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修了生論文

自社分析と経営理念

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 諸喜田 源株式会社 レイメイコンピュー

1. 研究動機

2016年、当社では、ワークライフバランス企業認証に伴う社内規則の整備や社員からの役員選出などこれまでと体制が変わり社内に新しい風を起こせた。とはいえ、売上として結果を残せないと追い風に出来ないと考えている。
そのためには、効果的な経営戦略が必要になるがそれ以前に経営理念・ビジョンから定義していく事が必要である。経営理念・ビジョンとは会社の基本方針や目標、あるべき姿である。これまで、経営理念・ビジョンについて実際の経営活動の中で認識していなかった私にとってこの概念的な要素の必要性や影響がどう関係しているのかの「問い」があり、まずは経営理念の策定を考えた。創業者を含めた役員及び役職(各部署部長、課長、主任)で経営理念・ビジョンの検討、策定を打診したところ、創業者より実は、経営理念・ビジョンは存在しており以前から当社ホームページにて社内外に明示していた。
その経緯から第一回経営戦略会議を開催することとなったが、その会議中の内容から、実際の経営活動と経営理念・ビジョンの必要性や影響がどう関係しているのか。という点をこのテーマの研究課題とした。

 

 

2. 現状分析と評価

 

2.1 現在の経営理念

下記は現在の経営理念とビジョンである。ホームページ及び企業案内に明記している。
経営理念
「オンリーワン企業を目指す」
ビジョン
「同業他社の10歩前を行く」
マネの出来ないクオリティで他社の追随を許さない
「プロ集団となる」
スタッフは全工程を経験、把握することにより、業務に精通した最強チームをつくる
「現場主義」
常にお客様に寄添い、課題とニーズを共有し、商品やフォロー体制に反映させる
「アフターフォローの徹底」
迅速で的確な対応がお客様の評価を勝ち取る
「組織力を売る」
リプレース率(買換え時に継続して当社を選択する確率)100%を目指す
下記は会社の人員状況である。

技術系・40台・役職・10年以上在籍の人員比率が多い現状となっている。その内、今回会議に参加したメンバーは以下の通り。
第一回経営戦略会議 2017/01/04 15:00開催
1. 会長(役員・27年)
2. 社長(役員・13年)
3. 専務(役員・16年)
4. 部長(技術系・14年)
5. 課長(営業系・20年)
6. 課長(営業系・11年)
7. 課長(技術系・15年)
8. 課長(技術系・13年)
常務(役員・27年)は、事務職・会長親族(妻)のため不参加
主任(技術系・7年)は、育児休業中のため不参加

 

会議中の聞き取り結果は以下の通り。
① 「経営理念・ビジョンの意味を知っているかどうか。」知っていると回答した者は8名中3名(3/8)となっており、内訳は役員のみとなった。
② 「自社の経営理念・ビジョンの存在を知っているかどうか。」知っていると回答した者は8名中2名(2/8)となっており、内訳は創業者・社長(ホームページ経営理念ページ作成担当)のみとなった。
以上の結果より、全社的に経営理念・ビジョンについて現状ほとんど認識されていない。
次に創業者に経営理念・ビジョンについての思いを伝えて頂いたので記述する。
ビジョンから、
「同業他社の10歩前を行く」
マネの出来ないクオリティで他社の追随を許さない
創業者談:
世界最小最軽量のポケットPOSとか今までの新商品開発に見られるように、時代のトレンドをうまく拾っていち早く新商品に反映してきた。それは他社にマネされない。ということであり新聞の取材記事掲載とかもこのやり方で注目されてきた。
「プロ集団となる」
スタッフは全工程を経験、把握することにより、業務に精通した最強チームをつくる
創業者談:少数精鋭でやっていこうと思った。少人数でやっていくためには、他の分野には目もくれず、ずっと小売業・POSをやり続けていくことで業務知識や専門性を売りとすることが出来ると考えている。
「現場主義」
常にお客様に寄添い、課題とニーズを共有し、商品やフォロー体制に反映させる
創業者談:POS事業のスタートがお客さんの要望をカタチにしたのがキッカケだった。一つ目の「同業他社の10歩前を行く」とは異なるが新しい商品を作る事とは別にお客さんのニーズをカタチにすることが売れる商品となる。そのためには現場の声を聞くことが大事だと思っている。
「アフターフォローの徹底」
迅速で的確な対応がお客様の評価を勝ち取る
創業者談:顧客との信頼関係の構築の方法とは、サポート(システム保守)する力だと思っている。POS事業スタート当初、保守費を頂く、契約する事に大変な苦労をした。ここをしっかりしないと、保守費を頂く事もウチの評判も良くならない。と思っている。
「組織力を売る」
リプレース率(買換え時に継続して当社を選択する確率)100%を目指す
創業者談:一つ前の「アフターフォローの徹底」にも繋がるが、信頼関係がリプレースの決め手になっている。これは全員で取り組んで、ずっと続けて行かないとできない事なので組織力という言葉を大事にしている。

