お問い合わせ・資料請求

修了生論文

定量分析による経営戦略

大阪校 (O-college)アドヴァンス 井口 成人アイエス産業株式会社 代表取締役社長)

1.動機

 

私は関西で売上高一番の足場会社を目指し、規模を拡大するためリーダーシップを取ってきました。同業他社、および自社の順位を確認し、来期の売上目標を立て社内のモチベーションを保とうと考えていました。と言うのも、それ以外の戦略の立て方を知りませんでした。オーカレッジに入学し、自身の経営に対する無知を猛省しました。そして可能なかぎり定量的な戦略を策定した方が、成果を把握しやすいのではないかと考えました。そしてより短期的に測定できる戦略目標を策定すれば、社員一人一人が目標を共有できると考えました。「関西で一番になる」をスローガンではなく、戦略にする為に現状を細かく分析し、把握する事で定量的に、未来を予測し有効性と合理性を強化出来ると考えました。

 

 

2.企業概要

 

  • 会社名   アイエス産業株式会社
  • 事業内容  足場資材リース・足場組立解体工事・仮設ハウス・仮設トイレリース
  • 創業    2002年
  • 従業員数  35名

 

 

3.企業の特徴

 

当社では足場工事種類別に、事業部を三部門に分けております。

  • 第一営業部 公共工事
  • 第二営業部 低層住宅工事
  • 第三営業部 民間大規模修繕工事

各事業部それぞれ損益計算書を作成し利益管理を行っています。

 

問1

年に売上を20%増加させながら、営業利益を10%確保するために有効的な戦略を策定しました。各事業部の強みを活かして、先ずは現状のリソースで、最大のリターンを得る方法は無いのかと考えました。当社は全体の90%がリノベーション工事であり、3月~5月の春工事と9月~11月の秋工事の時期に受注が集中しております。そのためこの時期には足場資材が枯渇し、それ以上は足場資材を再リースしております。その結果製造原価が増加し、営業利益を減少させております。

また足場解体も同時期となり、足場資材が一斉に戻る為、資材整理に多数の人員が必要となります。それも営業利益が減少する原因となっています。また閑散期は売上が減少するのは勿論ですが、足場資材の置き場にも費用が発生します。社内でも繁忙期と閑散期が常態化していた事から、受注の平準化は当社における課題と考えました。

 

問1の研究方法①

自社の状況をSWOT分析し、現状を把握し共有しました。

 

 内部環境 強み S 弱み W
保有している足場材が豊富で商品力や対応力が高い。

大手のハウスや塗料メーカより、安定した受注基盤を築いている。

作業員が不足している。

春・秋の繁忙期に受注が集中しており、

足場資材が不足する事がある。

外部環境 機会 O 脅威 T
法改定後の適応資材を保有しており、受注を捉えている。

マンションの大規模修繕工事、住宅リノベーション工事の着工棟数が、高い水準にある。

人手の確保が難しい。

運賃や労務関連コストの高騰。

 

問1の研究方法―②

SWOT分析により、強みを活かし弱みを補う方法について検証しました。

強みである安定受注を活かし、繋がりの深い顧客には、物件情報を早めに入手できるのではないのか考えました。物件情報をいち早く入手する事により、繁忙期の前後に受注を行いました。そして繁忙期の中心時期には、新規顧客や、繋がりが浅い既存顧客にアプローチする事により、閑散期では受注が難しい新規で顧客であっても、繁忙期の中心時期であれば新規受注できるのではないかと考えました。そうした営業活動を行った結果、以下図の通りの結果を得る事ができました。 (H29年6月~H30年2月実施)

 

 

問1結果

 

第一営業部では、印部分が閑散時期に当たります。

昨年と今年の売上を比較すると、8・9月の売上は167%増加しました。11・12月は120.6%増加しました。

 

 

第二営業部では、赤印部分が閑散時期に当たります。

昨年と今年の売上を比較すると、6・7・8月の売上は118%増加しました。12・1月は197%増加しました。

 

 

第三営業部では、赤印部分が閑散時期に当たります。

昨年と今年の売上を比較すると、6・7月の売上は188.9%増加しました。10月は137.1%増加し、12月は158%増加しました。

 

