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修了生論文

「自社のイノベーションについての考察と検討」

東京校 (T-college) 塩田 金夫 (塩田商店 )

1.動機

着物業界の現状は非常に厳しい状況である。業界全体の売上高は3,000億前後をここ数年続けている。今後の流れを考えても右肩上がりに成長していくとは考え難い。そうした中、着物業界に携わるにあたり、どのような戦略をとるべきなのか。この議題を研究論文の動機に定め、自社のイノベーションの考察と検討を進めていきたい。

 

 

2. 会社情報

今後の戦略を考えるために、これまでの当社の歴史と現状把握をする。

 

2.1.会社概要

社名 有限会社 塩田商店
所在地 山梨県南アルプス市小笠原379
事業内容 着物販売業、レンタル業、お手入れ仲介業、着付け教室、喫茶店
創業 1947年(昭和22年)
設立 1952年(昭和27年)
資本金 300万円
店舗数 1店舗

 

2.2.沿革

1947年 昭和22年 初代塩田康夫が現在の南アルプス市にて着物卸売業として創業
1952年 昭和27年 法人登録(有)塩田商店
1964年 昭和39年 小売部門を設立、外商販売スタート

県内を始め長野、東京方面にも販路拡大

1971年 昭和46年 70坪の2階建て数寄屋造の展示場を新築
1978年 昭和53年 80坪の2階建て店舗増設
1994年 平成6年 初代創業者塩田康夫死去
1995年 平成7年 二代目塩田武が代表取締役社長に就任
1996年 平成8年 卸部門の縮小化
1997年 平成9年 創業50周年
2001年 平成13年 蔵造りの建物と庭園を新設
2011年 平成23年 店舗全面リニューアル、喫茶店併設
2016年 平成28年 三代目塩田金夫が代表取締役社長に就任

塩田武が取締役会長、新津成美が取締役に就任

2017年 平成29年 創業70周年

 

特筆すべきは、事業の変革である。創業当時は、大量に仕入れをして個人販売員へ商品を卸す役割を担っていた。消費者と会社が直接売買取引を交わすことはほぼなかったと言える。小売部門設立と同時に高齢化した個人販売員の減少や直接売買の増加により店舗展開へとシフトチェンジを行った。

下の図は創業50周年当時の売り上げ比率である。

 

創業当時から働くベテラン社員Aが、売上の大半を担い、その社員によって店全体の売上が左右される状態だった。ベテラン社員Aも高齢となっており、退社後の経営を考えると、売上比率の分散は急務であった。

加えて、今から10数年前に、着物業界も分岐点を迎える。大手着物量販店の過剰販売、囲い込み販売など相次いだ問題が発生し、販売スタイルの見直しを迫られた。

当社は訪問販売と催事販売が中心のスタイルであったが、店舗販売を中心としたお客様が自らの意思で店に足を運ぶというスタイルへと移行を決める。2011年には店舗を全面リニューアルし、着物で居心地の良さを演出する空間へと変更した。販売ばかりではなく、着物のアフターケアにも力をいれ、着物のしみぬきや仕立て直しなどを専門に承る窓口を設置した。また、気軽に手に取れる和雑貨、くつろげるカフェスペースなども設けた。現在は、着物着用イベントを強化し、着物をタンスの肥やしで終わらせないよう働きかけながら、着物姿の似合うお店で楽しく過ごせるイベントを開催している。催事販売も、安さが求心力となる催事ではなく、特定のテーマに沿った職人を呼び、直接話をしながら思いを聞くというような、コンセプト重視の催事へと移行した。それに伴い、当社からのお知らせとして発行していた「なごみ通信」も、お知らせとしての機能よりも、コンセプトを正確に伝えるための媒体へと路線変更し、顧客への郵送と飲食店や美術館といった施設への設置によって、周知に努めている。

下の図は現在の売り上げ比率である。

 

