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修了生論文

沖縄県内の税理士に関する調査

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 岳原 梢太

1. 研究動機

銀行業務を営む当行では、当行と取引のある企業や個人とのリレーション強化を図るため、取引先の課題解決を支援する部署(以下、「当部」という。)を設けている。主な業務内容は事業承継、売上向上、海外進出などの支援を行っており、筆者も当部に所属している。

当部の支援業務の流れとしては、課題を抱えている取引先の情報を営業店から当部へ拾い上げ、当部の担当者が取引先と複数回面談を実施し、課題解決に向けた方向性を一緒に考え、実行に至るまでの一連の支援を行っている。また、各種提案において、法律上、銀行が関与できない税務面・法務面の分野については、税理士・司法書士などの専門家と連携して支援を行っている。筆者のメイン業務である事業承継などの支援は税務に関する検証や申告業務の作業を含むため、取引先の顧問税理士と連携して取り組むことが多く、支援にかかる期間は短くて3ヶ月、長くて1年と案件によって様々である。

そのため、取引先との面談において、「顧問税理士の関与具合」を確認するのだが、「顧問税理士から何の提案もない」、「相談はしたけどその後まったく動きがない」などの回答がほとんどである。すなわち、当部に相談が寄せられる案件の多くが、税理士から顧問先へ自発的な提案を行っていないケースなのである。また、筆者が過去に支援した案件について、顧問税理士から「支援経験がないため、当事務所は関与できない」と断られたケースもあった。

沖縄県内の経営者年齢は高齢化しており、当部に寄せられる事業承継などの相談件数は年々増加傾向にあり、今後も同様の相談が増えることが予想される。

そのような状況の中で、顧問先の決算・財産内容を把握している税理士の立場から、顧問先へ自発的なコンサルティング提案を行っていない理由がどういったものなのかを調査し、今後の当部支援業務の方向性について考えたいと思い、本テーマについて研究した。

 

 

2. 現状分析と評価

沖縄県内の税理士がコンサルティング提案を行っていない理由について、(1)税理士会公表データに基づく分析、および(2)関係者へのインタビューによる調査を実施した。

 

(1)税理士会公表データに基づく分析

①県内税理士の人数

 

沖縄税理士会で掲載している会員名リスト(平成28年7月1日現在)より引用。

県内税理士の約半数は那覇市に事務所を構えている状況。

その他の地域は、糸満市、嘉手納町、宮古島市、南風原町、北谷町、八重瀬町、北中城村、与那原町、中城村、南城市、読谷村。

なお、日本全国の税理士登録者数は76,318人(平成29年1月末現在、日本税理士会連合会データより)であり、全国に占める沖縄県の割合は0.5%。

 

② 税理士の年齢構成

 

 

第6回税理士実態調査報告書(日本税理士会連合会公表資料)より引用。

実態調査報告書の基準日:平成26年1月1日(沖縄県の税理士登録者384名)

沖縄県内の回答率 : 56.0%( 215人 / 384人 )

日本全国の回答率 : 42.3%(32,593人 / 77,007人)

沖縄県内、全国ともに若手が少なく、60代以上の割合が50%を超えており、税理士業界は高齢化している状況にある。

 

③取引先への経営助言業務

 

第6回税理士実態調査報告書(日本税理士会連合会公表資料)より引用。

実態調査報告書の基準日:平成26年1月1日(沖縄県の税理士登録者384名)

沖縄県内の回答率: 41.7%( 160人 / 384人 )

経営助言業務を行っていない税理士が過半数を占める。

なお、「経営助言業務を行っている」と回答した税理士の主な業務内容は、「経営全般、財務に関する事項」であった。

 

④税理士の研修受講状況

第6回税理士実態調査報告書(日本税理士会連合会公表資料)より引用。

実態調査報告書の基準日:平成26年1月1日(沖縄県の税理士登録者384名)

研修受講期間:平成25年4月~平成26年3月

沖縄県内の回答率: 44.2%( 170人 / 384人 )

税理士会が推奨する36時間以上の受講努力義務の未履行者が約2/3を占める状況。
36時間以上受講していない理由は、「忙しかったため」が最も多かった。
なお、平成27年度より「税理士は年間36時間以上の研修を受ける」ことが税理士会の会則により義務化されている。

 

(2)関係者へのインタビュー

インタビュー①

質問項目 質問に対する回答
対象者 税理士 (税理士事務所勤務 40代)
事務所の職員数 税理士・補助者含め20名ほど
主な業務 顧問先への確定申告、記帳代行。
業務の繁忙期 顧問先によって決算期が様々なので、年中忙しくしている。
事務所の人員状況

 

