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修了生論文

「自社の現状と経営戦略」

沖縄校(美ら海ビジネススクール) 赤嶺 竜也 (有限会社オーエムファーマシー )

1.動機

今後の調剤薬局の目指す方向が国の政策によって方向付けられているため、収益の大部分を占める調剤、投薬に関する加算店が減少しないか心配している。そこで現状を見わたし、ファイブフォースを使った業界分析を行い今後の方針を定める。

 

2017年2月、全国の薬局数は、約 57.000 店(コンビニエンスストアは全国で約 54.000 店)となっており、小規模な店舗が多い状況です。大手調剤薬局グループや、大手ドラッグストアのシェアは、トップ企業でわずか 2.3%、上位 10 社でも 14.0%(調剤薬局が主なグループの上位 10 社では 12.3%)、この数字からわかるように全体の約 7 割が個人薬局で構成され、マーケットリーダーと呼べる企業のいない市場となっている。今後、高齢化社会に向けて厚生労働省は、保険制度を維持するために医療費抑制が必要不可欠と考えており、医療費抑制策として、ここまで増えた薬剤料の削減を打ち出してきた。薬剤料増加の原因を、医療機関による薬価差益獲得を目的とした医薬品の過剰使用にあるとして、薬価の引き下げが行われている。さらには、後発品医薬品調剤体制算定加算の導入などでジェネリック医薬品の使用を促進してきたが、今後、ある程度までシェアが高まれば、将来的に後発医薬品調剤体制加算は廃止される可能性が高いと想定される。今後は、在宅医療推進への方向転換も明確になってきており、厚生労働省より2016年 4 月に、特定の医療機関からの処方せんを受け取る率が非常に高く、病院・診療所の付近にあり、主にその病院・診療所の処方せんを対象とする調剤薬局(門前薬局)の診療報酬を減らす方針が打ち出された。

平成28年度4月度の調剤報酬改定の主な概要は、次の通り。

㋐ 門前薬局の評価の見直し

㋑ かかりつけ薬剤師・薬局の評価

㋒ 薬局における対人業務の評価の充実

㋓ 後発医薬品の使用促進策

 

上記、㋐は、「門前薬局」から「かかりつけ薬局」への転換を促しており、厚生労働省は、2025年にはすべての調剤薬局の転換を目指している。「かかりつけ薬局とは」・・・一人ひとりの服薬状況をしっかり把握し、お薬のことについて教えてくれる調剤薬局を「かかりつけ薬局」という。

患者さんのお薬、特に高齢者は様々な病気を抱えるケースが多く複数の病院・診療所に通うため、それぞれ違う門前薬局でお薬を受け取っているがそれを一つの調剤薬局に決めてもらうことで、使用するお薬が多い患者さんにはこうしたお薬を一元的・継続的に把握し、薬の効果をきちんと発揮させたり、副作用の発生を未然に防いだりすることが目的です。若い人でも、処方してもらったお薬を正しく理解して使用しないと、お薬が無駄になり、副作用が出てしまうことがある。

 

上記、㋑は、かかりつけ薬剤師の育成とそれに付随し薬局を評価することを厚生労働省は促している。

 

「かかりつけ薬剤師」とは・・・お薬の飲み合わせや副作用などの相談や、地域で暮らす私たちの健康相談に 24 時間応じる機能を持っている。慢性疾患などが増え、薬物療法の必要性は高まっているが、高齢の患者さんのなかには「薬の種類が多くて飲めない」「飲みにくい」などの理由からお薬が残ってしまい、残薬が少なくないことが問題になっている。他にも、医療機関から処方されたお薬以外に、市販薬やサプリメントを併せて使用している例もある。よって多くのお薬を使用するため、飲み合わせが悪く、相互作用による健康被害を起こすケースが見られる。「かかりつけ薬剤師」は、これらの状況を十分に踏まえて、単に医療機関の処方を調剤するだけでなく、患者さんが使用しているすべてのお薬やサプリメントなどの情報を把握し、患者さんのお薬の管理を行ったり、場合によっては医療機関へお薬を減らしたり、お薬を変えてもらったりする提案をする薬剤師のことで、この「かかりつけ薬剤師」が在籍する調剤薬局には、調剤報酬の中で特別加算点が取得できるため有利になっている。

 

