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修了生論文

自社における板金塗装部門の今後について

福岡校(F-college) 川上 清行

1. 研究動機

自社では部門別での評価を行っている。最近の月次資料の数字に見られる一人あたりの作業工賃(工場長を含めた部門の工員数で部門の工賃売上を割った金額、事務員は工員数に含めていない)を比較すると重機整備部門、小型整備部門、大型車整備部門、板金塗装部門の順番となることが多い。また入庫台数、売上ともに年々減少している状態である。しかし板金塗装部門の社員は毎月の売上成績を全社員の前で発表されているが、なんらその後の行動に変化が見られないように感じる。お客様と直接対応することの少ない部門でもあるだけに表情も暗く挨拶も元気がないようだ。会社としても入庫促進に対する行動がお客様に届いていない状況である。今後の板金塗装部門をどうするべきかを考えたい。

 

 

2. 現状分析と評価

 

2-1 板金塗装業の今後

車体整備士(板金塗装工)の減少、高齢化が進んでいる。自動車ボディーのプラスチック化により今後板金作業は減少し交換作業が増加すると考えられる。さらに鉄の使用量減少、外板だけでなく骨格までがカーボンファイバーの車種が出てきており新素材の接合や塗装に関しては新技術への対応は不可欠である。自動ブレーキシステムの普及により追突事故は減少する。しかし車を傷つける場面は追突事故のみではなく側面の修理やバック事故など様々であり、今後も外装の修理に関する需要は確実にある。洗車市場では簡単に施工できて、ワックスよりも効果が持続する簡易コーティング剤が支持されている(固形ワックス価格の3倍程度の商材)。すでに販売数量でも固形ワックスを上回り、洗車市場全体をけん引する動きを見せている。また、ケミカルメーカーの調査によれば新車時の6割がコーティング施工を実施している状況という情報があった。自社との取引がある地区内のディーラー数店舗に確認したところ新車購入時の目標施工率がAディーラー(40%)、Bディーラー(50%)、Cディーラー(50%)、Dディーラー(50%)とのことで各ディーラーともほぼ目標数字はクリアーしているとのことであった。ボディーコーティング施工車の場合、自分でワックスをかけるより洗車にかける時間を短縮できるメリットが認知されているようだ。しかしながら自社を含め近隣の自動車整備工場では新車購入の際、見積りに入れているが最終的に金額を抑えるため外しているという工場が多い。

 

自社地区内で整備振興会青年部所属の6工場に調査を行った結果

(自社以外の付帯率はそれぞれ調査した工場の方の感覚の数字である)

ボディーコーティング 付帯率 自社にて施工 購入ディーラーにて施工
自社 13.3%
あ自動車 10%
い自動車 10%
う自動車 40%
え自動車 10%
お自動車 20%
か商会 10%

 

自社にて施工している理由として利益率の高さが魅力であり料金の約3/4が工賃売上である。新車納車日を決めておけば比較的時間の融通が利く。反対に購入ディーラーにて施工している理由としては施工後の溶剤の乾燥場所が確保できない、色ムラ等のクレームが心配、ディーラーとの割引金額の条件となっていることもある。

 

2-2 自社の現状

工場長から見て、部下が行う作業に関しての不安はないとのことであった。お客様からも納期、品質で喜んでいただいている。社員は仕上がりに自信を持っており、金額に対して妥当な品質を保っていると考えている。しかし入庫台数は年々減少しており、毎日の仕事量を見てみてもほとんど残業は無い。以前は板金塗装をこまめにされていた方でも車に使う金額を抑えたいと考えられ、安全面の修理が先で外装修理まではしないというお客様が増えている。車の使用年数も増加しており、少しの傷は仕方ないと考えるお客様も増えているようだ。入庫に関しても待ちの商売という感覚が強く、お客様からのお申し出があってからの対応となっている。今までのやり方で現状やりきれている状態のため新技術の習得に消極的である。機械設備の老朽化はあるが社員からの入れ替えの要望はなく、現在入れ替えの計画もない。工場長のみが金額の提示をするようになっているため、損傷が大きな事故が続いて入庫すると見積りに時間がかかり、作業を始めるが遅れてしまう。板金塗装部門の社員は見積り研修への参加の経験もあり、ある程度の金額提示を行える素養はある。しかし自分の親しい人へのみの提案にとどまっており積極的な受注活動へは繋がっていない。工場長としては社員の出した見積金額と実際行った作業金額との誤差は許容している。差額が発生した時のペナルティー等は無いのだが、社員としては実際の金額との損失額を自分の責任にされたくないという気持ちが残っている。その反面、正確な見積もりを作るようになろうという姿勢が感じられないのは問題である。事故は計画通りには起きないので与えられた仕事は十分こなしていると感じており、売上目標に対する達成意識も低い。板金修理に関しては他店と見積りを比較されることは少なく、お客様の納得する金額かどうかで受注が決まる。慢性的に代車が不足しているという意見に、「実際代車が増えれば入庫台数が増えるのか」との問いには誰も発言は無かった。代車が必ずしもいらないお客様にも代車を出しているのではないかという意見が出た。自社でのコーティング施工実績は伸びていない状況である。