2.3.スタッフ構成

役職・担当 氏名 年齢 勤続 備考
取締役会長 塩田武 74歳 50年
代表取締役社長 塩田金夫 45歳 21年
取締役 塩田環 74歳 50年 29年2月退社
取締役 経営戦略担当 新津成美 52歳 5年 店頭
店長 T.S 48歳 23年 店頭
着付け教室担当 T.Y 53歳 35年 店頭
お手入れ担当 H.A 62歳 21年 店頭
経理・加工担当 H.S 55歳 29年
web・販促広報担当 H.I 30歳 5年 29年3月退社(結婚)→外部契約社員へ

 

 

3.人口推移­

現在山梨県にて店舗を構え、今後も山梨県でビジネスを進めるにあたり、対象顧客になりうる人口を把握するため調べる。山梨県と南アルプス市の2017年の人口推移、対象女性人口、顧客占有人数を調べた上で、2040年の予想人口と比較した。

2017年人口 2017年顧客占有人数 2040年人口予想 2040年顧客占有人数予想
山梨県 829,083人 666,000人
男性 405,798人 322,000人
女性 423,285人 1,968人(0.464%) 344,000人 1,596人(0.464%)
南アルプス市 70,465人 63,600人
男性 34,617人 30,777人
女性 35,848人 444人(1.23%) 32,823人 403人(1.23%)

引用:「やまなしの統計サイト」http://www.pref.yamanashi.jp/toukei_2/HP/y_pop.html

2017年1月31日参照

「人口データ2040年予想人口推移」http://www.jinkoudata.com/list.php?capital=山梨県

2017年1月31日参照

※顧客占有人数とは県内及び市内の当社顧客の人数と割合を算出したものである。

 

 

4.業界のイノベーター

業界が低迷する中、イノベーターが市場を広げていった販売戦略を調べた。

 

4.1 ネット販売を中心とした「株式会社京都きもの市場」

設立2001年、直近の売上高14億9,868万円、着物ネット通販サイト「京都きもの市場」を運営している。

これまで着物販売の主流だった対面販売からネット販売へとシフトさせることで、対面販売で起こっている「押し売り」「囲い込み販売」への不安を取り除いた。また、これまでの製造元(メーカー)→問屋→小売屋→消費者という流通ではなく、製造元から直接仕入れしていることが特徴である。それによって雑誌等々で名前の売れている作家や伝統工芸品などの商品も、市場価格より安価で販売することができ、現在でもシュアを伸ばしている。

またネットで周知し、知名度を上げた結果、最近では京都と東京へ店舗を構え、対面販売にも力を入れるようになった。さらに主要都市でも短期的に展示会を開き、全国の消費者への着物の販売を強化している。

 

4.2  無料きもの着付け教室「日本和装」

設立1986年、東京証券取引所市場第二部、直近の売上高49億7,899万、全国に拠点を持ち「無料きもの着付け教室」を開講している。有名な俳優や女優を使い、全国ネットでCMを流し知名度を上げており、これまでの卒業生は17万人を越えている。入り口の着付け教室は無料であるが、その後、授業の一環として生産者や卸問屋による「コーディネート体験会&販売会」などと銘打ち、着物の販売をするシステムになっている。

 

4.3 リサイクルきものショップ「たんす屋」

設立1961年、直近の売上高50億、店舗数(フランチャイズ店含む)は、全国に100店舗を超える。着物業界におけるブックオフ的存在である。リサイクル品の着物をメインに取り扱い、タンスに埋もれている膨大な着物や帯を最大限に活用して、店頭での買い取り、出張買い取り、宅配買い取りなど、買い取った着物をリサイクル着物として販売している。古着に慣れている若者を中心に、着物に対する敷居を低くすることで、これまでにない市場を生み出している。またレンタルや着物保管サービスなども展開している。

 

4.4 全国各地に広がる観光地での着物レンタル

観光地京都を中心に、ここ数年で飛躍的に着物需要を生み出した新しい着物レンタルスタイルである。

京都を中心に全国各地の観光地に広まり急激に店舗拡大している。

「京都きものレンタルWargo」は京都に7店舗、大阪、東京、鎌倉、金沢にそれぞれ1店舗を展開する。スタンダード着物プランとして2,900円より着物レンタルできるシステムになっており、内容は着物一式(小物も含め)のレンタル代に着付けも含み、一日着物を着て観光地を楽しめる。

