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修了生論文

「スクールの学びをこれからどう生かすか。」

東京校 (T-college) 市川 賢一有限会社大中精機製作所 代表取締役 社長 )

研究の動機

私は、平成28年9月より(株)エフアンドエムT-COLLEGE2期生として経営の学びを深める中、学んだ物は生かさなければならない。それはまず自社に生かす必要があると自覚しました。その学びを(有)大中精機製作所の問題解決に当てることとしました。

自社は、製造業の中小企業です。

中小企業の製造業は、技術力が生き残るための重要な要素です。

技術力の根幹は人で有り、どれほど優れた機械を設備していても差がつく部分は人が介在する部分です。先進の機械設備を高度に活用する人材育成を行いたい。加工に対して探究心のある人材を育成したい。ひいては、自他共に認める技術集団として認知される会社になりたい。そんな欲求によりこのテーマを選定いたしました。

 

 

第1章 現状分析と評価

 

1.1 (有)大中精機製作所とは

二代目の社長と従業員21名が山梨県大月市で営業しております。顧客から受注し生産した製品(部品)を売ることを生業としている会社です。

具体的には、昭和40年頃市川洋一(昭和19年生まれ)により、山梨県大月市にて創業。彼の実家の空いている土間に汎用旋盤一台でのスタートでした。その後、昭和56年に法人化。平成7年に現在の工場に新設移転するが、平成9年市川洋一は脳梗塞にたおれ、その後遺症のため失語症になりました。そこで長男の市川賢一(昭和49年生まれ)が入社。専務兼社長の代理として事業を継続し平成25年代表取締役になり現在に至る。従業員21名。(社員11名パート10名)業種は製造業で、詳しい定義は金属の精密切削加工業です。生産品は、産業用のロボット部品やサーボモーターの部品、医療、航空宇宙関連の部品(人工衛星の部品など)等多岐にわたります。技術力の保持を意識し、樹脂から難削材(柔らかい物から硬い物)まで、複雑で精密な加工を行えます。加工機は、主にNC旋盤(L:Lath)マシニングセンタ(MC:Machining Center)を使用します。最新のPCソフト(CAD/CAM)から出力したデータを、NC旋盤(L)およびマシニングセンタ(MC)の中でも先進の5軸複合加工機で加工し多様な製品を製造してきました。今後も、顧客や社会にとってより重要な製造品の製造に挑戦し続けたいと志す会社です。

 

1.2金属の精密切削加工業とは。

材料は金属です。鉄、アルミニウム、ニッケル、銅などに、いろいろな金属を混ぜた合金と呼ばれるものが主体で、純粋な物より機能性を付加されており、その機能性とは、耐摩耗性、耐腐食性、耐熱性などいろいろです。金属は一般的に硬い物ですが工作機械により精密な加工が行えます。それでも簡単な物から極めて加工しにくい物まであります。

切削加工という言葉は耳慣れないと思いますが刃物で削る加工です。つぶしたり、伸ばしたり、溶かしたりと言う加工ではないということです。

切削加工で使用する機械の代表はNC旋盤(L)とマシニングセンタ(MC)です。違いは、材料が回るか工具が回るかの違いでNC旋盤は陶芸のろくろのように材料が回って工具を当てて加工します。マシニングセンタは、工具が回転して材料を加工します。

加工の精度は、ミクロン(1/1000ミリ)単位の精度要求があります。そのような精度が必要な理由ですが、一例として、扇風機に使われているモーターを想像してください。モーターの中心軸とその軸受けは金属です。1分間に何千回転もする軸が少しでもズレたりガタ(隙間)があったりすると振動が起きます。振動が有っては正常な機能を得ることが出来ませんし異音が出る上に寿命も短くなります。逆に、精密であれば耐久性の強い特性が出てほかの材料では得られない長寿命になります。さらに、金属部品同士を組み立てる際も、その堅牢さのせいで変形が少なく部品同士が正確でないと組み上がりません。そのため精密である必要があります。

 

1.3 ファイブフォース分析

弊社が現在からこの先へどのようなことに対応しどのように変化しなければいけないのか考察するためにまずファイブフォース分析を示します。

 

ファイブフォース分析

業界内の脅威

1. 規模の大きな、同業他社が強い営業力を利用して弊社の受注品を奪われる。

2. 顧客の生産能力の増大により内製化を進められ仕事を奪われる。

3. アジア等新興国に奪われる。

4. アジア等新興国に合わせた価格設定により粗利が減る。

5. 少子高齢化等の労働人口減少により職業選択の機会が増え、この業界を選ぶ人材が減る。

6. 過当競争により、業界全体の価格を押し下げて粗利が減る。

7. 協力会社(下請)が飛び越えて顧客に営業を行い受注を奪われる。

 

