちを伝える事

・お客様の声が届きやすくするためのアンケートの実施、結果の共有

 

 

第4章 まとめ

当社は独自のブルーオーシャン戦略を確立する為に現在、専門チームによるインサイドセールスの仕組みの構築に取り組んでいるが、同仕組にて一定の目標数値が再現できる目処が立てば、新規出店の際に立地は選ばないので継続的に人材を募集し、積極的な店舗展開、従業員採用をしていきたいと考えている。その際には『人の役にたちたい』という思いに共感して貰える人と働きたいと考えている。

当社はチームを束ねるマネージャーにはチーム全体のインセンティブを就けるので、より人の能力を引き出せる人程高い収入を得られる給料体系としているので、稼ぐ事を第一に考える従業員であれば『お客様のため』『部下のため』に能力を発揮出来てこそ成果を得られるのである。

ただ家族との時間を優先する従業員も『家族のため』という思いで働いており、私の思いから外れてはいないので、そういった従業員が退職まで安心して働ける会社でありたいと考えている。そのための平均的な業績で経営が成り立つ仕組み作りは私の仕事である。独立、退職する事がその従業員にとってより幸せと考えるのあればむしろ気持ちよく送り出したいと考えている。

 

従業員はたくさんのお客様と関わり、そのお客様の一生に関わる選択に関わるので、『お客様のため』にという気持ちは比較的芽生えやすいと考える。実際にたくさんの成果をあげる事により、比例して感謝の言葉を貰う機会も多い。ただ、従業員を幸せに出来る取り組みは私しか出来ない、私の最大の使命と思えばそこに妥協は許されないのである。

当社は創業間もなく、経営者である私がオペレーション業務に偏りがちなので、T-Collegeにて入口に誘導して貰ったリーダー論、マーケティング、統計と分析、経営戦略論やコーチョー推薦の数々の良書や考え方について今後も学び理解を深め、当社従業員を『不幸せにしない』経営者に成長していきたいと考える。

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