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修了生論文

現社長と自己分析からみる「ナンバー2の役割」についての考察

名古屋校(N-college) 岡部 重郎

(1)企業概要

会社名: 有限会社トライメディア

所在地 : 愛知県犬山市中山町2丁目6番地プラザイトウ3F

代表者 : 間森清士

創業 : 昭和53年3月23日

社員数 : 15名

事業内容 : ブライダル映像・ケーブルテレビ番組・企業用VP等の企画•撮影•編集

 

 

(2)はじめに

私がトライメディアに入社して15年が経つ。5年前より部長としてマネジメントを担当している。職人気質で言葉が少なく、コミュニケーションが苦手な社長に代わり、社員と社長とをつなぐ橋渡し的存在となれるよう業務に取り組んでいる。社長は今でもカメラマンとして現場に出ており、卓越した技術と経験を兼ね揃えている。しかし人に教える事が苦手な為、その技術を伝承する人材が育っていない。また会社の経営に対する判断も、感覚的で場当たり的な事が多く、社員から戸惑いの声があがる事もしばしばあった。そのような状況を見て、私は今後会社を継続•発展させていく為には社長の想いや考えを汲み取るだけでなく、代わりに中長期的な目標や戦略を立てられること、そしてそれを社員に伝えられることが出来るようにならなくてはいけないと考え、スクールに参加する事を決めた。

 

 

(3)動機

当社社長は現在65歳となる。今でも月の半分以上現場に出ている。経営者が健康で元気なのは良い事ではあるが、年齢を考えると社長しか持ち合わせていない技術や、社長しか出来ない業務は若手に継承していき社長個人の資源ではなく、会社としての資源にしていかなくてはいけない時期にきている。しかし本人はその意識が薄く、撮影技術においても組織運営についても後継者が育っていない現状がある。社長の次、No2のポジションである私はそのような状況を見て危機感を感じている。いつか必ずくる「社長の不在」という事態にむけて少なくとも準備は始めなくてはいけない。しかし具体的に何から始めれば良いかの答えを出せずにいた。そこで今回リーダーシップの観点から社長と私自身を分析し、それぞれが持っている部分と不足している部分、補えている部分とそうでない部分を明確にする事で今後の対策に活かせるのではないかと考えた。

 

 

(4)明らかにすること

(A) 社長と私はどんなリーダータイプなのか。

(B) 社員が社長に感じているリーダー的要素はどういったものか。

(C) 社員が私に感じているリーダー的要素はどういったものか。

(D) 現在会社として得ているリーダー的要素と不足している要素はどんなものか。

(E) (D)の結果から考えられる今後の対策は何か。

以上の5点を明らかにしていきたい。

 

 

(5)研究方法

(A)の問いに対しては、リーダー育成定期診断(PM理論の応用)を実施する。

PM理論とは、組織力を最も高くするリーダーシップ行動を導き出す行動科学の理論であり目標達成、課題解決 (Perfomance)と集団・組織維持(Maintenance)の2つの観点からどの程度リーダーシップが発揮出来ているかを測定する方法である。また自己評価と他者(部下)評価を行う事で両者のギャップを明らかにする効果もある。導き出されるタイプはPM型(P行動・M行動得点が共に高い)・Pm型(P行動得点は高いが、M行動得点は低い)・pM型(P行動得点は低いが、M行動得点は高い)・pm型(両方とも得点が低い)の4つに分類される。このPM理論を使って社長と私がどのタイプに属するか、また自己評価と社員との評価に隔たりがないかを確認する。

 

(B)と(C)に対しては、社員にアンケートを実施する。アンケートの設問に関しては授業で紹介された「リーダーシップ入門」より引用し、アレンジを行った。アンケートの設問は以下のとおり。

 

(アンケート設問内容)

(Q1) 次のリストにある20個の言葉の中から、あなた(回答者)が社長(および私)に備わっ

ている(持っている)と感じる属性を3個あげてください。

(Q2) (Q1)の回答は社長(および私)のどのような発想や言動に基づくものですか。

(Q3) 同じく次のリストにある20個の言葉の中から、あなた(回答者)が社長(および私)に

備わっていない(持っていない)と感じる属性を3個あげてください。

(Q4) (Q3)の回答は社長(および私)のどのような発想や言動に基づくものですか。

 

(リスト)

(1) 野心的

(2) 大切に思ってくれる

(3) 協力的

(4) 頼りがいがある

(5) 公正な心をもっている

(6) 正直さ

(7) 独立心がある

(8) 知的

(9) 成熟さ

(10)率直さ

(11)心が広い

(12)有能な

(13)勇気がある

(14)断固たる

(15)前向きさ

(16)想像力がある

(17)わくわくさせてくれる

(18)忠誠さ

(19)自己抑制が出来た

(20)応援してくれる

 

 

(6)研究結果および結果分析

 