新規参入者

1. 車のエンジンがモーターに代わり、エンジンの製造に関わっている企業の参入

2. 金型を加工していた業者が生産設備の有効利用のため参入してくる。

3. 弊社から、技術を持った人間が独立し参入。

4. 材料の供給業者が加工を行うようになる。

5. 新規参入のため最新機械を設備することにより高品質な製品を提供してくる。

 

買い手、顧客の交渉力

1. 毎年のコストダウン要求に粗利が目減りする。

2. 新興国での生産。

3. ISO等国内国際規格の取得の義務化により管理作業コストが増大する。

4. 品質の保証を行うために検査員の客先の資格取得の必要性や検査成績書の添付の工数が増え管理作業コストが増大する。

5. モデルチェンジ等で受注品が廃版になる。

6. 客先の倒産、撤退により仕事がなくなる。

7. 無人化内製化が進み仕事がなくなる。

8. 調達方法を変更し発注先が変わる。

9. ジャストインタイム等の発注ロット、納入方法、生産計画等に影響が多大に出るシステムを採用する。

10. RoHS指令、REACH規則、紛争鉱物、の規制が多くなり規制を違反するリスクが上がる。

 

売り手、供給者の交渉力

1. 原材料費の変動により価格が上がる。

2. 材料間違いを起こす。

3. 規制対象物質が入った材料を供給してくる。(例:真鍮は、同じ材料名でもカドニウム含む、含まない。が有り医療業界はカドニウム含有を規制しています。)

4. 戦争、紛争等により刃物に使っているレアメタルが手に入らなくなり購入品に影響がでる。

5. 供給者のルールやシステムにより客先の納期が遅れる。

6. 倒産、撤退により供給してもらえなくなる。

 

代替品、サービス

1. 3Dプリンターにより企業から個人まで幅広く製造ができるようになる。

2. 鍛造や鋳物技術が革新的に発達し切削加工の必要性が減る。

3. 規格化が進み、いろいろなものが市販規格品の集合体で製作可能になる。

4. IoTがすすみAIによる考える工場が普及、今までは工場の一台一台の機械を別々に購入していたが工場システムを購入する形になる。

 

1.3.1 業界の現状

業界の顧客のメインはメーカー(車メーカー、半導体装置メーカー、産業用ロボットメーカー等々)です。製作された物は、そのメーカーの商品の中に部品として使われます。

ファイブフォース分析から、多くの脅威あることが分かりますが、大部分が2つに分類できます。グローバル化と生産技術の進化です。つまり、顧客の調達の方向性は安く作れたり買えたりする国から調達、もしくは無人工場での調達。となっている。

中小企業の金属の精密切削加工業者は、そこに当てはまらない部分で仕事を確保しなくてはならない。代表的には少量多品種の生産となっています。

 

1.4  年齢構成とSWOT分析

社員の年齢構成(パートを除く)

年齢 20代 30代 40代 50代
人数 4名 3名 2名 2名

 

・平均年齢35.7歳 (製造業平均年齢39.7歳)

・20-35歳までの比率54.5%

・部門数はNC旋盤(L)とマシニングセンタ(MC)の2部門でリーダー人数は、総数2名

(Lリーダー24歳  MCリーダー30歳 )

 

 

SWOT分析

強み 弱み
1.若くてやる気のある社員

2.高性能な生産設備

3.近い世代にOJTで教えてもらえる

 

1.若くて不安定な社員

2.高性能な生産設備

3.OJTだと教える人間に個人差がある

4.リーダーが失敗を恐れて自ら仕事をやり過ぎる。

機会 脅威
1.就業年数が多く技術の積重ねに期待できる

2.高付加価値な製品

3.コミュニケーションが取りやすく定着しやすい

1.会社をやめてしまう

2.導入コストが高いのに難しく使いこなせない

3.時間と共に成長に個人差が出る経験年数が浅く知識も足りていない

4.機会が均等でなく人が育たない

 

1.4.1(有)大中精機製作所の現状

これからの就業年数が長い人材が多くやる気もある者も多いが、採用の際には早期にやめてしまうケースもおおい。経験不問で募集しているため入社前には機械加工の専門教育は受けておらずしっかりとした教育が必要。学ばなければいけない事を項目だけでも分かる必要がある。最新の生産設備の導入を進めているが、実際にはなかなかその能力を最大限使えていない技術力の研鑽を行っていきたいがチャンスに偏りがあって人が育ちにくい。OJTに頼り過ぎている。

 

1.5 (有)大中精機製作所の評価

技術を重視して居るが、人材育成をOJTのみに頼っていて人材に技術、知識や態度にバラツキや指導する者を超えられない事になっている。さらに、最新の設備が導入されても性能を生かし切れていない。