経営理念
「オンリーワン企業を目指す」
創業者談:これら(ビジョン)をまとめて、オンリーワン企業になりたいと考えており、ここは起業当時から変わっていない。他企業の経営理念と比べると少し具体的だし、いい言葉を使ってないかもしれないけれども。今回(会議で)、変えたければ変えても構わない。
以上となった。
談話中最後の経営理念・ビジョンを変えるかどうかについては「3.1 取り組み内容の方針決定までの経緯」にて触れることとする。

 

2.2 現状

経営理念・ビジョンについて概要説明及び、他社事例の紹介を行い会議参加者全員に
① 「これまで個人的に経営理念・ビジョンをどう捉えていたか。」
② 「どういう思いを持って仕事をしているか。」
③ 「どういう会社でありたいと思って仕事をしているか。」
の質問を回答してもらった。賛同者数については会議中の雰囲気を表現するために記述しており、相づちを打つ、肯定的な発言をするなど明確に反応を示したメンバーの数で、正確な数ではない。
① について
「飲み会など業務外な場所での会話から言葉は違うが、ニュアンス(なんとなく)で認識していた。」:課長(技術系・15年)以下、6名(6/8)賛同
「これまでの経験上、大体は自然にやってきたと思う。」
:専務(役員・16年) 以下、5名(5/8)賛同
「同業他社の10歩前を行く。は意識していない。」
部長(技術系・14年) 以下、7名(7/8)賛同
「今は、同業他社の2歩前を行く。くらいか。」社長(役員・13年) 以下、2名(2/8)賛同
「先ほどの思い(2.1創業者談話)を聞くと大体は認識していたと思う。」:部長(技術系・14年) 以下、4名(4/8)賛同
② について
「社内会議や飲み会など業務内外な場所で会長と考え方のすり合わせをしてきたと思う」:社長(役員・13年)
「お客さんとの信頼関係を一番意識している。自分の担当分は良い信頼関係にあると思う。」:課長(技術系・15年) 以下、6名(6/8)賛同
「入社当時から提案にしてもサポートにしてもお客さんの満足度を意識するよう言われ続けてきた。」:部長(技術系・14年) 1名(1/8)賛同
「現在の戦力(技術部全体スキル)を把握した上で対応可能と判断したら、小売・POS以外の、どの業種・どの分野のシステムでも受け入れる姿勢でいる。」:専務(役員・16年)
「個人的にではなく、部署として判断するのであれば。(確認)」:会長(役員・27年)
「遠い将来、起業する自分をイメージして現状の経験や考え方について、いい意味で利用しようと考えている。しかし辞める気でいる訳では無い。」:課長(営業系・11年)
③ について
「広く(全員の対応や人格が)大人な会社でありたいと考えている。」:会長(役員・27年) 以下、全賛同(8/8)
「広く(外的・内的要因から)逃げない。会社でありたいと考えている」:同上。以下、6名(6/8)賛同
「コストパフォーマンスを重要視する会社でありたいと考えている。」:同上。以下、3名(3/8)賛同
「少数精鋭ではなく、50名以上規模の企業を見据えて技術部の組織化を行ってきた。」:専務(役員・16年)

