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修了生論文

地元でのシェア率を上げていくための経営戦略

東京校 (T-college) 後藤 千稲

1. 動機

私は、約10年前に葬祭業という事業を立ち上げ、勢いでここまで走ってきた。基本的な経営学もわからないまま、『地元1番店になりたい!』という漠然とした思いだけできてしまった。その場その場の問題を解決しつつもどこかで甘えがあったのだろう。競合である老舗葬儀社をいまだ超えることができず、地元のシェアを30%ほどしか獲得できていないという現状である。これはまさに、私自身の強いコミットメントがなかったからだと考える。このビジネススクールを受講した今、経営者としての役割や社長としての今の自分を客観的に見つめ直すことができた。このままではいけない、『地域の方から‘選ばれる’葬儀社となるためにどうしたらいいのか』そのための経営戦略について本論を述べていく。

 

 

2. 企業概要

会 社 名 ■■■■■■
■■■■■■
 所 在 地 ■■■■■■
 開業年月日  2008年 10月
 業 務 内 容  1.一般葬・家族葬・ペット葬施行 4.法事施行
5.ギフト販売 6.仏具販売 7.各種イベント施行

 

当社は開業10年目となる葬祭業を営んでる。開業のきっかけは、父の営んでいる建設業(公共事業主体)の仕事が次第に減っていくということを見越して、何か他業種を始めたいと言い出したことが発端だった。高齢社会が超高齢社会となり、葬祭ホールが次から次へと建設されていく中で、新規参入をした。その商圏では小さすぎて、大手の会社は入ってこないだろうという憶測と生まれ育った地元なので親戚や知人も多いということから何とかいけるだろうという考えであった。

当社のあるエリアはもともと「○○○町」という地名であった。平成17年に○○市と合併したが、10年以上経った今でもその名残が強く残っている。顧客が葬儀社を選ぶときにも、そのエリア内の葬儀社を選ぶというのがほとんどだと考えられる。それゆえ、当社も「旧○○○町」という人口23,000人(8600世帯)を第一のターゲットとして地元密着の経営をしている。

当社は葬儀・法事だけではなく、多目的ホールとしても各種イベント施行をしている。例えば、会社の忘新年会や老人会の会合、演奏会などである。

 

 

3. 葬儀業界の変化

15~20年くらい前から、葬儀社が自社の葬祭ホールを持つようになった。それまでは基本的にお寺や公営式場を借りて葬儀をしたり、自宅に祭壇を組んで行っていた。そのエリアのいわゆる『長老』の指示をききながら、隣組さんに受付やらお料理やらを手伝ってもらうという葬儀だった。少子高齢化や核家族化など社会の変化に伴い葬儀のあり方が変わってきて、自宅ではなく葬祭ホールで葬儀をする方は今や100%に近い。葬儀に詳しい『長老』も次第にいなくなり、隣組さんのお手伝いをお願いせず(御近所と疎遠、後でお礼をしなければと煩わしい思いもある)、葬儀社に頼ってくれるようになってきた。

 

 

4. 問い

下図から、当社のエリアシェア率は2011年から横ばいになっているのがわかる。およそ30%という数字が2011年から6年間続いていて、亡くなる人口が増えていくのでシェア率がそのままでも件数はおのずと増えていくが、私たちの開業時に掲げた『地元1番店』とは言うことができない。老舗の「Y社」がおよそ50%のシェアを持ち、なかなかこの競合を超えられないのである。これまで様々なプロモーション(営業活動)を起こしてきたのに、なぜ越えられないのか。

当社と「Y社」は当初に述べた「旧○○○町」というエリアにあり、「Y社」のシェア50%部分をを獲得し、『地元1番店』となる戦略を考えていく。

 

 

 

5. 自社と競合の比較

 

5-1 4Pによる比較

 

