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修了生論文

自社の経営戦略における課題解決

東京校(T-college) 猪狩 崇

1. 動機

当社は2年前に創業者が他界して経営者が二代目の私に引き継がれた事、これまで売上の主力顧客としていたカメラメーカーの販売不振等による受注減少によりピーク時である36期(平成23年10月~平成24年9月末)に比べ直近決算である40期(平成27年10月~平成28年度9月末)の売上が25%程度も減少している事などの大きな変化点が生じております。

そのため、現状の取り巻く事業環境と自社の状況を把握して今後の経営戦略を立案し、それを遂行するための課題解決を図り、再度成長軌道に乗せる必要性を感じております。

 

 

2. 自社の分析と評価

 

2-1.財務分析

37期(2012年10月~2013年9月末)からの売上減少に伴い十分な収益が確保できていない状況となっている。さらに40期(2015年10月~2016年9月末)の決算は売上を大きく落とした影響で欠損となってしまった。しかし、今期である41期(2016年10月~2017年9月末)はここ数年仕込んできた新たな仕事の量産が立ち上がり売上に寄与していく事が見込まれており40期比で20%増を見込んでいる。

 

2-2.現状分析

従来 現状 今後の状況と課題
業界動向 ・受注元であるメーカーが生産拠点を製造コストの安い海外にシフトを進めたため国内における同業者は受注確保で苦戦を強いられ淘汰が進んだ。 ・業界により多少差異はあるが、世界各地において現地消費分については現地生産で賄うという方向に向かっている事と近年円安も進んでいる状況より海外シフト一辺倒という状況にはある程度歯止めがかかった。 ・これまで国内生産を絞り過ぎた影響でメーカー及び同業者共に人員削減、設備移転が進んでおり、現状で仕事が戻って来ても技術や生産キャパへの対応が困難となっている。人員設備とも維持してきた当社には新規顧客開拓のチャンスである。

 

受注状況 ・カメラ、OA機器用精密ギア等の小物精密部品の受注を全体売り上げに対しての占有率が80%と主力であった。

 

・カメラがスマートフォンに代替されたことにより、既存顧客からの受注が急減した。売上の減少を埋め合わせるため家電業界に比べ比較的好調で安定している自動車用部品業界への参入を図った。その結果、現在は自動車部品関連の売り上げは全体の65%を超えている。

 

・自動車部品への依存度が高くなってしまっているため、今後の経営の安定とリスク分散を図る上で医療機器、住宅設備といった他業界への参入を模索している。
・新卒人材については近隣の高校より毎年応募者10名程度より選抜して4~5名程度の確保が容易であった。

 

・管理、技術の即戦力となる人材については近隣の大手企業での事業縮小や撤退により人員放出が有り比較的確保が容易であった。

・新卒の応募者が2~3名と減少しており確保が厳しい状況となっている。

 

・近隣の大手企業でも専門スキルを持つ人材が不足しているため、中途で即戦力人材の採用が難しくなっている。

 

・少子高齢化が進む中、若手社員の確保や教育を今まで以上に強化する必要がある。

 

・定年延長の社内制度を整える必要が有る。

 

・即戦力となる人材を確保する方法を考える必要がある。

生産 ・比較的安定した受注状況であったため、計画的な生産が可能であった。 ・市場動向に合わせ受注数量が変動したり、多品種小ロット生産が増えているため、臨機応変で柔軟な生産管理体制が要求されるようになっている。

 

より複雑化する受注状況に対応していくためにIoT等を活用した生産管理システムの導入を行い生産の効率化を図る必要がある。
設備 ・カメラ部品等の小物精密部品を生産する設備が主力であった。 ・従来の小物精密部品用の生産設備に加え、自動車部品の製造に適合する現状よりも大型の生産設備に切り替えを行っている。

 

・日進月歩で進化を遂げている最新鋭生産設備に定期的に更新する事により生産性の向上を品質のアップを追及する必要がある。
技術 ・高い寸法精度への要求に対応出来る技術当社の強みであった。 ・外観品位の要求に対応する金型鏡面加工技術、ウエルドレス金型製作の作成ノウハウまた生産性を向上させる金型のホットランナー化の技術で競合他社に差別化を図っている。

 

・今後更なる外観品位の生産性向上の技術を深化させていき同業他社に差別化をしていく必要がある。

 

