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修了生論文

「リーダーシップを学び、自社の改革に活かす」

福岡校(F-college) 石丸 泉 (株式会社陶もと )

1章 当初の改革

 

1 研究動機

私が、F-Collegeに入学したのは、リーダーシップを学びたかったからである。

2009年に結婚、義父が経営する陶磁器卸会社に入社したその日から、自社のあり方に驚き「この会社を改革したい」と思うようになった。しかし、私にはリーダーとしての資質に欠けるところが多い。思いが実現しない空しい毎日だった。

2016年末のF&Mによる決算書診断で、私が最も気がかりに思ったことは「良くも悪くも長い間ぶれていない=変わっていない」ということであった。やはり、改革が必要。

いつかきちんと勉強して、まずは自分が今より良いリーダーになりたい。そして、現社長である主人に立派な社長になってもらいたい。そうすれば、皆も改革に取り組んでくれるのではないか。ひいては、社員満足→顧客満足を実現できるのではないかという思いが、Fカレッジ入学という挑戦と、リーダーシップをテーマに選んだ動機である。

 

1-1

当時、自社は役員3名(社長=義父・経理=義母・営業=次男・主人)社員13名・パート3名の17名。うち、家族5名である。

 

当時について、強み・弱みを分析する(他従業員の声も反映)。

強み(プラス要因)

①アットホーム

②自由

③働き者

④親切

 

弱み(マイナス要因)

①ルールを守らない・守らせられない→ルールがない

・おしゃべりが多い

・社内を走る

・掃除をする習慣がない→暇がない・掃除の時間を与えていない

・ミスが多い 責任の所在が曖昧

・備品を大事にしない

 

②ワンマン経営→家族経営の弊害

・社長がすべての社員に直接命令を下す

・朝礼・会議が無駄に長い

・争いが絶えない

 

強み・弱みの分析にみられるように弱み(マイナス要因)が多い。

このような中で、私がまず問題だと感じたところは、社長自らが全ての社員に命令を下すところであった。また、社長の苦言から始まる毎日は、皆の志気を下げ、業務の妨げになっていると感じていた。そして、家族経営ゆえ、家族対家族・家族対社員の争いが絶えず、社内環境が悪く何とかしなければならない問題点であった。

 

兵法によると将にとって必要な5つの要素は、智・仁・信・勇・厳。そして、将にとっての5つのマイナス要素は、熱血過ぎること・情に流されること・生に執着しすぎること…

義父に不足しているものは、勇と厳。そして、情に流されすぎるところがあったと考える。

 

1-2 当初の取組み

当初の私の仕事は、出荷事務・小売・経理の引継ぎであった。

当初の取組みは、女性スタッフに対することは社長ではなく私が伝えること。

出荷事務のミスを減らすこと。ミスがあれば指摘し、改善策を考えること。一方で、主人や義母と協力して、社長が朝礼・会議にでることを減らしていった。また、家族同士の争いを減らすための話し合いの場を増やしていった。加えて、掃除の時間を増やしていった。そのようにして、徐々にルールを見直してきた。一方で、新たなルールを導入した。

①欠勤・早退・遅刻は書面で報告と承認

②備品の破損は報告。商品の破損について、報告義務と原価の半額を弁償

③朝礼に「職場の教養」の倫読を導入

④昼礼後、3時休憩までの2時間を黙々タイム(私語を慎む時間)の導入

 

2 現状と評価

・2016年現在の強み・弱みを分析

7年の間に社長交代・スタッフの入れ代わりにより、年代が若返り、会社が活性化して以前より不満が少ない会社になったように思う。何より、争いが減った。

先輩女性社員より「現在の陶もとは、子どものことで休むことへの理解があって恵まれている。」

部下である女性スタッフより「以前の会社では、出社したくないと思うことがよくありましたけど、この会社に入って4年、そう思ったことがありません」とうれしい言葉をもらえるようになった。

しかし、改善されていない点・新たな問題点もある。

以下、現状の強み・弱みを分析

 

強み(プラス要因)