税理士、補助者含め不足している。現状作業で手いっぱい。
新規に顧問先と契約すると従業員から不満の声が挙がることもしばしば。そのため新規先からの相談は極力断ることにしている。税理士、補助者の人員募集を継続して行っているが、全然求人がない。他の税理士事務所も同様な状況と聞いている。求人がない背景として、県内の税理士試験合格者(若手)が就職する先は、県外大手税理士法人に集中する傾向にあり、地元の中小規模の税理士事務所への就職希望がほとんど無いためだと思われる。また、県外で経験を積んだ税理士が沖縄に戻ってきても、自身で開業してしまうため、これから先、既存事務所が税理士を確保することが難しくなるのではと感じている。
顧問先へのコンサルティング業務の取組みについて 現在は私のみが担当。主な内容は顧問先への事業再生支援、相続対策、事業承継支援など。
将来的に確定申告、記帳代行業務はIT発展により衰退が予想されるため、コンサルティング業務を取り組む必要性は強く感じている。同世代の税理士と意見交換する中でも同意見多数。ただし、通常業務もある中で、積極的なコンサルティング業務は行えておらず、顧問先からの要請があった場合に対応。それでも全て対応できない場合がある。また、顧問先の窓口は基本的に補助者が担っているため、コンサルティング業務に対する補助者教育も課題ではあるが、そこまで手がつけられていない。そもそも通常業務が多忙の中で、補助者へコンサルティング業務を依頼できる状況ではない。

 

(インタビューの結果)

コンサルティング業務に取り組む必要性は感じているが、現状業務が手いっぱいで積極的なコンサルティング提案ができていない状況。

人材の採用により本人の通常業務負担を軽減し、コンサルティング提案を行いたいが、採用環境は厳しく、状況改善は難しい。

 

インタビュー②

質問項目 質問に対する回答
対象者 税理士 (事務所開業 40代)
事務所の職員数 税理士・補助者含め5名ほど
主な業務 事務所は、顧問先への確定申告、記帳代行。

個人的に、支援機関のコーディネーター、各種セミナー講師なども行っている。

業務の繁忙期 顧問先によって決算期が様々なので、年中忙しくしている。
事務所の人員状況

 

十分に業務がこなせている状況。

補助者1 人当たりの顧問先数としては、法人13~14先くらいが適当だと感じている。それ以上は補助者に負荷あるため、現状の顧問先数を維持している。補助者が増えれば新規顧問先との契約も考えるが、求人は出していない。

一般的に税理士事務所に働いている補助者の中には、税理士試験を受験している人も多くいる。税理士試験合格後は、働いていた事務所を辞め、自身で独立するケースが多い。

当事務所にも税理士試験合格を目指している人がいる。合格後も辞めて欲しくはないが、本人の独立したい意思を無理に引き留めることはできないため、将来的に新規採用を考えないといけない可能性がある。

顧問先へのコンサルティング業務の取組みについて コンサルティング業務は私のみが対応している。

現在は顧問先からの要望があった場合のみに対応。積極的なコンサルティング業務はできていない。というのも、現在、顧問先への税務業務以外に、個人的にセミナー講師などの活動も広く行っているため、コンサルティング業務まで手がつけられていない状況。

将来IT発達により、現在の記帳代行、申告業務にかける時間が軽減されることが予想されるため、負担が軽くなる分、補助者にもコンサルティング業務に携わってもらいたいと考えている。ただし、補助者に対する教育をどのように行うかが課題。

現在、顧問先へのコンサルティング業務は顧問報酬とは別で手数料を請求しており、将来の収入源となり得るため、今後活動を広げていきたい分野である。

 

(インタビューの結果)

事務所は適正人員であるが、事務所の現状業務やインタビュー者の個人業務が手いっぱいの状況であり、積極的なコンサルティング提案ができていない状況。

IT発達による現状業務の負担減を皮切りに、補助者をコンサルティング業務へ移行させるという発想は面白いが、補助者の教育面について課題が残る。

 

インタビュー③

質問項目 質問に対する回答
対象者 税務関係刊行物の出版会社職員 (50代)
税理士に対する印象 業務上、全国いろんな税理士と交流があるが、全国的に高齢な税理士ほど、過去からのやり方に固執し、それを変えることを嫌がっている。また、新たな取り組みを敬遠する傾向があり、最近の税制改正についていけない人が多い印象。

当社は税制・会計制度が改正する都度セミナー企画し、各税理士事務所に案内をしているが、若手税理士は勉強熱心であるのに対し、高齢税理士の参加率が著しく悪い。

現在の税務申告業務は将来衰退することは明確であり、業務の転換期に差し掛かっているにもかかわらず、その必要性に気づいていない。

 

(インタビューの結果)

当部で定期購読している刊行物の出版会社職員に対するインタビュー。

高齢税理士ほど過去の経験則に基づく考え方を変えることを嫌い、変化を好まない傾向にある状況がうかがえた。

 

(3)分析結果に基づく評価

全国的に税理士業界は高齢化している状況。特に高齢な税理士ほど変化を好まず、過去から携わっている顧問先への記帳代行、税務申告業務のみを行う傾向にある。

県内税理士事務所に関しては、税理士や補助者の人材確保に苦慮しており、顧問先への記帳代行、決算申告業務などの現状業務に忙殺されており、コンサルティング業務まで手が行き届いていない状況にある。

以上による分析の結果、税理士が積極的にコンサルティング提案できていない理由として、税理士業界の高齢化、および現状業務多忙による影響だと結論づける。

 

 

3. 今後の当部支援業務の方向性について

当行戦略に関わる部分であるため、記載を割愛する。

 

以上

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