 

問1・結果まとめ

 

問1の研究方法により、第一・第二・第三営業部全体で、売上が前年比128.7%になりました。足場解体時期も重ならなかったため、足場資材センターも既存の人員でスムーズに入出庫を行う事ができました。繁忙期に新規営業を行った為、新規顧客も増え、新規顧客売上は、前年度より10%増加しました。何より社内に「繁忙期と閑散期」が常態化していたため、悪しき習慣は手段により払拭できる好例になりました。

しかし営業利益を見てみると、第一営業部は-99%減、第三営業も0.12%減となり、第二営業部のみ23.1%増となりました。全体では-64.4%の営業利益減となりました。営業利益が減少した要因として考えられるのは、第一営業部の場合、前年度より受注が急増した為、製造原価が増加してしまいました。原価である運送コストや、重機など使用頻度の増加等が考えられます。何より売上のみに注視した結果、営業利益に対する注意が薄れた事が、主な要因と考えます。第二営業部の営業利益が増加した要因としては、他部署に比べ一つの現場が小さく、工期も短いので、営業利益の算出が容易に行える為、原価を常に意識してきた事が、主な要因だと考えます。第三営業部の営業利益が減少した要因としては、新規顧客の中に再リース資材を使用しなければならない現場がありました。

限られた作業スタッフで、再リース資材を使用して施工すると、自社資材の稼働率が鈍り利益を圧迫してしまうと考えます。そして、各部の営業利益増加の戦略を策定する為、問2の研究を行いました。

 

問2

 

現在の売上計画は、売上上位の同業他社の伸び率を参考に、自社の伸び率を予測しています。

しかし現状より定量的な計画を共有する為には、予測損益計算書を各部が作成した方が、より有効的ではないかと考えました。そして各部の損益計算書の売上に対し、項目毎に比率を明記することにより明確な戦略が策定できると考えました。

 

問2の研究方法①

各部が損益計算書を把握する事により、より現状に合う戦略が出来るのではと考えました。

製造原価・販管費、共に各項目に売上に対する比率項目を設けて、費用割合を記載しました。加えて28年度と29年度の損益計算書を比較し、改めて社員と共有しながら現状を分析しました。

 

問2 結果考察1

第一営業部は、以下の各指標の通り売上は伸ばせているが、原価が増加し赤字に転じている為に、財務戦略としては、先ずは原価を下げる戦略を作成しました。その他も含めバランストアスコアカードを作成すると共に、来年度の予測損益計算書も作成しました。

 

 

 

 

パースペクティブ 戦略目標 KSF重要成功要因 KGI

(ゴール)

KPI重要業績評価指数 アクション 日程 責任者
財務 営業利益の確保 損益計算書上で営業利益率

10%確保

自社資材使用時

予算書上管理費

10%確保

予算書上の管理費

10%を厳守

常用工事

利益を乗せて請求

例:20000請求/18000支払い。

(約10%上乗せ)

H31/3/31迄
再リース材使用時予算書上管理費20%確保 予算書上の

管理費

20%を厳守

追加リース費

解体開始日を事前に確認し、

追加リース費を速やかに請求する。

予算書上に30日の追加リース費を記載しておく。

H31/3/31迄
製造原価率を90%⇒63%

(27%下げる)

損益計算書上で

確認

外注費

(手間費)

車両リース費

外注費(手間費)

手間費+車両リース費の予算及び想定台数を伝え、使用費を手間費と相殺する。

H31/3/31迄
その他外注費(運送費) その他外注費(運送費)

予算書の想定台数を超えた場合、

職方の手間費より減額する。

H31/3/31迄
資材リース費 資材リース費

予算組の際の資材リース費を10%以内に設定する但し自社資材使用時はこの限りではない。

H31/3/31迄
顧客 新規取引先の増加 顧客や外注先の増加 未落札工事現場には必ず訪問 見積した各官公庁の工事落札結果を、インターネット及び建通新聞で落札業者の確認 未契約の工事

(御客様が落札していない工事)