品質管理体制 ・ISO9001認証により品質マネージメントシステムの構築及び維持管理を行ってきた。 ・ISO9001に加え主に欧州自動車メーカー等からの要求が高いISO14001の認証により環境マネージメントシステムの構築を行った。

 

・今後、更に要求が高まっている自動社専用の品質管理規格であるTS16949認証への取り組み対応が必要となっている。
営業及びマーケティング ・既存顧客であるカメラ、デジタル家電、OA機器メーカーから継続手に十分な受注量が確保出来ていたため、特に新規での営業活動の必要はなかった。 ・既存顧客の業界が不振に陥り受注が減少したため、比較的安定しており仕事量が多い自動車部品業界への新規参入を図るため、トップセールスを行った。 ・自動車業界への偏りを懸念し、医療、設備等多方面へ積極的に新規顧客の開拓を行っていく必要があるためトップ単独では営業及マーケティングを行っていくキャパが足りないくなるため組織的な点展開が必要。

 

 

 2-3.評価

分析の結果より取り巻く事業環境は大きく変化している状況の中で十分にその変化に対応が出来ていない事が近年の業績不振を招いていると考えられる。

特に、自社の売り上げにおいては全体の80%を占めていた既存顧客であるカメラメーカーは近年カメラ機能がスマートフォン等に代替されてしまった事により主力商品であったコンパクトカメラの生産がピーク時2010年は12,146万台を超えていたものが、昨年2015年には3,470万台と4年でピーク時の28.6%まで市場規模が縮小し、急速に業績が悪化した。その影響で当社もカメラメーカーからの受注が減少してしまった。 そういった状況下において、比較的好調で安定している自動車業界へ新規参入を目指し受注活動を進めたが、自動車の場合、商品サイクルが4年から6年と比較的長いが、受注が確定してから量産に入るのには最低でも2年から3年の期間を要するため、カメラ部品の急速な売り上げの落ち込みを埋めきれず先期40期は欠損となってしまったが、昨年末よりようやくこれまで仕込んで来た自動車部品の量産が徐々に立ち上がりはじめ、今期41期の売上は回復傾向で創業以来の最高売上の更新が見えて来ている。

しかし、これまで扱ってきた生産品に比べ、品質特性やサイズ等異なる部分が多く、また部品単価に占める利益幅も厳しい状況となっているため、その中からいかにして適正な利益を捻出していくかが今後の課題である。

また直近において、集中的に自動車関連部品の受注取り込みを進めてきた結果、先期の受注占有率は既に65%を超えてしまっており大分偏った受注状況となってしまっている。しかし、今後の長期的な視点にたち自動車産業業界の動向をみると現地販売の車種は基本的に現地生産化を図っていく方針をしめしておりして、国内生産数量は現状の400万台(2015年)から2020年までには25%減と市場の縮小が予測されている。したがって、今後の当社が継続的な成長を図っていくためには、自動車のみに頼らず医療・住宅設備といった新規分野にも積極的に参入を図り、特定の業種への依存度を分散して経営の安定を図る必要性も同時に検討していく必要が有る。

 

 

3. 取るべき戦略及び戦術

今後、当社が継続的な成長を図っていくためには、まずは安定した売上の確保が必須となる。最も即効性があるのは既存顧客においての占有率をさらに高める事で、それと並行して新規顧客の開拓といった営業及びマーケティング体制の強化が急務である。

また、仕事の取り込みや新規顧客開拓においては、ただやみくもに仕事を取れば良いという考えではなく、あくまで自社の現状に見合った体制や技術にて対応可能である仕事を選択し、その上で自社の強みを生かし同業他社に対し差別化できる仕事の取り込みが必要である。

さらにコストありきの過当競争に巻き込まれないよう国内外を含む同業他社と差別化できる技術力の維持や向上にも取り組んでいく必要がある。

次に売上の中から確実に収益を確保するため、生産性の向上にも取り組んでいく必要がある。そのためには、まずは現従業員の意識改革から始まり専門技術の習得のための教育にも力を入れていく必要がある。それと合わせ将来を見越した設備拡充も行っていく必要がある。

以上を達成するための具体的な戦術及び戦略を3-2にまとめた。

 

