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修了生論文

当社の現状分析とこれからの経営戦略

福岡校 (F-college) 西原 綾佑

1.動機

 

当社は今年度で創業30年を迎えます。企業30年説という事が言われる中でこれからの新たな30年をどのように乗り越えていくのかをいつも考えていました。しかし、未来の事を考えるよりもまず現在の当社の姿を正しく把握する必要があるという事にこのビジネススクールに入学して気づきました。

当社の社風として、「目の前の事を一所懸命にやれば道は開ける」「長期・中期の目標を立てても予定通りにいくとは限らないから立てても意味がない」といった考えが浸透しています。今まで目標を立ててそこから戦略を考えて物事をおこなうという事をおろそかにしてきました。そういったやり方で、なんとかここまでは来ることは出来ましたが、勢いや情熱だけで成長できた時代は終わったと実感しています。これからは会社の目指す姿を明らかにして、その目標を達成する為の手段・手順である「経営戦略」をしっかり立て行動していくという事を徹底します。

スクールで学習した経営戦略のフレームワークに沿ってこれからの経営戦略を確立させる為にも、まずは当社の姿を現状分析によって明らかにしていきます。以下に当社の経営理念・事業コンセプトを記載します。これらは創業から当社で大事にされ、社員の行動指針にもなっているので、これからも不変なものとして大切にしていきます。

またこれからの「経営戦略」との比較の為に現在の事業方針も示します。

 

1.1経営理念

誠実に行動し 情熱で成長する 仲間であろう

当社の経営理念にはお客様の事や事業の事には言及しておりません。社員は一緒に目標を達成する仲間であるという考えはこれからも変わらず持ち続けます。

 

1.2事業コンセプト

一、誰もが主人公になれる店

一、お客様の美しさを最大限引き出す店

一、お客様とスタッフが笑顔になれる店

 

1.3現在の事業方針

①業界的に客単価が下がる傾向がある中で、価格競争に加わらず品質で勝負する

②新しい情報や技術をどこよりも早く取り入れ、技術力や商品力で勝負する

③スタッフの教育のスピードを上げて一人前に早く育てる

④人材確保をおこない、店舗展開をする

⑤業界内に影響力を持つために、メーカーの商品開発には積極的に参加する

⑥スタッフの独立を防ぐために、報酬を高めに設定していく

 

これらの事を事業方針として現在経営をおこなっています。

 

 

2.企業概要

 

会社名 株式会社フレア
設立(創業) 平成4年9月1日(昭和63年3月1日)
所在地 福岡県福岡市南区向野2丁目14番11号
社員数 81名
資本金 1,000 万円
業務内容

 

美容室経営、マツゲエクステ店経営、美容技術コンサルタント、

技術講習、ブライダル事業

店舗数

 

 

 

美容室:福岡市南区2店舗、福岡市中央区2店舗、福岡県春日市1店舗

福岡県糸島市1店舗   計6店舗

マツゲエクステ店:福岡市南区1店舗 福岡市中央区1店舗

福岡県春日市1店舗   計3店舗

 

 

3.問い

 

現状分析を行い、当社を取り巻く環境を含めた現状を正しく把握します。その後、現在の事業方針と比較をおこなったうえでこれからの経営戦略を模索します。

 

 

4.研究手法

 

「ファイブ・フォース・モデル」による業界分析で当社がこれから生きていく業界内の脅威を、また「PEST分析」による外部環境分析で外部環境が自社に与える影響を把握します。その後、「SWOT分析」と「VRIO分析」で自社の強みと弱みを分析してこれからの経営戦略を確立します。

 

 

5.研究結果

 

5.1ファイブ・フォース・モデル

まず、「ファイブ・フォース・モデル」による美容室業界の脅威を下記に示します。

 

 

業界内の脅威

①人口減少による総客数の減少

②美容学生の減少による新卒美容師の不足(美容専門学校入学者はH15年の26,000人からH27年では18,000人まで減少)

③低価格店舗の増加に伴う価格競争

④独立による全国的な店舗数の増加と顧客の取り合いの激化

⑤低所得者増加による美容離れ、及び美容にかかる金額の節約

 

新規参入の脅威

①資本を持った異業種会社の参入

②カラー専門店などメニューに特化した美容室の形態の多様化

 

売り手の交渉力
①新商品の発売が続くので、既存商品がすぐに型落ち商品になる

②薬剤の原料高騰による材料の値上がり

③家賃の高騰

 

買い手の交渉力

①ネット通販の普及により、商品を安く購入することが可能になった

②新規客向けの割引サービスを利用する為に色々な店舗を新規客として渡り歩く定着率の低い客層の増加

 

代替品・サービスの脅威
①ホームカラーなどのホームケア商品の性能向上

 

5.2PEST分析

次に「PEST分析」で外部環境が自社に与える影響を分析する。

 

P(政治的要因)

①法改正による美容業界参入ハードルの低下

②外国人の技術者の受け入れが検討されている

③労働時間・残業時間などの法律順守がもとめられている

 

E(経済的要因)

