お問い合わせ・資料請求

修了生論文

「自社分析と経営理念」

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 屋宜 宣忠 (株式会社 宣樹 代表取締役)

はじめに

今回の課題論文についてテーマの例として挙げられた「自社の財務分析」や「自社の経営戦略」と聞いたとき、私はすぐに「経営戦略」をテーマにしたいと考えました。私は常に「これから当社はどこに向かうのか?」と考えながらも、社員と同じように業務をこなしていくだけだったので、今回の課題論文として取り上げれば「経営戦略」が立てられ「ビジョン(目的地)」が見えてくるのではないかという思いで選びました。「美ら海ビジネススクール」で学んだように「オペレーション(戦術)」と「ビジョン(目的地)」をつなげる「戦略(橋)」を作るには「ビジョン(目的地)」がなければ行き方が決まらない、それなら「ビジョン」を決めよう、しかしその前に根本にある「経営理念」を決めるべきだ、「経営理念」を決めるには「そもそも自社の事を知らなければ決められない」という結論になり、自社について考えてみることにしました。そこで、私が「自社」についてどれだけ知っているのかと考えたところ、財務に関しては税理士と当社会長にまかせっきり、仕事に関しては発注者側からの注文に頼るだけで、自社について本当は何も知らない、これでは社員も不安になるだろう。
今回「美ら海ビジネススクール」の三期生として学んでいくにつれ、自分がいかに無知であったかを改めて感じるとともに、スクールで学んだことを生かし、「宣樹」も進むべき道「ビジョン」が見えてくるかもしれないと期待しながら、課題論文は「自社を知る事」を大きなテーマとして、そこから「経営理念」「経営戦略」へと結び付けていく考えです。

 

1創業からの歴史

 

1.1「宣樹」創業に至るまで

当社の歴史を述べる前に業務全般の発注元である「A社」について説明します。
「A社」が携帯電話の第1世代と呼ばれるアナログ方式から第2世代と呼ばれるデジタル方式にサービスの移行を進めていた1996年ごろ、沖縄県北部では未だ使えないエリアがあり、サービスエリアの拡大が最重要課題として取り組んでいた。
当時のアンテナ基地局数は40局程で、2000年に開催された「九州・沖縄サミット」の頃は、前年に第1世代(アナログ方式)のサービスが終了した事もあり、急ピッチで新設局の計画を進め190局程になっていたが、デジタル方式のサービスエリア拡大のためには、未だ十分な数ではなかった。2000年以降「A社」は、第3世代と呼ばれる新たなデジタル方式へと移行する準備も始めていた。
この第3世代と呼ばれる方式は、旧方式より大容量のデータを送ることができるが、使用する電波の特性上これまでのアンテナ基地局が1局でカバーできる半分ほどのサービスエリアしか作れなかった。高い場所にアンテナ基地局を1局建て、広いサービスエリアを作ることができた旧方式よりも、サービスエリアが狭い新方式は、市街地等にもアンテナ基地局の建設が必要となっていった。市街地に基地局を建設するようになると、これまで起きなかった様々な問題(電磁波に対する不安等)が、起きるようになり用地確保の段階や基地局を維持していく中で折衝業務の重要性が上がって来た。
※上記内容の一部は『A社10年史』より引用

 

1.2「宣樹」創業

「A社」は、アンテナ基地局を新たに建設する場合、最初に場所の選定を机上検討し、候補地を選定、候補地周辺で電波実験を行い、実験結果を基に候補地となった場所(建物含む)を確保する折衝を行い、確保した場所に基地局を建設する。このような流れで基地局の設置を進めていく。九州地区では用地確保の折衝業務と基地局建設業務を、各地域のゼネコンへ発注する方法をとっていた。当社創業者も県内ゼネコンで、折衝業務に携わっていたこともあり「宣樹」を2003年に創業した。

 

1.3創業から13期までの財務状況

売上高と当期純利益の推移をグラフにしてみます。

 

グラフ1-1で売上高を第1期から順に見ると、第1期は約3500万円を売上、第2期は1.9倍の約6800万円になっている。第3期は1億2500万円程を売り上げその後は、1億円前後で売上高は推移している。当期純利益は、最も高いのは第3期で、約1198万円、最も低かったのは第12期で約450万円のマイナス、売上高に対する当期純利益の割合は創業期が6.1%、第3期が最も良く9.6%、最も悪いときは第12期でマイナス3.6%であった。当期純利益がマイナスになった4期、12期、13期について確認する。第4期は売上高が前年比マイナス21%に対し、当期純利益は前年比マイナス108%と大きく落ち込んでいる。そこで販管費の内訳も比べてみる。(販管費3-5期参照)

