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修了生論文

T-COLLEGEで学んだ事をどう生かすか

東京校 (T-college) 東山 直樹東山架設株式会社

はじめに

私は横浜市で建設業を営む、東山架設株式会社の代表取締役です。当社の専門工事は中低層ビルや戸建て住宅の足場設置工事、基礎工事、屋根工事を主に行う今期で10年目を迎える建設会社です。近年では断続的な人員不足や仕事の過受注による出来高の低下や社会保険制度の導入などで厳しい状況に置かれています。現状を乗り越える為に自分の成長を求め学ぶ事を選んだのです。

 

①足場設置工事とは何か

建物を建てるにあたり、他業者が施工する為の作業床などを設置する業種です。補足として他に工事資材等を荷揚げするクレーンの組み立てや、工事資材や作業員が昇降する工事用エレベータの組み立て、建物の骨組みになる鉄骨組み立て等も建築鳶の仕事です。

 

②基礎工事とは何か

建物を建てる土台部分を施工する業種で、主に残土の掘削やコンクリート打設工事を行います。

 

③屋根工事とは何か

一般住宅や一部マンション等でもありますが、屋根部分の張替、補修を行う業種です。近年では瓦屋根からスレート屋根への変更工事が多数あります。

 

 

1       研究動機

このままではいつか自分の会社は倒産する。ここ最近そんな不安を考える毎日です。当社は平成20年3月創業し、今年で10期目を迎えます。この9年を振り返えると、何の計画も立てず、目の前に有る仕事に只追われる毎日だったような気がします。現場作業を完全に退く前の職人時代は誰にも負けたくないと思い、誰よりも無駄なく綺麗に足場を組み、現場監督をはじめ所長さんの信頼があったからこそ独立が出来ました。

設立当初は従業員2からスタートし、小規模な現場や関連業者の応援で仕事を回してきました。2~3年が経つ頃には若い従業員が増え10名ほどになりました。『痒い所に手が届く、勢いがあるだけでなく仕事を確実にこなす東山架設ブランド』と言われるくらいでした。例を挙げると、神奈川の地場のゼネコンさんでは20名程いる現場所長が口を揃えて『東山架設キャンペーン』と言い、全員が弊社を指名で使用してくれる程になり、現場の規模も中規模や大規模とステージが変わりました。設立5年目には従業員も最大35名まで増え、外注業者も何社か仲間入りし売り上げは右肩上がり、しかし、その時から現場にひずみが出てきたのです。10数名程の少数精鋭部隊から従業員が増え、末端まで『東山架設イズム』が伝えられなくなりクレームが発生するようになったのです。そんな時指名し続けて頂いていた所長さんに『どこを使っても変わらなくなるよ』と助言される程で、職人の技術の質より作業員の人数増加に追われてしまった結果クレームが頻繁に来るようになってしまいました。

 

1.1      過去とのイメージのギャップ

職人時代や設立当時からこだわっていたことは、他社との差別化です。他業者が安全に、且つ円滑に作業が進められる足場を、いかに早く綺麗に無駄なく設置するかです。使用が終わればなくなってしまう足場ですが、そこにプライドを持って取り組んでいました。単に足場があれば良いのではなく無駄な資材を発注、やり直しが発生すれば他業者の工程の遅れ、現場側や弊社の無駄なコストがかかります。

・他社との違う取り組み具体例(当時)

①資材発注

通常はゼネコンの1~2年生の監督が仮設担当となり鳶業者の資材発注を行います。専門ではないので、必要な資材が発注されていなっかたり、資材不足で予定の足場設置が完了できない事が多々ありました。そこで当社は自分達で資材の数量を拾い、オーダーまでを管理しました。

②図面作成

通常はゼネコンの仮設担当や資材リース業者が作成しますが、現場と状況が変わり全く意味のない図面が作成される事が多々ありました。そこで当社では手描きにはなりますが、自分たちで図面を作成するようになりました

③全体的な工程管理への協力

躯体業者(大工、鉄筋、鳶)で工程のキーマンは大工になるので足場設置作業の日程短縮を協力していました。現場での存在感の発揮を心がけるようにしました。他にも現場での危険箇所の指摘施工方法の積極的な提案をしていました。

