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修了生論文

【組織の強化から生みだされる新たな経営資源による成長戦略】

大阪校 (O-college)アドヴァンス 大坪 謹治 (株式会社名北モデル工業 )

1、はじめに

 

2016年秋のベーシックの学びでは『事業の継続と成長を技術継承から考える』で課題発表をし、これにより洗い出された当社の強みは競合に対し差別化ができている生産技術と設備であるが、弱みとして見えたのは特定人材を外した時、組織としての自立した生産能力を保持出来ていない事であった。それに加え、組織の運営構造が構築されていないため判断、意思決定能力を欠いており、組織として大きな成果が生み出せない状態であると考えた。半面これを改善できれば生産性が向上することで収益の伸び代はまだ見込めるはずである。

当社の売上のほとんどを依存している昇降機業界は昨今、国内の市場に頭打ち感があり大きな業績の向上が見込まれない。海外市場においては、メーカー側は現地調達を原則としておりこの市場でも業績に結び付く環境は厳しい状態である。

これらの内部的問題点と外部的問題点を解決しなければ当社の持続的成長は出来ないと考える。

【経営戦略目標は、強固な組織なしでは叶えられない】この思いを深くしたこれまでの経緯を簡単に示す。

 

[資料1]ベーシック終了後(2017年4月)のアクションと現状

時期 アクション 現状
2017年4月 縦組織をつくるための新人事任命 6月に1名、9月に1名役職退任
5月 技術継承のためのOJTを開始 8月に主要メンバーの病気による長期入院で一旦中止
6月 自身の事業継承、退任までの計画を作成 第一段階64歳までに中核組織の育成と新規業界への業務拡大を模索中
7月 自身が2018年6月をもって昇降機部門の実務から退くこと、2018年1月満60歳を持って直接製造作業の終了を宣言 1月に作業現場の第一線からは、離れたが時折問題解決のためスポット的に現場に立っている
2018年1月 人事考課制度導入のための評価項目提示 3月に評価の給料配分決定し説明を済ませた

 

過去一年の取り組みの結果に満足できるものはなく原因の分析から始めたい。

 

 

2、内部環境について

 

人事の失敗

去ること2015年の組織体制時に就社歴が一番長いが技術力は比較的無い人材に責任分担の主任職を任せたが技術的に優れるメンバーの言動圧力に耐えられず解任を願い出たため、2017年は技術力に優れた人材2名を統括長と製造長に登用したがその地位優劣関係に不満を抱き組織的機能が発揮できず統括長職を任命した従業員から退職願いが出される始末となった。

不満を言動に表す役職も自分の誇示に執着し本来の業務マネージメント能力がないため顧客に迷惑をかける事態となり自身から降格を願い出たため4月から始動した人事は10月で事実上壊滅となり私自身がすべてを取り仕切る惨憺たる結果で現在に至っている。

 

技術継承の挫折

5月より始まった「社内業務能力30%向上勉強会」と銘打った技術継承カリキュラムは、自身の学びより「ロジカルシンキング」を従業員に認識させ、この上に個々の技術を習得させ複合技術へと発展させるプログラムであったがこれも、いずれ機械工作のリーダーを任せたいと考えた従業員の病気治療を理由の長期離脱により中断となりこの部署の人的補強を急がなければいけない状況と成ってしまった。

更に、教えたはずの技術も業務には繋がらず以前は稀であった客先での製品不良が月に数件と、このところ増える傾向で任せられる能力となるにはまだ遠い現状である。

 

分析

人事の失敗ではまず、業務の遂行に個人感情が入っているため本来の目的、責任が認識されて無い状態。また、役職の果たすべき役割が周知されてない事と理念もよくは理解されていないと考える。それにあまり昇進、昇格に興味がなく責任を負いたくない。また、大きな問題が社内に起きているにも関わらず誰も問いたださない気風があることも私自身が感じているところである。

技術継承面では、製品不良の増加が表すように教育講義はあまり効果が認められないことは、習得して本人に分配されるメリットが表されていないまま詰め込むようなプログラムでカリキュラムを進めていた。よって、教育を完了しても従業員に備わるスキルは極限られただろうと反省できる。

これらを踏まえて再度組織構成の構築、技術継承に取り組むこととする。

 

 

3、外部環境について

 

[資料2]

建築市場の長期予測(日刊建築新聞2015年9月25日記事より)

 

自社がかかわる昇降機部門は建設業界から派生しておりこの資料5は市場展望を建設業者100社にアンケートを取り有効な回答81社をもとに作成されている。これを見ると2020年「東京オリンピック」を境に後年は大きく減少に転じ2025年には減少と予測する業者が全体の7割まで増えておりこれを埋める手段を早急に進めなければならないと判断できる。

