お問い合わせ・資料請求

修了生論文

「現状分析と経営方針」

大阪校(O-college) 桑原 健

1【動機】

私が当社に入社して早いもので13年目となる。入社当時の当社は生産計画もなく、現場任せで製造していたことで、頻繁に品切れが発生していた。また、製造原価は見直されることなく、何年前に作成したか分からない原価計算表を用いて算出した製品原価で販売をするなど、ドンブリ勘定が原因の赤字経営であった。そこから業務改善を進め、現在の佐藤社長に代わってからは経営状態も毎年順調に推移していた。しかし、昨年の平成28年度(57期)に減収減益に転じてしまい、平成29年度(58期)の現状は、さらに減収減益の見通しとなっており、今後の経営に危機感を感じたからである。

 

 

2【当社の会社概要と経営理念】

 

2‐1 会社概要

商号     丸金食品株式会社

所在地    香川県小豆郡小豆島町西村甲263番地

創業年月日  昭和35年(1960年)9月1日

資本金    2千万円

代表者    代表取締役社長 佐藤正美

従業員数   42名

事業内容   丹波篠山産黒豆煮、国産丹波黒黒豆煮、丹波篠山産黒豆甘納豆、国産丹波黒黒豆甘納豆、安納芋グラッセ、紅いもスイーツ、醤油豆、もろみ、オリーブ製品の製造販売

 

2‐2 経営理念

当社は品質を大切にする心、誠実な姿勢、本物への追及、安全で安心なものづくりを忘れずに、いつもお客様に喜んでいただける商品、お役に立つ商品を提供します。

 

 

3【当社の現状分析】

 

3‐1 過去5年間の損益計算書の推移(単位:円)

53期 54期 55期 56期 57期
売上高 695,088,708 677,170,621 695,523,519 689,896,442 667,070,121
売上原価 ■■■ ■■■ ■■■ ■■■ ■■■
売上原価率 ■■■ ■■■ ■■■ ■■■ ■■■
当期純利益 ■■■ ■■■ ■■■ ■■■ ■■■

過去5年間の損益計算書の推移より、53期から56期にかけては、売上高は横ばいであったが、業務改善により売上原価率を下げることができたことで、利益も増益の方向に推移していた。しかし、昨年の57期は過去5年間にはない売上高まで下がったことで、業務改善の成果ではカバーできずに売上原価率が上がり、減収となったことがわかる。また、今期の58期の現在の状況は、さらに売上高が下がっていることに加え、原料費と燃料費が高騰し、製造原価が上昇していることから、利益が確保できるかどうか分からない状況に悪化している。

 

3‐2 56期と57期の種別売上高比較(単位:円)

56期と57期の種別売上高比較から、売上が下がった種別は、黒豆瓶、さつまいもグラッセ、その他の種別商品であることが分かる。

 

①黒豆煮瓶の売上が下がった原因

瓶製品の販売先の中で、売上が2番目に多い農協での売上減少が主な原因であった。

農協に販売している商品の中でも、進物用の製品売上が大幅に減少しており、お土産用の製品群に関しては、製品によって多少の増減はあるものの、大きな売上変動はなかった。

②さつまいもグラッセの売上が下がった原因

さつまいもグラッセの当社の製品のラインナップを大きく分けると、「種子島の安納芋」を原料で使用したグラッセと、「鹿児島県産の紅はるか」を原料で使用したグラッセである。さつまいもグラッセ全体の売上構成は、安納芋グラッセ96%、紅はるかグラッセが4%と、ほとんどが「安納芋グラッセ」の売上となっている。57期で大きく売上が減少した主な要因は、「安納芋グラッセ」を一番多く販売している関東の得意先が、56期には2015年の東京ヤクルトスワローズ優勝により実施した、優勝セールでの増販分が57期にはなかったからである。

③その他の売上が下がった原因

56期には通常販売することのない、イレギュラーな黒豆原料を販売した1,000万円の売上が含まれており、57期には通常製品のみの売上であり、その他製品での売上減少は大きな問題はないと判断した。

 

56期と57期の売上減少の原因は、種別売上①から③を分析することで把握できたが、これらの減少については、53期から56期にかけても毎年同様に起きてきたことで、57期は①から③の減少をカバーするだけの新規得意先を獲得することができなかったからと考える。

 

 

4【問い】

売上の減少は資金繰りを悪化させると同時に、ステークホルダーに対しても悪影響を及ぼしてしまう。企業を存続するためには、収益も上げて行かなければならないが、2期連続での減収減益の危機にある。再び上昇企業に戻すためにどのような方針で増収していくか?原料費や燃料費が上昇している中で、どのような方針で増益に転じさせるか?フレームワークを用いて、当社の強み・弱みを分析して方向性を見出していく。