 

このような具体例を社内で継承してきましたが、従業員数や現場数が増加した事により、浸透しなくなりました。外注に発注している現場は、管理教育が行き届かなくなり自分がイメージしていた現場のあり方へのギャップが生まれてきたのです。

 

・取り組み具体例(現在)

①資材発注

現在は改修工事に於いては資材発注を行うが、新築工事に於いては現場監督にアドバイス程度に終わり当社職人は行っていない。資材の数量を拾う際は作業時間を使用し出来高に影響が出てしまう。

②図面作成

現在は、改修工事担当の職長が一部書いている程度。図面通りの施工を行わない場合は、図面を作成し当社職長が資材を拾わないといけない為、図面を作成しない。

③全体的な工程管理への協力

現在は断続的な人員不足を言い訳に、最低限の協力しかできていない。外注や下請けの技量不足を言い訳にしている。

 

過去と現在のギャップを踏まえ、まずは、基本理念の構築が必要だと考えました。

 

1.2      基本理念構築の必要性

研究動機にもありますが設立当初から何も考えず計画せず、言わば『会社ごっこ』を始めた状態にあり、基本理念やビジョン、まして経営戦略は大企業が掲げる物と思っていました。当社も売上だけを見れば右肩上がりに推移しており、一昨年に於いては二次請け業者とはいえ3億円を超えました。スクールでの参考資料を元に考えると売上2.5億円未満の業績では47%の企業で理念があり、売上10億円未満の企業では57%の企業で理念があることが分かりました。誰が見ても理解できるのが基本理念であり、私を含め当社の従業員に現在足りないものだと考えました。ビジョンに於いては、目標やあるべき姿とあるように、自分の頭の中で描き満足する物ではなく、会社全体で掲げる目標だと気づきました。そして経営戦略です。何も考えず進んできた9年間でしたが10期目という節目のこの時期に中長期的な計画を立て、ビジョンに向かう、誰がみても理解できる目標や理念が必要だと考えました。

 

 

2       現状分析

基本理念構築をする為には、自社がどの立場に置かれているかを知る必要があると考え、現状分析を行いました。自分が頭の中に描いているビジョンが、自社の強みと紐づいているのか、自社の従業員が強みを活かせているのか、社員全員でこの二つを分析しました。

 

2.1      強みと弱みの整理

【他社に比べて当社の強み】

・施工する足場は形として残らないがゼネコンに褒められる程の綺麗な施工をしている。

・現場監督の育成を現場側から依頼される信頼度がある。

・当社は二次請負業者だが元請に負けないフットワークと営業力を持つ。

・年間通して仕事量の多さ。

・業種が足場作業だけでは無く、幅広く事業を行っている。(足場、土木、屋根、重機オペ、リフォーム、運搬、他)

・元請よりも早い新規物件情報の入手。

【他社に比べて弊社の弱み】

・取引元請業者が多い為、自社のステップアップが難しい。

・仕事量における従業員不足。

・若い従業員の退社。(労働と賃金のバランスが悪い)

・現場数が多い為、末端の作業員に対しての教育不足。

・幅広い事業に人員が割り振られる為の従業員の技量不足。

強みと弱みの整理による分析でも明確な通り、自社の強みの一部が現在のギャップに当てはまっている。

 

2.2  ファイブ・フォース・モデルによる業界分析

【建設業界内の脅威】

・復興支援とオリンピック施設工事と作業員の奪い合い。

・作業員(各業種の職人・現場管理者)の人員不足。

・オリンピック後の仕事減少。

・大惨事事故による安全の縛りや作業標準の変更。

・使用資材の高騰。

・社会保険の完全加入の厳格化に伴い、業者や職人の減少。

・人手不足が原因の工事遅延。

・建築鳶工から安価な足場屋への業者変更。

 

【新規参入】

・人員不足による外国人研修生制度の導入。

・足場を最低限しか使用しない施工方法。

・新規足場リース会社の材工請負。

【代替品・サービス】

・足場部材の変更。(ビケ部材やクサビ部材)

・公共事業から民間工事。

 

