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修了生論文

10年ビジョンに向けての経営戦略

大阪校(O-college) 田中 陽一

1. 動機

わが社の10年ビジョンを描き、全社員がそこに向かい、突き進めるような集団に成長する事が動機です。

 

 

2. 創業の経緯と当社の立ち位置

わが社は、エレベーターのメンテナンスを主にエレベーターの設計製造・設置・保守を行う会社です。エレベーター業界はメーカーの大手5社(三菱電機・日立製作所・東芝・フジテック・OTIS)が設置したエレベーターを各メーカーの子会社が保守するという独占的な市場でした。わが社の創業メンバーが35年前にどこのエレベーターも保守が出来る会社を作ろうと立ち上がった会社です。どこのメーカーにも属さない独立した保守会社として設立され、メーカーよりも保守料金が3~4割安いこと。地域密着で小回りが利く事をメリットに顧客を増やしきました。わが社の売上が7億、保守台数が2000台で、独立系の保守会社としては、上位12社位になります。トップは140億、続いて100億、そして32億と10億を超えるとトップ10に入るランクです。しかし、メーカーと比べると独立系200社の保守台数を足しても市場規模の10%しかありません。残りの90%はメーカーが保守をしている業界です。

 

 

3. 問い

差別化しにくい同業他社の中で、自社の付加価値とはなにか。

 

 

4. 研究の手段

当社へ影響を与える外部環境及び内部環境について考察する

 

 

5. 外部環境及び内部環境についての考察

ここではまず、SWOT分析を行います。

 

 

O:外部環境の機会

①日本全体で85万台のエレベーターが保守されている事

(その内、メーカー系で90%の保守を行っている。)

②設置20年から30年のエレベーターは部品の供給をメーカーがやめた事により、リニューアル工事が必然的に行われる事

③高齢化社会に伴い、生活にエレベーターが必要となる事

 

T:外部環境の脅威

①メンテナンス料金が東京・大阪では1万円を切る価格に下落いている事

②エレベーターを専門に技術習得の場所が無い事

③エレベーターを海外調達に頼っている事

④労働人口減の中技術者の獲得が困難になる事

⑤法改正により従業員の技術レベルの明確化が必要になる事

⑥エレベーターのJIS規格化が進み認定取得も必要になる事

⑦IOTやAIの技術進歩によりメンテナンスフリーのエレベーターが開発される事

 

S:内部環境の強み

①エレベーターのリニュール工事を自社で行い実績がある事

②オーダー製のエレベーターを設計・製造・設置・保守出来る事

③熟練技術者が退職後にも技術指導ができる環境がある事

④2018年に城陽工場を新設する事

⑤新設テストタワーにて研究開発・認定取得が行える事

⑥人間的に成長しようと色々な所で勉強しようとする風土がある事

⑦事業拡大により従業員の配置転換が出来る環境が増える事

⑧福利厚生や社内環境が従業員にとって働きやすい環境である事

 

W:内部環境の弱み

①各部署の後継技術者が育っていない事

②経営陣や従業員が若く経験や知識が乏しく判断、決断が甘い事

③従業員の親が介護が必要になり退職や休職する事

④適材適所に人材確保が出来ていない事

⑤他の事業に展開できずメンテナンスに頼り切っている事

 

続いてここでは業界全体の課題に焦点をあてて述べます。

a.創業して35年メインとしてきたメンテナンス領域が、建設ピーク時の半分しか新設エレベーターが世に生まれていません。

b.過当競争による価格破壊に伴い受注金額の低下、利益率の低下が進んでいます。

c.設置後20年~30年経過したエレベーターの部品供給をメーカーサイドが停止する発表を次々と行っています。

d.機器のリニューアル工事を行うという新たな市場をメーカーが作り出しており、メンテナンスだけで売上げが継続し利益が出るビジネスではなくなっていく流れができています。

e.人材育成の課題

売上を伸ばすには、メンテナンスが出来る人材作りが必要です。しかしながらエレベーターの技術を学ぶ場所が各社に入社してからしかありません。今後ますます人材不足の中、技術者を育てる環境づくり、従業員が定着できる企業作りが必要となります。

 

 

7. 10年後ビジョンについて考える

前述の考察を踏まえて、京都エレベータ株式会社の10年ビジョンを組み立てました。

7. 10年後のゴールと戦略シナリオ

・売上高15億、(毎年110%の成長)

・従業員数100名、(毎年5-6名の採用)

 

あ. エレベーター学校の設立

・機械整備業の中でエレベーターを専門に習得できる学校がない。(外部環境:機会)

・労働人口が減っていく中、技術者の獲得が困難と予想されるので、採用を視野に入れながら教育をする。(外部環境:脅威)

・熟練技術者の退職後の指導場所として、自社の社員の定年後の働く場所づくりとして。(内部環境:強み)

・2017年4月、法改正により従業員の技術レベルの明確化、社内資格の明示、等が必要となった。(外部環境:脅威)

自社の技術レベル向上を目的として起こす行動で、業界をも巻き込んで教育という新しい分野の事業を確立する。

 

