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修了生論文

自社の企画開発部署立ち上げに向けての取り組み

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 諸喜田 源株式会社 レイメイコンピュータ

1 研究動機

企業経営には、現在の課題解決への取り組みが重要である。

2017年の研究課題の経営理念についての研究後、社内で理念、ビジョンの浸透に向けて活動を行っている。当社の経営理念、ビジョンは以下の通り。

 

経営理念

「オンリーワン企業を目指す」

ビジョン

「同業他社の10歩前を行く」

マネの出来ないクオリティで他社の追随を許さない

「プロ集団となる」

スタッフは全工程を経験、把握することにより、業務に精通した最強チームをつくる

「現場主義」

常にお客様に寄添い、課題とニーズを共有し、商品やフォロー体制に反映させる

「アフターフォローの徹底」

迅速で的確な対応がお客様の評価を勝ち取る

「組織力を売る」

リプレース率(買換え時に継続して当社を選択する確率)100%を目指す

 

前回の研究時にまとめた理念、ビジョンのドメイン・コンセサス(両者のドメイン定義される領域に対しての合意であり、その領域が多いほど一体感、まとまりがある組織となる。)は以下の通りであった。

 

創業者、営業職・技術職(メンバー)共にまとまった組織となっているが、5つのビジョンの内、「同業他社の10歩前を行く」は、創業者と定義のずれがあり、合意がなされていない。

上記のビジョンは時代に合った、顧客が想定していない新しいニーズを生み出すような機能やサービスの開発、提供を継続して行う事であり、取り組みがなされているものの、近年では「10歩前を行く」内容ではない。

 

下記は、自社のSWOT分析から関連した項目を抜き出したものである。※資料1  【自社のSWOT分析 2017年度版】

強み/機会 弱み/脅威
現在 小規模、低予算の新規商品の開発スピードが速い。 予算や人手不足のため大きな資金や人員の掛かる新商品・サービス開発が出来ない。
未来 省略 社会や顧客のニーズの変化に対応できなくなり、運営自体厳しくなる。

自社開発のシステムが主力商品であり、メーカーである当社では、重要なビジョンであり解決すべき課題の一つとした。

 

 

2 事業内容

当社はソフトウェア開発業であり、1981年創業(28期目)、小売業の業務全般を管理するPOSシステムの販売、開発、運用を行っている。沖縄県内では少ない自社開発のシステムが主力商品のメーカーであり、これまでの実績と事例の数から顧客の課題を聞き取り要望に合わせて開発を行い小中規模の専門性の高い小売業の業務効率化を得意としている。

地域密着型の企業で顧客の9割近くが県内の企業であり、全社員(役員含む)20人前後の組織ではあるが、県内でPOS専門チームの規模としては上位に位置していると考えており、強みとしている。

【5期分の売上推移】

 

 

3 「問い」

当社では上記のビジョン「同業他社の10歩前を行く」に紐づく社内目標を年1回のメディア発表としており、現在のところ達成している。※前回は2017年11月9日掲載。

だが、その開発プロセスは一部のメンバー(主に役員)によって企画立案され、1~2名の少人数のチームによって商品化してきた。

現在、上記に示す通り売上推移は堅調ではあるがトレンドや技術進歩の変化の激しいIT業界の中でこの先の会社発展、継続的な事業承継を考えるにあたり、「新しい商品、サービスを提供し続けられる組織にするには?」を、問いとした。

 

 

4. 現状分析

 

4.1 新部署立ち上げにあたっての問題点

当社は大企業では無いため、新部署立ち上げに掛かる財源、人的資源は無い。現在の資源の無い状態で実行しないといけない大前提がある。

売上の84%を人的資源の投入が必要な分類になっており、技術職の労働時間は全てそれに掛かるものとなっており、新部署に配分する人数、時間的余裕がないのは明白である。また、結果を出せる部署にするためには企画開発という性質上、誰でも良いというわけでは無く、人選が重要になる。本研究では、ビジョンに対する意識調査からアプローチすることとした。

 

