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修了生論文

自社分析と業務改善

東京校 (T-college) 島田 敏夫 (株式会社キャリッジ )

1.研究動機

当社は2011 年の2 月に開業し2017 年2 月で6 期目が終わり7 期目を向かえる。学習塾のFC に参 加し現在5 店舗の教室を運営している。1 教室目を開けたのは開業のタイミング。売上が順調に伸び たのでその秋に2 教室目を開校した。しかし、ここからが苦労の始まりだった。2 教室目は雇った社 員の定着が悪く、最初の2 名は相次いで退職、3 人目の社員は売上を偽りそれが発覚して退職。4 人目 でやっと落ち着きを見せたのが2 年半前だった。3 年前に開校した3 教室目は社員がうつ病になり、 その影響でしばらく低迷した運営時期を過ごすしていたが、やっと去年この教室の社員の交代を行っ た。これでやっとすべての教室で戦える環境ができたなという状況になった。 現状は、1 教室目は良い状態、2 と4 教室目は安定してきているが売上が低い状態、3 教室目は社員 交代して5 ヶ月目、一番新しい5 教室目は開校してからまだ3 か月である。収支的にはぎりぎり食べ てゆける状態だが、少子化や競合の出店ラッシュという脅威が迫ってきているので、新しい戦術を取 るために、なるべく早く原資を稼ぐ必要があると考えている。自分の目標はここから1 年で売上の明 確な改善を行うことである。そのために今回、Tカレッジで習得した考え方や手法を用い、社員全員 で協力しあいながら業務内容を改善し、どうやったら「はやる教室」にできるかを、研究、実行して みたいと考えた。

 

資料1-1:総売上の推移

 

資料1-2:各教室の売上推移

※D教室とE教室は開校費用が合算されているためマイナスになっている

 

 

2.現状分析

初めに現状の分析から行う。資料1-2 からも分かるが教室により売上にばらつきがある。通常、開 校してから年々売上が上がってくるものではあるが、その上がり方もばらばらである。その原因を探 るために、会社の組織構造やそれぞれの教室を分析し、どこを改善して行けばいいのかを考えたい。

 

2-1.組織分析

スクールで、「コンサルティングに行ったときには最初に組織図を見せてもらう」という話があった のを思い出し、まずは組織図を作成してみた。

 

資料2-1:組織図

株式会社キャリッジ 組織構成

 

本社

代表取締役 島田敏夫

経営管理、人事、経理、渉外、福利厚生

 

A教室

室長 A 教室運営管理責任者、他教室運営サポート

 

B教室

室長 B 教室運営管理責任者

 

C教室

室長 C 教室運営管理責任者

 

D教室

室長 D 教室運営管理責任者

 

E教室

室長 E 教室運営管理責任者

 

教室業務以外の部分は本社として自分が行い、人事評価や渉外部分が社内に全く分担されていない 様子が浮かび上がった。さらに教室長側も特に役割分担などなく個々の集まりとなっており、一番先 輩の社員が少しサポートを行っているだけの状況である。受験に関してや教務に関して多くの知識や ノウハウが必要な仕事であるが、各個人が独自に勉強して職務にあたっているためそれぞれの知識は 広くて浅い状態になってしまっているのが読み取れる。ここは必ず改善していきたいポイントである。 さらにヒヤリングも行ったところ、売上目標や運営改善に関しても自分の教室だけを気にしており、 会社全体の売上には関心が低いことが分かった。

実際、ここ一年は社員の交代があったため、みんなで集まる機会も少なく、会社という集団を意識 する機会が少なかったのは事実である。アメリカ海軍士官候補生読本に書いてあった「集まる機会が 少ないと親密感がなくなり組織の団結力や極性化が弱まる」ということが実際に起きてしまっていた。 これも今後の運営の中で改善していくことを考えなければならないと強く感じた。

 

