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修了生論文

自社分析と課題解決 Builder Innovation

福岡校(F-college) 吉野 悟アーバンホーム株式会社 代表取締役社長)

―――はじめに―――

当期、当社は記念すべき第10期目を迎え、創業時より目標として掲げていた「毎年年間30%増の売上高」に対して平均41%増の推移、「地域№1着工棟数」に関しては宮崎県北部エリアでは第一位として注目を集めている。今後も地域№1の住宅会社として成長を続ける為に、現状を分析し戦略を立案する。そして、第11期には中期経営計画で定めた目標売上高20億円(経常利益1.4億円)を達成し、更に高い目標として「株式公開」に向けた戦略を実行することとなる。最終ビジョンは「九州で№1の住宅会社」として顧客にとってより良い価値を提供できる会社を目指す。そのため、現状分析を行い目標達成の為のアクションプランを考える。

 

【人員の配置】

 

【部署別組織図】

 

【受注残】

第10期は売上高16億円(施工棟数80棟)を目標としており、第9期末の受注残が約13億円(66棟)と別に不動産の想定売上約2億円を加えると期首にしてほぼ目標値を達成できる計画となる。ところが、受注残の確認を行ったところ、「土地が変更になる恐れがある」「融資が不承認の可能性がある」「お客様指定の造成工事待ち」「親が反対し始めた」などの着工時期が不透明化している案件が16件ある事が判明し、約3億円程度の契約が実質的に契約と呼べない状況にある。賞与査定時期の営業成績を上げるために実質的な契約条件が整っていない案件を計上している事が予想される。更に問題は条件が整っていない案件に他部署が時間を取られる為に業務効率が悪くなっていることが想定される。

 

【第9期の完工案件】

第9期の完成工事データ、全52件を分析した結果、1棟当たりの平均請負単価1862万、1棟当たりの平均利益が446万で契約を締結していた。工事を完了した結果、1棟当たりの平均単価は1990万に上昇し、1棟当たりの利益も487万に上昇した。好ましいように思われる反面、設計完了後の仕様変更を伴う為に工事担当者の時間負担が相当であることが予測できる。

 

【職人単価】

2016年4月に発生した熊本地震により自社の直接的な被害は少なかったが、被災地では約3万棟が全壊・半壊となり、復興の為、地場の職人だけでは足りず自社商圏からも多くの職人が熊本に行っており職人不足となっている。尚、被災地の職人単価が高騰していることもあり単価交渉を受けざるを得ない状況となった。これにより受注残の案件に関しては1棟当たりの利益が約30万円減少し、現状のままでいくと売値を上げなければ経営に大きな影響を及ぼす事となる。

 

【メンテナンス】

工務部からのヒアリングによると、職人不足に関してはもう一点重大な問題が発生しており、オーナー様のメンテナンスが全く追い付いておらず、特に大工・内装のメンテナンスに集中しており、20棟程度がメンテナンス待ちの状況にある。このままだと大きなクレームとなりかねない。

 

以上を踏まえ、経営戦略組み立てる為、現在自社の持つ経営資源、かつ自社の強みをどのように活用し成長につなげるかを検討する為、社員全員に対し以下の要領でVRIO分析をもとにしたアンケート調査を実施した。

 

 

―――VRIO分析(自己評価)―――

対  象:25名(全社員)

採点方法:3.レベルが高い 2.競合他社と同程度 1.レベルが低い

評  価:各項目ごとに平均値を記載

調査手法:下記アンケート形式

 

分析の結果、上記のグラフの通り「設計・施工での項目が他と比較して悪い」と社員が感じていることが分かる。この結果をもとに工務部にヒアリングを行った結果、次の意見があった。

 

・勉強会を不定期に実施しているが、決定した業務改善が実際に現場で実施されていない。

・施工手引書を作成しているが規模拡大により新規の取引先にまで施工基準が統一されておらず、施工基準にバラつきが生じている。

・自社設計ではあるが細かい施工図まで手が回っておらず、各現場の判断で施工している。

 

他にも、特に差別化要素と言えるものがなく、実際に自社の強みが何なのか、という事を社員自身が把握してないことが分かる。社内の営業研修では次の3つをセールスポイントとして教育しているが、どれも社員にとって強みと感じていないと考えられる。

 

1.セミオーダーによる家造りのため品質やデザイン性が高い住宅を低価格で提供できる。

2.宮崎県北部エリア、着工件数圧倒的№1。

3.設計・施工・管理を一貫して行うので安心。

 

更に、経営者とのギャップを測るためグラフを重ねてみると次の結果となった。

 

上記グラフで分かる通り、「設計・施工」「財務」の部分で大きなギャップがあることがわかる。「財務」に関しては、人事考課制度の導入・退職金制度の導入・中期経営計画の発表・財務データの公開など、積極的に待遇面等を強化したつもりであるが、あまり理解されていないという事である。「設計・施工」に関しては現場でのトラブルや出来事が会社トップまで伝わっていないことが大きなギャップを生んだ最大の理由と考えられる。

 

 

――課題の整理―――

ここまで抽出した課題を整理すると下の表のような因果関係になると考えられる。対策すべき事項として「着工時期が不透明な契約」「オプションが自由過ぎる」「職務範囲が妥当でない」「職人不足」「コミュニケーション不足」以上5項目を改善する事で、表面上の課題解決につながると考えられる。次項からは各項目ごとに対策を図る。