以上となった。①②の発言について、ビジョンの暗黙知的な認識や意味合いが重なる点も見られたが、全体的に活発な議論がなされて無かった点が懸念事項として残る。
3項目の質問全て無回答のメンバーが存在し、後日対面で確認したところ、「今まで考えたことが無く、頭が真っ白になっていた。」「(ビジョン:アフターフォローの徹底に関して)サポート業務が実際の開発作業を圧迫しているとか、ネガティブな事が初めに思い浮かんでしまい発言していいか迷った。」との回答だった。経営理念・ビジョンという聞きなれない単語や自己の概念的な考え方を言葉にして発言する事、同調行動を取ってしまった事など今回試みた会議の場において順応速度の個人差などが起因すると推測される。
2.3 分析とまとめ
現在の経営理念・ビジョンについて、分析内容を箇条書きに記述する。
① 経営理念・ビジョンとしては、まとまりがある組織になっている。
ドメイン・コンセサスとは、両者のドメイン(定義される領域)に対しての合意であり、その領域が多いほど一体感、まとまりがある組織となる。

 

経営理念・ビジョン及び仕事・会社への考え方をドメインとして創業者、参加メンバーとして見た場合、次の通りであった。

 

このようにズレが小さく、創業者、営業職・技術職(メンバー)共にまとまった組織となっている。
② VRIO分析で見た場合、戦略的に優位性が高い。
VRIO分析とは企業の戦略策定の際、内部環境の判断に用いる戦略的フレームワークである。VRIOの4つの観点とビジョン、実際にこれまで行ってきた事業内容で分析した内容を下記に記述する。

VRIO ビジョン 事業内容
Value(経済価値) 「プロ集団となる」 小売業界でも専門店向け、POS、カスタマイズ可能という狭い分野に経営資源を集中させる。
Rarity(希少性) 「アフターフォローの徹底」 POSの保守業務を続けること。他システムに比べると保守業務が過酷で継続困難で撤退するケースが多く同業他社が新規参入しにくい分野になっている
Inimitability

(模範可能性)

「同業他社の10歩前を行く」

「現場主義」

新商品の企画から開発までのスピード重視、新聞発表などのメディア戦略。沖縄県内事情(お土産品)特化の機能、カスタマイズ特化で大手メーカーが実装しにくい機能が豊富にある。
Organization

(組織)

「プロ集団となる」

「組織力を売る」

小売・POSに集中した結果、各個人の小売業の業務知識、システム知識が高く、営業・技術関わらず、客先対応(打ち合わせやサポート業務)が出来るようになっている。

 

先に4つの観点に現在の事業内容から当てはめ、その次にビジョンを当てはめ検証する形を取ったが、ビジョンと事業内容が密接に紐付いていることが判る。
③ ビジョンは起業後、何度か更新されたものではないか。
「2.1 現在の経営理念」の創業者談話に経験による箇所が見られたため推測したが、創業者からは明確な回答は得られなかった。
以上3点の分析結果から、経営理念・ビジョンに関して認識はされてなかったものの、それに基づくドメインには合意がなされており、それに沿った経営戦略、事業内容でこれまで経営されてきたことが解かった。VRIO分析の4つの観点は、当社の特殊性が当てはまっており経営理念の「オンリーワン企業」に紐付くと考えられる。
今回参加したメンバーは、長年のコミュニケーションや仕事の経験則から経営理念・ビジョンが浸透していた事になる。

 

 

3. 今後の取り組みと監査手法

 

3.1取り組み内容の方針決定までの経緯

現在の経営理念・ビジョンの分析を行った後、議題は変更するかどうかに移った。参加者の発言内容を記述する。
「社員に優しいみたいな、内容を盛り込みたい。」
:課長(営業系・20年) 以下、2名(2/8)賛同
「ワクワクするのがいいけど思いつかない。」:課長(営業系・11年) 以下、5名(5/8)賛同
「大企業の様な抽象的な内容は好みではない。」:会長(役員・27年)
「今の(経営理念・ビジョン)がいいモノだと解かったのなら、まずは今のを浸透していく事が大事では。」:社長(役員・13年) 以下、3名(3/8)賛同
「理念やビジョンの意味も今日理解したメンバーがほとんど。しばらく意識して後日、新しいビジョンを模索してもいいのでは?また、ビジョン:同業他社の10歩先に行く。が現在浸透してないので現状でもいいかも。」:専務(役員・16年) 以下、全賛同(8/8)
次に社員、部下や新入社員に対してどう取り組んで浸透させていくか。について参加者の発言内容を記述する。
「全体朝礼で連呼する。」:専務(役員・16年) 以下、全不賛同
「会社に貼り出す。」:課長(技術系・13年)
「新入社員の初日研修ではやっておきたい。」:専務(役員・16年) 以下、全賛同(8/8)
「各課長が部下とのコミュニケーションの中で浸透させる。」:社長(役員・13年) 以下、3名(3/8)賛同