新しい生産設備にはメーカーの導入研修以外に、社長による、なぜこの機械なのか。この機械で何が出来るのか。この機械でどのような技術を育てていってほしいか。そのような内容の意思表示が必要。

 

 

第2章 今後の取り組みと監査手法

 

2.1スクールの学びを生かした取り組み

・社員一人一人にバランス良く社長の望む人材に成長してもらう。

・技術力を身につけて模倣困難なレベルを目指す。

・スクールでの学びを明文化し伝えていく。

・学ばなければいけない事のインデックスをつくる。

・成長の進捗を確認する。

・現在と目標を明確化する。

 

これらの解決に有効な手法としてスキルマップを採用しスクールの学びをそこに落とし込む事とする。

 

2.1.1スキルマップ 

スキルマップとは、下の表で示すとおり評価項目を上げ評価を乗せる表のことである。評価は点数を付けたりグラフにするなどの方法で示す。

  

2.2スキルマップの作成から運用

社長が、作成し運用へ。新規の試みで導入時に有意義であることを理解してもらい運用するため動機付けの後、運用を行う。

 

2.2.1スキルマップの作成

知識、技術、態度の3カテゴリーに分けて作る。

技術の部分は直接売り上げにつながるが、会社の大きな成長には知識と振る舞いや姿勢つまり態度が重要になる。

知識と態度の部分は、スクールの学びが活きる部分で有効に反映させる。以下例。

技術
機械のメンテナンス
工具の交換
製品の測定
図面が読める
CAD/CAMが使える
MCが使える。
NC旋盤が使える。
三次元測定機が使える。
知識
ロジカルシンキング
リーダーシップ論
論理的な思考
仮説と検証
問題解決の手法
科学的分析
効率性、有効性、生産性の違い
イノベーション
態度
チームにつくす姿勢
5Sに積極的
協調的
協力的
前向き
明るい挨拶
会釈が出来る
時間を守る

項目は導入時、社長が草案を作成し、社員が気づいてほしい、知ってほしい、育ってほしい事を項目で示すことにより成長の方向付けが行える。その後の監査で有効性を確認していく。

 

2.2.2スキルマップの運用方法

スキルマップの有用性について社員全員に理解してもらう。

項目を公開し、カテゴリーを説明、項目ごとの説明を行い内容の理解を進める。

各項目を題名とした研修を開く。

開始時には社長が採点を付けて個人の目標を設定する。

ボーナスの際に、成績表として渡し本人の意識付けをより強力にする。

 

2.3スキルマップ運用の監査方法

監査とその際に出た問題点は、評価項目なら改版。運用手法なら最適化を行うフィードバックしないと定着は望めない。

 

2.3.1監査方法

前期及び後期ボーナス前に、リーダー以上で監査会議を開く、各個人の報告書を成績書としてボーナス支給時に渡す。

 

2.3.2監査結果から改版

監査結果を踏まえて、問題事項を運用の部分はリーダー以上改善。

評価項目は社長が改版。

評価項目と運用の変更事項を年末に総会を開き社員全員で共有する。

 

  

第3章 まとめ

スキルマップにスクールの学びを投影していくことはもちろんだが、運用する中で、評価項目を教育訓練に結びつけていく、この教育訓練の場でもスクールの学びを社員とどんどん共有していく。また、運用では改善をサイクルに入れスキルマップの重要性を時間が経つほどに高めていきたい。

①から③を回していくことで。

評価項目一つ一つは教育訓練の場で教えていく。

 

 

あとがき

技術が大切という思いは社員も私も同じだが、向き合う姿勢は十人十色で違いがある。学ぶ機会を設ければ必ずそれぞれが伸びていくと確信している。ただし、価値観を揃え全員で足し算になっていく事が大切だ。今回は、その入り口をスキルマップという手法に設定した。ここからスタートする。

 

スクールで、経営者は、はじめオペレーティングスキルの比重が大きく会社の成長と共にコンセプチュアルスキルがどんどん必要となっていく事を学びました。それは、自分が求めていた答えそのものでした。知ったときのインパクトがとても大きかったことを覚えております。また、想いや意志は、背伸びせず自分の言葉で伝えることを学びました。そして今回論文の難しさを思い知りました。まだまだ、訓練が居るようです。知れば知るほど学ぶべき事ことは山積しますが、それでも経営を止めるわけにはいかない。だから、学び続けつつ会社運営をし、経営者と社員、距離はあるとは思いますがドメインコンセンサスの拡大を目指し、その歩みが会社の利益拡大へとつながるように努力し続けます。

沢山の学びをありがとう御座いました。

 

 

参考 文献/webサイト 

政府統計の総合窓口

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001026838

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