Y社に対する自社の見解は、会員制度もあいまいで、特に何も営業活動をせずになぜトップシェアを取り続けているのか。こちらとしては、昔ながらの老舗葬儀社が左うちわで営業しているとしか思えない。いまだ「この地域の人はY社に頼まないといけない」と思っているお年寄りもいる。当社が開業する前は、この地域のいわゆる「独占企業」であったので、Y社の葬儀のやり方がこのエリアの葬儀の『かたち』となってしまっている。その名残は年々薄れているが、この王道をはまだ崩せていない。

 

5-2 商圏内の地区別でのシェア

直近3年間の商圏を地区別のシェア率を調べると下記の円グラフになる。

 

これを見てわかることは、

①「さ地区」と「た地区」が弱い

考えられる要因→こちらの両地区は、当社から一番遠い地区であるというのもシェアが取りにくい要因ではあるが、そこに住まわれているのはいわゆる昔からの一家(いっけ)であり年齢層の高い方が多い。その方々(昔ながらのY社派)からなかなか受注ができないでいる。

②「あ地区」は当社とY社ともに同じ割合

考えられる要因→当社は「あ地区」にある。当社の会員数が多い。それにもかかわらずそこでも競合と同じ40%のシェアであるのは悔しい。「あ地区」の中にも年齢層の高いエリアがありそこの受注はあまり取れていないからだと考える。

③「か地区」は24%しか取れていない

考えられる要因→Y社は「か地区」にある。

④当社が健闘しているのが「な地区」

考えられる要因→会員数が多い。この地区はまだ隣組の方にご葬儀の受付をお願いすることが多く、近所の方々が当社に足を運ぶことが多くなる。そしてそこから当社の雰囲気やサービスを口コミしてくれた結果だと考える。

 

全体的な見解は、どの地区においても過去にY社を利用したことがあるのでそのまま次もという顧客が多いと考えられる。

 

 

6. 自社分析

 

6-1 自社の強みと弱み

<強み>

1. 建物・設備などハード面が近代的で今風。

2. ブランド力がある。

3. サービス(アフターフォロー、手の届かないところにも)が充実している

4. 料理にバリエーションがある。

5. 式場が3種類あり、ニーズにあったプランが豊富。

6. 駐車場が広くて出入りしやすい。

7. 1階建てのバリアフリーで高齢者にも利用しやすい。

8. 赤ちゃんとお母さんにやさしい。(おむつ変えしやすい。お昼寝布団がある。ベビーチェアがあるなど)

9. サービスに満足していただいての、リピーターが増えている(法事やギフト販売も取り込みやすい)。

10. 人員が少なくて一人の仕事量は増えるが、モチベーションの維持ができている。人件効率がよい。

<弱み>

1. 値段が高そうに見えてしまう。

2. 近代的で葬儀社のイメージが湧かない。

3. 年配の方に受け入れがたい印象。

4. 名前が横文字で覚えにくい。

5. 過剰サービスと思われる(あつかましい)。

6. 選択肢がたくさんあって迷ってしまう。

7. 人員が少ないので、目の前の事が先になってしまい、新たな戦略に踏み出しにくい。

8. 人員が少ないので、いらしてくれた顧客と話せる機会をのがしている。急な事前相談などを取りのがしているかもしれない。

 

6-2 顧客インタビュー

過去にY社を利用したことのある顧客のなかで、当社を葬儀や法事で利用してくれた方々へインタビューを試みた。

 

葬儀を行う前(当社を利用する前)

質問A:当社のイメージは?

○価格がかなり高そう

○葬儀社っぽくなくチャラチャラした感じ

○敷居が高いイメージ

○建物は知っていたが、何屋さんだか分らなかった

○新しい葬儀社なので心配

○大きい式しかできなさそう

○若い世代の方には良いが、高齢者の方には受け入れにくそうなイメージ

○そもそも知らなかった

 

質問B:なぜ当社を選んでくれたのか?