2-2.店舗分析

2-2-1.売上分析

資料1-2 が各教室の売上である。今までは室長の給与も引いて利益を計算していたが、売上から賃 料やバイトの給与など、室長の給与以外を全て引いたものを粗利として算出してみた。通常売上は開 校してから3 年目で安定してくるので、開校から2 年間は利益が少ない状態となる。A教室は年々上 がってきており問題はないが、B教室、C教室が2015 年に比べ2016 年の売上が落ちてしまっている。 C教室は室長の体調不良もあったが、B教室は明確な理由が分かっていない。またB教室は開校から 5 年経過しているのでA教室と比較するともっと売上が上がってきていてもよいはずである。売上の 差がどこからくるのか、他の分析を行ってみる。

 

2-2-2.環境分析

教室の環境について分析してみる。開校から2 年目の冬の在籍生徒数をもとにすれば4 校目まで分 析できるのでその在籍生徒数と、半径1 キロ以内の公立小学校と中学校の生徒数(A.公立生徒数)、半径1 キロ以内の競合塾の数(B.塾数1 キロ圏)、半径500 メートル以内の競合塾の数(C.塾数500m 圏)を回帰分析してみた。

 

資料2-2:回帰分析

 

 

相関係数を見てみるとB.塾数1 キロ圏の相関が一番強かった。個々に見ていくと、A.公立生徒数と C.塾数500m圏のグラフの中ではA教室のデータが飛び出しているのがわかる。という事は、A教室 以外は分析している値同士に相関があるとも言える。しかしここではA教室を見習う教室としたいの で、別な方法でA教室を分析してみる必要がありそうである。

 

2-2-3.個人分析

前述の環境分析の結果から考えると、個人のスキルが大きく影響しているのではないかと仮説がた つ。当然経験年数の長いA教室の室長が、スキルが一番高いはずなのだが、その差を数値化してみる ことにした。

 

資料2-3:個人分析

 

各評価項目に対して一番能力があると感じられる人物を8 ポイントとし、他の社員を最低点が1 と して相対的に点数を入れてみたものである。個人的な採点なので恣意的になっていないか判断しにく いところもあるが、売上に比例するような結果が現れた。経験によるものが大きい事が予測されるが、 そのスキル差を個々の経験を積むことで上がってくるのを待つのでは遅いので、なんらかの方法を取 らなければならないと感じた。

 

2-3.分析のまとめ

組織の問題点としては、会社としての一体感が薄く相互にささえ合うことがなく日々運営している 事、そして店舗の問題点としては、室長のスキル差から売上に上下が出ている事が大きな問題として 見えてきた。これを改善するには、現状よりもっとお互いに助け合えるような環境や、お互いの弱み をフォローし合える環境を作ることが必要と考えられる。次の「3.取組」ではこの環境を改善し売上 を上げていく為に何を行えばよいのかを考える。

 

 

3.取組

 

3-1.全体像

当社の社員は自分の行動を改善するという事には全員おっくうで、会議では改善行動を実施すると 発言は行うが、実際に継続して改善行動をとり続けている姿は見たことがない。そういった社員に相 互に支えあい、弱点をフォローし合えといっても簡単に改善行動が進みそうにないのは想像に容易い。 ではどのように進めるのか?そこで考えたのがスクールで習った手法の活用である。スクールでは、 ただ学ぶだけではなくアクションをしたり自分たちで考えたりする事から自然に勉強や研究に没入し ていくのを体験、体得した。これを社員にもやってみせ、教えてみせて、室長たちが自ら改善案を作 り実行するように扇動する流れを考えてみる。

その前にまず会社のポリシーや理念が明確になっていなかったので、この部分から着手する。次に 目標の設定を行う。改善作業をしてゆく上で達成するための目標がはっきりしていることは重要であ る。ここまでは自分主導で行い、この次の改善案を考える部分からみんなで一緒に行っていく形をと ろうと考える。また組織としての一体感を増していかないといけないので、全体の目標を強く打ち出 すことや、集まってミーティングする機会を増やし、連帯感を徐々に強めていくことを同時に行って いく。

 

流れ

① ポリシー、経営訓の浸透 (3-2)

② 目標の設定、目標の全体共有 (3-3)

③ 業務改善案作成、改善実行 (3-4)

実施タイミング

週1回の教室巡回

毎月の定例のミーティング

 

