お問い合わせ・資料請求

修了生論文

自社分析と経営理念

東京校 (T-college) 木賀 陽一 (新日本資源 株式会社 代表取締役)

第1章 研究動機

私がこの研究テーマを選んだ動機は次の通りです。2002年代表取締役になった頃から社長として何を実行すべき事なのかを考えていました。そこから経営に関する様々な事を、ほんの少しずつ学んでいきました。しかしあまり良い教材や、学習の仕方が見つからず何となく経営をしてきました。そうした中、F&MのセミナーやT-COLLEGEで自社分析や経営理念について学ぶ機会を得たのです。

ところが、正直なところ自社分析や経営理念について学んだものの、その重要性に直ぐには気付きませんでした。私は家業として三代目、会社は私が代表取締役になった頃まもなく創業54年、設立26年を迎えようとしていました。しかし、その社歴とは裏腹に、社是や社訓、信条などは在りませんでした。また、創業理念や経営理念、ビジョンなどの文章や文字で示された物も存在していませんでした。もちろん言葉でも残っていません。当社はただ利益を追求した仕事をしているだけの会社だったのです。

私が考えていたのは、企業は最終的に利益を出せば良い。法律を守り、利益に結びつく効率的、かつ効果的な考え方と行動が全てであるという事でした。T-COLLEGEテキスト経営理念①【経営理念と業績の関係】を学びました。理念をつくり、それを浸透させる事で、本当に業績向上に繋がるものでしょうか、私は、疑問を抱いていました。「理念」と「会社の業績」の相関関係は無いと考えていた為、理念を掲げてもあまり意味を持たないものと考えていました。また、どちらかと言えば、理念に対して否定的な考え方を持っていたのです。社長就任から14期が過ぎた41期、今でも赤字は一度もありません。ある程度の利益を出し続けてきましたので、経営理念は必要ないものとしてきたのです。

社会に出てから現在に至るまで、当社の取引先など、関わりの有るたくさんの企業にも、経営理念や理念のようなものは在りました。しかし、多くの会社の社員は、理念の意味について深く考えて行動を取っているとは思えず、それどころか興味が薄く、あまり理解していない印象が強かったのです。それに、私が不安に感じていたのは、多くの会社でうまく出来ない事を、当社が実現出来るのか、果たしてそれを社員が受け入れてくれるのか、というものでした。そんな考え方や気持ちが、私の行動に歯止めを掛けていたのです。

当時は特に素晴らしい風土のある会社とは出会っていない気がします。風土を理解し、心から楽しそうで幸せそうに働く人や会社や仕事が好きで働く人に、おそらく知り合う事が出来ませんでした。それは、理念のおかげで利益を出している事とは違うものと考えられ、また、そのような会社があるとは全く信じていなかったのです。

しかし、理念を経営戦略という視点で学んでいくうちに、経営理念と業績の関係も理解出来る様になりました。それは、理念により半永久的な方針を定め、明確にし、浸透させる事によって組織が強化され、利益を生み出し、成長している会社は世の中に多く存在しているという事です。実際のところ、私の狭い行動範囲の中では存在しない、或いは気付かなかっただけで、理念を経営戦略に活かしている企業が沢山ある事実を知ったのです。

そこから時間をかけて経営を学び、より考え、悩みました。私の持論ですが、理念とは、風土をつくる源、いわゆる社風であるという結論に至りました。それは、社風が会社組織を強化し、売上や利益の向上を生み出していくものだと、考える事が出来たのです。

そして、その事実を知り考えに変化が起きた時、それらの重要性に気付き、私は当社もそのような会社にすると心に決めました。

 

 

第2章 研究方法

研究方法は、次の通りです。

企業理念の作成にあたり、T-COLLEGEのテキスト=経営戦略の位置づけ、経営理念②、経営理念③【考えのヒント】、経営ビジョン、企業の事業領域(物理的ドメイン、機能的ドメイン)、ドメイン・コンセンサス(合意)を参考にします。そして、経営理念②の「経営理念を3つに分ける考え方」の項目を選出し、作成します。

まず初めに、経営理念③【考えのヒント】の10項目に沿って考えます。意見を出し合い、社員の価値観や考え方を大切にし、組織としての一体感やまとまりを模索して、研究キーワードを取り上げます。次に物理的ドメインと機能的ドメインの領域を明確にし、理念と事業ドメインの整合性を確認しながら、企業理念をまとめます。

 

2.1研究キーワード

2.1.1経営理念【考えのヒント】10項目

<SG株式会社ストーリー>

創業者は私の祖父になります。大正4年S区で生まれ、幼少の頃、震災を経験、その後、A区に移り住んできました。祖父は現在のA区やB区で廃品や「くず物」を取扱う業などを行っていたと今に伝えられています。