役員以外の発言を出し易くする意図があり最終決定者を決めなかった点、更に初めての会議内容で流れが全員読めない状況での議論となってしまったが、経営理念・ビジョンは変更せずに継続する。また浸透させる手法については、私が後日取り決める事で最終合意となった。

 

3.2取り組み内容の方針

現状、メンバーは経験年数により経営理念・ビジョンが無意識的に浸透しているが今後は意識的に、早く浸透させるよう取り組んでいく事で下記の実現を目指す。
① お客様への(提案、保守など)サービス提供の質のムラを作らない。
② 現場で適切に判断出来る人材を増やすことは仕事の効率化(中間管理職の負担軽減)となる。
これが実現できる組織こそあるべき姿であり、今後の経営戦略・計画を策定していく中で、強力な基本戦力(経営資源)となると考える。
それに伴い下記、経営理念・ビジョンの浸透を目的とした取り組みを各個人に対して行う事とした。
① 引き続き、経営陣はコミュニケーションの中で経営理念・ビジョンの浸透に努める。
② 新入社員が入社する際、研修内容の初めに経営理念・ビジョンの説明を行う。
③ 各課の課長は、部下とのコミュニケーションの中で経営理念・ビジョンの浸透に努める。
・業務において判断に迷っている時。
・指示内容説明時や、内容説明において考え方の経緯を説明する時。
・業務外で飲み会や相談などの場。
④ 判断ミスや問題が起こった場合、振り返りとしてビジョンに則していたか確認する。
⑤ 文言の記憶は不問として考え方の定着を意識する。
3.3 監査方法
監査方法については、個人の仕事の意識、実績の2面性があると考え下記の方法で評価していく事とした。結果が適当か予測不能のため、運用し分析しながら見直しを加えていく予定である。

個人の仕事の意識

期末個人面談 アンケート方式で意識調査を行い集計を行う。

実績

 

「同業他社の10歩前を行く」 新商品開発(及び新聞発表)を年間1回以上

行う

「プロ集団となる」 期末の給与査定時に総合評価を行う
「現場主義」 追加・個別カスタマイズ費売上で評価
「アフターフォローの徹底」 年始あいさつ時などお客様の聞き取り、

感謝状、クレーム数

「組織力を売る」 リプレース率(買換え時に継続して当社を選択する確率)100%維持しているか。

 

3.4 まとめ

取り組み方及び監査方法について検討を重ねた結果、経営理念・ビジョンは、概念であることから各個人の考え方が行動に反映し、その結果である組織の実績を測る材料とした。

 

 

5 総括

当初、経営理念・ビジョンは存在せず、当社主要メンバーは大筋は同じだが各々別の思いを持って仕事に従事していた。それに伴い経営理念・ビジョンの策定から全体の「ベクトル」を合わせる。という想定をしていた。実際は予想外の展開ばかりとなったが有意義な結果であり研究であったと思う。
研究課題動機である「問い」の経営理念・ビジョンについて実際の経営活動の中で認識していなかった私にとってこの概念的な要素の必要性や影響がどう関係しているのか。について、「経営理念・ビジョンに沿った経営活動によって現在がある。」と結論づける。この認識と主要メンバーとの意識共有は非常に大きい。
それは、これまで役員個々で練られてきた経営戦略が組織的に策定できるようになる基本が出来たという事である。当社としては初めての取り組みであり全員手探りの状態ではあるが、考え方を他者に共有する事更に、管理職には現場の代表としての発言意識を持つ様にすることをしっかり理解してもらい、第二、三回経営戦略会議に臨みたい。最終的に、近い将来現在の業界のポジションより上のポジションに移行するための新ビジョンをこのメンバーで策定できる日が来ることに希望を持って総括とする。

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