日本の若者をはじめ、訪日外国人も今や観光地で着物を着て散策することが一つのスタイルになり、これからも需要は伸びていくと考えられる。

 

4.5 まとめ

着物離れが進む中、業界のイノベーター達は、潜在的に着物への憧れを持つ日本人の欲求に対して、

これまでにない新しい流れをつくった。

「京都きもの市場」は、新たな流通ルートを確保することによって、着物価格の一率化、透明化を実現し、不当な料金や囲い込み販売に対する消費者の恐怖心を払拭させた。「たんす屋」は買い取り、古着販売を行うことで、低料金化を実現し、市場を広げていった。「日本和装」は、買っても自分では着られないという消費の足かせをまず取り除き、無料着付け教室によって信頼関係を結んだうえで販売に入ることで、消費者を安心させている。

それぞれ業界のイノベーター達は、消費者の声を真摯に受け止め、チャレンジしていった結果、新たな着物市場を開拓した。まさに未来の着物市場に光を射した結果である。

しかし、業界の衰退を考えるとイノベーションは充分とは言えない。これまでの着物の価値観が代わってしまった現在において、どう戦略をとるべきなのか、今後、業界のイノベーターに代わる新しいイノベーションを考えていく。

 

 

5.顧客分析

顧客の男女比、年代分布、地域分布、最終購入履歴から、現在の当社が保有する顧客の傾向や今後の対策に繋げることを目的に調べた。

 

5.1 顧客算出方法

現在、当社のお知らせ「なごみ通信」を配送している名簿が1,840件存在する。そのうち、きものお手入れ部門の名簿286件を含むので、きもの購買層の名簿件数は概算で1,554件である。うち、社長担当の名簿は518件あるため、その3倍が顧客全体数に相当すると考え、以降論じていく。

 

5.2. 顧客の男女比

顧客は明らかに女性の方が多い。しかし、ここ数年で男性客や夫婦のきものファンも増えており、男性客の増加は、今後の事業発展に対する大きな課題である。

 

5.3. 顧客の年代分布

現在、60代が顧客の4割程度を占めている。70代、80代、90代の少なさからもわかる通り、今後60代の中心層は買い控え期に入ると考えられる。60代の層に代わる顧客の確保が急務である。

30代、40代、50代は今後の中心顧客層になると考えるので、この世代をいかに育てていくかが課題である。さらに成人式の顧客層を今後いかに顧客へと繋げていくかも課題のひとつである。

 

5.4 顧客の地域分布

顧客地域別 人数 顧客地域別 人数
上野原市 0 中央市 60
道志村 0 南アルプス市 357
都留市 0 市川三郷町 18
大月市 0 富士川町 36
小菅村 0 身延 9
丹波山村 0 早川 0
甲州市 18 南部 0
山梨市 42 富士河口湖町 3
笛吹市 72 鳴沢村 0
甲府市 294 富士吉田市 0
甲斐市 180 西桂町 0
韮崎市 288 忍野村 0
北杜 117 山中湖村 0
昭和町 42 県外 18
合計 1,554

店舗を構える南アルプス市を中心に顧客が分布しているのがわかる。しかし、隣市町の交通利便性が高い「中央市」「昭和町」「市川三郷町」「富士川町」の顧客は多いとは言えない。今後、近辺の呉服店調査や年代調査を行い、対策を考えていきたい。

 

5.5 顧客の最終購入履歴

最終購入履歴からは24年以降、購入していない顧客が46%あり休眠客化している。購入履歴無しの17%は新規イベントなどへの参加後、購入までには至っていない。今後は休眠客化した顧客に対しては、購買対象年代分析を行い、また購入に至っていないイベント参加者にも同等の調査を行い、掘り起こしをしていく。

 

5.6 まとめ

本章では、当社の顧客について分析した。

顧客男女比は圧倒的に女性が多く、男性客や夫婦の着物ファン育成が課題である。

年代分布では60代が4割近くを占めているが、今後高齢になるにつれて買い控え期に入ると考えられる。そのため、この60代の客層に代わる顧客の確保が急務である。また、成人式のみという顧客を、少しでもリピーターへ繋げる工夫も必要である。

