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修了生論文

当社通販事業部と企画管理部の次の一手~OEM販売と6次産業化のサポートについて~

東京校 (T-college) 田中 一好 (株式会社山中兵右衞門商店 )

1. 動機

2018年、当社は創業300年を迎えました。1704年(宝永元年)山中万吉(のちの兵右衞門)が江州日野(現在の滋賀県蒲生郡日野町)より行商へ旅立ち、1718年(享保3年)小田原藩御厨(現在の御殿場市御殿場)に店舗(やまかのう)を構えました。時代の変遷と共に変化し、幾度かの危機を乗り越えてきました。先代が築いた信頼と実績を低迷が続く酒類業界のなかでどのように継承いくか、また次の100年に向けて当社事業をどのように展開していくかを私が担当している通販事業部と企画管理部の次の一手となるよう事業戦略を考察することとしました。

 

 

2. 企業概要

商  号:株式会社山中兵右衞門商店

創  業:1718年(享保3年)

設  立:1932年(昭和7年)10月(法人化)

資 本 金:3,000万円

所 在 地:静岡県駿東郡清水町卸団地92番地

代 表 者:代表取締役 山中啓壽

従業員数:22名(平成30年2月28日現在)

事業内容:酒類食品卸売業、不動産賃貸業

売  上:22億円(平成29年10月期)

 

 

3. 企業理念

三方よし  売り手よし 買い手よし 世間よし

 

 

4. 経営ビジョン

一、食文化の担い手として新たな価値の創造を図り笑顔と感動をお届けする

一、顧客・取引業者・社員それぞれの発展・成長を促すことによってより良い地域社会の繁栄に貢献する

一、主体的な行動を心がけ 個々が持つ能力を最大限に発揮することで道を切り拓く人材を育成する

 

 

5. 問い

1932年(昭和7年)の法人化に伴い、酒類卸売業を中心に経営している企業です。当社は2005年(平成17年)6月に通販事業部を立ち上げ、新規市場の開拓をしました。

2017年(平成29年)に年間売上が1億円を超えましたが、送料・資材など相次ぐ値上げで利益が圧迫しています。商品原価を把握して利益を確保することは勿論ですが、更なる市場の開拓、浸透、多角化をしていくことが必須と考え、当社通販事業部・企画管理部について分析・検証をして次に採るべきビジネスモデルを構築します。

 

 

6-1 ファイブ・フォース・モデルによる酒類業界分析

《新規参入業者》

・酒類卸売業免許が必要である

・特約契約条項で保証金が必要である

・価格競争のあおりを受け薄利である

・物流コストがかかる

新規参入業者の脅威は弱い

 

《売り手(供給業者)の交渉力》

・ロット条件がある

・直接仕入の可、不可がある

・原材料の高騰で低コスト・低価格酒類が増加

・零細・ぜい弱なメーカーが存在

・パワーバランスは売り手が強い

売り手の交渉力は厳しい

 

《買い手(顧客)の交渉力》

・B2B(酒販店、地場スーパー、コンビニエンスストアなど)

・B2B(GMS、量販店、ドラックストア、ホームセンターなど)

・B2C(サービスエリア、居酒屋など)

・B2C(通販利用ユーザー、家飲みユーザー)

・B2C(健康飲料試飲者「アルコール離れ」)

買い手の交渉力は希望価格より安く売るB2B、B2Cが多く、利益が少なくなる脅威があるため強い

 

《代替品》

・健康飲料、食品

・嗜好品

・ネット通販

・カタログ販売

代替品の脅威は強い

 

《競争業者(業界内)の脅威》

・地場問屋、全国系卸問屋の淘汰による業界の縮小

・アマゾンによる酒類の直販(2012年~)

・酒税、消費税の二重税

・価格競争の激化

・距離基準、人口基準の撤廃による規制緩和

業界内の競争は厳しい

 

【業界分析結果】

近年は酒類卸売業免許、特に酒類小売業免許の規制緩和で、GMS(総合スーパー)やディスカウントストア、ドラックストア、ホームセンター、コンビニエンスストアなど酒類小売市場の変化が著しく、また消費者は重たいものを玄関まで運んでくれ、手軽に注文できるインターネット通販にシフトしております。