3-2.戦略と戦術

課題 戦術(目的) 戦略(手段)
売上の

拡大1

マーケティング及び営業強化

 

 

・これまで顧客のニューズをつかむためにアンケートによる定量的な調査を行って来たが十分な活用が出来なかったため、今後はヒアリングによる定性的な調査に切り替え定期的に内容を取りまとめ顧客満足度の分析を実施する事にする。

 

・現在既存顧客の営業的な部分については技術部門と設計設計でフォローしており新規顧客の開拓については経営者が行ってきたが、今後は新規顧客の開拓においても営業部門の人員増員し組織的な活動に切り替えていく事とする。

 

・ホームページの見直しを行い顧客に対しより効果的なプロモーションを行っていく。現在のホームページは5年以上前に作成したもので、現状の内容にそぐわない内容となっている。今後は1年に一度程度の頻度でホームページが更新されるような形式のものを検討する。

 

売上の

拡大2

差別化 ・自社の強みの一つとして金型の成形製作から成形量産加工まで一機通関で対応出来る体制を備えている事である。この対応力をより充実させていくため、組織間の連携を更に強化していく。

 

・金型の製品部分であるキャビティーの加工仕上げにおいて高度な熟練技術を必要とする鏡面加工、樹脂のフローフロントに発生するウエルドラインを消すための金型製作及び成形加工技術、成形サイクルを短縮してランナーロスを低減するホットランナータイプの金型製作及び成形技術といった同業他社では対応困難な自社の得意技術を顧客に対し積極的に提案していく。

 

売上の

拡大3

設備の拡充 ・今後受注の拡大が予想される自動車部品の金型製造に適したCAD・CAMシステム、最新鋭の5軸マシニングセンターの導入または、これらの金型を使用して量産成形を行う350tonクラス以上の中型射出成型機を増設する。(現状自社の最大サイズ生産機は280tonです。)

 

売り上げの拡大4 組織規模の維持と体制の強化 ・現状及び今後も顧客ニーズであるQCDに対応するためには、品質管理体制や環境管理体制が要求される。これらを維持管理するためには適切な会社規模の維持が必要となる。現在当社は品質及び環境の管理においてISO9001、14001の認証によりそれらの要求事項に沿ったマネージメントシステムを構築し運用及び維持管理を行っており、それが顧客への信頼にもつながっている。また最近は欧州自動車メーカーへの部品の供給において現状の品質規格であるISO9001より更に管理レベルが高い自動車部品製造専用の品質規格であるTS16949の要求も出ており今後認証取得に向けての活動を行っていく。

 

・品質管理及び保障体制に加え納期、生産ボリューム、技術的対応といった要求に対応するためにも、現状の人員や組織体制の会社規模を維持していく事があり、これが更なる受注にもつながっていくため、体制維持に見合った売り上げの確保を目指す。

 

利益確保1 従業員の意識改革 ・QC活動に力を入れ参加する事により意識向上を図る。現状は部門単位で月1回のQC活動のみであるが、それに加え各部門から世代別のQCサークルを組織して内部コミュニケーションの活発化を図る。

 

・3定5Sと製造現場の見える化を推進する。これまでは5Sチェックシートなるものを活用して毎月定期的に各部門長が自部署のチェックを行う方式であったが、部門長により判断レベルが異なったり、部署内及び他部署の従業員から実施状況や成果がわかりづらく成果も上がらなかったため、各部署の部門長及び担当者が実際に現場を巡回し改善要と判断した部分と改善後を画像に収めBefore、Afterの画像を並べて実施状況の見える化を図る。

 

利益確保2 生産性の向上、作業効率の改善 ・製造工程においてこれまで20年以上運用していた生産管理ソフトが現状に対応しきれない部分が出来てきているため『ものづくり補助金』等を活用してに対応出来る新システムへの移行を進める。本システムを導入する事により生産機械である成形機を全てネットワーク化し、各種情報・データ(ビックデータ)を活用し『監視』(モニタリング)、『保守』(メンテナンスサービス)、『制御』(コントロール)、『分析』(アナライズ)の全てを行い稼働実績、設備停止要因、不良要因等のデータをリアルタイムに吸い上げ、「データベース化~分析~稼働率向上対策」をスピーディーに実施していく。

 

・治工具等の活用によりゲートカットや組み立て等においての手作業工程部分について、積極的に自動化の推進を図る。

 