また、自社が最も多く売上を委ねる三菱電機昇降機部門の2015年戦略発表では国内向け需要は成熟期で、量より質の時代を迎えたと分析しマーケットを北米・欧州に加えインド地域を開拓する戦略を記載している。もちろんの事、可能な限り現地生産、現地調達を掲げ日本の本部は開発拠点の位置づけと記されている。国内需要はビル寿命に連動する保守、改修事業(建設から25年経過物件がターゲットとメーカーは考えている。丁度バブル期の建物がこれにあたる)がこれからの収入源と見ている。

自社の製作部門は消滅こそしないが、伸びる要素は考えにくい環境と判断できる。

故に新しい分野に進出をしなければ経営は成長どころか維持も難しくなる。

時間の節目として2020年までに戦略の結果を出さなければならないと考える。

この理由により組織の構築、生産性の向上により余剰能力を現組織から生み出し新たな領域に挑戦するための経営資源を創出しなければならない必然性が明らかになった。

 

 

4、自社のビジョン

 

理想の組織の姿、目標とする組織の姿を私自身の考えとして表すと以下である。

『自立した判断力を有す、知的行動力を持った組織』である。

自立した判断力とは、論理に裏づけられた当然の状況判断と考えている。

知的行動力とは、目的達成のために戦略的思考で行動することと考える。

これが実現すれば必ず新しい経営資源が生まれるはずではないだろうか。

そのために失敗からの解決すべき事柄を以下に表す。

1、業務行動と私的感情を分離して考えられるようにすること。

2、知識習得意欲を育むこと。

3、組織構築の重要性を認識できること。

以上の3つを出来る従業員をつくりあげていかなければこの先の個別の技術能力を積み上げることは出来ないと考えるに至った。(2017年10月の思い)

これらを叶えるために手段として意識を育てる人事考課制度と待遇に公平感を与える基本的給料体系をつくる。この制度、体系は理念に基づくものとしなくては経営指針との一貫性が失われるため理念を踏まえて作成することと成る。

会社業務理念の紹介、自社の強みは差別化された技術力である。

【わが社はお客様に納得いただけるクオリティーの製品を提供するために、日々学習し、創意・工夫することで生活の安定を実現し、しあわせを実感します。】

(クオリティーとは、品質・時間・価格とする。)

 

 

5、取り組み① 目標設定と計画の可視化

 

[資料3]組織成長のシステム

このシステムから最初に創出される余剰能力とは技術者としての私自身である。

これが新たな戦略資源である。目指すのはブルーオーシャン。

経営目標【2023年までの5年間で年商を倍増、経常利益率10%以上を目指す。】 昇降機業界では当社は比較的堅固な地位を築き上げているとベーシックの学びでも分析しており、この業界においては内部的問題を解決できれば業績頭打ちながら生産効率を上げる努力をすれば、現状程度の業績は経年維持できると考えている。

何故ならば、前項でも記述したようにこの業界のメーカーの利益構造に由来し現在までに市場に送り出した機器の法令保守事業と改修事業がその収益元として永く続く予想からである。業績値としては縮小傾向であるが、この比較的安定している経営ベースを既存の従業員の運営能力に任せ、の上に新たに新しいマーケットを見出し成長させる計画である。

2020年東京オリンピック後を見据えて2年以内に新たな業界で営業実績を発生させ、自身65歳までに企業として経営の基礎をつくり、後の後継を育てる考えである。

ただ一つ技術者としての思いから戦略ツールは「重合技術」を用いる考えである。

ベーシックの研究で驚異的利益を生み出した技術で自動化が困難で効率的生産性が生まれにくい性質を秘めた技術であるが、技術者としての発想力によって大きな価値を生み出すものと認識しているからである。技術者魂にかける夢が成功へのモチベーションである。

 

[資料4]成長に導くためのバランスト・スコアーカード

視点 目標(KSF) 測定(KPI) ターゲット(KGI) アクション
財務 事業の複数化 昇降機分野以外から年商500万の実績 2020年までに実現を目指す ものづくり補助金を活用した設備の導入
顧客 昇降機分野の生産能力の維持 社長が関わる業態を減らする 昇降機事業部として独立させる 2018年7月からは見積・開発以外の業務は社長はしない
業務 組織力の向上 人事考課の評価値(毎月評価) 従業員全員が人事考課評価点4点×14項目を達成する 毎月の個別面談で改善点のすり合わせをし,労使ともに理想の姿を目指す
従業員のみで昇降機部品の生産は受注~納入検収までをこなせるようにする 損益分岐点からの相対位置を毎月開示する 社長の生産力を外した状態で利益をだせる組織。 問題発生時は即時組織内で解決策を話し合い対処する。トライアンドエラーを基本とる
学習 分析能力の向上 各工程の時間見積の精度を検証 生産工程表をもとに生産管理を行えるようにする 大口物件は受注時に工程表を製作し時間を見積もる
製作技能向上 技能評価ポイントのカウント 多能工を増やし工程負荷を平坦化する 組織内から必要技術を選択し月1回ペースで学習会を開く資料も組織内で揃える