3-2.ポリシー、経営訓の浸透

運営ポリシーの策定と浸透はスクールで習った直後から必要性を感じ実行している。運営ポリシー については以前から自分の中では考えていたが、今までは社員に向けてアピールする気持ちはなかっ た。しかし、経営していく上での重要な項目と感じたので、経営訓2S も決め、皆への浸透を開始し た。また、塾の運営理念は一番売り上げている社員と作成した。塾の運営理念はこれからほかの社員 に伝え出していくところである。

以下がその内容である。

 

◇運営ポリシー:全社員が長く仕事して行ける企業環境を構築し続ける

これは自分の経営する上での決意。外向けの経営理念ではない。

社員の一生を考えていられる経営者でありたいと思う。

◇経営訓:2S(収益とスピード)

「収益」と「スピード」のローマ字読みの頭文字をとって2S と呼んで伝えている。

「収益」はコスト意識をきちんと持ち、費用を最小限に抑え利益を上げるのが大切だという事。

「スピード」は何事もスピード重視で行うべきであるという事。早くはじめて早く終わることが できれば、見直したり改善したりする時間が持てるし、次の仕事に追われることもなくなる。

◇塾の運営理念:人との絆、対等であれ、日々健康

塾の運営上大切と思われる事、たえず心がけてほしい事。

 

ポリシーや経営訓の浸透は、教室を巡回したときに必ず話すようにする。浸透には時間がかかりそ うなので都度その意味と必要性を説明する。さらに月例の社内ミーティング時にも都度その内容と必 要性を伝えていく。

 

3-3.目標の設定、目標の全体共有

次に目標。これも去年の11 月から個々に相談して目標を決めて行っている。3 ヶ月単位の小目標と 年間売上目標を相談しながら作成している。小目標は個人個々の業務改善になっている。直近で起こ ったミスやトラブルに対応する内容となっている。丁度1 月末で3 ヶ月が終わるのでまた次の小目標 を個々に立てるタイミングとなっており、現在相談しながら短期の目標を作成している。この短期目 標に関しては最低週に1 回以上進捗や状況を確認することと、最終的に面談を行い成果がでたかどうかを確かめている。

年間売上目標はまず個々の教室の目標を決め、それを共有する形をとる。今までは教室ごとに売上 目標を追っており、他教室の目標達成度合いにはお互いに関心がない状態だった。今後は月例ミーテ ィングで毎回全体の目標に対する進捗を報告し、目標に届いていない場合などは対応策を相談する機 会を作っていくことにする。

 

3-4.業務改善案作成、改善実行

ポリシーや目標の設定は自分が主導で行って、ここからの業務改善はみんなで改善案を作り、実施 して行く流れを取りたいと考えている。これが今回の卒業課題で一番実行したかった部分である。ス クールで習ったブレストやアイデアの出し方を使って社員全員で項目をあげ、改善するべき部分を探 し出してゆくやり方である。今までもミーティングを実施したり、改善案を出し合ったりしていたが、 自分からのトップダウンだったためか継続した改善活動にはなっていなかった。だからこそ今回は自 分からの押し付けにならないように慎重に進めようと思っている。みんなからの意見やひらめきを最 大限活用することにより、継続できる業務改善活動を目指したい。社員が個々に行っている事がお互 いに目にされている訳でもないし、ある社員はコツのようなものを持っているかもしれないし、表面 的には出てこない隠れた良い行動もあるかもしれない。それを引き出すのが今回のねらいである。そ して各自自分に足りない部分に気づいてもらい、改善行動につながってくれることを望むのである。 塾の機能は大きく分けるとアルバイト講師が行う部分と室長が行う部分とに分かれる。今回の業務 改善はこの2 つの部分を4 月までに案出しし、順次改善行動に入ってくことを計画している。そして その次には組織内の機能分担について改善行動をとっていきたいと考えている。

 

3-4-1.アルバイト講師改善

室長が勉強を教えることは基本的にはなく、その役割はアルバイトの講師が担当している。なので 塾の顧客である生徒と一番接するのはアルバイトの講師という事になる。その講師を指導、運営する のが室長の業務となっている。最初に着手するのはアルバイト講師の行動の改善とする。この改善で はまず講師の行動を洗い出し、どこが改善できるかを考える。そしてその中から講師行動の改善案を 作成し、室長からの指導、教育に役立てたい。この改善案作成に関しては1 月12 日に1 回目のミーテ ィングを実施したのでその内容を以下に記載する。