酒類業界は卸売業の新規参入による脅威は弱く、すでに市場が成熟しています。企業間の競争は激しさを増し、価格競争による卸マージンの低下や一般酒販店の減少で販路も大きな変化を見せております。

当社は、一般酒販店の割合が70%以上と高いため、ポジショニング(価値)の軸を変える必要があります。標的市場の選択や市場における優位性を見出し、自社商品やサービスのポジションを決め、競争の脅威が大きい業界に左右されないサービスを提供できる戦略を考えていきます。

 

6-2 SWOTによる自社分析

当社の今の弱みをどのように克服し、脅威をどのように回避するか、また強みを活かし機会を勝ち取るための戦略を分析します。

内部

環境

強み(Strength) 弱み(Weakness) どのように克服するのか
A【会社】創業300年という社歴
信用度が高く、地域に密着している
a【全体】従業員の平均年齢が48歳と高齢化が進んでいる a【全体】正社員に拘らず、時短で働ける子育て中の女性などを採用していく
B【会社】酒類小売免許・酒類卸売免許でB2B、B2Cを展開 b【会社】ホームページの更新が滞っており、情報発信ができていない b【会社】インスタグラムやFBを利用し更新や情報発信を行う

(気軽さ、便利さ)

C【営業】大手メーカーとの特約店契約を結んで販路の確保、競争による値くずれの防止、商品の安定的な確保ができている c【会社】重たい・キツイ・休みが少ない等で人材確保が難しい b・c【会社】働き方改革、業務改善、情報発信で魅力を伝える
D【営業】小売店とWeb-EOSを進め、発注から伝発、ピッキングリスト作成までをシステム化している d【営業】顧客が固定化しているため(ルートセールス)新規店開拓に消極的 d【営業】慢性化を防ぐため、担当替えを行っていく
E【業務】自動ラック倉庫があり、600パレットを先入れ先出しの在庫管理システムがある e【営業】当日処理が多く、注文から納品までの効率が悪い e【営業】曜日配送、FAX注文からWeb-EOSにシフトしていく
F【業務】梱包・ラッピングが得意な女子社員がいてギフト商戦に一役買っている(速くて・丁寧) f【業務】自動倉庫の維持費が掛かる f【業務】貸し倉庫事業を展開しそこから捻出する
G【通販】ネット販売が前期比192%と好調で前期売上が1億を突破した g【通販】配送費、資材の値上げがあり利益率が低下 g【通販】酒税法改正、メーカー値上げ時に利益改善を図る
H【通販】amazonは若年層、楽天は中年層の利用が多いため、売るターゲットと売り方を変え売り上げを伸ばしている

全く新しい市場を開拓することが出来る

h【通販】契約している配送業者の送料は安いが、ユーザーからの評判が悪い h【通販事業部】契約営業所だけではなく、名前の挙がった営業所に対し改善要求をしていく
I【開発】自社ブランドの酒類・食品がある ⅰ【開発】自社ブランドの認知度が低い ⅰ【開発】メディアに強い会社があるのでタイアップまたはコラボレーションする
外部

環境

機会(Opportunity) 脅威(Tfreat) どのように回避するのか
①A・B・I【会社】地域活性化のプロデュース、地場企業とのコラボレーション、酒類と食品会社とのマッチング 【全体】酒類卸売業の規制緩和で全国系・外資系スーパーが免許を取得 【全体】地域活性化のプロデュースと地場の企業とのコラボレーション
②A・F【業務】梱包技術を生かし、他社の梱包・発送業務を請け負う 【全体】アルコール離れ、静岡県東部(伊豆地区)の人口減少が著しく、アルコール離れが加速 インバウンド、観光事業の地域活性化促進事業への参画
③B・C・D【営業】他社との差別化、取引先囲い込み 【営業】小売店の規制緩和、小売店の後継者不足で廃業が多い 【営業】現状のB2B主体からB2Cに視野を広げる。食品担当営業者の増員
④E【業務】在庫保管スペースがない企業が多いので貸し倉庫業を展開する 【営業】チェーン居酒屋の納価が低く商社・店舗の板挟みで薄利 【営業】基準を設け採算が合わないものについては撤退も考慮する
⑤E・G・H【通販】ネット販売を考えている、ネット販売が上手くいっていない店の代理販売をする 【通販】ユーザーが求めるナショナルブランドは最安値であり、価格が最優先される 【通販】NBの数量は落とさず構成比を下げ、ギフト系・食品の構成比を上げる