①②③変わらず アットホームで明るい職場

④女性スタッフの仲が良い

⑤従来型のミスが減った

⑥ミスを防ぐための工夫をスタッフ自身が考えるようになった

⑦2代目継承が済み、現社長に権限が委譲された

⑧建設的な会議・朝礼ができるようになってきた

⑨新しいスタッフに限りルールを守る

 

弱み(マイナス要因)

①変わらず

②命令が分かれる→誰の言うことを聞くべきか迷う→命令系統が確立されていない

③人手不足

④欠勤が多い

⑤上からの指導を減らしたため、ゆるい会社になった

当初より、プラス要因が増えたのは、前出の⑨で示した通りである。結果、新しいスタッフはルールを守るが、従来のスタッフは守らないという統率の取れていない状態が続いている。社長と私が、リーダーとして認められていないということである。

 

 

2章

 

1 PM理論により“私”を評価する。

PM理論ではPはパフォーマンス(目標達成・課題解決)を意味し、Mはメインテナンス(集団の維持)を意味する。それぞれは掛け算の関係であり両方の要素が必要だと考えられている。

(株式会社エフアンドエム 幹部育成プログラムの診断結果レポートより)

女性スタッフ 7名により私を診断する。

①30歳代 勤続3ヵ月

②30歳代 勤続1年

③30歳代 勤続2年

④30歳代 勤続4年

⑤30歳代 勤続5年

⑥40歳代 勤続3年

⑦50歳代 勤続16年

 

診断結果はM型であった。

 

(P行動における現状)

「規則に従うことを厳しく言う」についてのリーダーシップ行動を充分にとっておらず、部下もまた充分だとは感じていない。

 

(M行動における現状)

「現場の気まずい雰囲気をときほぐそうとする」リーダーシップ行動が部下に伝わっていない。

 

2.前述の1を踏まえてリーダーとしての“私”はどうあるべきか

P行動 改善のポイント

私が規則に厳しくなく、部下も厳しさを感じていないと、組織の規範が低下する危険をはらんでいることになる。チームで守るべき規則についての認識を共有することが必要。

 

そもそも規則があっても守らない・守らせられない会社であったから、抗いながらも諦めることが多くなっていた。我々は、ルールを守ることで、ルールに守られる。リーダーとして、スタッフを守る責任を怠っていたと言うことになる。

これを機に、ルールを改善し、ルールを守らせる厳しさをもつべきであることを痛感した。

 

M行動 改善のポイント

部下の評価との間にギャップがある原因として、トラブルに対する不満が解決されないまま残されていることが考えられる。

トラブルが発生したら、まず最初に、当事者全員の抱く不満を聞きだすことを習慣化することが重要。

 

当初は、「部下を守る」という気負いがあった。近頃は部下が成長し、任せた方がかえって会社は良くなると思いようにしていた。頻繁に声掛をするようにしており、「大丈夫です」という返事に安心していた。声掛け程度で「困っています」とは言えるものではなかったのであろう。

 

アドバイスに従い今後の取組み

①毎週一回 15分間の女性スタッフミーティングを定例化する。

女性スタッフを対象に個人面談をし、不満を聞きだすことを習慣化する。

 

 

3章 経営理念

先日、朝礼で行っている倫読のテーマが、『経営理念』であった。感想を述べようにも、自社に経営理念はない。社長が「現在は経営理念がないが、これから作っていきたい」と苦笑い。

私が入社した頃は、茶色に変色して古くなった紙の経営理念が貼られていた。誰にも読まれず、誰の心にも届かない理念などあっても意味がない。だからこそ、ルールを守らない無秩序な状態が長い間続いているのである。

 

1 ビジョン

経営理念の確立の前にすべきことは、ビジョンの共有である。

では、私は“陶もと”をどのような会社にしたいのか?