6.1 リーダー育成定期診断結果

社長
得点 自己評価点 得点 自己評価点
目標達成のための行動得点 27.13 38.00 36.71 36.00
集団維持のための行動得点 31.25 44.00 35.57 41.00
総合得点 58.38 82.00 72.29 77.00
分類結果(型) pm型 PM型

 

社長のタイプはpm型なので、リーダーシップを効果的に発揮出来ていない事が明らかになった。また自己評価と実際の得点とに大きな差が出ているので、社長の考えや想いが社員には伝わっていないと言える。比べて私はPM型なのでリーダーシップは一定水準で発揮出来ていると言える。しかし社長ほどの得点差ではないが、集団維持の得点はやや開きが見られるので今後注意が必要であると分った。元々社長は現場に出ている事が多く、社員と接している時間が少ないので自己評価と他者評価に開きが出るのは予測出来る事であった。今回の得点差は、その予測出来る事を防げていない結果とも言え、No2の役割の1つである『社長(TOP)を引き立てること』が上手く出来ていない事も明らかになった。

社長と社員とを結びつける役割をもっとしっかりしなくては、と感じた。

 

6.2 アンケート設問(Q1),(Q2)の集計結果

(社長)

・ 目の前の仕事には正面からぶつかっていって実行する勇気と技術がある

・ 仕事に対しては愚直なほど正直で一生懸命

・きっぱり物事は言う・怖いもの知らずに思える時がある

 

(私)

・常に考えて行動し、計画的に目標を立て、実行に向けた努力を惜しまない

・会社や社員の事を思い環境をよくするために行動し、負担が偏らないように気遣ってくれている

・社員を納得させるのに数字を元に予測して方針を示し、実行している周りの情報をまとめて、共有しバランスをとっている

 

社長に備わっている属性のTOP3は 「(6)正直さ」「(9)成熟さ」「(13)勇気がある」となった。

(Q2)の答えより、仕事に対して愚直なほど一生懸命打ち込む姿に「(6)正直さ」を、きっぱりと物事を言う、またどんな仕事でも臆せずぶつかっていく姿勢に「(13)勇気がある」が選ばれ、そして年齢相応の成熟さはきちんと兼ね揃えていると判断されたといえる。私に備わっている属性のTOP3は「(4)断固たる」「(5)公正な心をもっている」「(8)知的」となった。数字に基づいて方針や計画を立てる姿から「(8)知的さ」を感じ、目標を実行しようと努力する姿から「(4)断固たる」姿勢を、また社員を思い環境を整えようとする行動から「(5)公正な心をもっている」と判断したのではないかと予測した。

 

6.3 アンケート設問(Q3),(Q4)の集計結果

(社長)

・計画的とはいえず、回り道をした方がスムーズに進む状況でも正面からしか行かない

・コミュニケーションがとりにくい・普段の会話が成り立っていない

・行動力はあるが後先考えてないことが多かったり、想定できてないことが多いので深く物事を考えないで行動をしているように思われる

・ 知的だなと思う言動は聞いたことがない

 

(私)

・ 社長に比べて独立心は薄いように思う・成熟さと自己抑制は同じでリーダー的などっしり構えている感じではない

・ 感情的な部分がある・成熟さはまだ感じられない

・ 一方的な指摘になる事がある・細かすぎて面倒と感じる時が多々ある

・ 職人気質ではない分、この人だから任せられるという印象を初期の段階では持ちにくい部分がある

 

 

社長に不足していると感じる属性のTOP3は「(8)知的」「(16)想像力がある」「(19)自己抑制が出来た」となった。行動力はあるが、動いた後の事を想定出来ていない姿から想像力がないという判断を、また無計画でいつでも正面突破をしようとする姿より自己抑制がきかないが選ばれたのではないかと判断した。私に不足していると感じる属性のTOP3は「(9)成熟さ」「(7)独立心がある」「(19)自己抑制が出来た」となった。時に感情的言動をしてしまう事から成熟さが備わっていなく、自己抑制がきかないという判断がされたと言える。独立心がないのは、ポジション上仕方ないと感じる面もあるが、No2である自分が社長と社員とをつなぐ橋渡しを上手く出来ておらず、代理的なポジションと写ってしまっている結果、社員からみると社長と私とが並列に近い形で見えているのではないかと推測した。そうなるとむしろ社長と社員とを分断してしまっている可能性もあると考えられるので、大いに反省すべき点といえる。また理由の最後にあった「職人気質でないので、初期段階での信頼を得にくい」という指摘は、業界の特性が色濃く出た意見だと言える。社員はみな職人であり、クリエイターなのでマネジメント的能力に対してのリスペクトを感じにくいのではないかと判断した。この業界で組織を上手くまとめあげたり、特出したリーダーシップを持った人間が育ちにくい要因の1つなのでは、と感じた。

 

アンケートの結果によりはっきりした社長と私の持っている部分と不足している部分が今後どのような機会を呼び込み、また脅威となるのかを探るためSWOT分析を行う。

ここで導き出したいのは、社長と私の比較でなく会社としての今後の動向となるので、社長と私の強み・弱みは会社の共通資源として同列に記載する。

 