 

 

5【研究の手段】

 

5‐1 SOTによる当社分析

≪内部的要因≫

<強み>

①産地や形状に拘った、希少価値の高い原料を使用している。

②手間暇をかけ、品質重視の製造をおこなっている。

③確実に生菌を死滅することができる、殺菌設備がある。

④男性社員の平均年齢が39歳と比較的に若く、向上心を持った社員が多い。

⑤業界一位ではない。

⑥営業部と生産部の距離がなく、互いの情報共有が容易におこなえる。

<弱み>

①主要原料が農作物のため、生産者の減少や天候不順により収穫量の変動がある。

②主要原材料(黒豆・さつまいも)の収穫(購入)時期が年一回で、購入した原料を一年間で生産し販売しているため、原材料保管料が長期に発生する。

③主力製品(黒豆製品とさつまいもグラッセ)が季節商材で、年間の繁忙期と閑散期の差が激しい。

④閉鎖期の主な売上がお土産関係の得意先であるが、年々売上が減少している。

⑤主力製品(黒豆製品とさつまいもグラッセ)の繁忙期が同じ時期であり、現在の設備能力と人員では生産キャパ的に20%UP強の増収しか見込めない。

⑥小豆島の人口減少が進んでいる。

≪外部環境≫

<機会>

①付加価値の高い、拘り商品を販売している先をターゲットに新規開拓できる。

②他社より優れた品質の製品を製造することができる。

③お客様に安全で安心な商品を提供できる。

④社員のレベルアップを図り業務改善を進め易い。

⑤まだまだシェアを伸ばせる。

⑥会社方針に、営業部と生産部が一丸となって取り組める。

<脅威>

①原材料の確保が難しく、購入単価も高騰する。

②資金繰りが厳しく借り入れが必要となる。

③繁忙期以外の月は赤字経営。

④閑散期はさらに減収減益になる。

⑤会社の成長がストップする。

⑥従業員の雇用が厳しくなる。

 

5‐2 57期の月別売上高分析(単位:千円)

 

5‐3 2017年度12月黒豆煮豆の販売動向[全国トップ15]

順位 商品名 メーカー 平均価格(円) 販売シェア(%)
1 おまめさん丹波黒黒豆140g フジッコ 289.87 15.42
2 大粒丹波黒黒豆150g シジシージャパン 280.56 5.36
3 おまめさん豆小鉢黒豆124g フジッコ 156.93 3.20
4 おまめさん丹波黒黒豆180g フジッコ 344.19 2.88
5 丹波黒黒豆140g フジッコ 292.49 2.79
6 おまめさん北海道黒豆118g フジッコ 174.14 2.78
7 豆畑低糖黒豆150g マルヤナギ小倉屋 170.19 2.28
8 甘さひかえた北海道黒豆114g フジッコ 145.98 2.20
9 丹波黒黒豆140g 日本生活協同組合 291.96 2.18
10 北海道産黒豆SP100g シジシージャパン 94.06 1.16
11 味じまん丹波黒黒豆225g カネハツ食品 706.02 1.14
12 丹波黒黒豆大粒240g 日本生活協同組合 378.61 1.05
13 おせちカップ中粒丹波黒黒豆150g フジッコ 392.28 1.02
14 国内産丹波黒豆大粒300g 菊池食品工業 609.58 0.96
15 黒豆甘さひかえめ160g 紀文食品 637.46 0.74

※調査データ 流通POSデータサービス

 

 

5‐4 黒大豆の膨張率

これまで買付け黒大豆原料の品質向上によって、原価低減の成果を上げてきたが、更なる収量アップを図るために、当社の研究室へ黒大豆の水漬け時の膨張率のデータの取集を依頼した。

 

黒大豆の水漬けの膨張率のデータを取集する目的

①水を含ませて大きく膨らませて、黒大豆一粒当りの重量を重くしたい。

②夏場と冬場では膨張率と、黒大豆の皮が割れる率に差が生じる原因の調査。

③水漬けに最適な時間の調査。

 

 

6【分析結果と考察】

 