地域分布では、地元南アルプス市を中心に、甲府市や韮崎市、甲斐市といった隣接する地域が全体の7割を占めている。しかし、中央市や昭和町、富士川町といった、交通の便の良い隣接地域からはあまり来店がない。他店分析を含め、今後の課題とする。

最終購入履歴を見ると、24年以降休眠客化している顧客が46%いる。商品が高額ということもあり、頻繁に購入する商品ではないが、着用していれば小物や下着類の購入が発生すると考えられるため、購入後の商品はタンスに眠ったままになっている可能性が高い。

以上のことから、今後は、まず着物を購入しやすい50代60代の購買顧客層を増やすことに重点を置く。

そのためには、50代60代の購買顧客層が集まる地域分析を行い、その地域に対して、当社で定期的に発行している「なごみ通信」を周知し、着物を着る喜びや楽しみを伝える出張イベントを開催していく。

さらに、結婚や子どもの入学・卒業式といったライフイベントの重なる30代40代の顧客層に対しても、また休眠客化している46%の顧客と、イベント参加のみで購入に至らない17%の顧客に対しても、当社の思いやイベント告知を通じて、関係を持続していく。

 

 

6. きものお手入れ部門名簿分析

現在、年間売上の20%を占めるお手入れ部門は、重要性が高いと考える。そのため今後の戦略のため、累計名簿数の推移と地域別新規名簿推移を調べた。

 

6.1 名簿計数方法

きものお手入れ部門には、平成21年度から記帳し始めた単独の顧客台帳が存在する。今回は平成24年~28年を対象に調査した。 顧客台帳における最も古い取引の年を新規契約とし、最も新しい取引の年を最終契約として計数した。なお、5章で述べた顧客も一部該当するため、当社所有の名簿の総数は5章と7章を加算したものとは言えない。

 

6.2 累計名簿数の推移

8年前からきものお手入れ部門を立ち上げ、着物の仕立て直しや染め替え、シミ抜きや洗いなどを受け付ける部門を設けた。8年間の累計名簿数は3,000件である。ここでは、直近5年間の名簿推移を見ていく。

グラフの「休眠客数」とは、前年までを最後に取引のない客数である。「最終(新たな休眠)」とは、該当年度が最後の取引であり、翌年から休眠客となる客数である。「初回で休眠」とは、該当年度に新規の取引があり、その初回を最後に翌年から休眠客となる客数である。「初回でリピート」とは、該当年度に新規の取引があり、それから継続して取引のある客数である。「昔からのリピート」とは、前年以前から繰り返し取引のある客数である。24年の時点で、すでに1,030件の休眠客がおり、年々増加している。新規客、リピート客は減少傾向にあり、客数を見ると先細りの可能性がある。

 

6.3 地域別新規名簿推移

直近5年間の新規客の地域分布を見る。毎年、地元南アルプス市が圧倒的に多いことがわかる。

24年には、初めて出張お手入れキャンペーンを山梨市にて開催。その後、26年から韮崎市にて出張お手入れキャンペーンを行った結果、新規客が増加している。出張お手入れキャンペーンは新規客の獲得に有効だと考えられるので、今後も他地域での開催を検討したい。

 

6.4 まとめ

10年前から、6月と12月の年2回、お手入れキャンペーンを開催し、地元南アルプス市を中心に隣接する地域に50,000部の新聞折り込みチラシを配布、新規獲得を目指した。また24年からは他市町村に会場を借りて出張お手入れキャンペーンを行い、甲府市や韮崎市などの消費者にも広めていった。

成人式や七五三、結婚式など必要に応じて着用した着物をお手入れに出す消費者は、一度きりの利用が多く見られる一方、タンスに眠っている祖母や母の着物の染め替えや、今の自分の体型に合わせた仕立て直しに費用を捻出する消費者は、その後も定期的に利用され、また新しく購買に繋がる傾向がある。