 

1) 無駄な争いのない会社

仕事上の建設的な意見のぶつかり合いは、必要である。争いを恐れ、お互いが遠慮ばかりしていては、個人の不満が募るばかりであるし、やる気を失う。それは、会社にとっての損失でもある。

 

2) 整理整頓された、働きやすいきれいな会社

私が入社した頃に比べると、 現在では、女性スタッフで掃除当番を決め、きれいになってきている。年末と盆休み前の大掃除については、社長の働きかけと争いを経て、半日の大掃除をしている。

しかし、傘立てにたくさんの傘が差されたままであったり、玄関口の植木に立てかけてあったりなど、まだまだ改善する必要がある。

 

掃除についての働きかけは、当初、自分が率先してやるという方法をとった。しかし、それでは自身の不満が募るばかりでなく、周囲からは配慮に欠ける行為に映っていたらしい。共有する場所は、皆で協力しなければならない。自分が頑張れば、いつか皆も協力してくれるという考えは、組織の中では通用しないことを思い知った。ここでも、掃除の“ルール”が必要である。

 

3) 仕事に集中できる静かな環境をつくり、仕事の効率化を図る

自社は、私語の絶える間がなく、電話の声が聞こえない・用事を伝えたいのに伝えられない・騒がしくて仕事に集中できないなどマイナス要因になっていた。社員からの苦情がある一方で、入社当初は「おしゃべりが多い会社で驚いた」と言っていた人たちまでもが、皆おしゃべりになっていった。

 

昨年より“黙々タイム”を設けるに当って、反対したのは前社長の次におしゃべりな男性社員Yさん。「仕事上、すぐに伝えたいことが伝えられず仕事に支障をきたす」という理由であった。

「黙々タイムとは、いかに一人で考えて仕事ができるか工夫すること

どうしても今、伝えなければならないことと、終わるまで待ってよいことの判断をすることによって、一人ひとりの能力向上につなげる狙いがあります。

また、黙々タイムは、たったの2時間です。どうしても今伝なければならない要件以外は、終わるまで待っていいのでは」

ということで、実施することになった。しかし、Aさんのおしゃべりは黙々タイムであっても今だに続いている。今後の課題である。

 

4) 出社したくなる明るく元気な会社

自社は、総合的には元気で明るい会社である。また、女性スタッフの仲が良く、助け合い、良好な関係が確立していると思われる。人選については5年前より社長と私で担っており、スタッフから「二人の人選は上手」だと評判がよかった。

ところが、今回は大変な人選ミスをしてしまった。

 

11月から仮採用のHさんとYさん

梱包作業 Hさん

遠方からの通勤にもかかわらず、女性の中で1番に出社。

Hさんに倣いみなの出社時間が早くなった。

静かながらもいつも笑顔で、素直に仕事を習い、黙々と仕事をする。

1月末、3カ月の試用期間が終わるのを待たずに継続を伝えた。

 

事務所担当 Yさん

遠方からの通勤だが、こちらも早く出社。

静かで笑顔がない。

先輩スタッフに敬語を使わない。指導するスタッフが敬語で、習う側がそうでないという間違った光景。指導されることを嫌い、自分が困ったときだけ聞く。

Yさんの指導にあたっている女性スタッフに尋ねると「チェックされるのを嫌うのでYさんに見えないところでチェックしています。こういうスタッフはどこの会社にもいます。今までが良すぎただけです。私なら大丈夫です」と言う。

11月の採用当初、女性スタッフに指導を任せていたにもかかわらず、自身で注意したことがあった。その際「わかってますから」と言われたのだが、あまりの驚きに「わかっていますからではなく、わかりましたです」と叱ることができなかった。その後も同じようなことがあり、辞めてもらう決意をした。

しかし周囲の反対と、指導にあたってくれたスタッフに申し訳ないという気持ちに決意が揺らいだ。何より、私に勇気があるだろうかという不安があった。この3ヵ月、もったいないくらいにYさんのことで悩んだ。

人選段階で慎重になっていたのは、このような状況を恐れていたからである。

今回の最大の失敗は、私が指導役のスタッフを通さずに私自身で注意してしまったこと。私が、その都度、注意できなかったことにある。今後の人材育成の教訓にしたい。

1月27日金曜日の退社時、Yさんを呼び「3ヵ月間様子を観てきました。あなたは、うちの会社に合わないみたいですので、本日までで結構です」と伝え終えた。

 