 

販管費全体の38%を占める外注費は前年比マイナス32%、全体の25%を占める人件費(役員報酬+給与+賞与)は4%増、中でも租税公課が前年比615%の増加率だった。外注費は減り、人件費も4期から社員2名が役員となり給与と役員報酬で違いはあるが、人件費としてみれば大きな変動はない。租税公課の法人税等の予定納付額が大きかった為、前年比615%という値になっている。第12期の前後も比べてみる。第12期の売上高は前年比3%増であまり変わりがないが、当期純利益は前年比マイナス178%と大きく落ち込んでいる。同じように販管費で確認する。(販管費11-13期参照)

第12期の外注費は全体の50%と半分を占め、前年比58%の増加、人件費は全体の3割で前年比13%増、となっており、第11期と第13期を比べると13期の外注費は11期よりマイナス3%、人件費は11期より14%の増加である。第12期の外注費が前年比58%の増加が大きいのではないかと考える。その他の利益を見るとまた違うことが見えるはずなので、創業期から第13期までの5つの利益を表1-1に表します。

販管費の外注費を原価とみて、粗利を計上してみる。営業利益は第4期、第8期、第12期、第13期とマイナスとなり、販管費が売上総利益に対し多い。経常利益、当期純利益と見ていくと、営業外収益が受取利息だけなので経常利益とさほど変わらなく計上されているが、第5期には法人税の還付金、第8期は保険の解約による返戻金と、営業外収益がプラスされ経常利益が営業利益を上回る。第4期、第12期、第13期は営業利益のマイナスがそのまま当期純利益のマイナスとなっている。
表1-2では、当社の収益性について表す。創業時は除草業務を自社で対応できており、業務を外注する事が少なかった。売上原価率は第1期、第2期は10%台で売上高総利益率は80%を超えている。第3期からは除草対象局の増加と新設局の業務等が増えた為、除草業務は外注する事で対応したので原価率は、第3期からは40%を超え第4期から第11期までは30%台後半から40%台前半で推移し、第12期は50%台を超えている。売上高総利益率も同じように推移し、第12期は50%を割っている。その他の収益性については、財務総合政策研究所の出した、統計資料の業種別データから「不動産業」と「その他サービス業」の各利益率で比較する。売上高営業利益率は第1期に6.1%、第3期には13.9%、昨年及び一昨年はマイナスまで下がっている。一方「不動産業」の平均は12.6%「その他サービス業」で3.9%となっている。

 

次に創業時から第13期の貸借対照表を、グラフに表し当社の安全性について、視覚的に見てみる。純資産は創業期から第11期まで徐々に増え、第12期から少し減っている。流動資産と流動負債の関係を見ると第2期から第6期まで流動負債が流動資産より大きいのがわかる、同じ第2期から第6期までの固定資産と純資産を見ると純資産より固定資産が大きい。第7期から第13期は、流動負債が流動資産より小さくなり、固定資産も純資産より小さくなっている。

 

次に流動比率や固定比率等を表1-3に表し、財務総合政策研究所の統計データと比較してみる。流動比率は「不動産業」の平均113.6%「その他サービス業」の平均は158.2%で、100%を超える。当社の流動比率は第2期から第6期にかけ90%~80%と、100%を下回り第7期からは100%を上回る。固定比率は、「不動産業」平均が210.8%「その他サービス業」で平均113%といずれも100%を超えている。当社第1期は62.3%、第2期から第6期にかけ100%を超えており、第5期が一番高く140.9%、その後70%から80%台で推移している。不動産業の固定比率平均が210.8%と高いが、土地・建物(固定資産)を売買目的や賃貸用として所有する為、銀行等の長期借入(固定負債)があると考えられ、固定長期適合比率を求めると96.1%になる。自己資本比率に移ると「不動産業」平均が35.7%「その他サービス業」が47.1%である。当社は創業期15.8%、第3期に20%を超え、第7期に30%、第11期には60%を超え、昨年度は57.4%となる。

 

1.4「宣樹」の業務の変化

当社は創業時から「A社」より、新設局の用地確保に伴う折衝業務や、既設局での折衝業務、そして基地局の除草業務を受注している。「A社」の施策や当社の業務の変化を年表やグラフに表してみる。
年   表

 

