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修了生論文

現状分析とビジョンの策定

福岡校(F-college) 増田 季新 (株式会社増田ホームリビングセンター )

序章 序論

本論では当社の業務改善のため、現状の分析を通して業務上の問題をとらえ、今後の発展へとつなぐ方策を提示する。

当社は大正6年創業、昭和54年設立、資本金1,000万円、三方善の理念、主に家具・寝具・インテリア関連をあつかう福岡県豊前市の地域密着型小売業であり、来年度を以て100周年を迎える。創業当初はふとん店として非常に限られたスペースの店舗で寝具のみを扱っていた。やがて元ボウリング場である敷地の広い店舗を買い取り、取り扱う商品は家具や建物の内装・外装施工など多種にわたるようになった。

だが昨今の不景気や、”市”でありながら3万人を割る市内人口の減少、少子高齢化等の煽りを受け、売り上げは25年前頃と比較して半分程度に落ち込んだ。現在もなおかろうじて横ばい、あるいは減少傾向をたどっている。結果としてやむを得ない銀行融資や個人への借金に多く頼ってしまい、ふくれあがる借金に長く悩むこととなった。健全な経営の立て直しのためにまずは現在の立ち位置を把握し、的確な改善策を打ち込み続けることが重要である。

同時に経営者である私のビジョン形成がいまひとつ固まりきれずにいることも大きな問題として捉えている。求めるビジョンが市場の需要と合致しているのか、考えれば考えるほど二の足を踏んでしまう自分の姿があり、これを早急に打破しなければならないことも重々承知していた。そのためにもやはり自社や社外の分析を進めることが先決だと感じる。

 

 

第1章 当社の現状と市場調査

 

第1節 財務分析

そもそもこれまで我が社は「分析」というものを突き詰めてやっていたとは言い難かった。財務戦略に関しては会計事務所やコンサルタントの助言に頼りきり、現状打破としての企画はほとんど”現場のカン”だけで打ち出していったといっても過言ではない。この状態ではコンパスを持たず闇雲に航海をすることと同じだ。

以下は、平成23年8月1日から平成28年7月31日の5期にわたる当社の財務諸表を参照し、さらに経営分析を行ったものである。それぞれの結果から「よい傾向」と「改善すべき傾向」を箇条書きにした。これらを踏まえて会社の懐状態を適切に見極めたい。

(※財務諸表については本稿では削除)

 

 

財務諸表から読み取る「よい傾向」

5期間の初期から終期にかけて売掛金を抑えられている。

・おなじく短期借入金が減少傾向にある。

・おなじく未払費用が減少傾向にある。

 

5期以前から売掛金のふくれあがりが課題となっており、既に回収不能となった焦げ付きも多く散見されていた。これらの詳細を把握し早期回収の意識を社内に浸透させていくことで不良な売掛金を抑えられつつある。実際はまだまだ浸透が不十分だと感じており、社員の回収遅延によるペナルティを導入検討するなどより意識を向上させたい。

昔から個人からの借り入れの負担が大きいことも問題で、これは早期に改善すべき課題と捉えていた。この対処については、得られた利益をなるべく借入金減少にまわし銀行からの融資でまかなうことで、H24期からH27期にかけて短期借入金が大幅消化できている。短期借入金が減少している分、固定負債の減少にまわしていきたい。

 

■財務諸表から読み取る「改善すべき傾向」

・総売上高はH24期に一度伸びたが、その後は再び横ばいとなっている。

・H27期に支払手形が25%増加。

・当期純利益が総じて低調。

 

手形決済になるべく頼らない体質を目指していたが、H27期に25%増加する結果となっている。各期の総売上高で販管費や支払利息等をまかなう力が足りておらず、やむを得ず手形で支払いを先送りにしてしまう傾向が読み取れる。

また当期純利益も総じて低く、毎度ギリギリ黒字か、というところである。余剰在庫を把握し早期的に現金化していく、削るべき費用はやはり詳細に把握し削っていくなどの対策をとるなど、中長期での売上高増加計画はやはり必要だと感じる。

 

■経営分析から読み取る「よい傾向」

・自己資本比率が年々増加している。

・売上高増利益率も年々微増。

・固定長期適合率5期とも100%以上を達成。

 