4.2 アンケート内容

上記の通り、これまでの新規商品の開発は一部のメンバーでなされているため、ビジョンに伴った行動を取っているか。組織になっているかについてアンケートを取った。内、「同業他社の10歩前を行く」の内容は下記の通り。原文そのまま。極力匿名性を保つため氏名、属性は記述しない。

 

①アリペイ等のインバウンド向けの決済機能を取り込んでいるところは流石です。他社の商材の機能を見る機会があまりないので何ともいえないところではあるのですが、先日{ユーザー名}様のCLTセッティングの時に、社長が「同業の会社にシステムの話をすると便利と驚かれる」と話されてるのを聞くとレイメイってすごいと思いました。スーパーのセルフレジやDBのクラウド化等、レイメイの現ユーザーの範囲では求められていないのかなと思うところもあるので何とも言えませんが、トレンドとして取り入れてもいいかなと思います。

 

②酒税免税対応システムを早くも取り入れ、お客様のニーズに応えることができていると思います。専務がいろんな最新技術の出展で情報を仕入れてきてレイメイで取り組めるものはないか、皆で考える体制はすごくいいなと感じます。

 

③{顧客名}さんの打合せに行った際に、「写真館のシステムとして今のようなしくみを持っているところは無いから早く全国展開しましょう」と話していた。

{顧客名}さんで対応したITFバーコードを使ってのレジ売上は他社では無い仕組みだと思うので関われてよかった。

 

④自分からの提案は行っていない。

 

⑤POSや小売業、沖縄県内での経済的なニュースはチェックするようにしています。

じゃあそこから新商品や新しい機能を提案するといった行動に移すかというと、移していないです。

そもそも、新商品や新しい機能を技術部の役職がついていないメンバーが提案するという場や風潮もない、基本的には通常業務で時間はいっぱいいっぱいなので、やる時間はありません。

じゃあ、業務とは別に休日や平日の夜にやるかと言われると、今の会社の体制や制度ではやらないです。

・新商品や新しい機能を提案するといったことは業務として認められているのか?

・仮に提案した場合、誰がどのように話し合ってNGだったりOKだったりするのか、よくわからない。そもそも、最初に誰に提案するのか?

理念としては大切なことですが、具体的なところがあやふやなので、社員はなかなか手をつけることができないのではないでしょうか。

また、今の体制/制度であれば、時間外かつ残業申請なしの時間にやるしかないので、このままであれば、誰も具体的に取り組まないと感じています。

 

⑥新商品の開発はできていません。意識して行っている事は、今ある商品の品質を高める為に、現地にお伺い時や電話対応等で「何か気になる事はありませんか?」と聞くようにしています。{顧客名}ではそのタイミングで特売商品設定の商品呼出方法を品番に固定してほしい等の要望を聞くことができました。

 

⑦{決済システム名}との連携を担当しました。

開発の中で、部長と相談しながら「返品モードでの連動」「連動した状態での複合精算」にトライしました。

※結果、連動では1伝票につき1精算のルール等、気になる点があったのでお蔵入り。

こうやったらもっと便利かも! を今後も意識して取り組みます。

 

⑧PG(プログラム)の仕様に関して、追加カスタマイズが無いようにパターンの想定を意識した。

 

⑨自分に出来ることを模索中…

 

⑩出来るだけ、先の事を考えて、ユーザーと話をするようにした。

 

⑪どう評価したら良いか相談させてください。

 

⑫今期で{顧客名}の生産管理システムをひととおりリリースした。今後、ユーザーさんが本格的に使い始めることで色々出てくるとは思うが、生産管理もありますよ、と一つの売りになれればと思う

 

⑬お客様からの要望には対応しているつもりだが、自分発信ではできていない。

情報追いついてない、自分が何したいのかよくわからない、先行き不安…

出来てない、周りは新しい仕組み、面白機能を追加している

 

⑭新しい事に目を向け行動できませんでした

 

⑮{メーカー名}の新パスポートリーダーの仕様書見ました。

新しいDLLに対応するのが大変そうな感じです。

取得できるデータは画像以外COM制御でのデータと同じようでした。

 