6.4 SWOT分析

【強み】

(社長)

(1)仕事を愚直なほど一生懸命こなす

(2)どんな仕事でも臆せずに行っていく勇気

(3)どんな仕事でも対応できる技術がある

 

(私)

(4)数字に基づく判断や計画を設定出来る

(5)目標を実行する努力を惜しまない

(6)社員を気遣い、働きやすい環境を整える

【弱み】

(社長)

(1)計画的でない。後先考えていない

(2)コミュニケーションがとりづらい

(3)自分の考えだけで突っ走ってしまう

 

(私)

(4) 感情的になる

(5) 指示が細かすぎる

(6) 職人気質ではない

 

【機会】

(社長)

(1) 取引先の信頼を得やすい

(2)新たなチャンスが巡ってきた時につかみやすい

(3)受けられる仕事の幅が広がる

 

(私)

(4)損失を出すリスクを減らせる

(5)成果を出す確率を上げられる

(6)社員を定着させる事で長期的な取り組みや能力の引き上げが出来る

 

【脅威】

(社長)

(1) 後先考えず突き進んで損失をだす

(2) 技術の伝承が行われず失われてしまう

(3) 独りよがりとなり、社員との距離が生まれ離れていってしまう

 

(私)

(4)社員がついてこなくなる

(5)能力高い社員のやる気を削いでしまう

(6)信頼を得るのに時間がかかる

マネジメントやマーケティング的考えや方法を取り入れる妨げとなる

 

 

 

7. 分析結果まとめ

以上の分析結果より、社員が感じている社長のリーダー像とは、長年積み重ねてきた技術とひたむきさを武器に、どんな現場でも勇気を持って1番に飛び込んでいく。そしてその背中をみせる事で社員を率いていくという非常にマッチョなリーダー像である事が分った。

私のリーダー像は、数字を基に計画や目標をたて、実行する為の方法を考え粛々とすすめていく。また社員の働きやすい環境を整えることで信頼を得て社員をまとめていく、というソフトなリーダー像と言える。個々人の比較ではなく、会社という単位で考えた場合得意分野が分かれている事はむしろ好都合だという事が分った。これは弱みにもあてはまる。社長は突破力にたけている反面、後先考えずに突っ走り、成果が出るか出ないかは出たとこ勝負、という博打的な対応が多い。はまれば大きな成果を生むが失敗するリスクも高い。また社員とのコミュニケーションが十分でない為、とりあえず行ってこいスタイルで何かを依頼された社員は時に戸惑い、不安がってしまう。

反面私はとりあえず飛び込むという勇気がなく臆病なので何か始める際にはしっかりと計画をたてる。その為大きな失敗はしないし、失敗が想定出来た場合には軌道修正もする。前もってきちんと説明をする為、ある程度安心して社員は現場へといく事が出来る。しかし時にその慎重さゆえに大きなチャンスを逃す事もある。場合によっては飛び込んで走りながら考えた方が良いケースもある。でも私にはそれが出来ない。それでも問題なく会社がまわっていたのは社長がその役割を担っていたからだと気付かされた。私よりも社員の方がその事をきちんと見ぬいていたということになる。今回改めて分析を行った事で、社長と私の特性の違いを明確に認識すると共に、意外にもお互い補えあえている事が分った。

 

 

8. 分析結果より考える今後私が行っていくべき事

私はスクールに参加する前は、社長のやり方に正直反発を覚えていた。しかしそれは間違いであったことに気付かされた。もちろん社長のやり方に100%賛成は出来ない。しかしそれぞれの特性は正しいか正しくないかで潰し合うのではなく、むしろ違うという事は武器なのだと捉え、強みは混ぜ合わせる事でより強く、弱みは補いあう事で損失を減らしていく事が重要なのだ、と分った。今後その事を実行するために以下の対応を行う事とする。

(1)新しいチャンスが巡って来た時に、とりあえず走るべきか、じっくり計画を練ってすすんでいくべきかをきちんと見定め、前者なら社長にいってもらい状況を見ながら私がその後の計画をたてていく。また時には一緒に走って私もすぐにとびこんでいける力をつける。

(2)社長と社員との間にしっかり入ってコミュニケーションの場をつくり、両者の距離を縮め、技術が継承されやすい環境をつくる。

(3)TOPをたてるという役割をきちんとこなす事で社長の自己評価と他者評価とのズレをなくしていく。

(4)自分自身の弱みである感情的になる部分を押さえ、スクールで学んだ事を基に部下1人 1人の特性と状況にあわせた指導が出来るようにする。

(5)マネジメントやマーケティング的な考えを社員に浸透させ、今までのやり方とは違う新たな方法で新規顧客獲得や人材育成を行い、会社を発展させていく。

 

以上5点をしっかりと実践し、社長のフォロワーとしての役割をきちんと果たしながら社長と共に会社を発展させ、そしていつかは訪れる「社長が不在」となる事態にむけてしっかりと力をつけていきたい。

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