①消費税率引き上げに伴う美容代の節約の恐れ

②年々少しずつ美容マーケットは縮小している

③多くの業種で人材不足の為、人件費の高騰

④所得格差が広がっている

 

S(社会的要因)

①ネット通販の普及による商品売上の低下

②外見だけでなく体の内面・健康の需要が増えている

③働く女性が増えているので、美容室に行く時間の確保が困難だが需要はある

④趣味の多様化によりお金をかけるものがライフスタイルによって異なる

 

T(技術的要因)

①薬剤の品質向上による施術時間の短縮

「ファイブ・フォース・モデル」「PEST分析」の結果から、美容業界は少しずつ総売上・労働力が減少している業界にも関わらず、新規参入のハードルが低い、また独立によって店舗数が増加していくといった、これからさらに競合が増えていく傾向であることが分かります。人口減による総客数の減少という事に加え来店回数の減少、客単価の低額化は業界全体の総売上が減る要因となっている。

業界的にマーケットは縮小しているのに競合は増えているという状況であることを把握したうえで、当社の強みと弱みを「SWOT分析」「VRIO分析」により確認してこれからの経営戦略を確立します

 

5.3SWOT 分析

内部環境 強み S 弱み W
  • スタッフの離職率が低く、経験・技術力のあるスタッフが多い S①
  • 業界30年で知名度とブランド力がある S②
  • 業界内に影響力があるので仕入価格を低く抑える事ができており、また新商品や様々な情報が優先的に入ってくる S③
  • 美容学生が減っていて新卒を取りあう業界の中で入社希望の学生が多く人材確保ができている S④
  • 教育に力を入れていて技術力が高く、他社に技術コンサルタントを行っている S⑤
  • 美容室全体で約一万人の固定客がいる S⑥
  • 売上がスタッフのスキルや出勤状況によって変動する W①
  • 新規客数が減少傾向にある W②
  • スタッフの教育に時間がかかっている W③
外部環境 機会 O 脅威 T
  • 人材を教育し店舗展開を続けることで県内でのシェアを拡大し知名度を上げ、更なる人材確保に繋げる S①②④
  • 業界の中で低価格化が進む中、高い技術力、情報力、商品力で高単価店舗として周りと差別化を図る S③⑤
  • 技術コンサルタントとしてだけでなく、美容室運営の支援を行う顧問契約のしくみをつくる。グループを作り、傘下の他社サロンを増やす     S②③⑤
  • 美容室の固定客に使ってもらえるようなサービス・別事業を考える S⑥
  • 自分の指名客を連れて退社するスタッフの独立 W①
  • 総客数減少による
  • 売上減 W②
  • 出店計画に人材育成が追い付かず、店舗展開に時間がかかってしまう W③

 

これらの分析結果から、スタッフの離職率が低く、経験・技術力のあるスタッフが多い事(S①)、新卒の人材確保ができている事(S④)、さらにスタッフの高い技術力を活かした技術コンサルタントを行っている事(S⑤)とスタッフ力が当社の最大の強みであると確信しました。人材確保が難しく既存店の労働力も足りない業界の中で、人材を活用して店舗展開をしていくのは今後の大きな経営方針となりますが、その中で技術力・商品力を武器とした高単価サロンであり続けるという事も必要なことであると再認識しました。

これは現在の事業方針とも一致します。現在、低価格サロンの増加による業界の低単価化は進んでいますが、高単価でもそれ以上の価値を提供することで高所得者や美容に関心がある顧客層を取り込んでいくという戦略は価格競争に巻き込まれる事なく新規客を増やす効果が期待できます。

また脅威であるスタッフの独立への対策として、コミュニケーションを深くとっていく事で防いでいくつもりではいますが、全てを回避することは困難であるとも考えています。そこで、完全独立ではない、社内独立もしくはFC独立の仕組みを作ることで独立するスタッフを人財として活用できるのではないかと考えました。当社には人材確保(S④)や業界への影響力(S③)があるので、独立するスタッフにとってそのメリットは大きいはずであると考えます。必ずお互いにwin-winの関係を築くことが出来るのでこの強みを脅威に活かす仕組みづくりにも取り掛かります。

そしてこの分析の目的である今後の経営戦略の柱は、当社の強み②③⑤を活かした、当社のグループサロンを募り、他社に加盟してもらう「フレアグループ戦略」になると考えます。当社はグループ加盟料が見込めますが、他社にとってもグループに加盟する事で様々なメリットがあります。当社からの技術提供だけではなく、仕入額を今よりも低く抑える事ができるようになる事、また小さなサロンでは仕入れる事が難しいような人気商品を仕入れる事も可能になります。また加盟店が増加していくとグループ規模が大きくなり業界に対する影響力が強くなる為、更なるスケールメリットを得られるようになります。

ここでこの「フレアグループ戦略」を「VRIO分析」を使い、加盟店・顧客と二つの視点から確認します。

 

5.4VRIO分析

加盟店視点

 

V(経済価値)