⑯酒税免税リリース、プレス発表ができた。

 

⑰新規商品でのプレス発表もなかったので全然できていない。

 

以上の結果となった。他のビジョンについての回答は上々だっただけ残念な結果となった。

 

4.2 分析とまとめ

アンケート内容をまとめると下記のように分けられる。

・実行されている。②⑯

・意識していない。④⑧⑪⑭

・意識はしているが実行できていない。①⑨⑬⑰

・企画開発と課題解決を混同している。③⑥⑦⑩⑫⑮

・業務時間内で考える、実行できる余裕が無い。⑤

以上のことから、

 

通常業務として認識されておらず、必要性を感じていてもその優先度、重要性は低い。

もしくは感じていない。

 

と結論とした。

 

これは、現状、顧客の課題を聞き取り要望に合わせて開発する課題解決のプロフェッショナルとして教育、業務を行っているため意識としては低く、ビジョン「同業他社の10歩前を行く」に対して現場への戦略や仕組み、風土作りが具体的に落し込めていなかった事が原因と考えられる。

 

 

5. 新部署立ち上げプロセスの仮説

 

5.1 プロセスの方針

・ビジョンを具体的に定義し直し浸透させる。

・社内風土作りを考慮する。

・現状の資源の中での実行を目指す。

以上の3つを方針とし検討を行った。

 

5.2 検討した3つの仮説と絞り込み

以下の3つを検討し仮説とした。

A.「従来通りからの発展型」

一部のメンバーによって企画立案され、1~2名の少人数のチームによって業務時間外、もしくは超短期間で商品化する。社内パテント制度を策定し売り上げに応じて賞与の評価項目とする。いわゆる「闇開発」。

 

B.「プロジェクト型」

業務時間の中から一定期間(月、半年など) あたり何時間と固定時間を設ける。その中で、①企画会議。②詳細検討、予算化。③プロジェクト発足、実行。を一つの流れとして①~③に掛けてプロジェクトリーダーを決め必要人数を絞り込む。

 

C.「部署型」

部署を新設し、企画立案、実行と並行し、顧客の保守サービスも担当する。

それにより、現場の状況を把握できると共に他のチームの保守に掛かる時間を縮小し開発作業に専念させる。

 

【現行の運用】

3チームを日毎にシフトさせて、開発作業のまとまった時間を確保し生産性を上げている。

 

【部署型を適用した際の運用】

企画開発部署は、保守のメインチームとして固定化され通年で新商品・サービスの開発を行う。これにより、通常の案件毎の開発作業の人的資源の影響を軽減する。

 

Aは、従来通りを踏襲しておりトップダウン的に、担当メンバーのスケジュールを変更できるようなリーダーの下で結果を出せているが、企画者が権限の少ない1担当者の場合、結果はこれまで出せていないため期待できない。

Cは、アンケート結果からその部署に配属するメンバーの人選の判断基準が難しくリスクが高い。

B.「プロジェクト型」 は、企画会議で多く投入人数をかけることにより、教育やプロジェクトメンバーの人選の最適化が期待される。またプロジェクト単位のためスケジュールの調整がしやすい上、メンバーが固定化されないため企画内容によってメンバーの組み換えがしやすい。などメリットが多いため、最適と仮定した。

 

 

6. 結果

 

6.1 結果について

本研究での運用は、次年度をターゲットとしているため結果は現時点では出せない。そのためメンバーのインタビューから実行結果を予想する。

 

6.2 インタビュー内容

無作為で7人の技術職メンバー(役職3人一般職4人)に時間を作ってもらいインタビューを行った。

1 ビジョン「同業他社の10歩前を行く」新商品・サービス開発の必要性について

2 「プロジェクト型」の運用ルールについて

上記、2点を説明し運用可能かについてインタビューを行った。その内容は下記の通り。

 

「基本的にはやりたいが業務時間の中から固定の時間を割くのはどういうルールなのか。納期が近い時にこれを理由にされる事を考えると反対。」

 