 

2-3 入庫形態と売上構成

売上管理を入庫のきっかけ別に5つに分類している。

 

ア(板金-車検入庫・・・車検入庫と一緒に板金塗装を受注する場合)

お客さまの車検をお預かりした際、外装の修理も同時にご提案している。せっかく車検して次の車検期間は使用するのだから、この際内部(車の性能)だけでなく外部(見た目)もきれいにしようというお客様の想いから受注をいただいている。どうしても車検費用との合算となり金額が高くなるため、車検の見積もりが出た際に外装の修理を取りやめられることがある。

 

イ(板金-A入庫・・・Aディーラーからの下請けの場合)

条件として作業工賃割引、部品は先方からの提供、引取納車代車提供となる。

 

ウ(板金-他入庫・・・他社工場、他ディーラーからの下請けの場合)

条件として作業工賃割引、部品持込み、引取納車がある。

 

エ(板金-商事入庫・・・グループ会社で販売した車の場合)

中古車の仕上げや新車コーティングである。

 

オ(板金-一般入庫・・・自社のお客様と提携保険会社からの事故入庫誘導の場合)

自社のお客様からの修理がもちろん売上、台数ともにメインとなっているが年々確実に数字が下がっている。簡易補修は仕上がりの面で後々クレームになりかねないと積極的には取り組んでいない。入庫誘導により事故車両の入庫もあるが年間数台となっている。ロードサービスから直接入庫となることはほとんどなく、遠方で引取時間が遅い等、他の工場がキャンセルしたケースがほとんどである。代車の提供待ちの間にキャンセルとなることもある。条件として作業工賃割引、代車提供、お客様からの集金が必要である。

 

その他(救助・事故作業・・・ロードサービス作業)

ロードサービスについては主に取り扱っている損害保険会社との提携のみという会社も多い。自社では多数ロードサービス社と提携しているため自社全体として出動件数は月平均40件程である。板金部門としては脱輪救助や事故搬送が主なロードサービスとなるため月平均5回程度出動している。板金塗装の作業内容によっては一旦はじめてしまうと中断することがむずかしいものもあり、他部門が出動することが多い。

 

2-4作業環境について現状をまとめる

人員(平成29年1月31日現在)

工場長1名   作業行程管理、見積り、引取納車

作業者2名   板金作業

作業者2名   塗装作業

女性1名    事務

作業スペース

フレーム修正機 1台分、板金修理 6台分、塗装ブース 2台分

簡易ブース 1台分

代車

板金工場用代車として軽乗用車4台。その他に自社全体で軽乗用車9台、普通乗用車6台、軽トラック4台、2トントラック2台、2トンダンプ1台、マイクロバス2台を入庫状況に応じて使用出来る。

 

作業スペースにおいては現在の入庫台数に対して十分である。作業者が9名在籍していた頃のやり方と変わらず板金と塗装を分業で作業している。

 

2-5 3C分析 競合他社との差別化

一般の板金塗装工場とは違い、分解整備等(エンジンの脱着、ブレーキ機構などの取り換え等)は整備部門と連携することで板金部門の人数が少なくても修理に取り掛かる時間のロスを防ぐことができ急な入庫にも対応できる。ディーラーの下請けもしていることで‘きちんと直せる’という信頼を入庫していただく他工場の方からも持っていただいている。修理するからにはきちんと直るのが当たり前と思われがちだが、金額と作業時間の兼ね合いから下地の処理が雑な場合や、修理していない塗装面との塗膜の厚さの違いなどがみられる場合がある。少し見ただけでは判らない部分や、時間が経過した後に出てくる不具合など後々のトラブルの要因が無いことを元請けからは求められる。元請け会社のお客様は自社との直接取引がない方がほとんどである。下請けに出すと言われたお客様の中には修理に出した時と受け取った時の走行距離が違っていると「他の修理工場まで持っていくのに自分の燃料を使われた」と感じられるお客様もいらっしゃる。また、走行時の飛び石での損傷や万が一の事故等の危険回避としてということで全車両積載車での引取納車を行っている。板金塗装の行程は元の状態に戻すことを前提としているが、仕上がりにある程度妥協することで作業工程を減らし、金額を抑えることができる。通常塗装作業は微妙な色の違いが出るのを防ぐため小さな傷でも広範囲の塗装面の剥離や下地処理を行い1区画(ドア1枚、バンパー1本などが最少範囲)以上の塗装が必要となる。場合によっては隣の区画と色を合わせるためぼかし作業を追加する場合もある。直接お話が聞けるお客様であればバンパーの半分やドアの端のみを塗装する部分塗装をすることで1~2万円程度の簡易補修にも対応できる。新車のボディーコーティングはもちろんボディーについた小傷等の磨き作業が必要な中古車にも対応できる。磨き作業とは、洗車キズをなくし劣化により荒れていた塗装面を平滑にすることで失われていたボディーの艶を蘇らせることである。傷の程度で磨き作業により取れる小傷なのか、または塗装が必要なのかという判断は難しくお客様の使用過程車では誤解を生むような説明にならないよう慎重な対応が必要である。自社での中古車販売の際は先に磨き作業を行った後の状態をお客様に見ていただき、その後コーティングの受注を頂けるか判断できるので、その点では安心してお勧めできる。