 

6-3 通販事業部の年度別売上実績と概況

 

○2005年6月に通販(楽天)を開始しました。販売戦略は「本格焼酎を女性に広めたい」とし、女性が購入しやすいサイトとするためショップのカラーはピンク系で統一し、デザインは女性が担当しました。卸売業、それも地場問屋の当社がインターネット通販に参入したということで、お取引先のことを考慮し、社名があまり表に出ないようにしました。

・ターゲット:女性中心

・主な販売商品:本格焼酎

・ねらい:日常品ではなく嗜好品の販売

○2014年10月よりamazonによる販売を開始しました。販売戦略を「売りたい商品」から「売れる商品」に変更しました。結果、楽天は缶ビール、amazonは瓶ビールが売れ筋商品となりました。

・ターゲット:フリー(二十歳以上の男女)

・主な販売商品:ビール系中心

・ねらい:普段使い、日常的に愛飲されるもの

○2017年6月に一部酒税法改正に伴うビール系の値上げで店頭価格が高騰し、ネット価格との価格差が縮まり、一気に売上を伸ばしました。徐々にではありますが、現在はまた店頭価格が下がってきています。

○2018年は、ギフト・飲料水、食品を強化していきます。大手飲料メーカーとタイアップし、ネット限定・当社オリジナルギフトを企画しており、実店舗を絡め差別化を図ります。

 

6-4 通販事業部売上構成比

 

売上金額は大幅に上がりましたが、構成比が薄利のビール系に集中しています。そして2018年には資材・送料の値上げが予定されているため利益率が下がり、今後の成長の足かせになる可能性が出てきました。

売上金額は伸ばしながらも、ビール系の構成比は下げ、それ以外の商材で安定した利益確保ができる事業部へ移行します。

 

 

7-1 分析結果から強みを生かした販売方法を考察

SWOTによる自社分析の機会(Opportunity)から当社が取り組む戦略を具体的に考えます。

①強みA・B・Iより【会社】地域活性化のプロデュース、地場企業とのコラボレーシ

ョン、酒類と食品会社とのマッチングについて。

A【会社】創業300年という社歴。信用度が高く、地域に密着している。

B【会社】酒類小売免許・酒類卸売免許でB2B、B2Cを展開。

I【開発】自社ブランドの酒類・食品がある。

OEM販売(自社が展開するブランド)によって製品を企画しネット等で販売します。

販売実績例1:ところてんポテトチップ酢

伊豆のところてん屋4社と当社が共同開発し発売中です。

販売実績例2:沼津あじの干物 混ぜ込みごはんの素

沼津あじの干物、伊豆のひじき、静岡の茶葉など静岡の地元食材を使ってできた混ぜ込みご飯の素を販売中です。

 

ここでの最大の強みは、食品会社は食品と酒類を一緒に販売することはできませんが、当社は酒類と食品をいろんな形で販売することが可能です。今後も地場食品メーカーと繋がり、バリュープロポジションを確立して価値を高めていきます。

 

②強みA・Fより【業務】梱包技術を生かし、他社の梱包・発送業務を請け負う。

F【業務】梱包・ラッピングが得意な女子社員がいてギフト商戦に一役買っている。 通販事業部では1日平均100個口の梱包をして商品を出荷しております。そのノウハ ウを活かし、他社の梱包・発送業務を請け負うサービスを展開していきます。2017年お歳暮期にトライアルとして、大手企業のギフト商品数アイテムの梱包・発送業務を行いました。結果、発送に関するクレーム件数は配送業者による外箱のへこみ1件のみで、クライアントからの信頼を得ることができました。2018年中元期には、アイテム数を増やし、歳暮期には冷蔵商品の発送業務も展開する計画となっております。当社にとっては市場の開拓、多角化と考えることができ、重点を置く戦略となります。