 

 

―――対策と監査―――

 

対策1(着工時期が不透明な契約)

【引継ぎ条件の設定】

標題の課題だけであれば条件が整うまでは契約しない。という方法で解決しそうであるが、営業のモチベーションや期限に対する意識が薄れる可能性があるため適切ではないと考えた。根本の問題は「他部署が時間をとられる」ことであるため他部署が時間をとられない為に「引継ぎ条件を設定する」ことで解決を図る。具体例として下記のようなことが挙げられる。

・農地転用申請を確認するまで工務部は動かない。

・融資承認通知を確認するまで工務部は動かない。

・地目が農地以外であることを確認するまで工務部は動かない。

引継上、原則なくてはならない条件を設定し、権限を持った営業所責任者が、条件が整った事を確認したうえで初めて工務部が業務を開始する。このようにルール化することで、特別な場合を除いては工務部の負担を軽減させることができると考えられる。

 

 

対策2(オプションが自由過ぎる)

【オプションリストの作成】

オプションに手を取られる、という問題を解決するためにオプションリスト(名称は変更の可能性あり)を作成することにより、仕様やディティールを現場単位で最初から検討する必要が減り、施工管理課の業務改善に役立つと考えられる。原則として、下記3点は漏れなく作成する。

 

・予算(販売価格、仕入価格、仕入先)

・図面(施工図、商品詳細図、仕様書)

・プレゼン資料(お客様の価値訴求)

 

以上をまとめ、提供できる商品をつくりあげていく。本件に関しては1年の期間を設け、期間中に各現場の実例により様々なオプションリストを作成し、1年後にはオプションリスト以外は原則販売しないこととする。これにより、提供できる商品が明確になり、今後は更に質の高い商品の開発を行うことで、業務改善は勿論、売上拡大にも期待できる。

 

 

対策3(職務範囲が妥当でない)

【職務範囲の見直し】

当社では下の表のように職務を遂行している。今のところ時間単位でのデータは把握していないが施工管理課は基本的にほとんどの工程に携わっているのが分かる。現在当社で一番の人員不足は施工管理課であるが、重複を少なくすることで1名当たりの生産性を向上させることが可能と考えられる。但し、施工管理課の職務を減らすにあたり他部署の職務が増えるなどの弊害がある。そのため今回は関係が大きい、CS課、施工管理課、設計課の各代表者と、調査やデータを集計する施工管理課、意思決定者として社長、以上5名で職務範囲を見直し改善を図る。施工管理課1名当たり年間15棟の完工、設計課1名当たり年間30棟の建築確認、この2点を目標に、どうすれば目標値を達成できるか検討する。

 

 

対策4(職人不足)

【工事の標準化】

職人不足を解消する対策の一つとして、工事の標準化が挙げられる。現在ある程度のディティールは当社オリジナルの施工手引きを作成しているが、下記のような細かな部分は現場で判断している。

 

・畳コーナーの高さ

・収納棚の奥行

・階段のデザイン

 

このようなことが現場監督から指示がでるまで職人は手待ち状態となり、効率的な仕事ができない。本件に関しては、現場監督にヒアリングするだけで相当の標準化できる項目が挙がると考えられる。項目ごとに標準化した図面や仕様書を作成し、オプションリスト同様に当社独自の施工方法を確立する。この方法を用いることにより職人の作業時間の増加を可能にすると共に現場監督の負担を減らす事にも大きく貢献できると考えられる。

 

対策5(コミュニケーション不足)

【各種仕組みの導入】

最後の課題となるが、近年はエリア拡大に伴いコミュニケーションを図る社員が限られてきた。社員とのコミュニケーションを図り、コンセンサスをとる方法としては「質の高いコミュニケーション」「特別な機会をつくる」、この2点を重大に考え、今期は下記事項を実行する。

 

・利益連動賞与の導入

(営業利益の30%程度を賞与として社員に還元、会社と社員で利害を共有する目的)

・セールス・フォース・アシスタントの導入

(1月から導入しているが、日々の業務の可視化を図る)

・営業合宿の実施

(5月・10月に営業社員向けに実施、共通の強みを理解することが目的)

・新入社員研修の導入

(4月に新入社員向けに実施、入社時点から理念共有することが目的)

・マネジャー合宿の実施

(6月・12月にマネジャー向けに実施、管理方法やビジョンを共有することが目的)

 

 

―――おわりに―――

ここまで様々な課題の抽出と解決策を提示してきたが、全ての事をいまから始める訳で、今は何も始まってはいない。これは目標達成の為のアクションプランであることに間違いないが、同時にお客様にとってどうなのか?ということは今後一番に意識しなければならない事であり、決して会社の都合だけで決めてはならない。参考までに現在の財務データを載せるが、これから更に躍進するうえでお客様にとってより良い価値を提供できる会社として、社員、そして取引先と共に、如何なる壁も乗り越えていきたい。

 

 

―――参考財務データ―――

【売上高推移】

 

【第9期損益計算書】

 

【第9期貸借対照表】

 

【経営指標】

※業界平均:売上高10億円~20億円且つ黒字企業75社の平均

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