 

 

3. 今後の取り組み

今回自社の鈑金塗装部門において現状分析したところ1番の問題は仕事量の確保が出来ていない状況である。自社としては従来の鈑金塗装にてお客様に評価していただいている。しかし今後は外装修理に関してお客様の気軽に修理を頼めないという状況を取り除くためにも簡易補修に積極的に取り組んでいく必要がある。社員へのヒアリングにおいても売上金額の減少や部門の評価に関しては危機感を持っているが、自分たちに解決できる問題ではないという感覚であることは否めない。板金塗装部門以外の社員が正確な見積もりを出来るようになる必要は無いが、金額の構成など見積の仕組みを理解する基本的な勉強会(半日程度の研修)を実施することで、会社全体で入庫促進の重要性を共有することは可能であり必要と考える。勉強会に関しては提携損保と話し合い、自社に必要な情報を入れた研修を依頼する。代車の問題に関しては受付時の正確な聴き取りと入庫調整、代車不要割引(3日目から代車無料提供)を併用しながら増やさない方向で検討していく。自社から10km以内のお客様や近隣取引先企業の社員様通勤車、農家の方の自家用車、をターゲットとして1日で作業の済む簡易補修の案内を行う。簡易補修に関する訴求チラシを作成しまずは手配りによる受注活動を行う。営業に関しては査定まで行う意識を持ってもらう。小傷のうちに修理を提案することが大切である。簡易補修のサービスシステムもあり、必要な時があればご利用いただくのが目的である。また、もともと利益率の低い料金で金額設定のため必要以上の安売りはしない。鈑金と塗装の分業制は人数に余裕がある場合やボディー全体の半分を修理するような重作業に対して、1台を仕上げる時間が短くなるメリットはある。しかし多数の車両が同時に入庫した際や工員の仕事量を平準化するためにも今後は研修を活用しながら、一人で1台を仕上げられる技術を身に着ける必要がある。人数を増やす事だけでは売上を伸ばすことはできないが、2名のベテランが居るうちに1名工員を増やし最低でも4名体制での工場運営を行う。4人体制になった場合も考え、全部門での入庫状況を共有し工場長の引き取り納車を減らすよう協力する。お車をご購入の際、次回車検付メンテナンスパックの販売により突発的な整備を減らし外装の修理もお客様に検討していただく。新車購入すべてのお客様に自社ボディーコーティングをお勧めする。

 

今後のスケジュール

提携損保と見積研修会の打ち合わせを2月中に行い、3月10日に見積研修会を全社員で行う。理解度を把握し、必要な者には毎月の全体会議後に再度研修を行う。また、2月中に簡易補修の金額設定を工場長と行い、事務の本田を中心に研修会までにチラシを作成する。毎月の簡易補修台数目標を30台とし、新たに簡易補修売上項目を追加し台数と金額の管理を行う。毎月22日に月次売上が確定するのでそのタイミングで板金部門の会議を行い、目標達成や取り組みの評価と今後の対策を検討する。鈑金塗装部門の社員は通常の鈑金塗装に関する見積研修及び技術研修へ半年ごとに参加する。コーティングの受注率を上げるため、3月1日の営業の販売会議にて提案内容を見直し、車両販売時のルールを再検討する。その後毎月の販売会議で受注率目標30%に向けた取り組みを検討する。また、半年後には受注率目標40%に設定する。

 

 

4.まとめ

今回の自社分析に関して日頃話す機会が少ない板金部門の社員の考えを聞く機会ができた。現在の入庫状況ででは確実に売上は下がっていくという事実を社員で共有できた。工場長も高齢となっているため良く状況を確認しながら次期リーダーを決める必要を感じた。今回は鈑金塗装部門に絞って考えてきたが、「お客様の求めているものが提供できているのか?」「お客様の立場に立った時の自社の魅力は何か?」を全部門の社員とともに真剣に考え、選んでいただける努力を続けていく。   以上

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