○評判が良かったから

○折込チラシを見て、うわさ程高くなかったから

○社長との付き合い

○知人のすすめ

○駐車場が広い

○知人の式に参列した時、とても印象が良かったから

○葬儀場を探していた時、ポストにチラシが入っていて何かのご縁かと思ったから

○両社に事前相談に行ったが、こちらが好印象だったので

 

葬儀を行った後(当社を利用した後)

質問C:実際、当社を利用した感想は?

○打ち合わせに何度も足を運んで来てくれて、安心できた

○とても親切で、悔いなく故人を送り出すことができた

○温かいぬくもりを感じた

○スタッフ皆さんが良心的

○食事がおいしかった

○担当スタッフが搬送→打ち合わせ→施行→アフター全て親身になって携わってくれた

 

質問D:Y社と比較して、当社の良いところは?

○打ち合わせに何度も来てくれる

○式後もきちんと相談にのってくれる

○担当スタッフがいつもいてくれるので安心

○きちんとしている

○葬儀社っぽくない(良い意味で型にはまっていない)

○墓参りの手伝いまでしてくれる

○御布施袋・志袋をくれた

○遺体を丁寧に扱ってくれた

○値引きをしてくれる

○担当スタッフに無理を言っても嫌な顔せずに気持ちよく対応してくれた

 

質問E:Y社と比較して当社の悪いところは?

○場所がわかりずらい

○館内が迷路みたいで迷う

○ホールの大きさに対してトイレが少ない

○葬儀社っぽくない

○おしゃれな感じはするが馴染めない

○花入れの準備中、飲み物がない

 

質問F:当社と比較してY社の良いところは?

○先代(開業者)がとても良い人で義理がある

○昔からあるので安心感がある

○葬儀社っぽい

○この地域での葬式はY社の方が頼みやすい

○隣組にお年寄りが多いので、Y社のほうがみんな知ってるし馴染みがある

 

質問G:当社と比較してY社の悪いところは?

○打ち合わせ、式等全て簡易的

○こなれている感じ嫌

○温かみがない

○先代(開業者)以外、みんな無愛想

○食事がまずい

○1円もまけてくれない

○葬儀内容を決めるとき、一方的に進められてしまう

○担当スタッフが式場にいない

○担当スタッフが小汚くて態度が悪い

○式が終わったら終わり(アフターフォローがない)

 

6-3 インタビューからの考察

①3Cによって整理する

顧客(Customer) インタビュー結果より選ぶポイント
・接客・対応がよい
・安心感がある・相談にのってくれる
・食事が美味しい
・悔いなく故人を送り出せる・アフタフォーローをしてくれる
自社(Company) 自社のインタビューからの顧客評価
・スタッフの対応、気配り・事前相談が好印象
・温かみがある・食事が美味しい
・アフターフォロー
・葬儀社っぽくない
競合(Competitor) Y社のインタビューからの顧客評価
a.昔からあるので安心感がある。
b.馴染みがある。頼みやすい。c.先代が良い人だった
d.葬儀社っぽい

 

3C分析からのバリュー・プレポジション(顧客が望み、自社にあって競合にないもの)は、まさに表中の自社のインタビューからの顧客評価そのままである。

②その他インタビューからわかること

Ⅰ. 質問Aに関して

・当社のイメージはそもそもマイナスイメージが強い。6-1に挙げている自社の強みだと思っていたことが、顧客にとってはそれが足を踏み込む邪魔物になっていたことがわかる。→消費者とのズレを解消する

・葬祭ホールだと知らない人がいる→周知することを強化

Ⅱ. 質問BCDに関して

当社の良いところは実際利用していただいた方や、足を運んだことのある方のみが感じられることばかりである→当社に多くの方がいらしてくれる施策を考える

Ⅲ. 質問DEFに関して

a当社が「葬儀社っぽくない」ので良いという顧客とb Y社が「葬儀社っぽい」ので良いという顧客とで分かれている→ターゲットとしてはa.b.を分けて考えないといけない。a.は比較的年齢層が低く、葬儀に関してあまり知識がない人である。bは比較的年齢層が高く、昔ながらの考えを持っている人。地区別で言えば、「さ地区」や「た地区」に多いと考えられる。