い. フルオーダーで、Made in kyotoのエレベーターを設計・製造・設置・保守を行う

・2018年の城陽工場を新設する。(内部環境:強み)

・自社での設計技術の後継者が育っていない。(内部環境:弱み)

・業界内でも海外での調達に頼っている。(外部環境:機会)

・エレベーターのJIS規格化が進んでおり対応出来なければ保守だけに頼ることになる。(外部環境:脅威)

・自社のテストタワーで研究開発、実験、認定取得が行える。(内部環境:強み)

お客様の要望に応えられる企業へ成長することが目的で起こす行動で売上げの拡大に繋がる事業領域の拡大を目指す。

 

う. 保育・介護福祉施設の運営

・従業員の親の介護が必要になる。(内部環境:脅威)

・介護を理由で退職する社員が増える。(内部環境:脅威)

・高齢化社会(外部環境:機会)

・雇用場所、雇用内容の拡大により、配置転換が出来る。(内部環境:強み)

・安心して働ける企業として、採用機会が増える。(内部環境:強み)

従業員が抱える悩みを解決する目的として起こす行動が、機会損失(従業員退職等)を防ぎ、雇用機会を増し強い会社にする。

 

え.  3社への分割

・業界内で必要とされる「設計製造」を担う会社。

・地域に根差し顧客満足度の高い「保守」を担う会社。

・技術力を武器に日本各地で必要とされる「据付・改修工事」を担う会社。

・エレベーターの「設計製造」・「保守」・「据付・改修工事」が担える3社に分社化による管理体制の構築

 

「10年後のゴールと戦略シナリオへの補足と落とし込み」

新たに城陽に研究試験棟を建設するにあたって、業況やわが社の現状を分析し、事業計画を考えると次の通りになる。

 

・保守管理・・・

同業他社間の受注金額の低下が加速し、サービスの低下も考えられる。契約台数を保守する技術員の教育機会の減少、雇用機会も減少すると考えられる。

その中で自社は城陽に建設する研究試験棟で教育機会を創造し技術レベルを上げ付加価値をつけることで、受注金額の価格決定権を自社で持てる組織にする。教育の仕組みをシステム化に変換して、エレベーターの技術が学べる研修センターからエレベーター学校の設立まで成長させ、研修事業・教育事業で新たな事業を確立して売上を創造します。

 

・設計・製造

当社も含め同業他社は設計・製造部門は海外にて委託及び調達しているのが現状で、為替等の変動で価格の安定化はもちろん、価格決定権を持てないのが現状である。国の認定制度も年々厳しくなる中で、作ったものを買う同業他社への差別化をつけられるタイミングである。

その中で自社は城陽に建設する研究試験棟で、「ものづくりに携わることで、技術力を高める」考えを持ち続け、設計部門の人材教育に注力し、自社で設計し、技術力の高い京都にある業者間のネットワークを確立し、「Made in KYOTO」 のエレベーターを製造します。お客様の要望に応えた、フルオーダーのエレベーター製造メーカーまで成長させ、設計事業・製造事業で新たな事業を確立したいと考えます。

 

・据付・改修工事・・・

業界内でも新設工事に携わり、モノづくりの考えを常に持って改修工事の商品開発を行っている会社は少なく、海外での調達に頼っているのが現状です。各社で研究開発を行えないので差別化もなく、どこがリニューアルを行っても同じ商品になっている。

その中で自社は城陽に建設する研究試験棟で、常に新しいものへの挑戦を行い、お客様が望む以上のサービスを、商品を開発して提供できる体制を作る。又、施工体制の確立・内製化を整えて、自社で育てた技術者による改修工事を全国から受注して、現在の開発事業・改修工事事業で新たな事業を確立します。

 

 

7. まとめ

同業他社との差別化を図るには、圧倒的な技術力を付加価値として、メーカーでなくともメンテナンスやリニューアル工事が出来るんだと、ビルのオーナやビル管理会社へ認めてもらう事である。その付加価値となる圧倒的な技術力を持つには、自社で新設する研究棟を使用して実機のエレベーターでの研修を徹底的に行い、若年技術者が現場でしか増やすことのできない経験値を研修で経験値を上げ、自信をもってサービスを提供できるように教育する事。又、従業員の確保や定着が不可欠となるが、技術が学べる場所やシステムがあれば、人材確保の面でも差別化が図れると考えています。

エレベーターの新商品の開発も順次研究棟で行い、こんなものがあれば!こんなことがして欲しい!と言う、お客様の声を実現し、メーカーがやらないオーダーメイドのエレベーターを作ることで、色々な物を生み出し、色々な事を繋げていきます。考え込むことも必要ですが、今の時代は変化のスピードが違うと認識をして、新しいもの、必要なものをどんどん作り、「なかったら作ろう」の創業からの精神を忘れずにイノベーションを起こしていくことで、メンテナンス料金やリニューアル工事の価格決定権を自社で持てるように技術力をブランド化する。そうして階段を昇って行けば10年ビジョンへ到達できるものと考えております。

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