5) 個人の能力が生きる会社

自社は、能力があるスタッフが多い。なかでも女性スタッフは、従順で働き者

であるばかりか、人柄も良い。黙々と梱包作業・納品書発行・丁寧な電話の応対と、

すべての仕事を早く覚え、今では彼女たちの働きがあってこそである。

陶器は、女性が購入し使うものでから、女性の意見が反映されるべきである。そ

れにもかかわらず、今だ、男性が商品開発を手がけ、仕入れて売る。

私は、商品開発から仕入れ・販売まで、女性を参加させたいと常々考えてきた。

その第一段階として、私は3年前より東京ビックサイトでの展示会に同行している。今年は東京ドームで開催中のテーブルウェアファスティバル2017に出展。

 

東京ドーム出展の2つの狙い

1.廃業などにより得意先の減少に伴う売上減少。それを補う新規開拓がなかなか難しいのが現状。ならば、少し方向転換してみようと考えた。小売業で売上不振の本業を補うことができないかということ。

 

2.女性の働く場を増やすこと。

自社の女性スタッフは、みな子育て中であるから直ちには難しい。しかし、彼女たちが子育てに一段落するまで先輩女性社員と私でつないでおきたいと思っている。

2 1)~5)の実現のための行動方針

1) 無駄な争いのない会社にするために、ルールの確立と共有

 

2) 整理整頓のされたきれいな会社にするために、掃除の時間を設ける

①掃除当番・出社時間の見直し

②男性社員 8:20~17:30

③女性社員 9:00~17:10

パート  8:50~16:00

10:00~17:10

8:50~17:00

休憩 12:00~13:00 15:00~15:10

 

3) 仕事に集中できる静かな会社にするために

①昨年から実施「黙々タイム」の粘り強い続行

②念頭の約束

ア 会社内を走らない

イ 備品を大切にする

2点を1ヵ月ごとに省みる

 

4) 出社したくなる明るく元気な会社にするための教育

①元気なあいさつの習慣化

②仕事上の会話は敬語で!

③指導される側はまずは「わかりました」の習慣化

 

5) 個人の能力が生きる会社にするために

①ミスのない確かな仕事→命令系統の確立(組織図作成P10)

②昼礼時の陶器についての3分間スピーチをする(月毎に交代)

③窯元展示会への女性スタッフ同行

④講習・講演会への参加

 

監査方法

①前述の行動方針を、全体会議で提案する。

②新たに女性会議を設ける。

③営業会議・女性会議で、まとめた意見を全体会議でそれぞれの代表者に発表してもらう。

④意見のすり合せ作業を行った結果、自社のビジョンとそれに伴う経営戦略を決定・実行する。

⑤項目別のルールが守られているかチェック・表にして可視化し、3月の会議で発表。守られていないチームには、次回までの取組みを決めてもらう。

⑥半年間守られない場合は、チームリーダーを交代する。

 

 

終わりに

本田総一郎氏のリーダーシップを研究し、夢を追い続け、夢を実現し、社員にも夢を追い続けることの大事さを示し続けた氏の経営者としての生き方に感銘を受けた。私にも夢があり、夢を実現し、スタッフにも夢を描いて仕事をしてもらいたいと思っている。

 

私は、Fカレッジで多くのことを学んだが、何より個人よりチームが重要であること。個人の力より、チームの力は絶大であるということを学んだ。そのことを皆に伝え、共有したい。以上を皆で取組む自社の改革としたい。

 

私が会社を辞めたいと思い続けていた3年ほど前、現社長が東京の展示会に同行させてくれた。そこから再び仕事にやりがいを見つけることができた。今年から東京ドームでの売出しに挑戦する。社員の反発が想定されたし、忙しい中に新たな大仕事をこなせるのだろうかと不安があった。

波佐見の同業他社は、展示会や売出し・イベントに、既に女性が進出している。会社の籠の鳥だった素直に良く働く女性スタッフたちに夢を描いて、夢の実現のための仕事をしてもらいたい。

まずは自分が喜んで出社し、朝礼で元気に倫読を読み、昼礼では3分間器の話、社員一丸となって黙々働き、3時になるとお茶を飲みながらひととき朗らかに笑い合い、残り数時間は残務の整理と明日の準備。そんな、理想の会社になるまで、君主である社長を支える補佐役として、このたび学んだリーダーシップを発揮したい。

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