年表とグラフ1-3から「A社」の施策で当社の売上高や売上に占める業務の割合が変わるのがわかる。H16年に基地局除草回数の見直しで、年2回から年3回実施へと変わり、翌年の第3期に売上高が1億を超える。第4期(H18年度)は、「第3世代ハイスピードサービス」開始の年で、サービスエリアの拡大がまだ重視されていた為、新設局の件数も多く、売上高に占める割合も高い。H20年は「A社」の地域支社が合併され、「A社中央」の発注方法を全国共通としようとする流れが起きた。これまで各地域のゼネコンに発出されていた業務を無線工事業者に一括発注する方法で、ゼネコン各社は無線工事業者の下請けとなる。九州地区も中央の発注方法に変えていくよう求められていた。「A社」はH21年にスマートフォンを発売する。その前年、当社の売上高に占める既設局の業務割合が新設局の割合を超えている。H26年度、これまで「A社」より直接受注していた業務の一部(既設局の無線工事を伴う折衝業務)が無線工事業者より当社へ発注された。
グラフ1-3の第12期、13期に表示された「既設(無)」という項目は、無線工事業者から発注された業務である。今期(第14期)も決算から6ヶ月経過したH28年12月時点の売上高3194万円の内、「A社」から直接受注する業務(新設局と既設局)26%、除草業務24%、無線工事業者から発注された既設局の折衝業務29%と、前期同様無線工事業者からの受注が多くなっている。H29年度以降「A社」は、2020年(H32年)に向け、第4世代LTE-Advanceのサービスエリアの充実、そして超高速通信が可能とされる第5世代へと繋げていく。これまでの「A社」の施策から予想されるのは、今後も既設局の整備工事がメインとなり、新設局の計画は少ないと考えられる。除草業務)に関しても、除草単価の見直しや除草対象局の見直しを進めると予想される。

 

1.5歴史から見えた結果

①財務
当社は「A社」に関する業務に依存しているが、これまで「A社」の施策の変化に対し、業務を遂行する分では対応が出来ていた。しかし会計の部分は当社会長にまかせっきりなのに、「A社」の変化について会長と情報の共有ができていないので対応が遅れ、第3期と4期、第11期と12期のような当期純利益の前年比100%超のマイナスへとつながっている。
外注費を原価と捉えわかったことは、基地局の除草業務に関する変化(除草回数や単価の見直し)に対応できていないので、原価(外注費)に対する対策が取れていないということがわかった。
②業務の変化
創業時から「A社」と業務委託契約を結び、基地局に関する折衝業務や除草業務をこれまで行ってきた。H26年度からは、既設局の折衝業務の一部は、無線工事業者と業務委託契約を結び、業務を行っている。「A社」は2020年に第5世代のサービス開始を目標に技術開発を進めていて、この先も、既設局の折衝業務を中心とした施策をとり、IoT(モノのインターネット)への対応等、引続き超高速通信サービスの時代に進んで行く。除草業務は経費削減の方針をとり、除草単価や除草対象局の見直しを進めていくと考えられる。
発注元にも変化があると予想する。当社に対し「A社」が直接発注する業務と一部無線工事業者が発注する業務があるが、今後「A社」は以前の「A社中央」の方針通り、すべての業務を無線工事業者に一括発注し、無線工事業者から当社は受注することになると予想する。

 

 

2今後の取り組み

 

2.1短期計画

結果の部分でふれた、施策変化に対する対応の鈍さを解消する為、これまで税理士と当社会長だけで進めていた月次報告に参加し財務状況の把握、そして「A社」の施策の変化を共有し分析を行い、短期計画を当社決算月の6月までに作成し、半期ごとに見直しを行う。

 

2.2中長期計画

基地局に関する業務の発注元である「A社」が、無線工事業者に業務を一括発注する方針に変わると予想されるが、変わる事に対し当社ではどうする事も出来ない、この変化に対しファイブ・フォース・モデルやSWOT分析などを用いて経営戦略を立て、ビジョンや経営理念へとつなげていき、その中で中長期計画を立てていきたい。

 

おわりに、課題論文の大きなテーマとして挙げた「自社を知る事」で、当社の「財務」と「業務」の歴史からひも解いてみたが、一番足りなかったのは、私と会長(父親)のコミュニケーションだ、勿論コミュニケーションさえ取れていれば良いということではないが、会長を始め社員と共通認識を持ち、「美ら海ビジネススクール」で学んでいることを使えるようになり、本来あるべき姿に近づくように進もうと思う。

pagetop