6‐1 売上高の分析結果と考察

57期の月別売上高はグラフで分かるように、損益分岐点売上高を上まわっているのは、9月から12月の4ヵ月しかなく、その他の8ヵ月は赤字経営であり、実質は11月と12月の利益で何とか黒字経営に繋げている状態である。もし繁忙期の11月と12月の売上高が減少すれば、経営は成り立たなくなる。先ずは、SOT分析の弱み④にあるように、閑散期の売上減少をどう食い止めて上昇させていくことができるか!また、12月の黒豆煮の売上シェアランキングで分かるように、当社はランキング外である。当社は他社との差別化を図るために、黒豆原料産地や粒の大きさに拘って原料を購入していることで、どうしても高価な売価設定になってしまう。市場動向は分布図で分かるように、商品g当り単価が高いほど売れない結果であることが判明した。しかしながら当社は一部の高級品販売店にしか商品の導入ができていないことから、まだまだ戦略次第で販路を拡大して売上高を伸ばせると判断する。尚、新規開拓状況については、毎月の営業会議で目標に対しての実施内容をチェックする。

 

6‐2 黒大豆の膨張率の分析結果と考察

夏場と冬場の水温差を想定し、水温10℃、水温20℃、水温30℃で黒大豆100gを24時間、水漬けした重量推移のグラフの結果から、どの水温でも約16時間の水漬け

時間が必要なことが判明した。また、水温が高いほど急激に水を吸収している事から、夏場に黒大豆の収量が悪くなるのは、急激に水を吸収することで黒大豆の皮が割れることが原因と考えられる。今後の課題として、実際に現場で夏場に氷などを用いて水温の調整をおこない、黒大豆製品の収量との相関を検証しながら原価低減に取り組みたい。

 

 

7【今後の取り組みと監査方法】

当社で黒大豆以外の主原料となるのが種子島産の安納芋である。近年は安納芋の人気とともに原料価格が高騰している。さらに副原料の砂糖も年々値上げとなっており、2018年4月からは包装資材の段ボールや輸送費の値上げも決まっている。収益確保のためには工場、工程、作業等の3M(ムリ、ムラ、ムダ)を徹底的に洗い出し、売上原価率2%減をコスト低減に取り組む。

 

7‐1 原価低減の取り組み

①種子島産安納芋原料は、焼き芋用の青果A品(サイズが小さい物)と加工用B品(サイズが大きい物)とに分類される。当社は加工用B品を商社に集めてもらい、鹿児島の加工業者でカット→ボイル→冷凍したものを購入している。近年は安納芋原料を使用した他社のお菓子やペースト(芋餡)が増加、加工用B品の原料の収穫量より需要量が多くなったことで原料価格が高騰している。また、当社が必要とする年間の原料量の確保も困難になっている。

昨年より試験的に種子島の農家で、大きな安納芋を契約栽培してもらうなどの対策を実施。今後も契約栽培を増やしながら、必要原料量の確保と価格の上昇を抑えたい。

②黒大豆を炊く釜内の糖液量が必要以上に多く使用していることから、従来の黒豆煮と品質的に差異がないことを前提に、釜内の糖液量を減らして砂糖の使用量の低減を図る。

③当社は離島(小豆島)の会社のため、生産設備が故障した場合には本土の設備メーカーに高額な費用を払って修理してもらっている。担当作業員の設備の熟知と、日頃のメンテナンスを強化して故障頻度を減らして修繕費を低減する。

④各係で低減目標を設定し、成果を数値で把握する。

 

7‐2 人材育成

近年では食品の偽装表示や、異物混入問題などの出来事が続発したことで、「食の安全

性」が社会問題として大きく取り沙汰され、食品リスク問題は経営リスク問題であることを痛感させられた。これらの問題を未然に防ぐには人材育成が不可欠である。また、SOT分析の強み④を活かすためにも社員教育を計画的に実施する。

①外部委託先のアース環境サービス株式会社による衛生講習会を、5月と10月の年二回実施する。

②株式会社エフアンドエムのDVDを用いて、役職別の社員教育を4月に実施する。

③全従業員と個人面談を毎年5月に行い、個人目標と将来の展望を共有する。

 

 

8【まとめ】

食品業界は従来、景気の影響での変動が少ない業界といわれています。それは全ての人にとって「食」は欠かせないものであるからである。しかしながら、少子高齢化が進んでいく日本では、長期的に見れば市場は縮小化であり、量を追求する時代は転機を迎えると考える。当社は今後も国産原料への拘りや、品質に特化した製法で他社との差別化を図り、高価格帯の商品で勝負していきたい。また、新たな市場の獲得や閑散期での売上高を増やすには、どこの地域にどのような商品を販売していくか!などの新規開拓戦略も必要となるが、新たな商品を開発して市場へ投入することも急務として取り組む。

今回ビジネススクールで学んだことを活かし、経営者として手腕を発揮したい。

 

pagetop