今後の展望としては現在ある3,000件の名簿のお手入れ内容を細かく分析し、次に繋がる提案をしていきたいと考える。例えば7才の祝い着をお手入れに出した方は、その後13年で20才を迎えることが予想でき、その前に成人式の案内をかけることが可能である。同様に自分の体型に合わせて仕立て直す方は、着物を着る意志があることがわかり、その後の着用頻度や次にどんな着物を直す予定があるのか、また着用機会があるのか、接客情報から細かく分析し、次に繋がる提案をしていきたい。24年以降、新規客もリピーターも減少しているが、売り上げは下がってはいない。つまり1人あたりの単価は増加傾向にあり、リピーターとは根強い信頼関係が結べていると言える。さらに、まだまだタンスに眠っている着物をどうして良いか、わからない消費者もたくさんいるので、出張お手入れキャンペーンの地域を広げ、新規客を増やしていく。

 

 

7. 着付け教室名簿分析

将来的に購買顧客に繋がると予想される着付け教室の地域別、年代別、購入比較を調べた。

 

着付け教室は1名の社員が担当し、ほぼマンツーマンに近い形で進めている。着付けの免許を取得する事が目的ではなく、自分で着られることを目的とし、1人1人の能力に合わせた教室を運営している。

1人の着付け教室のサイクルは月4回×3ヶ月=12回が1クールとなる。参加費用は1回1,000円×12回である。

 

7.1 参加者地域別

H23 H24 H25 H26 H27 H28 合計
甲府市 4 2 1 3 3 3 16
山梨市 0 0 0 0 0 1 1
笛吹市 1 0 1 1 0 0 3
韮崎市 0 0 0 0 1 0 1
甲斐市 1 2 0 4 0 3 10
北杜市 1 1 0 3 0 0 5
中央市 0 1 0 2 1 0 4
南アルプス市 0 3 7 4 9 9 32
富士川町 0 1 1 0 1 1 4
市川三郷町 0 0 0 1 0 0 1
身延町 0 0 0 0 1 0 1
合計 7 10 10 18 16 17 78

 

地元南アルプス市からの参加者が多く見られ、甲府市、甲斐市と続いている。6年間の推移では徐々に参加者が増えている。ただ隣接する中央市や富士川町の参加者が少ないことは今後の課題である。

「なごみ通信」で周知する前には、すでに顧客である方の新規参加が多かったが、周知してからは当社に初めて足を運ぶ新規客が増えている。つまり、広報の有効性は高いと言え、今後も引き続き広報の継続が必要である。

 

7.2 参加者年代別

H23 H24 H25 H26 H27 H28 合計
20代 2 2 2 2 9 3 20
30代 3 0 1 2 2 3 11
40代 0 2 0 3 1 3 9
50代 2 6 4 7 1 5 25
60代以上 0 0 3 4 3 3 13
合計 7 10 10 18 16 17 78

 

参加者の年代としては、20代と50代が多くみられる。20代は自分のために割くことができる時間が多く、50代は子育てが一段落し、同じように自由な時間が増える世代だと考えられる。20代のうちに着付けを覚えれば、その後のライフイベントには着物を着ることが格段に増えると考えられるので、この世代の着付け教室参加者を増加させるよう工夫していく。また50代以降の参加者は今後の購買顧客層に繋がると予想されるので、この世代もしっかりと確保していきたいと考える。

 

7.3 参加者別購入比較

顧客参加者 新規参加者 合計 購買した顧客 購買した新規 合計
H23 6 1 7 5 0 5
H24 10 0 10 4 0 4
H25 5 5 10 2 2 4
H26 7 11 18 4 2 6
H27 5 11 16 4 2 6
H28 10 7 17 7 0 7
合計 43 35 78 26 6 32

着付け教室を入り口として、新規参加者が購入に結びついた方は35名中6名と多くはないが、着付け教室がなければ発生しなかった売り上げである。また顧客参加者が購入に結びついた方は43名中26名と6割を超えている。自分で着物が着られるようになると購入に結びつく割合が高いと思われる。今後も着付け教室をきっかけに、自分で着られる生徒を増やし、着物の興味を持ってもらえるよう信頼関係を築いていけるよう務める。

 