 

③強みE・G・Hより【通販】ネット販売を考えている、ネット販売が上手くいっていない店の代理販売をする。

E【業務】自動ラック倉庫があり、600パレットを先入れ先出しの在庫管理システムがある。

G【通販】ネット販売が前期比192%と好調で前期売上が1億を突破した。

H【通販】amazonは若年層、楽天は中年層の利用が多いため、売るターゲットと売り方を変え売り上げを伸ばしている。全く新しい市場を開拓することが出来る。

①から③の取り組みを総合して通販事業部の市場開拓と製品開発を「6次産業化のサポート」として捉え取り組んでいきます。6次産業化とは、第1次産業(生産)+第2次産業(加工)+第3次産業(販売)までを一貫して行うことで、地方創生・地域活性化につながる大切な政策のひとつです。

販売実績例:鱒財缶(そんざいかん)

国内生産量1位の富士宮で育つ富士山にじますの缶詰。

鱒財缶の代理店としてサポートしています。

 

現在進めているものは、「大中寺いも(だいちゅうじいも)」という超特大の里芋と大中寺いも焼酎を詰め合わせたギフトの展開です。今後、6次産業化をサポートしていく上でのメリットは、流通から販売まで直営なので中間コストを削減でき、「生産・加工・販売」で地元にお金が落ちていきます。地元のブランド化としての強みが出ますが、ある程度まとまったロットで製造するため在庫リスクを伴い、衛生面や食品管理においても安全に取り扱わなければなりませんので注意が必要となります。

 

7-2 7-1の取り組みにより2018年の目標を設定しました。

 

2018年通販事業部の売上構成比ですが、飲料水・食品について売上金額ベースで前年比155.08%、売上構成比で1.92%増という目標を設定しました。飲料水はメーカーと通販年間契約条件が出たことが大きいことと、食品はコラボレーションによるオリジナルセット販売が可能になったことによる数字が盛り込まれております。

また、利益商材である和酒の販売も好調のため、売上金額を落とすことなくビールの構成比を下げることが可能となりそうです。

企画管理部門につきましては、当社の強みが受け入れられ、2018年ギフトアイテムが増加します。2018年は前年比売上金額で270%と目標を設定しました。

 

 

8. まとめ

酒類業界の生産者・メーカーと小売店をつなぐパイプ役である中間流通である卸売業は厳しい状況です。業績を伸ばす、利益を確保するためには色々な工夫や新しい取り組みをしていかなければ生き残れません。今回は新たな取り組みについてF&Mビジネスカレッジで学んだことを思い出しながら考えました。当社の通販事業部・企画管理部に当てはめてみると、限られた経営資源であるカネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産で消費者価値の向上に正しくシフトさせていくことが重要で、「売りたいものを売る」「作ったものを売る」ではなく、イノベーション・フレームワークを駆使して、「売れるものを売る」「売れるものを作る」というアイデアを生み出し続けていかなければならないと考えます。リアプライ、すでにあるやり方で成功しているものはないか常に探しながら、それがいかに新しいものだと思ってもらえるようなアイデアを生み出していくかは重要であります。ビジョンや戦略を間違うと「差別化」という名の誤ったこだわりになり、本来の目的を見失ってしまいます。そうならないために常に既存のものを新しく生まれ変わらせるべく手を加え、修正していくリノベーション戦略を用いていきます。そして、次の100年に向けて何をするにも先ず自分が「ワクワク・ドキドキ」するような事業計画のアイデアを出していきます。

 

 

参考文献

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫) 森岡 毅  (著)

インターネット

経営資源はヒト、モノ、カネだけではない!事業戦略でおさえるべき6つのポイント

https://business-plan.jp/businessplan/management_resources/

農業の6次産業化とは?【メリット・デメリット】 – NAVER まとめ

https://matome.naver.jp/odai/2136158543262297901

 

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