・IE手法を取り入れ作業動作分析しながら作業の効率改善に取り組む。

 

新たな成長のために1

 

技術力の維持と向上 ・生産現場での金型不具合を金型設計にフィードバックし修正及び次に設計に反映をさせる事により、より生産性の高い金型づくりを目指す。そのために製造部門、金型部門及び技術部門が一体となって技術を蓄積していく仕組みを構築していく。

 

・金型の設計、各工作機械の加工ノウハウ、金型の仕上げ組み立て、射出成形機の加工条件出しといった当社の要素技術・技能を維持及び向上させるために、出来る限り数値化した作業手順書に落とし込み次世代の若手授業員の教育を行っていく。

 

新たな成長のために2

 

人材育成及び確保 ・ES(従業員満足度)向上の取り組みとして職場環境の見直し、福利厚生の充実、退職金制度の再検討、定年延長検討を順位行っていく。

 

・新規卒業者確保については、近隣の高校及び専門学校、大学の職場体験等に積極的協力して自社を知っていただく活動を行っていく。中途採用もこれまでは即戦力として経験者に限定していたが、以降経験の有無にこだわらずヒューマンスキルを基準に採用検討をしていく。

 

・教育については個々のスキルに合わせた個別の教育プログラムを策定して実施して行く。

 

 

 

4. まとめ

冒頭で申し述べた通り当社の創業者である父が2年前に他界し経営を引き継ぐ事になりました。自身としても当社に入社して20年の歳月がたちました。その間に自社を取り巻く事業環境は大きく変化しました。またそれに合わせ自社も変化していくのをこれまでは経営者と現場実務のトップという立場で見てまいりました。自身が入社した当時はバブル崩壊直後という事も有り、ピーク時4億5,000万円あった年商は3億円まで落ち込んでおり従業員も30名程度までに絞りこまれておりました。そのような状況下で従業員の士気もかなり下がっていたような気がします。

経営再建のためにまず私が着手したのは、これまで営業もせずに親会社から自動的にいただいている仕事だけに頼らず、新たな販路を開拓し売上を増やす事でした。当時の私は年齢的に若いという事もあり、訪問先々のお客様によく面倒をみていただけ順調に新規顧客の開拓を進める事が出来ました。しかし、いざ仕事を取って来ても社内ではモチベーションの下がっている従業員たちから、『これまでの慣れた仕事以外に、なぜ勝手のわからない新しい顧客の仕事に取り組む必要があるのか』と協力が得られず自身で製造・検査・納品までこなすして対応する状況もありました。その後、徐々に売り上げ増えて新たなスタッフも加わり組織づくりを行い分業体制も整えて参りました。結果、従業員は120名、年商も13億円を超えるまでになりました。

その間、私が感じた事は会社経営にとって一番重要なのは何はともあれ売上を上げるという事でした。売上が確保できなければ利益を出す事も、人を雇う事もまたは改善をする事も出来ません。

今回にT-College入校させていただきマーケティング戦略の考え方や分析等の具体的な手法を学んだ事は今後の受注活動において非常に有効に活用出来ると思います。

また売り上げが確保され会社の規模が拡大していくと、人や組織の管理が追い付かず全体的なロスが増え収益が落ちてしまうという事も経験しました。会社は規模の拡大に伴いそれに見合ったマネージメントが必要となりという事を思い知らされました。トップがいかにして自分のビジョンを従業員に示し賛同を得られなければリーダーシップが発揮できません。さらに財務諸表より客観的に会社の状況を把握して問題解決を図る必要があります。そのために今回学んだリーダーシップ論や財務分析を活用していけるように更に理解を深めるよう継続的に学んでいこうと思います。

最後に企業の成長はやはり人ありきと実感しております。今後、日本国内において少子高齢化が進み人材を確保がさらに困難となる中で、継続的に人材を採用してその人材をしっかりと教育して戦力化する事を進める上でも、個々の従業員が社内での存在意義を実感しやりがいをもって仕事に取り組める環境づくりや従業員満足度を高める取り組みが必要であると思います。いずれにしても人を導き教育をしていく立場として自分自身も知識を深め、ヒューマンスキルを高めていかなければなりませんので、今回スクールで学んだ事をベースとして更に勉強を続けていきたいと思います。

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