【売り手・供給者の交渉力】

・材工業者の一括受注。

・二次請業者以下の単価高騰。

・技術不足の職人が多数在籍する会社の増加。

・ゼネコン名義人に簡単登録。

・二次請業者以下の常備単価の高騰。

・常用工事専門業者の従業員への給料高騰での引き抜き。

 

【買手・顧客の交渉力】

・同じ単価での過剰な安全対策。

・社会保険、雇用保険加入制度の徹底。

・資材、安全工具の変更。

・作業標準の安易な変更。

・福利厚生や許可業者の選定強化。

・当社使用業者の二次請への斡旋。

 

 

3       基本理念についての考え

 

3.1      分析結果

作業員の人数が確保されていて尚且つ福利厚生がなされている元請業者が求められていると思います。適当な経営をしている小規模な会社は排除され、基本理念やビジョンが明確に描かれている企業が生き残れる建設業界に変化しよとしているのです。現在は職人不足や、オリンピックに向けた仕事の増加が有りますが、この現象は納まります。結果、オリンピック後の業界に生き残るには基本理念、ビジョンが必要なのです

 

3.2      基本理念構築のキーワード

何年も継続できる会社の構築をする。お客様のオンリーワンになる努力する。依頼して頂ける全てのお客様に感謝し、感謝される仕事をする。競合会社との差別化を再認識し強化をする。このキーワードが大事だと考えました。

 

 

4       今後の取り組みについて

基本理念を構築するにあたって、今現在取引している現場の所長や監督にヒヤリングやアンケートを実施し、弊社に何を求めて何に魅力を感じているのか再確認し、月に2回の幹部ミーティングや、月に1回の全体協議会などで話し合い、従業員との意見交換も参考に基本理念の構築に取り組みたいと思います。

 

4.1      基本理念浸透の進め方

基本理念が構築した際には、出来た経緯を理解させ会社内掲げると共に、入社研修期間に徹底的に伝え続け浸透させたいと思っています。弊社請負現場の詰所には会社同様理念等の掲示を徹底し浸透を進めます。

 

4.2      検証方法

弊社構築基本理念は、お客様すなわち、現場所長や監督の反響や出来高に直結すると思います。定期的な現場パトロールにてヒヤリングをしての改善や検証アンケート調査を実施し検証をします。定期的に従業員と面談を実施します。

 

 

5       まとめ

カレッジで学んだことを、どう活かすかは自分次第。この時期だから学ぶべくして学び始めたのだと運命を感じています。ただ、売上がある会社が凄いと勘違いし、目の前にある仕事を取り続け、取引元請会社を増やし続けた9年間から大きくシフトしようと思います。

経費はどんぶり勘定に使い続け、社長の醍醐味という物はやってきたと思います。会社という家族の中の親父から社長を目指してやってきましたが間違いだらけでした。リーダーシップ論では自分自身が気付かされました。自分が人に認められたい、人に褒められたい人に必要とされたいと思うあまり、従業員の頑張りやアピールに目配り気配りが出来ていませんでした。

今後は自分がこれまで思っていた様に、従業員をよく見てたくさん褒めたいと思います。常に仕事は楽しく、ゲーム感覚で競わせます。会計では決算書の見方を理解できる様になったので、今後、税理士に任せきりではなく、見たふりではなく確認していきます。特に試算表は毎月作らせる事が、当たり前になるように実施していきます。

今回特に興味を持てたのが基本理念とビジョン、そして経営戦略です。自分が目指す場所とのギャップを埋めるのが戦略、二次請け業者からのステップアップが目指す場所です。ギャップを埋めるには数字に基づいた経営を経営者実践し粗利重視での仕事の受注を行い、現場側の戦術で利益を上げ元請へステップアップをしたいと思います。基本理念は必ずしも必要ではないが、ある事により理念を理解できる賛同できる従業員だけを採用育成できるメリットがあります。また、ビジョンも同様に設け、社員と目指す目標を明確にし、共に進むことができるのがメリットであると考えます。10期目を迎える当社において今、誰もがみてわかる経営方針を掲げ、あるべき目指す目標へのギャップを埋めていきたいと考えます。

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