■経営分析から読み取る「改善すべき傾向」

・ROA(総資産利益率)ROE(純資産利益率)は軒並み低調。

・インタレストカバレッジレシオ、売上高営業利益率が不安定。

 

抱えている借金がいかに弊害をもたらしているのか不安な部分はあったが、予想に反して自己資本比率はさほど悪くないことが分かった。H23期は98%、H24期からはすべて100%以上を達成している。これは借入金の減少が大きく影響していることがわかる。売上高増利益率については社員への意識付けが比較的しやすく、社員各自にあらかじめ指定した粗利率を下回らないよう繰り返し徹底させたことが利益向上につながった。

ROA、ROEは残念ながら低調だ。先ほど述べたように全期にわたって当期純利益が低いためそれがそのまま数字に表れている。特にどの期間も営業利益の低調が原因となっており、売上総利益で販管費をまかなえていない現状が明らかになった。これでは効率の良い経営体質とはいえない。

まずは立て直しのために「出るお金を少なく、入るお金を多く」できる部分を徹底的に判断し、3ヶ月分の利益をプールすることを視野に余裕のある資金繰りを実現したい。そのためには当期純利益***万円以上を確保することが目標である。

 

第2節 強みの分析

当社はなにができるのか、なにが喜ばれているのか、誰を喜ばせることができるのか。「大手企業では不向きな、顧客への地道で継続したアフターケア」など地域密着型なりのステレオタイプな回答に留まることなく、実の姿に迫った更に真実味を感じる強みを探りたい。

SWOT分析

  プラス要因 マイナス要因
内部環境

 

強み(Strength

・  中高級ランクの商品が得意

・  実務経験の長い営業スタッフ

・  オーダーによるきめ細かな家具ニーズ対応(家具製作スペースがある)

・  贈答品や服飾・宝飾などの幅広い展開

・  出張費・施工費・処分費等のコストカットサービス

・  憩いの場所としての側面もあり、顧客の滞在時間が比較的長い

・  社内スタッフだけでパンフ・チラシデザインの完パケが作れる

・  美術・音楽の文化的興業に強く、お祭りやコンサート等、非定期に文化イベントを開催

弱み(Weakness

・  低価格商品は少なく「当社は高い」イメージ

・  社員高齢化(定年退職)によるスタッフ数の減少と、若いスタッフの不足

・  新規顧客を獲得できていない

・  地元以外の営業展開が乏しい

・  雑貨の展開が少ない

・  販売減による不良在庫の増加、それに伴う新商品の入荷減少

・  会社HPを立ち上げていない

・  社内スタッフのコンピュータリテラシーが少ない

・  思うように収益改善が進んでいない

外部環境 機会(Opportunity

・  地元では家具小売店が減少しており競合は少ない

・  高価格帯の商品を扱う店は地域に限られている

・  家具屋は家具屋、という枠組みから脱却できている店舗は少ない

・  商圏内にはゆっくりくつろげる店舗が少ない

・  東九州道の開通により遠方からのアクセスが以前より容易に

・  複数の地元ラジオ局との関係が厚い

脅威(Threat

・  地元(豊前市)人口が年々減少傾向

・  材木や原料等輸入資材の価格高騰

・  家具業界市場全体が低調でありこの傾向が当分続くと見込まれる

・  家具商品自体がリピートに不向きな商材である

・  新築アパート・マンションに備え付け家具が多い

・  低価格でも満足する顧客の増加

・  他社ネットショップの家具商品は薄利多売品が蔓延

・  オーダー家具製造の独立業者増

 

当社の営業スタイルは「安いものを何度も買い換えるより、品のよいものを長く使っていただく」ことを強みとしており、特にこの点において地元商圏における競合は少ない。反面、高齢化による一人暮らし人口の増加や景気低迷による顧客単価の減少により、高品質商品の需要が目に見えて減少しているのが課題である。それでもなお、日々ご来店頂く顧客への価値アップトークが得意であることは強みであり、この点は今後も生かし続けていきたい。