7.4 まとめ

5年間の推移で見ると全体で78名、年度毎のばらつきはあるが1年平均にすると15名強、地域別では地元南アルプス市を中心とし、年代別では20代から60代までと幅広い年代層となっている。特に50代60代が半数を占めているが、比較的若い20代の参加者も増えている。顧客参加者と新規参加者では購入に至る比率に違いはあるが、着付け教室からの着物購入に結びつく割合は高いと予想される。やはり着物に興味を持ち、自分で着られるようになると新しい着物が欲しくなる傾向が見られる。新規客の購入件数はまだ少ないが、20代の生徒の今後の人生に寄り添うことで、ライフイベント時には利用してもらえる関係を維持するべきである。

50代60代の参加者を継続的に増やすことが重要である。そのためには、他市町村へ会場を借りての出張着付け教室の開催を検討したい。また若い世代を増やすためには、夜間の教室開校が必要である。ただ現状は担当者1名なので現実的には難しいと考える。今後の課題とする。

 

 

8.今後の展望

業界が取り巻く環境は、非常に厳しいのが現実である。作り手の高齢化、技術を継ぐ若年層の雇用の確保の難しさ、商品を全国へ供給する問屋の流通機能破壊、小売店の後継者不足など川上から川下まで着物業界の課題は山積みである。

さらに消費者の着物に対する価値観は大きく様変わりし、冠婚葬祭や通過儀礼の七五三・成人式・結婚式・お葬式など、以前は購入した着物を着用していたが、現在ではレンタル、そして洋装へと変わり、着物を所有することは減少した。着物を着るということが今や特殊なものになってしまった。そうした中、創業当時より現在の地で商いをはじめ、当社は今年で70周年を迎える。

改めて私たちの仕事は「ライフ・タイム・バリュー(顧客生涯価値)」を創造し続けることが重要である。母から娘へ、さらにその娘へと世代を渡り、付き合いを重ねてきたことが、今の当社の商いの礎となっていると言える。

今後もこれまで積み重ねてきた歴史と信頼をさらに強固にし、スタッフのさらなる質の向上で生まれる商品に対する付加価値を高め、生涯顧客を増やしていく。そのためには着物を身近に感じられるイベントや顧客のスキルアップに繋がるイベントを開催し、同業他社との差別化を図っていきたいと考える。

顧客分析からの今後の展望は、まず購入率の高い、50代60代の購買顧客層を増やすことに重点を置き、他地町村へのイベント出店や出張お手入れキャンペーン、さらに出張着付け教室などを開催し、購買顧客層の増加を目指す。

また結婚や子どもの入学・卒業式といったライフイベントの重なる30代40代の顧客層に対しては、着物を着る喜びや楽しみを伝えるイベントを実施することにより、継続的な顧客化を目指す。

お手入れ部門名簿分析からの今後の展望は、現在ある3,000件の名簿のお手入れ内容を細かく分析し、いつどんな時に着用し、今後どのような時に着用が予想されるかなど、着物の加工内容から読み取り、次に繋がる提案をしていく必要がある。さらに、まだまだタンスに眠っている着物をどうして良いか、わからない消費者もたくさんいるので、地域を広げ、新聞折り込みチラシ等で、周知活動を進めていきたい。

着付け教室名簿分析からの今後の展望は、さらに当社発行の「なごみ通信」に着付け教室の情報を周知し、幅広い消費者の目に触れるよう、設置箇所を増やし、着付け教室参加者の増加を目指す。

 

現在の着物業界は、全国に店舗展開する大手着物チェーン店の店舗拡大路線や、振袖需要を中心とした販売戦略がある。

当社は違う選択を考える。まずは、ただ着物を販売するだけでなく、その着物が手に渡るまでに、どれだけの思いと手間と技術が費やされたかを大切に伝えることである。そうすることで商品価値が高まり、一着一着に愛着が生まれる。次に祖母や母が愛用してきた思い入れのある着物を、娘や孫といった次の世代へ、直し繋げていくことである。それは将来顧客に繋がる。さらに日本の四季折々の風景や美しいしつらえの中で着物を着用することによって感じる、喜びや楽しさを提供し続ける。その着用イベントをさらに強化に、次の着物購買に繋げていきたい。

自社のイノベーションとは何か。それは現在行っているサービスをより高いサービスへと追求していくことである。

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