 

 

6、取り組み② 人事考課制度

 

[資料5]意識を育てる人事考課評価項目

項目 概要 目的・姿

 

会社理念を理解しこれに基づいた言動ができている 品質、精度、仕上がり、数量に問題がないか。納期に対応出来ているか。適正な製作時間、資材費用か 顧客の立場を守ることで

自分たちの生活が守られることを理解する

2

 

考え方、行動、発言がロジカルである 言動に正当な理由があるか。感情で判断していないか 業務に関わる判断・行動と個人感情を切り離して考えられる人材

 

向上心を持ち、自分の成長を意識している 多角的視野で知識を得る努力と現状に満足せず、自身が変化出来る姿勢か 知識に対する貪欲さを持ってもらい、多様な業務に対応できる人材
4 外部環境を理解し会社の業績に活かしている 状況に応じた思考で臨機応変に対応し、結果に繋げられるか 困難解決能力を問うことでリーダーシップが取れる人材
業務命令に対し真摯に対応している 命令の意図を汲み、最善の方法で業務に向かい合ってくれているか 生真面目な努力を惜しまない人材
組織力向上のために提案、行動が出来ている 批判を恐れず、目標を見据えた提案・行動が出来ているか 行動力のある意欲的人材
生産性向上を常に考え具体化出来ている 手法・工程・ツール等を改善出来き、これを具体的に業績に結び付けられるか 業務の財務的思考まで意識出来る人材
最終工程を意識した業務が出来ている 次工程の利益を考え自分の業務が出来ているか 組織的利益を考える犠牲心のある人材
業務目標を達成するためにチームワークを重んじた行動が出来ている 組織行動の中で自分に出来ることを見つけ、率先して行動できているか 機動力のある判断・行動に自身も積極的に関わる意識を持つ人材
10 明るく振舞い、基本的挨拶が出来ている 明るい職場にしてくれているか。来社される方に不安・不快感を与えてないか セールスの意識を持ち、職場を誇りと思う人材
11 製品の品質評価基準を理解している 求められる品質が理解できているか。 顧客を意識した業務が出来る人材
12 「5S」の意義を理解し、これを意識した行動が身についている。 整理された現場と思考により業務の効率性を考えているか 考え方が整理されて、要点を理解出来る人材
13 「報・連・相」意義を理解し常に意識した言動が出来てい 組織行動に必要な情報が共有できるよう行動できているか 第一に組織力で結果を出す思考の人材
14 他の同僚に問題の根源を求めない 問題の本質を分析・整理し感情を分離して原因を考え、解決のために自分に出来る事をしている 優れた言動のリーダーを生み、これを支える優れた意識のプレイヤー

 

以上の評価項目を毎月のフィールドバック面談でより高い水準に導くことで理念の存在意義から技術習得の必要性を理解させる地道な取り組みをするべきと考る。

次に評価を賃金に反映させなくては能力、意欲は向上しない。いかに大きな成果を生み出せるかは賃金制度にも納得感を持たせなくてはならない。

このために支給目的を明確にし、従業員に理解し易くする。何を守り、何を伸ばせばしあわせが実感できるかを考えてもらう。

 

[資料6]賃金支給理由

目的 思考
基本給 基本的生活の保障部分 男女雇用機会均等法を取り入れた年齢と勤続年数から算出される基本給賃金テーブルによる。
手当 基本給を補完する部分 各種手当の支給理由を明確化し、それによって意義を持たないものの廃止と、あるべきものの継続と新設。
技能給 月給を改善する部分 評価基準の策定から技能面の成長を促す。
賞与 業績を配分する部分 組織を育てる人事考課の評価配分を明確化しこれを配分する。

 

この賃金体系のプログラムは、エフアンドエムの賃金制度・人事考課システムを利用し概略完成し運用を始めている。幾度かの修正を従業員面談から抽出し改善を繰り返し精度を上げる予定でいる。

 

 

7、まとめ

 

代表職就任以来、暗中模索、試行錯誤して進んできましたがベーシックから始まった経営のための学びが少しずつではあるが不安から自信の方向にポジションを移すことが出来始めているのではないかと思います。この先は論理的計画精度の高い実行力が自信を深めるための階段と確信しています。これからも置き換える力、情報を分析し判断する力を磨き続ける所存です。学びに感謝。

以上

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