「個人スケジュール管理を厳密化すれば可能では。」

 

「月あたり何時間を割いて作業する。のイメージがつかない。コントロールでき無さそう。」

 

「企画会議ではなくお客さんにニーズを聞くのが正解では?」

 

「この運用でやりたい。」

 

「ネタ次第ではやりたい。」

 

「もう少しソフト(制限の少ない)な運用は出来ないか。」

 

「きちんと仕様を落し込んでプロジェクト実行すればいいのでは。」

 

「課題解決的な内容だと皆、アイデアが出やすいのでそういったアプローチがいいのでは。」

 

6.3 インタビュー内容のまとめと結果予想

ものづくりが好きな技術職が揃っているため、基本的に同意は得られたものの、

①企画立案からの具体的なイメージ出来ていない。

②今より更に仕事が増えてしまう感。

が読み取られる結果となった。

 

上記2点の解決策を盛り込まないと仮説とした「プロジェクト型」の運用だけでは、開始しても結果につながるには時間がかかる。もしくは結果を出せずに頓挫してしまう。と予想される。

 

 

7. 考察

これまでの結果から、企画開発部署立ち上げには当初想定していたよりも実現性や継続性が低いことが解かった。このままでは、現状通り顧客の課題を聞き取り要望に合わせて開発される課題解決型の商品開発を更に特化させるか、とてつもない創造性を持ったメンバーの出現を持つしかない。

しかし、意識が低い、教育がされていない、売上の構成上(人的、時間)資源が無いなど本研究で問題点が明確化された事は好材料である。

これまでの一部のメンバーで単発の企画開発から脱却し、「新しい商品、サービスを提供し続けられる組織にするには?」の問いには、個人や技術部一部署だけの取り組みだけではなく、「より具体的な戦略、体制づくりを全社的課題として取り組む事により実現される。」と結論づける。

 

 

8. 今後の取り組み

今後の取り組みを[結果が出なかった場合]でもプラスに影響するよう考慮し、下記の3点を取り組み内容とした。

 

①企画立案に対する教育を行う。

ビジョンの必要性からマーケティング的な要素まで研修会を行い「新しいものを考える力」を養う。

[結果が出なかった場合]⇒顧客の課題解決に対して提案の幅が広がる。

 

②再度各メンバーの時間配分を測り検証。具体的な時間を分析する。

本研究で使用したデータが昨年度のデータであるため、再度計測しその比較と共に現状を分析。そこから年間の合計時間を算出しプロジェクトの総工数として具体的に落し込む。

例)

総時間 1597h×10% = 159.7h×12ヶ月=11.9ヶ月を確保し企画開発プロジェクトメンバーに割り振る。

【月あたり全技術職の作業時間(1597h)構成】

 

[結果が出なかった場合]⇒業務効率化や個人の時間に対しての意識や管理能力を高める。

 

③売上構成比率の見直し。

本研究では触れていないが、売上構成比率から人的資源の投入が少ない分類の強化を行う。そこから、顧客都合ではない四半期目標の未達成時に発生する納期短縮案件の減少を目指す。それにより②の時間確保の可能性が期待できる。

[結果が出なかった場合]⇒売上安定性の向上。

 

 

8. 総括

近年、小売業、POSを取り巻く状況の変化が大きくなっている。安価なタブレット型のPOSや、量販店に見られる自分で精算するセルフレジ、セミセルフレジ。更には「AmazonGo」に代表されるレジの無いスマート店舗など新しい分野として注目されている。これらの商品・サービスは、顧客が想定していなかったアプローチで開発されており、当社が強みとしている顧客の課題を聞き取り要望に合わせて開発される方法からは、生まれることはない。これからの社会変化に対応し継続して経営していくためには、これまでの開発方法と顧客が想定していなかった新しい商品・サービスの企画開発が両輪となり顧客の業務効率化に取り組む事だと考える。当社と当社の商品、サービスを利用する顧客が共に発展できることを希望し強い覚悟で取り組んでいきたい。

 

 

資料1  【自社のSWOT分析 2017年度版】

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