現場に訪問し元請け及び施工業者の現場担当者に営業を行う。

H31/3/31迄
業務

プロセス

業務効率の向上 受発注金額の確定 常用・追加工事

金額の確保

メールまたは書面のエビデンスを請求書に添付。

遂行率:100%厳守

常用・追加工事承諾書

工事発生毎に、メールもしくは書面にて貰う。

H31/3/31迄
着工日にシステムに反映させる

遂行率:95%

予算書に反映

施工開始1週間前までに

予算書を反映する

遂行率:90%以上

見積書・予算書を同時作製

第一営業部内にて回覧。

H31/3/31迄
自社資材運用の

効率化

資材・施工のバランスを

把握する

現場のパフォーマンスを把握する事

遂行率:95%

施工進捗と工期を月毎に

把握する事

遂行率:100%

パフォーマンスの数値化

自社資材の現場には、資材と売上の比率と工期を予算書上に表示。

H31/3/31迄
安全意識

向上

労災・

交通事故

件数の

削減

保険使用

事故0件

現場数と事故件数の検証 組立・解体着工時に現場にて朝礼に参加し、安全意識向上の為の訓話を実施。

作業員名簿にて職方の情報を把握しておく事。

H31/3/31迄
提出済書面と作業員の整合性確認

作業員名簿や新規入場者等の書面と、実際の作業員が一致しているか確認。

H31/3/31迄
教育と成長 職務に対する意識向上 モチベーションの共有 90点 自社評価表点 整理整頓の評価点表の作成。

服装・身だしなみの評価点表の

作成。

H31/3/31迄

 

 

問2 結果考察2

第二営業部は、以下の指標の通り売上、営業利益共に増加している為、原価管理はしつつ、売上を伸ばす戦略にて、予測損益計算書を作成しました。

 

 

 

問2 結果考察3

第三営業部は、以下の指標の通り売上金額は増加しているが、営業利益が伴っていない為、戦略としては、製造原価の見直しを中心に、予測損益計算書を作成しました。

 

 

 

 

 

 

【総合まとめ】

 

今回の研究により、本文問1の、営業的手法により、売上を増加させる為だけの戦略では、利益につなげるまでには至らない事が理解出来ました。売上増加戦略を実施する時には、同時に常に利益についても管理する必要があります。利益を増加させる為には、原価を下げるのか、売上を伸ばし「規模の経済」を活かす意外に方法は無いと推測します。

よって先ずは、売上を増加させることが、戦略として有効なのか、製造原価を下げることが、有効なのかを、事前に検証し計画する事が大切であると考えます。作成した指標によると、同額の利益増を望んだ場合、売上総利益率が50%を超えると、原価を下げるより、売上を増加させる方が利益に対しては、有効数値を生み出します。(図―1参照)

その為、原価率を限界まで引き下げ、固定費率を確定させ、目標営業利益に元づき、売上の増加金額を計算し、設定する事が財務的な戦略では有効だと考えます。

定量的な分析に基づく戦略を実行しないと、成果は得られません。そして社員と共に、損益計算書を検証する事で、売上の中には大きくは固定費・変動費・利益の三要素があり、それぞれの性質を本質的に理解し共有する事ができました。そこでは、予測損益計算書の役割は重大です。年単位の目標設定に対し、短期的にも分析できます。

目標数値を社員で共有できるために、目標営業利益率を仮に10%と設定すれば、それを上回る利益率については、翌年の販管費に還元すれば、福利厚生等も充実し、社員のやる気を促す効果も生れると考えます。残念ながら問1の営業戦略は、失敗も多く利益を減少させる結果となりました。しかし新たに生まれた顧客に依る今後の利益は期待できると考えます。

問2の定量的成果については、今後も分析を続けないと明らかにはなりませんが、現状を分析することによって、【S】セグメンテーションすることができました。

今後新たな戦略を作成すべく、【T】ターゲットを絞り込み、自社の利益を確保すべく、競争の少ない【p】ポジショニングを定量的分析に依り、研究し続けたいと考えます。そして今回問2にて検証し得ることのできた、予測損益計算書とバランストアスコアカードを用いた戦略により来期の展望を期待し、必ず利益と成果が得られると考えます。

pagetop