昭和16年頃、T市A区(現在のT都A区)からその後、創業の地となるS県KA郡Y町大字S(現在のS県S市S)に移住した事から始まりました。しかし、時代背景が戦時中の為だったのか、何も資料が残されておらず、その事業活動の実態さえ、正確に認識が出来なかったのです。そうした状況では、私達の「創業」としての位置付けにならないと考えざるを得ないものとしていました。昭和23年、戦後の混乱の中、古物商(衣類)の届け出をし、営んだ資料が残っていました。それが、私達の「事業創業の年」として考えています。

戦後、古物商は非常に重要な役割を果たしていましたが、物資が不足していた為か廃品などを扱う事も困難な状況にありました。そんな中、祖母は、家計を助ける為、自宅を増築したほんの小さな倉庫で、子供達と共に新たな事業を始めたのです。それは、加工したウエス材を何枚にも重ね工業用ミシンで縫い合わせた物で、鉄鋼所などで使用する手袋の製造でした。それをきっかけに祖父は、昭和27年頃K商店を開業、手袋製造とウエス加工業を祖母らと始めていったのです。昭和51年、父は手袋製造とウエス加工業を止め、古紙回収業や廃棄物処理業を始めたとともに有限会社SZを設立した。始めた当初は不安定な状況が続いたが、S市の委託事業を請け負い、少しずつ事業も安定に向かいました。父が他界し銀行の対応に苦戦をしていた頃、平成14年、「SG株式会社」に組織変更し、以前から目標にしていた大手製紙会社の古紙の販売権利を獲得しました。そして古紙直納問屋のスタートを実現させ現在に至るのです。

 

□先ずは会社の生い立ちから考える

昭和23年の創業当時を認識するには残された資料だけでは余りにも困難を極めました。創業の想いをより知るには、創業者や関係者のインタビューを必要としていたのです。

ところが、私が誕生した昭和42年には、父が事業継承を済ませ祖父は既に他界していました。その為、私は祖父とコミュニケーションを持つ事が出来ず、顔も写真でしか知らなかったのです。幸い、祖母は健在でしたが創業時の背景や想いを聞いた事がありませんでした。また、祖父の他界をきっかけに事業を継承した父からも、祖父の創業の経緯や想いについて聞かされていなかったのです。今となっては祖父や祖母、父も他界しており、困難な状況に何も変化はありませんでした。そんな時、私が頼りにしたのは、創業当時の事を知っていた叔父と叔母でした。当時の叔父と叔母は、まだ幼少期だった為、祖父や祖母の想いを理解するには少し困難だったと思います。しかし、二人は、遠い記憶の中、微かな記憶を辿って語ってくれたのです。

祖父は家族と共に戦後を乗りきってこられたのは、「生きる力」、「家族への愛情」がその原動力だったと教えられました。そして、創業者の祖父の想いは、物資の無い時代、人間に重要な衣食住の衣に関わり、古着、古布を通じて人や社会に貢献したかったのではないかと私達は考えました。

 

□共感する言葉は何か?

一期一会

□使命の視点、なぜこの会社をやるのか?

地球環境つくり 循環型社会への貢献

□将来像の視点、どうなりたいのか?

世界一喜ばれる会社

□価値観の視点、何を正しいとするか?

信頼 誠実 感謝 挑戦 謙虚 共感

□何処の、誰に、何で貢献したいのか?

循環型社会を通じて、ステークホルダーを幸せにし、社会に貢献したいと考えている。

□誰に、なんで役立ちたいのか?

ステークホルダーを幸せにしたいから困っている人、顧客、地域社会に役立ちたい。

□誰に、なんで喜ばせたいのか?

困っている人や顧客、地域社会に役立ちたいから、困っている人や顧客を喜ばせたい。

また、私達はそれを共感したい。

□誰になんで感謝されたいのか?

困っている人や顧客、地域社会に役立ちたいから、困っている人や顧客に感謝されたい。また、私達はそれを実感したい。

□自分の得意は何か?