ただし分析にもある通り、地元頼りには限界があることが明らかである。東九州道の開通により遠方からのアクセスが容易になったとはいえ、地元市内に訪れる魅力はまだまだ乏しく、明確な交通量アップにも至っていない。地元豊前市の人口は平成10年から人口3万人を割り、近年では毎年200〜300人の人口が減少し増加の見通しがたっていない(※引用1)。こうした観点から地元商圏外への販売促進計画が必要であると考える。現在は公式の会社ホームページを立ち上げておらず、コンピュータリテラシーの乏しい社内スタッフだけでは早急なネット運用拡大は厳しいが、スマートフォンの普及が当たり前となっている今、ゆくゆくは当社の情報を商圏外へアピールしていく必要がある。

 

第3節 市場分析

当社はどういった価値を創出し、顧客に提供できるのか。単純に店舗内でただ考えもなく商品を売っていくだけでは先行きが不透明である。大手ではすぐにできないが、小回りの利く当社ならではのサービスがあるはずだ。商圏の市場を改めて分析し、当社の立ち位置を見定めたい。

 

【セグメンテーション(市場細分化)】

家族構成 二世帯 / 核家族 / 夫婦 / 独身(実家) / 独身(一人暮らし)
嗜好 デザインを重視する / 機能を重視する
購買行動 高付加価値で価格の高いものを好む / そこそこの品質で安いものを好む

 

【ターゲッティング(絞り込み)】

上記から自社が提供できるサービスをふまえ、高品質で付加価値が高く、より情緒的なものを求める既婚層を選ぶことにした。

 

【ポジショニング(当社の立ち位置)】

 「価格と得られるベネフィット」を軸にとらえ、地元商圏外の店舗も含めると上記のように幅広く分散するが、商圏内店舗のみで捉えても主な対抗馬は「ニトリ・ナフコ」であり、立ち位置は明確に分かれている。ディスカウント商材の展示をゼロにする必要はないが、そういったコストダウン系の大幅な品揃えでわざわざ真正面から他店舗とバッティングさせれば先がない。「当社は高品質である」という、先人がこれまで長年苦労して育ててきたイメージをまず大切にし、高品質だからこそ得られる情緒や信頼そのものを軸足に当社の価値を上げていきたい。

 

 

第2章 今後の展望

 

第1節 考察およびこれから目指すビジョンについて

以上の分析をふまえて、これから目指す道標をまとめたい。

・己資本比率は良いものの、当期純利益が軒並み低く要改善

・売掛金の早期回収、不要コストの見直し等で今後3ヶ月分の貯金を目指し健全化を

・商圏外にも情報アピールできる体制(サイト開設等)づくり

・高品質・高付加でより情緒的な価値を提供できるポジショニングへ

 

当社の事業ドメイン(事業領域)を洗い出すと、家具・寝具・インテリア&エクステリア関連の商品販売や、一部催事では服飾・宝飾・絵画・健康関連等の商材を扱う小売店舗、という当社の姿がある。ここまでなら似たような店舗は地元商圏内にもある程度存在し、いまひとつオリジナリティを確立しがたい。この領域から抜け出すために、今後は単なる「家具の小売り」から「ライフスタイルショップ」へと、暮らしの機能を拡大解釈し価値を提供する事業転換を掲げたい。家具・寝具の小売りのみならず、暮らしに直結する機能性を店舗に取り入れオリジナリティを確立させたく考える。たとえば、お客様がゆっくりとくつろげる第三の場所を提供するスペースを設ける。地元には喫茶店が少なく、休憩時間をつかって他人とコミュニケーションを取り合う場所は限られている。そこで広い敷地をもつ当社店舗内にカフェを併設し、訪れた顧客同士と会話を交わす拠点となれば新しい客足が期待できる。更にブックカフェとしてライフスタイルに関連したあらゆる書籍も展示すれば、より情緒的な顧客満足や滞店時間の向上も望まれる。これにはさらなる市場調査や新規の取引契約、財源等が必要で迅速な転換には現状限界があるが、地域密着の特色を生かしつつより機能的に価値を広げ多くの人々に幸せを与えられる店舗へと発展させたい。暮らしを考えるすべての人へ当社なりにできる豊かさを届ける。これが当社の展望となるビジョンである。

 

引用文献

1.豊前市公式ホームページ「豊前市人口統計 毎月の人口を報告」

http://www.city.buzen.lg.jp/sisei/toukei/jinko.html

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