 

資料3-1:ブレストの様子

 

◇ブレスト練習

社員は5 名。これを3 対2 に分けてアイデアを早く、かつ、数多く出す練習を行った。テーマは「お 互いに共通していること」と「中学生」で実施。最初の題目では書き出すスピードが遅かったが、ス クールで習った連想の仕方を教えた後に「中学生」でやってみたところ、項目出しのスピードは上が った。

 

◇講師についてのブレスト

そして本番を実施した。講師の行動や容姿など、良い部分でも悪い部分、何でもいいので出来るだ け多くの項目を出してもらった。次にそれをジャンルに分類した。さらにその中でよい行動と悪い行 動に分類をし、最終的に良い行動だけをピックアップしてまとめた。

 

資料3-2:講師の行動

 

この中から、各自自分で実施したい項目をいくつか選び、自分の教室の課題として持ち帰ることと なった。資料3-2 の中の○がつけてある部分が各自選択したものになる。(E教室は現場経験2 週間 目のため除外) 各教室の選んだ項目を見ると教室の運営で困っている点も副産物として明らかにな ってきた。しかし終わって項目を見直したところ、業務内容に偏りが出ている事と、行動の深さがそ ろっておらず、実際に改善行動として実施しやすいものが少なかった事が発覚した。次回2 月中旬に 行うミーティングで、もう一度項目上げを行う事にしたが、その時には一日の業務を時系列に追って いきながら項目出しを行ってみようと考えている。

現在1 回目のブレストから2 週間半経過しているが、改善行動の状況は教室によってまちまちであ る。実行している教室は研修を行い講師たちに伝達しているので、未実施の教室にはそれを真似して もらうよう働きかける。

 

3-4-2.室長改善

室長の業務改善についても講師と同様の手順で改善案を出し、行動に繋げていく予定である。項目 出しは次回の月例ミーティング時に行う予定である。項目の数が少なくても取り組みたいと思うよう な物が出ればまずはその改善活動を行っていこうと思う。

 

3-5.まとめ

現在1 回目のミーティングを終えてその進捗を追っているが、皆に業務改善を継続してもらうこと は簡単ではないと感じている。強要してしまっては自分たちで考えて行動してもらうというコンセプ トが崩れてしまう。しかし、今回のミーティングに関して意見や感想をもらったところ、今までの聞 くだけの研修やミーティングとは違い「考える事ができ、行動のイメージが湧いた」「皆で話し合いを する研修をまた行いたい」というものがあった。方向としては間違っていない事を信じ、今後も同じ ようにみんなが頭を使って案を出し合うようなミーティングを実施していきたいと考える。

最終的には、全ての教室が他教室の良いところを見習い「はやる教室」となれることを目指したい。 そうすれば自然と売上が上がって行くことが想像できる。金額の目標も意識はするが、総額だけを追 っても目標をクリアできる理由にはならないので、売上の原動力となる部分をこの業務改善で明確に できればと考える。また今回重要と感じたのはこういった機会を頻繁に設ける事である。行動を継続 して組織としての新密度を段々と上げることに繋げて行きたい。これからも習ったことを活かし、皆 と会社が成長することを願って運営していきたいと考える。

 

最後に…

こうして新たに考えて社内ミーティングを行ったり、スクールで新しいことを学んだりすると、新 たに課題や問題が見えてきて、端から改善する必要があるように思えてくる。どこかで線を引いて運 営しなければならないが、学んで考える事が運営に間に合うのか非常に不安になってきている。スク ールでは本や企業家のグループ研究も行って、学び方や分析の仕方の入り口が少し分かってきたこと は事実である。だが逆に今までやってきていないことが膨大にあるのが見えてきたのも事実である。 今後の勉強の事を考えると頭と行動がついて行けるのか非常に不安が大きいが、光が見えてくること を信じて勉強を続けて行きたいと思う。

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