リサイクル事業

 

2.1.2事業ドメイン

□物理的ドメイン

・再生資源物卸売業

選別された再生資源物を顧客から仕入れ、製造会社に販売している。

再生資源物の収集運搬をしている。

資源リサイクルの推進をしている。

・廃棄物処理業

廃棄物を分別し、再生資源物を取り出して製品の原材料として使用可能な物にしている。

廃棄物の収集運搬をしている。

廃棄物減量の提案をしている。

・計量証明事業

物質の質量を計量して計量証明書を発行している。

□機能的ドメイン

・不要物価値向上・喜び提供業

循環型社会を通じ、不要物の価値を高め、喜びを提供する会社

 

 

第3章 企業理念

企業理念

□ミッション(企業使命)

循環型社会に貢献し、人々を幸せに

□ビジョン(目指す姿)

人々から必要とされ、最も喜ばれる企業

□バリュー(価値観、行動指針)

創造 挑戦 スピード 変化対応 信頼 感謝 共感

・創造とは

新しい企業価値の創造である。

・挑戦とは

失敗を恐れず高い目標に取り組む事である。

・スピードとは

あらゆる事に素早く対応する事である。

・変化対応とは

変化する時代の価値観を常に満たす企業活動の事である。

・信頼とは

誠実で、謙虚であることによって信頼を築く事である。

・感謝とは

いつも感謝の気持ちを相手に伝える事である。

・共感とは

喜ばれる気持ちを共に共感する事である。

 

 

第4章 浸透

私達は、企業理念、ミッション(企業使命) ビジョン(目指す姿) バリュー(価値観、行動指針)についてその重要性を理解し、共有し、継続する。確実に浸透を図る為に次の浸透スケジュールに従って、適切な方法で全社員に定期的に行うものとする。

 

4.1浸透スケジュール

□2017年2月に資料作成

・<SG株式会社ストーリー>を参考に作成する。

□2017年3月に公表

・社内に掲示する。集合し公表する。

□2017年3月公表後~4月にかけて社員と共有作業

・作成した資料を使用する。

□以後、3ヶ月ごとにアンケート、メール、インタビュー調査、分析

・部署ごとに調査、分析しメールは随時受付する。

□初年度は6ヶ月で優れた行動を社内公表

・社内に掲示する。集合し公表する。

□2018年1月に表彰(1年間に1回)

・当社の社内行事(新年会等)を利用して表彰する。

 

4.2浸透方法

4.2.1公表

経営者は企業理念、ミッション(企業使命) ビジョン(目指す姿) バリュー(価値観、行動指針)を言語化し公表する。

 

4.2.2共有

経営者と社員は、対面で話せる場を提供し、企業理念、ミッション(企業使命) ビジョン(目指す姿) バリュー(価値観、行動指針)の言葉の要素を理解し共有する。

□理念をより分かりやすく具体的なイメージをして貰う為に、創業時代からの想いや転機、困難を乗り切った時の考え方やエピソードなどを次のように表現する。文字や画像、動画をパソコンなどで加工し、創業時からの歴史をイメージしやすくする。また、論理性、表現力を用いて社員が興味を示す資料を作成する。要点は飽きさせない資料の作成が重要である。

□必要がある場合は、何度も話し合い、理解を共有する。

 

4.2.3調査・評価

社員の行動のどの部分が企業理念のミッション(企業使命) ビジョン(目指す姿) バリュー(価値観、行動指針)に沿ったものなのかを明確にし、社内で調査し評価をする。

□優れた行動(理念に準じた行動)や認識度、温度差を社内メールやインタビュー、アンケートで調査をする。

・パーソナルインタビュー

全社員を対象とし社長と社員、或いは社員同士が1対1で調査をする。

・グループインタビュー

全社員を対象とし社長と社員、或いは社員同士がグループで調査をする。

□集めた調査(メール・インタビュー・アンケート)を、社員を交え評価し分析をする。

□人事評価の項目に反映させる。

□3ヶ月に1回定期的に行う。

 

4.2.4表彰

社員が顧客に執った、企業理念、ミッション(企業使命) ビジョン(目指す姿) バリュー

(価値観、行動指針)に沿った「優れた行動」を全社員で共有する。

□3ヶ月に1回、優れた行動を社内で公表する。

□1年に1回、優れた行動を社内で公表し表彰する。

 

 

第5章 普及社員の選定・育成

理念の重要度意識が高く、特に社員に影響力がある管理職社員を普及社員に位置付け、経営者と共に一般社員に広める。並びに普及社員を育成、増員する。

□キーマンインタビュー

管理職社員と理念の要素や行動の認識度を図り、再確認する。

 

 

第6章 まとめ

理念は、会社の半永久的な方針を決めるものだと思います。それを基準として、ビジョン、バリューなどで組織内の社員それぞれの判断基準が決まります。会社のその方針を実現させるためのビジョンやバリューは展望と価値観だと考えます。それらを浸透させ、評価に繋げる事で、より考えて行動する社員が生まれ、優れた行動に変わります。結果、共有する意識のもと組織力が高まり、売上や利益の増加に繋がる事を確信し研究のまとめとします。

pagetop