上記、㋒は、厚生労働省は、「かかりつけ薬局・薬剤師」の機能に加え、積極的に地域住民の健康づくりをサポートする薬局を「健康サポート薬局」と表示できる仕組みを示している、すべての薬局がかかりつけ機能を持つことを目指し、病院・診療所の門前から地域へ、薬中心から患者中心へ、医療関係者間の情報の共有化へという方向性のもと、今後、薬局を再編する道筋が示されている。これからの薬局・薬剤師は、かかりつけとしての基本的な機能と積極的な健康サポート機能を兼ね備えていくことが求められている。

 

上記、㋓は、後発医薬品(ジェネリック医薬品)とは、先発医薬品と治験学的に同等であるものとして製造販売が承認され、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっている。後発医薬品を普及させることは、患者負担の軽減や医療費の抑制に繋がる。このことから厚生労働省は、後発医薬品の使用促進のために調剤薬局や医療機関に積極的に使用するように評価の取り組みを行ってきた。ちなみに厚生労働省は、全体の医薬品の中で後発医品使用シェアを、平成 29 年度に 70%以上とするとともに、平成 30 年度から平成 32 年度末までの間のなるべく早い時期に 80%以上とする、新たな数量シェア目標が定められている。最新の後発医薬品シェアは、平成 27 年度、9 月時点で 56.2%になっている。

今後、ある程度までシェアが高まれば、将来的に後発品使用促進による調剤報酬の加算点が廃止される可能性が高いと想定される。1-2)収益構造に関して、政府の医療費削減の方針は続くとみられ、薬価引き下げや調剤報酬の下落により、調剤薬局の利益は縮小が予想される。

 

1-3)業界分析

 

 

2.現状分析

 

現状の収益(加算点)の取得状況

調剤薬局の収益は、主に調剤報酬と仕入れる医薬品の薬価差から利益を出している。

調剤報酬は、「調剤技術料+薬学管理料+薬剤料+特定保険医療材料料」の4つに分けられておりこの合計点数を、調剤報酬として受け取っている。

調剤報酬とは、調剤薬局が病院・診療所から発行された処方せんを、調剤薬局において薬剤師が行う調剤行為(保険調剤)に対し支払われる報酬のことだ。厚生労働大臣によって定められた「調剤報酬点数表」によって算定する。「調剤報酬点数表」で算定した調剤報酬は、患者さんの加入する医療保険の給付率に応じ患者さんの一部負担金を窓口で徴収し、残りの保険給付分は代行機関(例:企業の健康保険組合など)を経由して保険者に請求する。保険調剤を行う調剤薬局は、薬代を除いた調剤報酬が収入になる。

調剤技術料とは、薬剤師が処方せんの指示に従って処方薬を調剤する作業に対して支払われる対価のことで、調剤技術料 = 調剤基本料 + 調剤料 + 各種加算料になっている。

薬学管理料とは、調剤基本料や調剤料とは別に、薬剤師による薬学的管理、服薬指導、情報提供、在宅医療への取り組みなどを評価しているのが薬学管理料だ。2016 年診療報酬改定で、薬剤服用歴管理指導料の見直し、かかりつけ薬剤師・指導料・が新設された。

薬剤料とは、薬の値段(薬価)を点数化したものをいう。使用薬剤の薬価を用いて算出し、単位薬剤料(点数)とす。

特定保健医療材料料とは、特定して用いられる医療材料の料金だ。例えば、処方せんにインシュリンの針が処方された場合は、医療材料として、国の基準にそって価格が算定さる。

今回は、調剤報酬の中の薬学管理料の加算点の取得状況の検証をしていく。

(下図、資料―1 参照)

・当社の薬学管理料取得状況は、基本的な部分になる薬剤師による薬学的管理、服薬指導、情報提供での加算点の取得だけにとどまっている状況が浮かびあがった。この加算点は、一般的な調剤薬局では、どこでも基本的に算定しているものにあたる。

したがってその他の、麻薬指導料・重複防止・重複・相互等防止・特定薬剤管理指導・乳幼児服薬指導加算などのほとんど加算点数を取得できていない状況がわかる。

* 以下の資料は守秘の立場から数値を除外している。

資料―1

 

資料―2

 

資料―3

 