①グループへの加盟は、技術力、情報力、商品力、粗利率、そして人材確保の点で大きなメリットを得られるので加盟店にとって経済価値はあると思われる

②売上が低迷しているサロンの成長は、ディーラー・メーカーにとっても売上を伸ばすチャンスにもなる

 

R(希少性)

①業界内にグループを作って加盟店を募っている取組をしている競合はいない

 

I(模倣困難性)

①既に他社と比べて仕入額が安く、グループ加盟店も当社と同等の条件での取引ができる様にメーカー・ディーラーへの交渉が可能

②当社以上に資金力、組織力のあるサロンは数多くあるので真似をされる可能性はある

 

O(組織)

①他社に技術提供を求められ続けている実績がある

②新卒の人材確保の面で有利になるような、美容学校へのパイプがある

③グループ店からの加盟料が大きく滞った場合、グループを維持していく資金力が当社にはない

 

次に顧客視点から「VRIO分析」をおこないます。

 

顧客視点

 

V(経済価値)

① グループ戦略を進める上で当社が獲得する利益を顧客に還元する事は可能だが、顧客に対して何が経済価値なのかを判断する事はできない

 

R(希少性)

① この戦略の希少性は顧客とは無関係である

 

I(模倣困難性)

① 希少性と同じく、この戦略の模倣困難性は顧客との関係性がない

 

O(組織)

① サロン営業に負担をかけずに、多数のグループ加盟店に対して技術提供を行う組織力は当社にはまだ備わっていない。

当社の限界量を超える加盟店獲得は既存のサロン顧客に対して迷惑をかける可能性がある

 

まず加盟店視点の分析結果から「フレアグループ戦略」は他社にとって、またディーラー・メーカーに対しては経済価値があり支持してもらえると考えます。しかし、当社以上の資金力や組織力をもった競合も存在しており真似をされる危険性や、加盟料が滞った場合のグループの維持に問題がある事も分かりました。

しかし、仮に競合に「グループ戦略」を真似されたとしても強みである技術力を活かして差別化をしていけば加盟店の確保は可能だと考えます。また、加盟料の未払いについては、むやみに加盟店を募集するのではなく、ディーラー・メーカーと相談しながら信用のできるサロンと契約するという事でリスクを最小限に抑える事が可能になります。

次に顧客視点の分析結果ですが、「フレアグループ戦略」はサロンの顧客を相手にするビジネスモデルではないので、この分析結果から顧客にとっての当社の強みや市場での優位性を判断することは出来ませんでした。しかし、問題点として当社がグループ戦略を進めていく事が顧客に負担をかけてしまう可能性があるという事が分かりました。この点は加盟店視点で述べた事と同様に、むやみに加盟店を増やさずに自社の組織力の限界を判断しながら慎重にグループ拡大を進めていく事でクリアできると考えます。

以上の事から「フレアグループ戦略」は今後の当社の経営戦略になり得ると考察できます。しかし、この戦略は顧客が置き去りになってしまっているので、顧客に対して経済価値をどう産み出していくかが今後の課題になるとも考えています。

 

 

6.研究結果への考察

 

4つの分析を行い現状の把握と当社の強みを明らかにしましたが、スタッフ・仲間を大事にする事を理念にしている会社の一番の強みがスタッフ力であるという事はこれまでの30年は間違っていなかったと確信しています。そして、これからの経営戦略の柱である「フレアグループ戦略」はこれまで培ってきたそのスタッフ力を活かした戦略となるので確実に実行していきます。業界では売上と労働力が減っている中で競合は増えており、少なくなっていくパイを取り合う状況になっています。競合と取り合うのではなく、競合と協力していく当社のグループ戦略はこれから競合が増えていく傾向にある業界に適している戦略であると考えます。

現在のところ当社は売上も労働力も増えており、業界の脅威の影響を受けていないという現状ではありますが、現状に油断することなく、強みである人財を活用していきこれからの30年を生き抜いていきます。現在の事業方針の中で①②④は前述した様にこのまま継続していきます。③に関しては教育のスピードを上げるのはもちろんですが、高単価サロンの基盤である技術力の質を落とすことなく間違いのない教育をおこなっていきます。⑤は業界内に影響力を持ち続けることはグループ戦略にとっても有利に働くので継続していきます。⑥に関しては、スタッフの独立を回避するのも大切ですが、独立したとしてもお互いにいい関係を築けるような仕組みの作成にも早急に取り掛かります。

 

 

7.今後の対応

 

まずは「フレアグループ」の構築に取り掛かり、加盟店に提供する具体的内容や加盟料などの条件を考えます。その後、メーカーやディーラーと交渉・相談を行い、加盟店の募集をします。約4か月後の今期末である2018年7月末までに、グループ加盟サロンを10サロン集めます。また、社内独立の仕組みを考えて独立したいというスタッフの出現に備えます。これらは2018年末までに社員に発表するところまでおこないます。

また、今回の分析内容には競合の分析・競争戦略や業界地位別の戦略を立てていないので、競合の分析もおこなったうえでより具体的な戦略を考えます

そして、これからの30年の為にまずは中期の店舗計画、教育計画、人事計画をたてて確実に実行するという社風を社員に浸透させます。

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