 

 

7. 分析結果からの経営戦略

これまでの分析をみて、当社のターゲットとする『旧○○○町』エリアの顧客層は大きく分けると2層あることがわかる。それは前項で述べたa「葬儀社っぽくない」ので良いb「葬儀社っぽい」ので良い という顧客層である。社会や生活の変化によってそう分けられるようになってきた。それは、葬儀に対する意識や考え方の変化からであると考える。もっと言うと人とのお付き合いの仕方まで関係するかもしれない。まさに時代はその変化の狭間のところにある。2層間には、葬儀社を決定する方(ほとんどは喪主となる人)の線が見えてくる。それはこれまでの研究や今までの経験から、団塊の世代だと推定する。

 

ざっくり分けると、当社はaサイドであり、Y社はbサイドである。時代は進むにつれてaの部分が多くなっていくと考えられるので、優位性を考えるとa を主のターゲットにするべきではあるが、早くに『地域1番店』になるにはb を取り込まない限りは地元でのシェア率を上げていくことはできない。

シェア率が6年間変わっていないということは、これまでやってきたことが、ある程度評価は頂いているけれども、それは小さい枠のなかだけ(ここでいうa )であって、それを広げる施策ではなかったのだ。一部の支持層を離さないようにしているだけであった。

 

7-1 ターゲットaとb(全体)に対する戦略

先に述べたように、当社の評価されていることは「実際に来たり利用していただかないとわからない」という点ばかりである。それをわかっていただくには、まずは何でもいいから当社に来てもらう手段を掲げることである。

・お式がないときでも入りやすい雰囲気を作る:のぼりを立てたり、電気を付けておく。

・定期的な事前相談会の開催:人員不足もあり、今までは漠然としか開催されていなかったが、開催日を決め定期的に行い定着化させる。

・これまでのチラシの見直し:顧客インタビューをもとに作成する。

・スタッフの人材育成:スタッフに関して顧客評価が高かったので、これを維持できるよう派遣業者も含めて引き続き育成していく

 

7-2 ターゲットaに対する戦略

・ホームページに当社のバリュー・プレポジションを盛り込む。

・当社のバリュー・プレポジションを盛り込んだPR動画を作りSNSを活用する。

・ポスティング:新聞をとっていない世帯も多いので、チラシからホームページを見てもらうようにする。

・会員から会員を:毎年行っている会員イベントを続け、友人知人を取り込んでもらう。

 

7-3 ターゲットbに対する戦略

・アフターフォローの強化:法事のご案内やお墓参りのときのお手伝いなどのアフターフォーロー時にはそのご親戚の方や、ご近所の方とお会いすることが多い。その中には当社を知らない方もいるので、そんな中で認知度を上げていく。

・年齢層の高い(受注の少ない)地区への宣伝強化:野立て看板を立てる。集中的なポスティングをする。

・会員の取り込み強化:競合にない会員特典、特に供物の値引きなどをアピールする。

 

 

8. 監査方法

事前相談の件数がどう変わっていくか。商圏内地区別のシェア(特に弱い地区での)がどう変わっていくか。それが増えていくことによって、おのずと「地元でのシェア率」が上がっていくのだと思う。それを楽しみに統計を取っていく。

 

 

9. おわりに

半年間、本当にお世話になりました。校長からいつも刺激をもらい、傷つき、それでも学ぶことが楽しくて頑張ることができました。これだけ自社のこと、自分のことを見つめ直すことができ、本気やる気スイッチが入りました。

もう少し早くこのビジネススクールに出会えていたら・・と思いましたが、こうして出会えたことだけで、もうけものですね。志高いクラスメイトとの出会いも、人生の宝物となりました。GGBK最高です。本当にありがとうございました。

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