他社では、取得出来ていて当社では取れていない加算点はないのだろうか。仮に一つの加算を新しく取得した場合の試算、どのくらい収益がかわるか。他社では、取得できていて当社では取れていない加算点として、上記の資料-1にもあるように、「乳幼児服薬指導加算」があった。特に当社では、処方せんを応需している門前クリニックの内訳として、小児科2軒、耳鼻科2軒、内科1軒、産婦人科1軒、整形外科1軒の処方せんを取り扱っており、小児科 2 軒、耳鼻科2軒では、小児の需要が多いことから「乳幼児服薬指導加算」に注目した。

仮に「乳幼児服薬指導加算」を 2015 年度、2016 年度の二年間加算取得した際の試算の結果、「乳幼児服薬指導加算」対象件数をすべて加算算定出来たと仮定した結果、グループ全体では、2015 年度で、******* 円 2016 年度で、******* 円の収益増加が見込めた。さらに、資料―2で、店舗ごとに「乳幼児服薬指導加算」を取得した場合における薬剤管理指導料総合計の増減率を出し、検証したところ 2015 年度は、A薬局(小児科・産婦人科・整形外科)1.0%増加=*******円 B薬局(内科・耳鼻科)0.1%増加=*******円

C薬局(耳鼻科)1.0%増加=******* 円 D薬局(小児科)1.8%増加=******* 円になる。グループ全体では、0.7%増加だった。2016 年度は、A薬局(小児科・産婦人科・整形外科)1.03%増加=*******円

B薬局(内科・耳鼻科)0.12%増加=*******円 C薬局(耳鼻科)0.95%増加=*******円  C薬局(小児科)1.9%増加=*******円になりグループ全体では、0.68%増加だった。

検証の結果、小児科を門前クリニックに構えている、A薬局、D薬局の増加率が高く目立つことがわかった。次に、耳鼻科を門前クリニックに構えている、C薬局の増加率が高く、逆に、B薬局では、他店舗よりも増加率が少なく加算算定の対象者が少ないことがわかった。意外なのは、B薬局、C薬局、ともに耳鼻科を門前クリニックに構えているが、C薬局の方がB薬局よりも加算算定対象者である0歳から5歳までの小さなお子さんの患者さんが多いということだった。

資料-3では、{乳幼児服薬指導加算}を取得した場合の割合を表示してみた。

この割合をもとに、会社として店舗ごとの管理薬剤師と相談し、何%の加算取得を目標にするかの指標に活用する。

 

何故、加算点を取れていないか?

薬剤師の現状、薬局内の環境状況の検証

現在まで、「乳幼児服薬指導加算」を取得していない要因を検証した。

管理薬剤師4名に聞き取り調査したところ、3名は、認識はあるが会社より取得に向けた取り組みが積極的ではなかったため取らずにいた、他の薬剤師にも取得に向けた行動は促していないとのことだった。残りの1名は、「乳幼児服薬指導加算」の認識はあるが、取得の仕方がわからないとのことだった。薬局内の環境状況検証では、「乳幼児服薬指導加算」に使用する患者さんへの指導書が作成されていない不備が見つかった。また、薬剤師が患者さんのお薬服薬状況を記録入力するパソコンにも患者さんへの指導書文言の雛型が搭載されていない不備が見つかった。

 

 

3.今後の取り組みと監査手法

1) 当社の特徴である小児への処方せんの需要が高いことから、「乳幼児服薬指導加算」に絞り込んで取得することを目指す方針の結論に至った。

2) 現場の管理薬剤師、その他薬剤師へは将来的に調剤報酬の減少する可能性が高いことが想定されることや、当社は薬剤師の新たな活躍の場である「在宅医療」に関する準備が整っていないことを踏まえ、今後は、「門前薬局」から「かかりつけ薬局」への転換を国の政策として推し進めている状況の中で、まずは出来ることの一つである「乳幼児服薬指導加算」の取得をしなければならないことの理解を深める。

そのため、「乳幼児服薬指導加算」に使用する患者さんへの指導書の作成、お薬服薬状況を記録入力するパソコンへの指導書文言の雛型の搭載などの環境整備を整えた上で「乳幼児服薬指導加算」の取得の仕方は、各店舗にて説明会を実施し統一性を持たせ取得に向けてスタートする。

次に、「在宅医療」に対応するため薬剤師にイーランニングなどの研修認定制度を導入し環境整備をする。

3) {乳幼児服薬指導加算}を取得後は、1ヶ月ごとに締めくくり、どのくらいの割合で 加算取得できたかデータ集計し、取得状況の振り返りや確認、検証する。

 

以上

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